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先輩の家に来てしまった。後が怖いけど先輩はとっくに違和感に気づいていたみたいだし、自分でも誰かに助けて欲しいという気持ちがあったから、つい先輩のあとをついて行ってしまったのだ。


「まあ、上がれよ」

「…」


居間に通された私は、これから詰問されるような気持ちでいた。いつもお世話になってた先輩に隠し事して、部員みんなに迷惑かけて…私、怒られるんだろうな。


「あ、あの…ごめ…」

「――単刀直入に訊くけど、誰にやられた?」


膝の上に乗せた拳をぎゅっと握る。やっぱり、言えない。ヒロくんとの約束を破るだなんて…怖い。


「脱ぎな。あ、もちろん恥ずかしくならない程度でいいから」

「!?」

(それ)だけじゃないんだろ」

「………っ」


私は先輩に言われた通りに、まずストールを外して、後ろ向いてシャツをまくり、背中を見せた。多分背中が一番ひどく傷つけられているはずだ。


「…おま…」


しばしの間。そりゃあここまで傷ついた体を見て絶句しない人はいないだろう。昨日されたばかりの傷は深く、自分で見ていてもとても痛々しい。


「…ヒロだろ?」

「!なんで…」

「そんだけ派手にやられてるんだから、いつも一緒にいるあいつが気付いてないなんてありえないだろ。なんかいつも見てるし」


私は大学でも家でも他の誰かと話をしているときもじっとこっちを見ていたヒロくんを思い浮かべる。今に怪しげなことをしでかさないだろうか、自分から離れていくようなことがないだろうか…そんな目で私を見つけるヒロくんは怖いし、信用されてないのが丸わかりで、嫌悪感を抱くこともあった。


「長いこと付き合ってんだから、ヤることもヤるだろ?」

「え"っ」


顔がかっと熱くなる。いきなり何を言い出すんだこの人は。これって最初からセクハラ目的なのでは…?まあ、心配してくれてるのはホントみたいだけど。


「…ちょっと待ってろ。妹に手当てさせるから」


そう言って、先輩は別の部屋に行ってしまった。

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