1話 入学
「風優助、咲気、気を付けて行くのよ〜」
お母さんは、台所から声をかけた。
「は〜い。行ってくるね〜」
「うん。行ってきます。」
それに対し、俺と妹はほぼ同時に返事をした。
今日から国立武道高校に入学か。
憧れの高校に入学できて嬉しいのだが、名前がそのまんますぎて少々気に入らない部分がある。
「お兄ちゃん、入学できてよかったね〜」
「……ありがとう。」
「でもぉ〜、私は中学校からだから、私の方がやっぱり才能あるってことかなぁ?」
「……」
やっぱりだ。
こいつはいつも一言多い。
国立武道高校は、国立武道中学校からエスカレート式で入学できるため、中学校から武道高校に入学している妹の方が凄いと言えないこともないのだが、あいつはわざとあんな言い方をしている。
「ところでお兄ちゃんは、何クラスになるかな〜?」
「普通クラスじゃないといいね!」
「……そうだな。」
またムカつく言い方をしやがる。
俺よりも優秀なこの妹様は、黙るということを知らないらしい。
こんな調子で歩いているうちに、もう学校は面前に迫っていた。
「じゃあ、私はこっちだから。お兄ちゃんまたね〜」
「また後でな。」
初めて見たときはとても荘厳に見えたこの門も、これからは毎日潜ることになるんだよなぁ。
クラスの名簿は昇降口の前か。
俺は……2組の1番か。
まぁ、「あ」から始まる苗字なら当然といえば当然か。
「君は、赤時君かな?」
「そうですが、俺に何か用ですか?」
「知り合いが一人もいないもんだから、早いうちに知り合いを作っておこうと思って。」
「僕は椿紅光汰。よろしくね。」
「俺は赤時風優助です。こちらこそよろしくお願いします。」
「敬語なんていいよ、同級生なんだし。」
「わかった。なら、そうさせてもらおう。」
「入学式の後の自由時間とか、一緒に校内見て回ってもいいかな?」
「俺は構わないよ。」
「じゃあよろしくね。」
とりあえず一人知り合いができた。
知り合いがいた方が何かと都合の良いことも多いだろうし、高校生活の滑り出しは上々といったところか。
「1年生の皆さんは、体育館に移動して下さい。」
アナウンスが流れた。
「入学式が始まるみたいだね。僕達も行こうか。」
「そうだな。」
これからどうなるのか全く予想できないが、この感じだと幸先がよさそうだ。




