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わたしはノーマルなんだからね! 〜私は男の子好きなのに、女の子が私に迫ってきて〜  作者: たられば
第一章 わたしはノーマルなんだから
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第二十話 恋愛成就の末に【後編】

 《浴槽の中で》


 ポタッと頬に水滴が落ちた。

 思いのほか、冷たく感じる。

 晩春といってもまだ夏を迎えるには早い、と、その冷たさは語っていた。

 間髪入れず、ピカッと視界が閃光に包まれた。

 次いで盛大にゴロゴロと雷が鳴る。

 これは来る、と誰もが直感的に予報する雨という天気。


 そもそも校門を出たときから、雲行きが怪しいと思っていた。

 だけど、今日は雨が降らない予報のはずで、わたしも湊ちゃんも傘を持って行っていなかったから、雨が降らないように、と祈るしかなかった。

 折りたたみ傘くらい持っていたら、湊ちゃんと相合傘できたのに。

 未練がましく思っても、後の祭り。用意の悪い自分が悔やまれる。

 次第にどんどん濡れていく、純白の制服。

 中学生最後の年だから、少し制服はヨレしまっているけれど、それでも湊ちゃんの制服は品格があって神秘的なのに。濡れてしまうのが、口惜しい。

 雨脚が強くなっていくのをひしひしと感じる。辺りも急激に暗くなって行く。

 間違いなく夕立だ。

 帰るにも校舎へ戻るにも、半々くらいの距離だから、ここは走って帰るのが懸命だね。

 自宅までの距離は、あと百五十メートルくらいかな。

 


「降ってきちゃったね。どしゃ降りになりそう。沙織、走って帰るよ」


「う、うん」



 状況から誰でも考えうる意思の疎通に、わたしはそれでも嬉しくなる。

 喜んでいる場合じゃないけど。

 走るといっても、わたしは運動音痴だから、湊ちゃんの全力にはついていけない。

 けれどきっと、湊ちゃんはわたしに合わせて速度を落としてくれるだろう。

 たとえ雨に濡れてしまっても、わたしに合わせてくれる。

 湊ちゃんはそんな人。


 わたしたちは夢中で走った。

 まあ、夢中で走ったのはわたしだけで、湊ちゃんは前と後ろのわたしを交互に確認しながら、歩幅を合わせるように走っているのだけど。

 辺りは住宅ばかりで、雨宿りする場所も見当たらない。それはもう二年も通っているのだから、分かりきっていること。

 あと百メートルも走れば、わたしの家に着く。だから頑張って走ろう。

 どんどん濡れていく湊ちゃんは、本当に水も滴るいい女だ。

 そう考えながら、できるだけ足を止めないよう前に進む。


 ところが雨は、バケツをひっくり返したというような降り方になってしまう。それはもう、一メートル先が見えないほどの降りだった。

 ここだけダムを放流したんじゃないかと思わせるほどの、ゲリラ豪雨だ。

 強すぎて進めない。わたしは立ち止まってしまう。

 湊ちゃんはそんなわたしを見て、引き返してくれて、わたしを包んでくれて。



「沙織、大丈夫だよ。もう止むから。もうすぐ通り過ぎるから」


「湊ちゃん。湊ちゃん」



 あともう少しなのに。あそこに見えるのに。

 二人で雨に当たるなか、家の方に何とか目を見開くと、家は全く見えなかった。



        ♀



「本当に凄い降りだったね〜」


 わたしの家の前で、スカートを絞りながら湊ちゃんは言った。

 制服でプールに飛び込んだみたいな感じになっている。

 あちこちから水が滴っていて、スカートを絞るのは意味がないんじゃないと突っ込みたくなるくらい。

 きっとパンツの果てまでびちょびちょだ。

 だってわたしがそうだもの。



「本当、凄かった。ごめんね、湊ちゃん。わたしが遅いから」


「何言ってるのよ。沙織がいなかったとしても間に合わなかったよ」


「だって、あそこで蹲ってたから、ずぶ濡れになちゃって」


「だ、か、ら、沙織と濡れたことは関係ないの。それより、早く家ん中入りなさい。風邪引くから」


「う、うん」



 そう言われ、濡れたカバンの中を漁る。

 鍵、鍵。

 な、ない。鍵がない。

 あれ? もしかして、今朝出てくるときにカバンの中に入れ忘れた?

 今日はママ、妹の紗凪と学校から直接買い物に行くってことで、夜まで帰らないし。

 パパが帰ってくるのは夜中だし。

 どうしよう。



「もしかして、沙織、鍵ないの?」



 湊ちゃんは察しがいい。

 わたしの行動と、表情で筒抜のようだ。

 とは言うものの、こればかりは、湊ちゃんを頼れない。っていうか、鍵なんか開けられるわけない。

 でも湊ちゃんの考えは違った。



「それじゃ、うちにおいで。沙織のブラのサイズまではないけど、着替えはわたしの貸してあげるから。ね、行こ」


「え? でもわたし、ずぶ濡れだし。湊ちゃんにそこまで迷惑かけられないよ」


「ずぶ濡れはわたしも一緒。一人でも二人でも濡れるものは濡れる。それに、迷惑って何? そんなことで迷惑だと思うほど浅い仲じゃないよ」


「湊ちゃん…………ありがとう」


「もう。お礼なんか言ってないで、さっさと行くよ」


「うん」



 そしてわたしはお言葉に甘えることにした。



        ♀



 湊ちゃんの家に入ると、渚さんが出迎えてくれた。

 渚さんというのは、湊ちゃんのお母さん。

 現役のピアニストで、中学二年生から、わたしのピアノの先生でもある。

 数少ない、わたしの気が許せる人。

「あらまあ、二人ともこんなにずぶ濡れてなっちゃって」と、タオルを一つづつ、さり気なくくれる様は、気品のある奥様といった感じ。

 渚さんにこそ気品という言葉がしっくりくる。

 わたしが好きな湊ちゃんが憧れる人。


 玄関を上がると、廊下に二人分の水が流れ出す。

 まるでお漏らしをしたかのように、廊下に溜まった。

 とても綺麗な大理石の廊下に、わたしに染み付いた雨水がこぼれ落ちるのは、何とも申し訳ない気分。

「あの、渚さん。雑巾貸してもらえませんか?」と、思うより先に口から出た。

 すると湊ちゃんは、「お母さん、廊下そのままにして行くね。沙織、こっちおいで」と手招きした。

 渚さんも「わかったわ。お母さん、さっきお風呂入ったから、まだお湯暖かいわよ」と同意している。

「ありがと。お母さん」と、口にするや、目でお礼している湊ちゃん。

 さすが綾瀬親子。阿吽の呼吸。

 別にうちの親子関係が悪いわけじゃないけれど、湊ちゃんと渚さんは、他の親子と違う。一般の親子とは違う。

 信頼関係が、愛が、別物すぎて羨ましくもならない。

 だけどわたしの雑巾貸して話は、どこかに行ってしまった。それはちょっと寂しい。


 わたしは湊ちゃんの後を追った。

 さっき渚さんが、お湯はまだ暖かいと言っていたから、すぐにでもお風呂に入れるということなのだろう。

 これだけ大きな家のお風呂って、どんなだろう。結構この家にお邪魔しているけれど、まだ見たことない。

 ジャグジーや露天風呂なんかもあるのかな?

 順番に入ることになるだろうけど、きっと湊ちゃんは、わたしに先に入れと言ってくるに違いない。そこは断固阻止せねば。

 待つのはわたしで十分。湊ちゃんこそ風邪を引かせてはいけない。


 決意とは余所に、未だにべちゃべちゃと足を下ろすたびに、滴る水。

 靴下は靴と一緒に脱いだというのに、玄関でかなり一生懸命拭いたというのに。

 制服に内在する水の量は、果物並みの水分量だとでもいうのか。

 ナメクジのように、通った軌跡を残し、導かれるまま、わたしは脱衣室へと入った。


 脱衣室は軽く蒸気が漂っていた。

 どうやら渚さんが入ったさっきというのは、そう時間が経っていない、さっき、らしい。

 思い起こせば、髪もしっとりしていたような気がする。

 青少年をも惑わしそうな大人の色香。

 わたしは湊ちゃんが好きなだけで、決して女性が好きなわけじゃないから、そこには惑わされないけれど。

 脱衣室は、一般住宅である、うちの脱衣室と浴室を合わせたくらいの広さで、高価そうなドラム式洗濯機や乾燥機が並んでいた。興味津々でキョロキョロと見渡すと、蒸気にやられ、メガネが曇った。

 やっぱりお風呂でのメガネは致命的だ。一瞬で、視界不良に陥ってしまった。

 かといって、メガネを外すとほとんど見えなくなる。色と色の境が辛うじて見える、そんな感じになる。


 これじゃ、湊ちゃんの脱衣シーンを見れないよ。

 ちょっと期待していたのに。

 仕方がないから、音だけで我慢するしかないか。


 そんな雑念を抱いていると、いきなり怒られた。

 雑念に対してじゃなく、わたしの行動にだけど。



「早く脱ぎなさい。もうだいぶ体も冷えているんだから」


「も、もしかして、一緒に入るの?」


「当たり前でしょ。なんで脱衣室に一人で待つ考えになっているのよ。うちのお風呂、二人でも十分広いから安心して」


「本当に? 湊ちゃんと一緒に入れるの? やったー!」


「なに、そのやったーって。わけわかんない。でも沙織と一緒にお風呂に入るの初めてだね。修学旅行のときは、沙織、絶対お風呂に入らないって閉じこもっていたものね」


「修学旅行でお風呂なんて、絶対無理だよ。ただでさえ集団行動で辛かったのに、お風呂で裸の付き合いってどこの国の人って感じ」


「裸の付き合い文化は、バリバリ日本の文化だから。しかも本当に裸で付き合うって意味じゃないし」


「ふ〜ん」



 もう裸の付き合いの話はどうでもよかった。

 だって、湊ちゃんとこれから一緒にお風呂に入れるんだもの。

 ここにきて、コンタクトじゃない自分が悔やまれてならない。

 メガネは必需品だからと、ママと一緒に頑張ってメガネを買いに行ったとき、どうしてコンタクトに手を伸ばさなかったのか。

 わたしのバカ。


 湊ちゃんは、もう一糸まとわぬ姿となっていた。

 わたしはその美術品を目に焼き付けるべく、急いでメガネを拭き凝視体制に入る。

 これは凄い。

 眼福、眼福。

 写真に撮っておきたい。



「こら、沙織。なにまた止まっているのよ。早く脱ぎなさいって言ってるでしょ」



 また怒られた。

 好きな人の裸を見ていたいだけなのに、神も仏もあったものじゃない。

 その好きな人に怒れてれば世話ないけれど。

 仕方がないから、わたしもメガネを外し、濡れた制服と下着を剥ぎ取った。なかなか濡れている服は突っ張って脱ぎにくいのだけど、これ以上湊ちゃんを待たせるわけにもいかない。

 ブラのホックを外そうとしたら、湊ちゃんが外してくれた。

 わたしのおっぱいが、湊ちゃんのタイミングでボヨンと重力に引かれる。

 自分のタイミングじゃないと、一層重く感じる。

 この厄介者め。



「本当、大きわね。沙織の胸」


「そ、そう?」


「大きいとは思っていたけど、まさかここまでとは。カタチもいいし、綺麗だわ」


「そうかなぁ」


「うん。って、ここで立ち話をしていてもしようがない。さっさと入りましょう」



 わたしにはコンプレックスでしかないおっぱい。

 それを湊ちゃんは、特別な何かを見るような目で見ていた気がする。

 もしかして、わたしのおっぱい、好きなの? 湊ちゃん。

 訊くまもなく、湊ちゃんは浴室の中へと入って行った。


 とりあえず足探りでわたしも浴室へ入室。湊ちゃんの動く方へと歩みを進める。

 浴室用の椅子が足に当たり、今度は手探りで確認して座った。

 浴室では、シャワーの使い方や、シャンプーとコンディショナーなどの説明を受け、ボディースポンジを渡された。

 シャワーは結構ボタンがあって、押すところによっては熱湯が出てしまうらしい。

 シャンプーとコンディショナーは、みんなそれぞれ違うのを使っているから、湊ちゃんのを使いなさいということだった。

 訊いてはいたけど、視界がボヤけて単語と所在が一致しない。

 普段ならもう少しまともに見えるのだけど、この浴室は蒸気濃度が高いっぽい。さらにボヤッとして見える。

 とりあえず手探りでシャワーを触る。

 ダメだ、うちのシャワーと勝手が違うから、全然わからない。


 すると、わたしが弄っていたシャワーのところに、手らしい影が伸びた。同時に、キュッと音が鳴り、わたしにシャワーが浴びせられる。

 暖かい、人肌といった感じの温度。

 足の先からジンときて、ここまで冷えていたのかと、驚いてしまう。

 足元から優しくかけれていく温水が、まるで直接肌で温められているようだ。ああ、もし本当に肌で温められたなら、これよりもっと気持ちいいのかな。湊ちゃんの肌なら。

 そんなわたしの心の声は届かず、あくまで湊ちゃんは冷静で。



「見えないならちゃんと言ってよね。そこまで見えないと思っていなかったから、全部説明しちゃったじゃない」


「ごめんなさい」


「ごめんじゃないよ。よくここまで来れたわね。お風呂場は滑るんだから、転びでもしたら危ないんだからね。ここではわたしがちゃんと誘導してあげるから、勝手に歩いたりしちゃダメだよ」


「うん、わかった」



 優しすぎる。

 どこまでわたしのハートを鷲掴みにしたら気が済むのだろう。

 できるなら、もうすでにがっちりホールド状態ですよ、と言ってあげたい。

 マコトくんさえいなかったら、と思ってしまう意地の悪いわたし。

 一日一回は話題として出てくるほど、あんなに湊ちゃんが愛する人なのに。

 わたしは好きな人の幸せも願えない女なのか。

 まだ見ぬマコトくんの存在に、妬んだり、嫉妬したり、醜いかなと感じることもある。

 だけど、好きでいてもいいよね。

 親友として傍にいてもいいよね。


 そんな想いに駆られていると、いつの間にか湊ちゃんがわたしの身体を泡立ててくれていた。おっぱいの下から、股の間まで、本当にいつの間にっていう感じで。

 せっかくいろいろな初体験を味わえたのに、全然堪能できなかった。

 わたしの大バカ者!


 介護されているかのように、手慣れた手つきで付いた泡を流しにかかっている。スベスベの手が泡を流すのを手伝い、わたしの身体をなぞる。

 あぁ、とても気持ちいい。

 湊ちゃんとのお風呂は最高だ。次々と発生する至福のイベント。

 最後に頭が触られたかと思うと、モコモコと泡立ち始めた。見えてはいないけれど、細く長い指が頭皮に当たる度に、泡の重量感が頭の上で増した。

 更に毛先にまで行き届くように、優しく滑らかにわたしの洗髪をしている。

 なんとも至れり尽くせり。

 幸せ過ぎて吐きそう。

 そして洗髪が終わった後、わたしは先に湯船へと誘導された。


 湯船の中は、とても心地よい状態だった。

 少し熱めではあるけれど、湯の質感がツルツルしていて、柚子の香りがほのかに漂っている。

 その香りはお湯に溶けていて、入浴剤と共に、実物の柚子もプカプカと浮いていた。

 浴槽は長方形で、おそらくジャグジー機能もある造り。泡の吹き出し口のようなものが、ところどころにある。

 きっと、スイートルームにはこんなお風呂があるんだ、そんなイメージを連想させる。

 泊まったことがないので、わからないけど。

 広さ的には、二人だったらゆったり入れるけど、三人だったら少し窮屈かなというくらい。一人で入るには少し寂しいかな。


 早く来てくれないかな、と湊ちゃんの方を向いてみると、そのシルエットは身体を洗っているように映った。まるでクイズ番組のレベル五だった。

 至れりつくせりのときは、メガネをかけれなくて良かったと思い、湊ちゃんを視界に収めたいときは、メガネがなくて悔しいと思う。

 ワガママだけど、願望なのだから仕方がない。

 少しでもはっきり見ようと、目を凝らしてみる。

 その必死の努力も虚しく、洗髪している艶かしさも、記憶に留めること叶わず。

 残念、無念。

 次があるかもしれないから、コンタクトを絶対に買おう。

 いや、ただお風呂場で視界良好にしたいだけなら、曇らないメガネでもいいのかも。


 雑念と湯の温度により、頭がボーっとしてきた。

 のぼせてるわけではないと思うけど、のぼせて上がることになったら困るから、浴槽内の一段上がったところに腰掛けて湯冷ましを試みる。

 半身浴の更に上半身が出た状態になり、おへそまで湯から出た。これなら湯冷ましも成功するだろう。

 すると、湊ちゃんの声が訊こえてきた。

 どうやら、身体を洗い終えたらしい。



「あら、のぼせちゃった? ごめんね、遅くなっちゃって」



 そう言いながら、ゆっくり波を立てないように入水してきて、浴槽の中がジワジワと二人の園になっていく。

 これから、また至福の時間が始まる。胸が高鳴る。



「のぼせてないよ。全然待ってないもん。ちょっと休憩したかっただけ」


「だったらいいんだけど。さすがにのぼせた沙織を抱きかかえて上がれないから、のぼせそうならちゃんと言ってよ」


「うん、だけど大丈夫だから」



 こんなところで、途中退場なんて絶対にイヤだ。

 かと言って、倒れでもしたら湊ちゃんに迷惑がかかる。

 しばらくこのまま、湯冷ましをしよう。


 湊ちゃんは湯船に浸かりながら、肩にお湯を手で掬うようにかけていた。

 そしてわたしのおっぱいを見ながら、またもや言った。



「本当に大きいね。いいなぁ」



 やっぱり、湊ちゃんはわたしのおっぱいが好きなんだ。

 湊ちゃんの中で、わたしの一部でも好きな部分があるのは、とても喜ばしいこと。

 思い切って、確かめてみよう。



「み、湊ちゃんは、わたしのおっぱい、その、好き?」


「好きっていうか、本当にいいなって思うよ。お姉ちゃんも凄いけど、それより更に上だもんね。羨ましいわ」


「そしたら、このおっぱい湊ちゃんにあげる。もう、湊ちゃんのものだからね」


「あはは。あげるって、付け替えるわけにいかないじゃない。気持ちだけ貰っておくよ」



 そうか。実際あげるって言われても、切り離すことできないもんね。

 外ではコンプレックスでも、湊ちゃんの前では誇らしいものな気がしてきた。

 この気持ち、この想い、いつかちゃんと伝えて、そのときは身も心も全てあげるから。

 そのときまで、綺麗に磨いて、大事にする。

 大切にするね。



「沙織、なになに? 本当にのぼせたんじゃないの?」


「の、のぼせてない……ってば」


「だって、沙織の胸、真っ赤だよ。ほらほら。う、お、重い」



 わたしのオッパイを、両手で持ち上げる湊ちゃん。

 どうぞ、お好きなようにしてください。

 でも、なんだかとても暑い。

 言うとおり、ちょっとのぼせちゃったのかな。



「ちょっと沙織? 大丈夫!」


「うん? 気持ちいいよ……」


「何言ってんの? ねぇ、沙織……沙織ってば…………」



 そしてわたしは、意識を失った。


 この後、湊ちゃんはなんとかわたしを抱えて、上がったらしい。

 気がついた場所は、湊ちゃんのベットの上で。

 だけど、ちゃんと覚えているよ。

 いつか必ず…………



        ♀



 どう? わたしと湊ちゃんがどれだけ仲良しなのかわかったでしょ。

 どれだけ歴史が深いが証明できたはずよ。

 これで、モブキャラだ、なんて言わせない。

 あとは、これからわたしが活躍するところを、応援してください。

 

 あれ? このお話するとき、なんで緊張しなかったんだろう。

 

  ――――恋愛成就の末に――――

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