3
「…痛い…」
私はまだベッドの上から動けないままでいた。寒い…隣にヒロくんがいないからか。ていうか最近毎日裸で寝てるし、風邪なんて口実が本当になりそうだな。こうやって痛みで目が覚める時は、自分の家のはずなのにいつも空気がよそよそしいように感じる。飼い猫のレンがニャーと鳴いてこちらに寄ってくる。
「あーごめんねレン。ごはんまだだよね」
撫でてやると、彼女はゴロゴロいいながら気持ちよさそうに目をつむった。この子が唯一の癒し。私はなんとか起き上がって、キャットフードのある隣室へ向かう。
「あれ」
まだ開けていなかったはずの買ったばかりのフードの袋が破られていた。
「レン、ヒロくんにごはんもらったの?」
「にゃ」
そのとおりというように尻尾を振っている。よく見るとヒゲや口元にフードがくっついていた。毛並みが黒いのでわかりやすい。
「そっかあ…」
私は膝に乗っかろうとするレンを押しやって、とりあえずシャワーを浴びることにした。昨日はいつもより激しかった…服を脱ぐために腕を動かすのも苦痛な程だった。痛む傷をいたわりながら風呂場に足を踏み入れる。
「ううー。しみるー」
鋭かったり鈍かったり、私の体はうるさく悲鳴をあげた。温かい湯船は体温を連想させる。でも、こうして1人であたたまる方がヒロくんに抱かれるより安心感があるのは…なんなんだろう。ヒロくんに人間の片鱗を見つけるたびに安心した。今日のレンの餌用意してくれたこととか。サークルでは後輩に慕われているし先輩にも信頼されてる…のかな。
余計なことをこれ以上考えるのをやめた。『大丈夫、私はまだ耐えられる』今日もまた、そう暗示をかける。鬱屈とした気持ちを洗い流すようにシャワーを頭から浴びた。
ふと、鏡に映る自分の姿が目に入る。首にも腕にもロープの跡、肋骨や背中には切り傷やミミズ腫れ、顔には痣やかすり傷、そして目から出てくる涙…。
「…そろそろ、やばいかな?」
前回短かったから連続でのせる