EP3 流れ流れて16歳
おすそ分けするものが徐々に溜まっていきます。
時は流れ世界は・・・平和だった。
結局勇者の称号を持つものは、未だ現れていない。
風の噂でコウは、どこかの国の王様が異世界から勇者を呼び出すという話を聞いた。
「サチ。勇者ってどんな人だろうね?異世界から来るんだって言っていた。」
コウはどんどん成長し、みるみる間に身長が高くなり、肩幅も広くなった。もう大人と言っても差し支えない。
寧ろ16歳ですと説明しても逆に疑われるであろう容姿に成長していた。
「それってどうやってくるのかしら?召喚魔法かしら?でも・・・召喚魔法なら、この世界に来たら帰れないわね?」
サチもすっかり丸くなり、母親似の美女になっている。・・・コウとサチは双子である。・・・はず。
ダークブルーの瞳と同じ色の髪。それ以外に全く共通点の無い双子。身長はサチよりコウの方が30センチ以上大きい。
一方サチは母より身長は低く小柄である。それでも160はある。つまりコウはデカいのである。しかもまだ成長期、もっと大きくなることが予想された。
「にしても、いつ見てもコウはおっきぃね。首が痛くなっちゃうよ。」
「こんなに背が高くなるとは思っていなかったんだよ。しかもまだ伸びそうだし・・・。いたた・・・。」
成長痛は日々痛みを増しているが、コウは自分の魔法で痛みを和らげてそれを凌いでいた。
前世のコウも同じ悩みに悩まされていた時があった。しかしその時は手の打ちようがなく、横になっている事しかできなかったが。
「コウ!ほら腕!グッてやって!グッて!」
「またぁ・・・?」
最近のサチのお気に入りはコウの腕にぶら下がる事である。コウは身長に合わせて腕も長く、両腕を曲げ、頭の上で拳を握る。
「ヘーイ!ぶらーん!」
そしてここで母カットイン。
「わーい。ママも~!」
最近幼児退行していないか少し心配になるコウであったが、締めるところは締める母であるので、まぁ何とかなるだろうとのんびり構えていた。
二人を両腕にぶら下げ特に何をするでも無く、朝の時間が過ぎていく。
そして朝食の時。
「母さん。俺冒険者ギルドに行って登録して来ようと思うんだ。母さんばっかりに働かせるわけにもいかないでしょ?」
母は両手を合わせキャーキャー言いながらコウに迫る。
「ついにこの時が来たのね!!コウ旅立つ!!なんてね!!・・・旅に出ちゃうの?・・・ママやだな~。」
留守番を嫌がる子供のように見えてしまうのは、コウの精神年齢が高いせいであろうか。
「母さんも行く?」
つい。ついコウは、買い物にでも行く?と言うノリで母に尋ねてしまった。
「それが良いわね!!ママも旅は久しぶりだから、楽しみだわっ!!」
付いてくるらしい。保護者同伴の冒険者と言うのもどうだろうか・・・?
「さ・・・最初は一人で言ってもいいかな?その位は一人でやらないとカッコ悪いし・・・。」
「コウ!ハイ!!私は?」
実を言うと、母あてに妙な手紙が届いていた。
「あ・・・。さっちゃんはこれ・・・。手紙が来たの。読んでくれるかな?」
ーーーーーーーーーー
召喚令状
以下の者国王陛下命に従い直ちに王城迄出頭せよ
ゴッドハンド サチ
従わない場合は極刑も有り得るため急ぎ来られたし
レーメル王国宰相、ガストン・ヘビーレイン
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「え?なにこれ・・・?行きたくないよぅ・・・。」
サチはポカーンとするコウにしがみ付き、令状を握り締める。
「母さん、これはどうしても行かなきゃいけないの?断ったらやっぱりだめなの?」
「極刑も有り得るって書いてあるから、何をされるのか分からないわね・・・。」
「やだぁ・・・・。」
ぽろぽろと涙を流し、さらにきつくコウにしがみ付くサチにコウは優しく頭を撫でた。
「来いって書いてあるだけだし、行ったらすぐ帰ってくればいいよ。・・・多分。」
そんな事は無いだろうと判ってはいても、気休めぐらい入ってやりたかった。
「コウも行く?一緒に行こうよぉ・・・。」
「「それだ。」」
「皆で行きましょう!じゃぁ引っ越しの準備しなくちゃ!!」
母の行動は速かった。あっという間に旅支度を整え、必要なもの以外は置いて行くスタイルで一時間もしないうちに三人分の旅支度を済ませた。
「王都迄歩いていくの?」
流石のコウでも、徒歩で行くとなると一月は掛かるであろう距離である。
「ママに任せて!魔法でひとっ飛びなんだから~。」
ママは魔法使い。
「ママそんなことが出来るんだ!!凄い!!」
「でしょでしょ~?でも魔法じゃないんだなぁ~。」
じゃじゃ~んと、母がお気に入りのカバンから取り出したのは、どう見てもかばんに入らない大きさの、姿見であった。
「え・・・?何それ?どうやってかばんに入っていたの?」
「え?そっち?鏡に注目してよぅ!!」
「あ。うん。何の鏡なの?」
母は魔力を鏡に注ぎ込むと、鏡は見慣れぬ街並みを映していた。
「わぁ~!ママ!なにこれ!?人がいっぱい居るよ!?」
その鏡に映されていたのは件の王都である。
多くの人々が行き交い、多種多様な人種が見て取れる。
「おぉ~!かぁさん!これは何!?鏡じゃないの!?」
コウとサチは興味が一気に鏡に移ったようで、先ほどまで涙を流していたサチも、目を輝かせていた。
「ふっふ~~ん!!これはねっ!アマツミカガミと言ってね?一度行ったことのある場所ならどこにでも行ける便利な鏡なの―!!!」
そう言って母はいったん鏡をコウに預け、町長に引っ越しのあいさつをしに出ていった。
「母さん行動力あるなぁ。」
コウが一人ぼやいているとサチが急にいなくなった。
「え”っ!」
サチは興味心に負け、鏡に頭を突っ込んでしまったのだ。そして・・・。
ドクン!
(やっと見つけた・・・。)
「なんだっ!?・・・胸が・・・。」
コウは胸のあたりに激しい痛みを覚えうずくまった。
(見つけたっ!!見つけたっ!!!みぃつけたぁああああ!!!)
「あがっ!!あ”あ”ぁあ”あ!!!」
まるで、直接心臓を握られているかのような異物感がコウを襲う。
(貴様のせいで!きさまのせいでぇぇえええ!!!!)
「コウ君!!」
母が戻って来たが、家の扉が開かなくなって・・・。
バァーーーーーーン!!!
いたようだが、母の蹴りで扉が開かれ、コウの周りに光の膜の様なものが現れた。
「ぐぅ・・がぁ・・・ガハッ・・・。」
(おのれぇええええ!!!)
「去りなさい悪霊!!!私のコウ君に手を出したことを悔やみながら!!」
母は鏡を取り出したカバンの中から、二メートルは越えるであろう大きな、それは大きな柱と見紛うメイスを取り出した。
(あ?・・・・ぁ?)
悪霊と思わしき黒い影は、あまりのそのメイスの神々しさ《いあつかん》に、開いた口が塞がらない用だ。
いや、実際に神々に祝福されたアイテムではあるのだが・・・。
「光ょオオオオオオオオオオおおおお!!!」
「ま・・・まてぇーーーーーーーーーーーーーー!!!」
どぉぉおおおおおおおおおおおおおん!!!!!!
町長の悲痛な叫びと共に振り下ろされる巨大メイス。
(わ・・・わたしのふくしゅうは・・・じょうじゅせり・・・・。)
「ふぅ・・・しつこいわね・・・光よぉオオオオオオオオオオ!!!」
母の鬼神の如く加速されたメイスは再び振り下ろされ、悪霊は霧散し消滅した。
「エ・・・エリーースぅうううう!!!」
目の前に広がる巨大なクレーターと共に割れた鏡、そしてコウが転がっていた。
「ハッ!コウ君!!」
慌ててコウに駆け寄る母エリスは、自分でコウにかけたシールド魔法を自らぶち破り、コウにもダメージを与えていたのであった。
「誰がこんなひどい事をっ!!!」
「「母さんだよ!!」「お前だっ!!」
エリスの魔法で息を吹き返したコウと、異変に気付き駆け付けた町長はエリスに突っ込まずにはいられなかった。
「全くお前ときたら・・・自分の家を粉々に叩き潰す奴があるか!!」
エリスは挨拶に行った際、そのうちまた帰ってくるから家は残しておいて欲しいと町長に言っていたのであった。
「あ!母さん鏡の中にサチが!」
コウは今までの流れをエリスに説明した。
「さっちゃんは王都に一人で行ってしまったのね?急いで追いかけないと!」
しかし、エリス水から手を下し、伝説のアイテム、神々の遺産と言われたアマツミカガミは粉々に砕け散っていた。
「あ・・?あれぇ?われちゃってるぅ?」
「「当たり前だろ!!」」
本来ならば、物理的な攻撃では傷一つ付く事の無い神々の遺産だったが、様々な要因が絡み力を失い、エリスが砕いたのだった。
「それよりも母さん、サチの所に行かないと・・・。」
「そうねっ走って行くしか無いわね!!」
「いやっ!馬を使えよ!!」
しかし町長の叫びもむなしく、二人は待ちの外に向かって駆け出して行った。
ーーーーーーーーーー
コウたちの生まれた町、ミラー。そして王都迄は街を北上し、神御乃森を越え、魔王の咢と呼ばれる谷を越えていくのだが・・・。
「王都は南よ!鎮守の森を越えて大草原の向こうにあるの!!」
よその国の王都を目指していた。
「え?母さん。それはバラレストの王都じゃないの?よその国だよ?」
十キロほど走ったところで、エリスは何とか止まってコウの質問に答えた。
「あれぇ?そうだったかしら・・・?」
「ここの国の・・・ダンタレスの王都は北の女神の山の麓でしょ?」
エリスは慌てて、カバンのかから大きな世界地図を取り出し、地面に広げる。
「ごっめーん!逆だったわぁ!!」
エリスは地図が見れない人だった。厳密には覚えたつもりになっているので見ない人だ。
「じゃあ急がないと!」
エリスは地図をカバンにしまい込むと、自分とコウに何やら魔法をかける。
「おおぅ。母さんこれは?」
「ビルドアーーップ!よ!早く走れるわっ!」
そして二人は来た道を引き返し、街を通り過ぎようとしたのだが・・・。
「え・・えりす・・・?何故戻ってきた?っというか何で南から来た!?」
間違えちゃった!っと元気に答えているものの、町長は今盗賊と思われる男の足元に倒れ伏していた。
「私の事は良い!王都に行くんだ!助けを呼んできてくれ!!」
そう叫ぶ町長に怒りを露わにし、頭を蹴とばし町長は意識を失った。
「おーっとぉ!そこを動くなよ?上玉じゃねぇか!俺の相手をさせてやるぜ!!」
スキンヘッドの盗賊はエリスに近づき、臭い息を吹きかけた。
「くっ・・・コウ君気を付けて!こいつは毒を吐くモンスターよ!!とっても臭いわっ!!」
コウは思う。母は目が見えないのだろうかと。口は臭いかもしれないが、一応人間だろうと。
「最近のモンスターは人の言葉をしゃべるのがとっても上手ね!!ママ驚いちゃった!」
「このアマ!!いい加減にしやがれ!!馬鹿にしやがって!!」
コウは思う。そら怒るわと。そして盗賊の振り上げた拳は、エリスを襲うが・・・?
「穢れあるモンスターよ!去れ!!」
盗賊が振り下ろす拳よりも圧倒的な速さで、振り上げられたエリスの拳が盗賊のあごを打ち抜いた。
「あれはっショートアッパー!!」
コウは前世の記憶にあるボクシングの教本の知識を思い出した。腕の回転力を十二分に伝えたエリスの拳は、テレビで見たどのプロボクサーよりも美しかった。
「ハッ。それよりも町は大丈夫なのか?」
コウは辺りを見回してみるが、このエリスに意識を刈り取られた盗賊以外は、近くには居ないようだった。
エリスは倒れた町長に回復魔法をかけ、町長は意識を取り戻した。
「う・・・うぅ・・・っ子・・子供たちが・・・。」
エリスはそれを聞いた途端、抱き上げていた町長を取り落とし、町長はしたたかに石のタイルの床に後頭部を打ち付けた。
「子供のモンスターねっ!!コウ君!行きましょう!!」
すっくと立ちあがり、どこかへ走り去ろうとするエリスを何とか摑むコウだったが・・・。
「あーーーーー!!!かぁさん!かぁさん!!まって!まってーーーーー!!」
ズザザザザザザーーーーーー
砂煙を上げて引き摺られるコウは、母を止められずこのまま一体どこに行くのだろうと、不安がぬぐえない。
しかしコウが腰にぶら下がっている事など、微塵も抵抗として気にしないエリスは、そのまま町の外に出た。
「モンスターはどこ!?町をすくわなきゃ!!」
ようやく止まったエリス。しかし結局辿り着いたのは先ほど戻ってきた町の南で入り口だった。
「かぁさん落ち着いて。ね?ここは町の外。分かる?」
知らない他人が見れば、凄く失礼な話をしているのは分かっているが、コウはそう聞かずにはいられなかった。
そして引きずられる間に、コウは体中をあっちこっちぶつけ、血まみれになっていた。エリスの走るスピードは驚異的だった。
「ふーっ!ふっー!」
「どうどう・・・どうどう・・・。」
落ち着いたエリスはコウの有様に気付き、慌てて回復魔法を使う。
「ごめんねコウ君!!母さんったらあわてんぼうで!!」
あわてんぼう・・・ドジっ子・・・そんなものは可愛いものだと、コウは思った。
「母さん・・・。俺頑張るから。女神の使徒だからさ。俺に任せてくれない?」
コウは思う。このままエリスに主導権を任せたままだと、いずれ酷い目にあいそうだと。
コウは前世の経験から、自らの危険に対して敏感だった。しかし同時に家族に対しての信頼もある。
「うん!私はプリーストだし!、闘いは得意じゃないから・・・。」
え・・・?
「そ・・そう?じゃぁとりあえず町長さんの家に行って見よう?あそこは広いから、きっと盗賊も居るよ。」
「わかった!」
そしてエリスはコウの手を握り、街の外に走り出す。
「まった!まった!!逆!!!逆!!!!」
今度はコウの肩が外れる。使徒としての力がこんな風に役に立つとは・・・。あまり痛くないのが救いだった。
「ご・・・ごめんなさいー。」
一応反省しているらしく。うなだれるエリスの手を引いて町長の家の敷地に入った。
家の前には町長が大事に育てているニンジンの畑があったが、無残にも盗賊たちに踏み荒らされてしまったようだった。
町長の家の中から大きな声が聞こえる。二人は扉の両脇に張り付き、耳を澄ました。
「ははっ!この町は良い町だな!!食べ物もある!女も上玉が多い!!きっと高く売れるぜ!!」
「おらっ!もっと腰を振れ!!!」
「飯はまだか!!さっさとださねーと首跳ねちまうぞ!!」
家の中には各部屋に分かれ、数多くの盗賊がいる様だった。
町長の家は広い。7LDKといった所だろうか。平屋だが面積が広く、声だけでは全員の様子を確認できない。
しかし、エリスをほったらかしにして家を一周して確認に行くともっと酷いことになる様な気がするので、それも出来ない。
なにか・・・。何かないか・・・?コウは自分のステータスを確認する。あの女神にあった日からもう八年も経つ。
その間もサチと二人、ずっと練習・・・と言うより訓練をしていた。冒険者になる為の訓練だ。
ーーーーー
コウ 十六歳 超人種<up ローミエルの敬虔な使徒<up
状態 健康
スキル ローミエルの敬虔な使徒<up
幸運分割
幸運吸収
神御格闘術<up
真・格闘術<new
気纏術<new
鋼鉄の肺<new
鋼鉄の心臓<new
中級四大魔法(光)<up
中級四大魔法(闇)<up
ローミエルの寵愛
シスターの寵愛
新しき神々の呪い<new
称号
ローミエルの敬虔な使徒
古き神々の長たる女神ローミエルの眷属たる資格を得た敬虔なる信者に与えられる称号
この称号を持つものは、封印されし神殿に足を踏み入れることが許される
この称号を持つものは、女神ローミエルの眷属の上に立つことが許される
この称号を持つものは、解教を許されない
この称号を持つものは、古き神々に愛される権利を持つ
スキル
ローミエルの敬虔な使徒
ローミエルの使徒としてふさわしい能力を手に入れることが出来るようになる
魔法の習得に大きなアドバンテージを得る
肉体の成長に大きなアドバンテージを得る
女神ローミエルの教えを普及し信者を増やすことが許される
精剛
下半身の能力が飛躍的に成長する(解禁!)
神御格闘術
神の奇跡を用いた格闘術
神の奇跡を拳に纏わせることが許される。
奇跡の力を体に宿すことで一時的に女神ローミエルの力を宿すことが出来る。効果時間は30秒。
神々の摂理に叛きし者達を摂理の輪に強制的に戻す権限が与えられる。又摂理の輪の中の存在を強制的に外へと排除出来る。
神の奇跡の習得に大きなアドバンテージを得る
真・格闘術
肉体を用いた戦闘において超絶に大きなアドバンテージを得る
拳によるダメージが十倍になる
脚によるダメージが十五倍になる
素手状態の時回避補正90%アップ
気纏術
命の根源たる生命力を身を守る物理的なオーラに変え身を守ることが出来る。
鋼鉄の肺
心肺機能に大きな耐性が得られる
疲労耐性(大)
呼吸する事に寄って体内に入れる空気を浄化することが出来る
鋼鉄の心臓
精神に対する影響を大きく軽減する。
精神耐性(大)
中級四大魔法(光)
光の四大魔法全ての大きな適性を持つことが許される
地魔法の習得及び行使に非常に大きなアドバンテージを得る
水魔法の習得及び行使に非常に大きなアドバンテージを得る
火魔法の習得及び行使に非常に大きなアドバンテージを得る
風魔法の習得及び行使に非常に大きなアドバンテージを得る
中級四大魔法(闇)
闇の四大魔法全ての大きな適性を持つことが許される
毒魔法の習得及び行使に非常に大きなアドバンテージを得る
氷魔法の習得及び行使に非常に大きなアドバンテージを得る
炎魔法の習得及び行使に非常に大きなアドバンテージを得る
嵐魔法の習得及び行使に非常に大きなアドバンテージを得る
シスターの寵愛
ローミエル教団のシスターたちに愛されることが許される
教団のシスターを娶ることが許される
妻となったシスターは更なる奇跡の力を得る
教団のシスターに愛を与える事で一時的な強さを与えることが出来る
異教のシスターに愛を与える事で改教させ更なる奇跡を得る事を許すことが許可される
全てのシスターたちの上に立つことが許される
(解・禁!)
新しき神々の呪い
ありとあらゆる場面で不幸が訪れる
お約束が必ず訪れる
求めるものが手に入らない
避けたい事象が避けられない
お前のすべてを許さない
ーーーーー
・・・これは・・・。さっきの悪霊のせいだろうか?どうやらコウは呪われてしまったようだ。
しかし今はそれどころではない。
俺はまだ十六歳なんだが・・・。と思うコウであったが、この世界では既に成人男性として認識される年齢である。
「こう・・・なんと言うか、今の状況を打開する力があるんだが、情報量が多すぎてどれを選ぶべきか迷う・・・。」
凡そ普通の人間にはありえない能力ではあるが、一番良い解決方法がまだ思いつかない。
ガッターーーーン
「えっ?」
「何の音だ!!表を見てこい!!」
「誰かいるぞ!!男は殺せ!!」
向かいに居るエリスを見たコウは頭を抱えた。
「ごっめーん!メイスこかしちゃった!」
今の今まで持っていなかったじゃないか・・・。とコウは思ったが、こうなってしまっては仕方がない。
町長の家からあふれ出してくる盗賊たち。
出てきた端からエリスのメイスにミンチにされる盗賊たち。
そして盗賊は居なくなった。
「・・・えぇ・・・?」
エリスは何故か強い。それはこの数年で痛いほど身に染みていたことだった。
しかしここまでのものだとは思っていなかったコウは、呆然と挽肉になった盗賊たちを眺めていた。
「かぁ・・・さん?」
呆けたままの顔でエリスに目をやると、一仕事終えた母の笑顔がそこにはあった。
「お掃除は大変ね~!ママ頑張ったわ~!」
隠れた意味とは・・・。
しかしいつまでもこの肉塊を放置しておくわけにもいかないので、コウは魔法で焼却した。
「ファイアープール。」
指定した範囲に炎を閉じ込める事で、小さな範囲に強力な炎を持続する魔法である。意図して解除しなければ、丸一日は燃えたままだろう。
そうして灰にした盗賊を風の魔法で散らし、二人は町長の家に踏み込んだ。
バァーーーーーーン!!
「皆大丈夫!!?」
「ちょ・・・。」
エリスは何故か敵の居ないはずの鍵の開いた扉を、蹴破って室内に転がり出た。
なぜ・・・。
「かぁ・・・さん?・・え?」
コウは、自分ではわからないが、もしかするとまだ敵がいるのかもしれないと、気合を入れなおして町長の家に入・・・ろうとしたが・・・。
「コウ君だめっ!!」
どすっ
コウは玄関に入る前に、エリスの強力なボディーブローを受け、その場にくの字に倒れた。
「ぐふっ・・・。か・・・かあさん・・・?」
そして家の中からは女性たちの泣き叫ぶ声と、エリスの魔法を唱える声が聞こえる。
そして腹を抱えてコウがうずくまっている間に、教会の方から別の盗賊が走ってくる。
「う・・・おえっ・・・。まだ居たのか・・・。」
鳩尾にクリティカルヒットしたエリスの拳のダメージが抜けきらないので、仕方なく回復魔法で自分を回復する。
「おいお前!ここで何してんだ!!」
それはこっちのセリフだろう。そう思うコウであったが、盗賊はそのままの勢いで殴りかかってきた。
しかしコウはスキルの補正もあり、攻撃にはそうそう当たらない・・・ハズだったが・・・。
コウは足元に何故か転がっていた、母のメイスに躓き盗賊の拳に自らの顔面を直撃させた。
「ぐああああああ・・・・て・・・手がぁ!!」
気纏術、物理的な防御力を持つオーラを常に纏っている事に寄って、コウは無傷だったがコウの心は大きな傷を負っていた・・。
(何でこんな所に置きっぱなしに・・・!?)
「この野郎!!!ぶっ殺してやる!!!」
コウは何とか体勢を立て直し、メイスの転がっている玄関先から少し離れた所に陣取った。
盗賊は腰に下げたナイフを抜き、ひらひらと遊ぶようにナイフをふらつかせている。
「なぜこんな事を・・・なんて聞いて答えてくれるような奴じゃないよな・・?」
コウは身に着けていた皮の手甲にオーラを纏い、盗賊を迎え撃つ・・・?
「コウ君!!あっ!」
盗賊がナイフを持って襲い掛かってくる瞬間に合わせた様に、エリスが玄関から飛び出し、メイスを踏んでスッ転んだ。
勢いのついたままスッ転んだエリスは、そのまま盗賊の背に当たり、盗賊の踏み込み速度を変化させた。
迎え撃つ形のコウは、カウンターを狙っていたのだが、突然勢いを増した盗賊のナイフを躱すことが出来ず、尚且つ・・・。
顔面から突っ込んできた盗賊と熱烈な口づけを交わすことになった。
(イヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!)
コウの回比率は補正値90%に加え、鍛え上げた身体能力も相まって、大抵の相手であれば、躱せない攻撃は無かった・・・ハズだった。
しかし、エリスの力強いプッシュにより、勢いを増した盗賊を躱すことが出来なかった。
「コウ君大丈夫!?ケガは無い!?」
(心に深い傷を・・・・。)
哀愁漂う仰向けに倒れたコウは、その体の上に盗賊が圧し掛かられ、心で泣いていた。犯された・・・と。
(何だって言うんだ急に・・・・。俺が何をした・・・・?)
それが呪いによるものであるという事は、今はまだコウには分からなかった。
徐々に母のポンコツっぷりを増していくっ。