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入学式と生徒会 その7









「聞いたわよ幸輝!!生徒会にはいるんですって?」




「大したもんだ、父さんは誇らしいぞ!!」





リビングに入って両親の言葉を聞いた瞬間、生徒会長の目的を理解した。




なるほど、外堀から埋めに来たわけだ。


しかし何で俺の家が分かったんだ、この人





「おいおい…そんな怖い顔で見ないでくれよ、明日葉君。僕は君にコレを届けに来ただけさ。」




と言いながら俺の手を開かせるとその上に財布を乗せて来た。


そう、()()()()を。





「なっ?」



「生徒会室に落ちていたんだよ…見つけた時には君はもう下校してしまっていたからね。千駄ヶ谷さんに住所を聞いて届けに来たんだよ。」





なんて白々しい!

そんなの絶対ウソに決まってる。





大方、俺が保健室に運ばれた時にカバンから財布を抜き取ったな。




訓練室で俺が生徒会に入る事に対して抵抗していたから、後で再交渉する機会を作れるように。






だが事情を知らないウチの親は





「まぁ!今時こんな良い子いないわ!!」




「なんて出来た娘さんなんだ!」





と感動していた。

すると会長は両親に向かって微笑みながら




「いえ……当然の事をしたまでです。困っている人は放って置けないタイプなんです。それに明日葉君は大切な生徒会のメンバーですから」





と爽やかさ全開で嘘をつき始めた。





「ちょっと!俺は生徒会に入るなんて一言も言っていないだろうが!!」





声を大にして生徒会長に言ったが、なぜかお袋に叩かれた。



「あんた会長さんに失礼な事を言うんじゃないよ」



「会長さん、お気を悪くしないでくださいね」




マズイ、ウチの親父に至っては会長に媚を売り始めた。

俺の味方は誰もしてくれない。





「気にしないでください……突然ご自宅に訪問してご迷惑をかけているのは僕の方ですから」



「迷惑だなんてそんな!!何かあったら遠慮なく言ってくれて良いんですよ?」




お袋のその言葉を聞いた瞬間、会長はニヤリと笑って





「じゃあ…少しの時間でいいので、明日葉君と2人きりでお話しさせてくれませんか?」
















――――――――――――――――――――――――










「後でお茶を入れてくるから、ゆっくりしていってちょうだいね?」




「いいから早く出て行けってば!」


俺はお袋にお茶もお菓子も入らないと伝えると、乱暴に部屋の扉を閉めた。


2人きりで話をしたい……




その要望に答えて俺の部屋に連れて来た。




部屋の奥に勉強机があり、その隣に本棚が置いてある。

そして窓際にはベッドがあるという至って普通の部屋だ。






俺の部屋に入った会長はは迷う事なく窓際のベッドに腰掛けて、微笑みながら俺に言った。




「いいご両親じゃないか」



「別に……普通ですよ。そんな事より何か話があって来たんじゃないんですか?」



会長は足を組みながら「もちろん生徒会の事さ」と



やっぱり生徒会の話か……




思わず俯いてしまった。


俺は別に生徒会に入りたくない訳じゃない。


ただ、俺には自信がない。




春臣の様に優れた血統とオンリーワンな魔法が使える訳でもないし、夜々木みたいに大物でもない。



そんな俺が生徒会に………魔法使い達の代表になれるのだろうか?




「自信が無いのかい?」



「……………はい…」




「やっぱりね」と会長は笑い飛ばした。


そして足を組み直しながら彼女は俺に向かって話を続けた




「自分に自信が無いから生徒会に入らない………なんてつまらない事を言うなよ。」



「でも、俺には何も無い…」







「いいか!よく聞けよ?」





会長がいきなり声量をあげたので、俺は反射的に顔を上げた。






会長は俺の目をただ見つめていた。


俺はその澄んだ瞳から目をそらす事が出来なかった。







「生徒会は君にとってパワーでありチャンスなんだよ、君があと一歩踏み出すだけでその両方が手に入る。」





「そうすれば君はきっと自分に自信が持てる。

自分には何も無いと嘆く日も無くなるだろう。」





生徒会に入る事が……自分を変えるチャンス?


生徒会に入る事が……俺にとっての力になる?



俺は変われるのか……?





夜々木や春臣だけじゃない……俺は今まで色々な人の事を羨んできた。




嫉妬してきたって言ってもいいかもしれない。




春臣の様に裕福な家庭、夜々木の様な莫大なチカラ………何よりも魔法という煩わしい枷の無い一般人






小さい頃の夢はスポーツマンになる事だった。

種目は何でもよくって、ただ体を動かす事が好きだった。





でも魔法なんかが使えるせいで種目を決める前に諦めざる得なかった。







ならば、魔法使いの中で特別な存在になろうと……



だから魔獣を積極的に退治したし、困ってるは人は見逃さなかった。


隠れて魔法を操る練習もした。






けどいくら魔獣を殺しても、困ってる人間を助けても………魔法が使えるというだけで一般人からは差別された。





どれだけ魔法を操る努力をしても春臣の糸魔法や、夜々木の魔力には到底及ばず………俺は魔法使いの中でも特別にはなれなかった。



でも……



でも…………




「こんな俺でも……生徒会に入れば変われますか?」




俺の言葉を聞いた会長は満面の笑みを浮かべ、




「ああ、保障しよう。きっと劇的に変わるよ」





「さぁ…コレをどうぞ」と、会長は俺に何かを渡してきた。



それは腕章だった。


金と黒を基調としたデザインで「光源高校生徒会」と書いてあり、その下には大きく「庶務」と書いてあった。




「役職は適当に決めたよ。ちなみに久我山君は会計で千駄ヶ谷さんは書記だ」





何と言えばいいのかわからなかった。

正直、まだ迷っている。





「もし生徒会に入るなら……明日、学校に来るときにつけてくるといい」




会長はそれだけ言うと俺の部屋から出て行った。

途中で俺の母とすれ違い、適当に会釈をしてそのまま家を出てしまった。












どうする?





俺はどうしたい?
















――――――――――――――――――――――――















「本当に立派な学校だよな……築100年以上とは思えねーな」




「昨日クラスで聞いた話によると一昨年に校舎を改修したらしいよ」



「へー、そうなんだー物知りだねぇ」



「いや、僕たち同じクラスだよね」




俺達は他愛のない会話をしていた。


俺が家を出て、学生寮に春臣と夜々木を迎えに行った。




そして昨日と変わらず学校に向かい、昨日と変わらず校門の前に立ち止まって雑談していた。





が、昨日と違う事が1つだけある。



俺達の近くを通る生徒はみんな、一つの例外もなく俺達3人を見ている。



正確には少し違うか………




俺達の事を見てるわけではない。




彼等が見ているのは














俺達3人が腕に付けている腕章だ。









――――――――――――――――――――――――















俺達の事を見ているのは道行く生徒だけではなかった。





校舎の窓から校門にいる俺達を見ている人がいた。






「ふっ……………チョロいもんだ」






俺達を見ていた人は……生徒会長の歪花 雫はそれだけ呟くと廊下の奥に消えて行った。






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