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今日の分の撮影はなんとか終了、全員の衣装も回収したし、あとは帰るだけだ。ただ、なんだか傷をかばうように控えめに動いたり、衣装が首元が隠れたものの方が役に合うとやけに主張したりしていた羽七子が気になって、俺は彼女が座っている机に寄った。病み上がりで相当消耗しただろうことが背中からも伝わってくるのに、頬杖をついて広げた台本を眺めている。ほんと勤勉な子だな…と感心しつつ彼女の隣に腰掛けた。
「…ん?」
よく見ると居眠りしているみたいで、俺には気づいていないようだ。羽七子の首に少しずれながらかかっているストールのあたりに、ロープ?か何か紐状のもので縛られた痕があるのを見つけた。
「…おい、はな。羽七子」
「…?…せんぱ…」
「首、どうした?」
俺は羽七子の首に手を伸ばし、ストールをずり下げた。はらりと取れたその下に、首をぐるっと数周している痕がくっきりと残されていた。
「…!!」
「なんだその痕」
「あ…これ…は…」
まどろみから一気に目覚め、秘密がばれてしまった子供のように震える羽七子を見て、思った。こいつは、俺やサークル仲間だけじゃなく、ヒロ以外の全ての人に言えないような秘密を隠し持っている。
「…羽七子、ちょっと俺んち来い」
「!?何言ってんですか、私にはヒロくんが…」
「うち実家だから妹いるんだ。やましいことするわけじゃねぇから。サークルの責任者として聞いておきたいことがあるんだ、お前特にヒロインだし」
「ええ…喫茶店とかじゃダメですか」
「あんま他人には聞かれたくないんだよ」
チラッと背後を伺うと、ヒロがものすごい形相でこちらを睨みつけていた。やっぱりこの二人には何かある。俺はすぐに羽七子の方に目線を向けて、
「じゃあそういうことで!」
と笑って言い放ち、その場から逃げた。後輩とはいえヒロの敵意むき出し感がマジ怖い。羽七子はしぶしぶながらもあとをついてきてくれた。
…それにしても、なんでこんな目の前でよその男に誘われてるのに止めないんだろう。
(NTRRドスケベ展開は書きたく)ないです