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入学式と生徒会 その5








「さぁ…遠慮せずに入るといい。」



保健室から出てしばらく歩くと会長が1つの教室の前で止まってそう言った。

ここが生徒会室…何というか、



「思っていたより………普通だな。」


「君は一体何を想像していたんだ?」


「魔王城。」




冗談で言ったつもりだったが、会長の方からすごい圧力を感じる。

それに気付かないフリをして生徒会室の扉を開けるとそこで













夜々木と春臣が副会長と楽しく談笑していた。







いや、ちょっと待てよ





「打ち解けるの早すぎるだろ!!」



お前らさっき副会長にボコボコにされてただろ!

何でそんなに仲良くなってるんだよ!



俺が生徒会室に来た事に気が付いた3人は、三者三様の反応を見せた。


「お!…ようやく来たな」


「幸輝君!体は大丈夫かい?」


「コーひゃん、おかひたへるー?」


春臣に「大丈夫、ちゃんと治療してもらった。」と返事を返して、夜々木が俺に差し出して来たお菓子を受け取ろうとすると


「ありがとう、頂くよ」


俺の後に部屋に入った会長が横取りして来た。

彼女の存在に気が付いた夜々木と春臣の二人は、険しい表情を見せ、






「出たわね!この悪魔!!ゴミ屑!!!売女!!!!」


「失望しましたよ会長さん!名だたる名家の歪花も落ちぶれたものですね!!」






え?何でこの2人は会長に対してこんなに当たりが強いんだよ、まだなにも話してないだろ。




「え………何で僕こんなディスられてるの?」


全く同感だ。 確かにろくな人ではないけども。




「この×××!あなたなんて××して×××××してやる!!」


「いや…もうやめろってば夜々木。」



今まで聞いた事ない程の暴言だよ!



俺が夜々木をなだめていると、笑いを必死にこらえている副会長が視界に入った。

会長もそれに気が付いた様で、



「おいコラ副会長、お前はそこの2人になにを吹き込んだ。」


「別に………ただ、お前たちがヒドイ目にあったのは全部、会長のせいって事にした。」


「なるほどな…そういう事か。」



さっき俺から横取りしたお菓子を食べながら納得した様に呟いた。



会長がお菓子を飲み込んだのを見て、俺はずっと気になっていた事を聞いた。



「会長……何で俺達にあんなことしたんですか?説明してください。」


「そうだな、だけどその前に言っとくけど………お前らが当たり前の様に食ってるそのお菓子、来客用の物だからな。」






いや、あんたも食ってただろ。











――――――――――――――――――――――――――








「俺達を試していた……ですか?」


「君達というよりは千駄ヶ谷さんを試そうとしていたんだけどね……結果的に、久我山君と君も試した事になったね。」



生徒会室の5つある机と椅子のうち、入り口から見て1番奥の席……たぶんそこが生徒会長の席だろう……に座って話を続けた。



「入学式後の魔力測定で、千駄ヶ谷さんが測定器をぶっ壊したと聞いてね…それが本当なら大した魔力量だ、だから生徒会に勧誘しようとしてんだよ。」


「そう言う事だな、3人にはヒドイ事をした。本当にすまない。」



会長の説明に乗っかる様にして副会長が謝罪する。

そして



「試した結果3人とも生徒会に入会する事になったわけだ。おめでとう、ようこそ我が生徒会に!」




「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」





開き直って死亡宣告してくる会長に、春臣と夜々木が慌てて反論した。



「何でもう生徒会に入った事になってるんですか⁈」


「それに生徒会に入った所で、私達に何にも得しないじゃないですか!」



だが会長も夜々木の反論に関しては予想してあったのか、



「そんな事はないさ。生徒会に入ると様々な特典があるぜ?」


「特典…ですか?」



そういえば坂本も役員になると超特別待遇がどうのって言っていた気がする。



「まず、学費に寮費と食堂での飲食費、後は授業の免除だ。」


「授業の免除⁉︎」


「勉強しなくても良いんですか?」



マズイ、いきなり夜々木が興味を持ったぞ。

こいつは勉強が好きじゃないし、授業だけじゃなくて学費に寮費も免除ときた。


授業の免除に思っていたより食いついた事を気にした会長は、ただし条件もある…と付け加える。



「授業の免除に関しては定期テストで一定の成績を出さないと許可されないけどね。」


「がびーん‼︎」





夜々木、リアクションが古いな…



「後は個人持ちの教室が与えられる…けどコレは各委員長クラスも一緒だけどね、それと進路選択の優先権だとかいろいろだ。」



端折ったな…

夜々木はだいぶ釣られたようだが、春臣はまだ納得していないようだ。

いい事ばかりあげてている会長に対して副会長が



「もちろんめんどくさい事もあるぜ。養護施設の視察や魔法研究の手伝い、治験なんてのもある。」


「後ろ2つは強制じゃないだろう。義務としてあるのは学園持ちの施設を視察する事だけだよ。」



養護施設…と言う単語を聞いた瞬間、春臣が少し妙な反応をした。



会長が生徒会に入るメリットの続きを話そうとしていたが



「その養護施設っていうのは何なんですか?」



春臣が唐突に質問を投げかけた。

会長と副会長も不思議そうな顔をしながら、質問に答えた。




「世の中には君達とは違って、親に恵まれなかった子供達がいるんだよ。魔法が使えるからって理由で捨てられたり、制御しきれずに他人に迷惑をかけるからって厄介払いされたりね。」


「そんな子供を魔力制御が安定する小学校高学年まで保護してんだよ。」



そんな施設があるのか……同じ魔法が使える人間にはとして全く知らなかった。


ちょっと暗い話になってしまったせいで微妙な雰囲気だ。

けど春臣は質問を続けた



「役員の人が施設に行ってナニをするんですか。」


「何って……魔法の危険性に教えたり、魔力制御の手ほどきをしたりかな?」




「僕決めました。生徒会に入ります」








「「「「え?」」」」





春臣を除くメンバー全員の声が重なった。



さすがの会長も戸惑っていたが、すぐに気持ちを切り替えて春臣を歓迎した。



それに合わせるようにして夜々木も



「はい!!私も生徒会に入りまーす!」


などと言うものだから、会長も



「おお……2人とも、よろしく頼むぜ?」


「これで4人か……定員は後1人だぜ?どうすんだよ、明日葉?」



俺…………?


俺が生徒会に入る?

想像が出来ない……学校の、そしてこの県の魔法使い達の代表者?



「俺は…俺は………」



言い淀んでいると副会長が優しい声音で



「焦って決める必要はねえーよ……何かを決めるのは迷うもんだからな」




「副会長……」




「迷って、選んで、考えて……そうやって決めた選択には胸を張れよ。後悔してもいいから、選んだ事を誇らしく思え。」





「お前はそうやって俺に一撃入れたんだからな?」と
















この人……………絶対良い人。

第一印象と今の印象が180度変わってきた。


俺が副会長の言葉に胸をうたれていると……会長が



「要するに保留だろ……女々しいな、男らしくスパッと決めろよ」



「空気読んでくださいよ……」



思わず声に出たが、会長達はそんな事は気にしないといった風で、



「まぁ……有望な新入生を2人確保できたんだ、上々の結果と言って良いだろうな」



「確かにな……しかも夜々木みてーなバインバインの女なんて中々いねぇぜ。何カップあるんだ?」




副会長……やっぱりアンタ黙ってた方がいいかもしれない


だが夜々木も自分の体を褒められるのさ満更でもないようで………てか下の名前呼びとか、短時間に距離詰め過ぎだろ。




「キャー!副会長のえっち〜……でも知りたい?こーちゃんも知りたい?もう子供の頃とは違うって知りたい⁈」





何で俺に振るんだよ、しかもとんでもない魔球を投げてきたな。


夜々木が自慢の巨峰をこれ見よがしに揺さぶっていると、

会長が自分の()()を撫でつつ、最高に不機嫌な顔をしながら夜々木に向かって言った。



「でもそんなにデカイと老けた時に垂れるぜ夜々木?」




恐らく軽い冗談で言ったのだろう……たぶん。

確かに会長の胸は小さい。というより無い。



冗談3割、妬み7割と言ったところだろうか?

だがそれに対する夜々木のリアクションは







「は?何でそんな事を言うんですか?ていうか何で下の名前呼びなんですか?馴れ馴れしくないですか?」






ご覧の通りだ。

夜々木は思い込みが強いタイプで、仲のいい相手だと冗談も通じるが、知り合って日が浅い会長のような人の冗談は真に受けてしまう。

それといきなりだか夜々木の嫌いな言葉は「老化」と「垂れる」だ。




地雷を両足で踏み抜いてしまった会長は引きつった顔をして、




「…………すまない……距離感を間違えたようだ」


と、舌打ちをする夜々木に謝罪をしていると今度は


「会長!!!」


「な…なんだい?久我山君。」



急に元気を出してきた春臣に会長が戸惑っていると



「さっき話にも上がった養護施設っていうのはどこにあるんですか?僕行ってきます!」



「あ、ああ…この学校の裏にある……って今からか?そんなに頻繁に行かなくても四半期に一度くらいで」





会長の言葉を最後まで聞く事はなかった。

それよりも早く食い気味に春臣が続けたからだ




「女子児童は何名程いるんですか?」


「………確か50人くらいだけど」


「なるほど……わかりました。後は僕に任せてください…………今日中に名前と誕生日と好きなお菓子を頭に叩き込んできますから!!!」





会長は訳がわからないって顔をしている。


だが副会長は………俺と夜々木が、春臣の事を養豚所の豚を見る様な目で見ている事に気が付き、何かを察した様で





「おい久我山!施設には野郎もいるから、そっちの世話も頼むぜ?」




なるほど……さすが副会長…………春臣の性癖を見破ったみたいだ。



しかし春臣は不敵な笑みを浮かべると






「任せてください!10歳までならみんな女の子ですからね!!」









「なん……だと…どういう事だ?……待て春臣!」




静止する副会長を無視して春臣は部屋から出て行った。

10歳までなら男女一緒って何だよ……ナメック星人かよ



くだらない事を考えてると、無言で春臣の様子を見ていた会長が



「なあ……明日葉…ちょっと廊下に出ろ」



「え?」



「いいから来い」



と言って俺を生徒会室の外に連れ出した。



廊下に出てしばらく歩くと、会長は開け放たれていた廊下の窓から顔を出して外の景色を眺め始めた。


綺麗な夕焼けだった。

入学式は午前中に終わったのにもう夕方になっていた。


会長は夕日を見ながら大きなため息をつくと




「君の友達は……なんていうか…………キャラが濃いな」




「はい」







「君も大変だっただろう?」







「…はい」










「生徒会に入ってくれるよな?」







「………嫌です…」









そんな目で見ないでくださいよ!



そんな疲れ切った目でコッチを見るな!!!










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