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7 バリキャリになればええねん

 おかしい。

 この時期の式典といえば王子の婚約についてのはずだった。晩餐会だって王子の婚約を祝ってのはずだ。

 しかし、王子の婚約の話はそこそこに。

 王宮勤めの綺麗なお姉さんたちの噂では、臨時の叙爵の話題で超持ちきりだったのだ。


 これはもう。

 帰宅から夕食までの間の時間に、昨日調査を頼んでいたディランに確認しなきゃいかん。


「ディラン」

「ほい」


 ディランはいつものように、帰宅した私のところに「ひと休みセット」と私が陰で呼んでる紅茶と小さい茶菓子のセットを持ってくる。

 いつものディランだと思うんだけど。なんかちょっといつもと表情違う気がするけど。

 いやこいつ表情隠すのうますぎてわかんないんだよね。私の疑いの気持ちからくる気のせいと言ってもいいレベルの、かすかな違和感程度しかない。


「式典の件わかる?」

「……えーっと」


 おい目ェそらすな。

 お前がそうしてる時は問い詰めてほしいような問い詰めないで欲しいようななんとも曖昧な情報の時だろ。


「叙爵の式典ってまじ?」

「それは、ハイ」

「誰の?」

「……すんませんが、それはサミル王太子殿下からの命令で言えないことになってまして」


 渋ーい顔で目を伏せてボヤくように言ったぞこいつ。

 ええ……国王陛下ご病気で臥せっておられてるから、サミル王子の命令は実質王命じゃん……!

 私の部下がなんかヤバイ案件を知ってしまっているらしい……。怖い。


「なるほど……」

「すんません」

「口を割ると死ぬやつ?」

「まあ、死にはしませんが、お嬢様は泣くでしょうね」

「ヒエェ……聞き出さんとこ……」


 多分こいつも別ルートで叙爵式の話題を掴んで……んで、叙爵する人が誰かを事前に知ってしまい、それがなんかこう、なんか、ヤバイんだろう。うん。

 ふわぁっとしているがもうしょうがない。そういうものとして考えるしかない。私もどうやら叙爵らしいということ以外詳しいことは全くわからないのだ。

 でもなんか、アレだなあ。変な奴だったら、いち国民としてフツーに困るぞ。


「あ、王子サマの婚約者サマになる人ならわかりましたよ」

「お、有能」

「シュラウド侯爵のご令嬢さんです」

「あー、よかった……イレーヌなら大丈夫でしょ」

「おれはあんまり良い印象ねえんすけど……」

「んー?いいのいいの、意外とできる子だから」

「まあそれはわかりますけど」


 王子×親友ルートに無事入ってた。いやあ暴君案件じゃなさそうでよかった!

 あの王子、王子以外のルートでモブをくっつけると変な奴に懐に入られて速攻で国が没落して行ったりするのだ。

 イレーヌがよっぽど馬鹿じゃなければ……というか最初にポカミスやらかしただけで、イレーヌ本人は作中の彼女と能力はほぼ変わらないみたいだし、まあ概ね大丈夫でしょ。


 す、と紅茶を飲む。こいつ紅茶淹れるの上手くなったな。たまにひと休みセットとしてコーヒーを持ってくるけど、そっちも上手くなった。

 こいつまじ昼執事夜密偵として完成されてきたな。護衛もできるし万能マンだなあ……すげえ……。掘り出しモン拾ったわ……。大事にしよう。


「他なんかわかったことは?」

「ああ、あとなんか神聖エネルギーと魔力エネルギーと、あと霊力エネルギーでしたっけ。その統一管理の研究をするかもとか言ってたっすよ」

「結界の崩壊が増えてるからねえ……お兄様も大変だなあ……」

「もしかして、お嬢様も一枚噛みたいとか思ってます?」

「まあ、私そういうの大好きだし。この教育期間が終わったら、魔術局に入るのもアリかもなあ」

「お嬢様最近魔術のこと調べるのお好きですもんね」


 魔術局なあ。

 もし万が一変なところに嫁いだり、嫁げなかったりしても「これさえあれば私は生きてる」ってものを持つのは大事だ。

 兄に倣ってその道へ、というのは全くおかしくなく周りにも聞こえるだろう。いいアイデアなんじゃないだろうか。

 魔術局で研究、開発、運用、運営、経営と。これ絶対楽しい。魔術局の万能バリバリキャリア。いいじゃん!超かっこいい!


「まあ王子には選ばれなかった訳だし、身の振り方をそろそろ決めないとね」

「さいですか」

「あ。ディランはどこでも連れてくから。地獄の底まで連れてくから覚悟しといて」

「はいはい。出来る限りで頑張りますよって」


 自分の人生を、とはいったけど、シナリオ脱却後の身の振り方を決めかねていたんだよね。

 バリバリのキャリアウーマンになればかなり人生安泰でしょう。

 うんうん。そうと決まれば、式典の後にそれとなく兄様に相談してみよーっと。

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