15
「…う…」
私は長い眠りから覚めた。…実際、そこまで長くはなかったようだが、記憶がとても遠い。それでも徐々にさっきまであったこと、ヒロくんのことを思い出して。そういえば、ヒロくんが隣にいない。ベッドにいない。シーツに飛んでる血は私の…?いや、今日は血の出る事はしなかったはず。とにかく、顔を横に向けて、名前を呼ぶ。
「ひろく…」
目を疑った。
シーツにまでハネるほど激しく血飛沫の舞う床。それと絡み合う、傷んだ焦茶の髪の毛。細い指には見慣れたカッター、今まで私を傷つけていたカッターが、主の手に握られていた。血にまみれて。
「―――――――――え?」
信じられなかった。彼は動いていない。さっきまで私を憎々しげに見下ろしながら、スタンガンを振りかざしていた悪魔の面影はまるでなく、血の気と生気を失った肌の色をして、それは横たわっている。
「どうし…て?」
駆け寄って行きたかったが、私はヒロくんに掛けられた足枷のせいで腕を伸ばすことしかできなかった。腕の方だけ、どうしてかわからないけど外されている。…悪魔のヒロくんより、ヒロくんが死んでしまう方が、よっぽど嫌だ。嫌…どうして自殺なんか…嫌だ、嫌だ、嫌だっ…!
「ひろくんっ…ヒロくん、ひろくん!!」