グリムさんとデート その4
--グリム--
フリージアのかわいさと仕草に悶え、萌えていた俺は・・・
ってえ?違う?
じゃあ、気を取り直して。
パウダーベリーの殲滅に成功し、パウダーゴーレムについて調べたって言うか確認した結果、どちらも統一した上位種がいることが原因の可能性が高いと言うことが判明した。
で、村の連中は小さな親切大きなお世話と言う言葉通りに俺等にそいつらの調査と殲滅を辞めさせようとした。
結果として、カルナを筆頭に俺等はキレ、ハディの威圧の籠もった咆吼によって強制的に黙らせて村から離れ、動物の1匹すらもいなくなった森の近くでシャスティが周囲を探知し、フリージアがあの小型のゴーレムをツバメって言う小鳥の姿にしたのを大量に呼び出して周囲を調べた。
{まず、シャスティから教えてもらっても良いですか?}
「にゃ~うにゃう(翠の言う通り、上位種らしき生物を確認しました。)」
正直シャスティが何を言っているか分からない俺は、シャスティが喋った内容をフリージアが念話で教えてくれていた。
「やっぱりか・・じゃあ、動物とかはそいつらにやられたと考えた方がいいだろうな。」
「ニャー?(リア様は?)」
{パウダーゴーレムは今は森の一角で固まったまま動いていませんでした。それと、その中央にその上位種と思う生物と、その直属の部下?と言いますか幹部らしきモノもいました。}
そして、フリージアが言う特徴を聞いて翠さんが教えてくれる。
「それ、パウダースフィンクスと、カイザーローズだね。」
パウダースフィンクス
全長30メートルは軽くある獅子の体と人の顔をしたゴーレム。
常にカイザーローズの傍におり、パウダーゴーレムを量産し続けている。
獲得部位:魔石、魔核、粉モノ(種類は個体によって変わる)
カイザーローズ
若干緑がかった白い茨の塊で全長は50メートルは軽く超えるほどの巨体で、その上には直径70メートルの大輪のバラが咲いているが、中央部分には、鋭い牙と長い舌がついている。
常にパウダーベリーとパウダースフィンクスを量産している。
獲得部位:魔石、魔核、カイザーローズの茨、カイザーローズの花弁、牙
パウダーゴーレムもどれも最低でも5メートルはあるらしいし、パウダースフィンクス自体も60メートルサイズが平均で、そのボスであるカイザーローズも翠さんが言うサイズの2倍はあるみたいだ。
カイザーローズの茨と花弁は実はかなり高く売れる。
牙や茨は、武器に加工され、花弁は薬になるらしい。
何の薬か聞いたところ、精力剤と言われた。
・・・俺は聞かなかったことにした。
ちなみに余計なことを教えてもらったんだが、それは花弁をそのまま湯がくだけで媚薬になるらしい。
同様に聞かなかったことにした。
例えそれを言っていたのがナイスバディな色気むんむんな美女で、俺を色んな意味で捕食しようとしている表情だったとしても気のせいとしてそそくさと脱走した。
「なぁ翠。パウダーゴーレムがカイザーローズの周囲で固まって動かないのは何か意味があるのか?」
「多分力をため込んでいるところだと思うよ。」
聞くと、カイザーローズはパウダースフィンクスとパウダーベリーを増やすだけではなく強化っていうか変異種にすることも可能で、同様にパウダースフィンクスもパウダーゴーレムを強化し、変異種へ変化させることが出来るらしい。
で、その強化って言うのが
「頑丈にするのと、巨大化なんだよね。」
なんて面倒な。
で、ずっと言いたいことがあった。
「で、フリージア・・」
(?)
そんなかわいく首をかしげないでくれ・・俺の理性がヤバイから。
「いつまで俺に抱きついたままなんだ?」
フリージアは俺に抱っこされたまましっかり抱きついていた。
{ご迷惑でしたか?}
「いや、迷惑じゃないが・・すっごい軽いし良い匂いがするし。」
何言ってんの俺!?
{グリムさんの抱っこは良い感じなんです。}
「何が良い感じなんだ?」
良い感じって何!?
{パンの焼ける良い匂いがしますし、抱っこする力も丁度良いですし、体ががっちりしているので凄く安定感があります。なのにお肌はきれいなのでちょっと嫉妬しちゃいます。}
そう言いながら俺の首筋にほおずりしながらにおいを嗅がれる。
くっ!
そんなかわいい顔ですりすりしないでくれ・・っ!
かわいすぎてヤバイから!
あぁ・・首筋からフリージアの息づかいを感じる・・・良い匂いがする。
フリージアの顔がすっごい近くにあるし、どこかうれしそうにほほえんでるから破壊力が普段以上にヤバイ。
それと、抱きつく力を強めないでくれ。
これでもかと言うほど胸が押しつけられてるから!
そのささやかながらもしっかりと柔らかさを当たってる箇所から感じてますから!
「あぁ・・リア。それ以上グリムを誘惑するな。」
(?)
「あぁ・・うん。ほどほどにな。」
(コクリ)
カルナのさりげない気遣いはかわいく首をかしげる仕草1つであっさりと打ち消された。
で、色んな意味でヤバイ俺にフリージアは何を考えたのか。
{私は好きなようにグリムさんを堪能するのでグリムさんも私を好きにして良いですよ?}
っ!?!?!?
何を言ってんの!?
そんな台詞・・破壊力抜群どころか一撃必殺レベルだぞ!?
で、俺はくらっと理性が軽くぼろぼろにされ、フリージアを抱きしめ、フリージアの首筋に顔を埋める。
プニプニすべすべなフリージアの肌の感触とささやかに感じる花の香りと共に若干汗をかいていたのかそんな香りすらも凄く魅力的な香りだった。
あぁ・・かわいい。
かわいすぎる。
本音を言うならこのまま押し倒して一線を越えたくなる。
だが、それは冗談抜きでヤバイからしない。
俺は社会的に死ぬし、フリージアは冗談抜きで死ぬ。
だが・・だから、今だけはこれだけは許して欲しい。
こんなに細くて小さくてかわいい、女の子を俺は守りたい。
「絶対に助けてみせるからな。」
「グリムさん?」
あぁ、実際に口で俺の名前を耳元で呼んでくれる。
それだけで俺の心はとかされていく。
「フリージア、フリージアのことをリアって呼んで良いか?」
俺は、フリージアの匂いに酔いしれながらぽろっと言ってしまった。
気づけばその台詞を吐いた後だったからどうしようもなく、でどうにか話を逸らそうとしたが
「良いですよ、リムさん」
リム。
フリージアは俺のことをそう言った。
俺の相性なのだろう。
フリージアが・・いや、リアが俺のことをそう言ってくれた。
それだけで俺は十分幸せだった。
「あぁ、リア。」
自意識過剰かもしれないが、俺は今人生の中で最も優しい表情で愛する人の名前を呼んでいると思う。
リアが俺のことを呼んでくれるだけで俺は十分幸せだ。
「おーい。幸せ空間を作ってるところ悪いが、敵を潰すぞー。一線を越えなければ一応ある程度のことは許すから後にしろー。」
はっ!
リアがかわいすぎて魔物のことを忘れてた。
「と!とりあえず作戦会議をし、しよう!」
と、とりあえずなかったことにして話を続けるが、リアは抱っこしたまま。
だって、体が離すのを拒否するんだから仕方がないじゃないか。
それにリアだってしっかり抱きついたまま離れる気は皆無だし。
{おそらく私たちが特攻すれば相手は全員で襲ってくるでしょう。ですが、特攻します。ハディちゃんは防衛を、シャスティとリムさんは前線を、翠ちゃんはハディちゃんのフォローを。カルナはシャスティとリムさんのフォローをお願いします。私は全員のフォローを行ないます。}
やっぱりリアは凄い。
作戦が俺たちの実力を十分把握した上でのこれだ。
最も闘いやすい状況を作ってくれる。
「わかった」
「にゃう(お任せ下さい)」
「オッケー」
「ニャー(了解)」
「まかせてくれ」
そこでリアは俺に
「リムさんの格好いいところを見せて下さい」
耳元で囁くようにこう告げられた。
くっ!
そんなことを耳元で甘く囁かれたら
頑張るしかないじゃないか!!
と、萌えているところ頭の端っこで思う。
あぁ、俺はとことんリアにべた惚れなんだなってな。
ちょっとしたことで嬉しくて幸せすぎてたまらない。
リアがいればそれでいい。
・・・とりあえず落ち着け俺。
深呼吸を
すー
はー
・・よし、落ち着いた。
で、名残惜しいけどリアをハディの背中におろす。
リアは、すぐに察してくれたのかすぐに離れ、呼び出していた影の人形を25体にまで少なくし、サイズをリア自身の半分ほどのサイズにまで巨大化させていた。
これが、冒険者の連中が言っていた影の軍勢か。
リアと時折武器の扱いを教えたり魔法でアドバイスを求めたりする冒険者たちが時折みるらしいこの影のゴーレムの軍勢は、リア本人よりも特訓する頻度が高いらしく、リアは影さんたちと呼んでいるが冒険者たちは陰の軍勢と呼んでいる。
その軍勢は、決まった戦闘スタイルも形も一切なく、姿形は人型から動物、はたやどろりと溶けて形すら残さずに動いたりと全く動きの先読みが出来ない。
おまけに、扱う武器の多種多様でどの武器からどの武器に変えるかは完全にランダムで、陰同士のチームプレイもその時によってコロコロ変わるから全く想定出来ないため、動きが遅くとも先読みが出来ないせいで非常に苦戦すると聞いている。
おまけにリア本人による魔法攻撃もあるのに加えて、その軍勢全員が魔法反射が出来るからたちが悪い。
更に更に、物理攻撃を行なっても跡形もなく消し去るくらいしないと全く効果がないのでそりゃあもう大変。
だが、かなり為になるし、鍛えられるのに加え、リアからのアドバイスは自身が後々に行なうべき課題をはっきりと言ってもらえるので非常にありがたいらしい。
実際、リアのメイドであるアルナがリアのおかげで魔法を使えるようになり、優秀になってるしな。
そして、シャスティが自身の武器である魔法剣(異世界人が言うところのビームサーベルで、特別に作ってもらったらしい)を尻尾で握り、構えつつ先頭に立ちリアたちが見たらしい方面へ向かう。
俺も物干し竿をいつでも抜けるように構える。
カルナはやや高めに飛んでいる。
進んでいくが、動物の1匹どころか虫すらも一切いない。
それどころか、植物は、草木のどれも枯れているようだ。
これは、そのカイザーローズって言うのが養分とかを吸い尽くしたり、食ったから何だろうな・・これはひどい。
しばらくすると周囲が砂漠化しかけている開けた空間にたどり着いた。
そこには、聞いていた通りかなりでかい奴らが固まっていた。
パウダーゴーレムは、まさかの全部が変異種に変化しているらしく、色が白っぽいクリーム色になっているし、数は500はかるくいるみたいだ。
アレは、普通のパウダーゴーレムよりも砂っていうか粉の密度が倍以上あるから普通のよりも硬いしパワーも防御もあるからかなり面倒だ。
その代わり、採取出来る粉の量はその分多い。
で、パウダーベリーはないようだな。
そして、パウダースフィンクスは普通であればパウダーゴーレムと同じ色である白っぽい茶色になるはずが同様に白っぽいクリーム色になっている。
ちっ・・こっちも変異種になってるのかよ。
おまけに数は、100くらい。
そして最後にカイザーローズ
こいつは更に巨大化してるらしく全長300メートルはあるな。
おまけに色は、白と黒のマーブル状になってるし。
こいつは一応植物の類いの魔物なんだが、土のゴーレム同様に土属性でもあるからパウダーゴーレムなどと同様に変異すれば色は更に白っぽくなるんだが、その黒に関しては、産み出すパウダーベリーを産まずにその分を全て自身の力に変換すると、その分が自身の魔核を強化するらしい。
つまりは、自身の保有する魔力量が強まった証拠でもある。
そのせいでこいつは白と黒のマーブルになっているってことだ。
要するに変異種になってるってことだ畜生。
てか、少しの間でどれだけ巨大化してんだよ。
おまけにどれもこれも強化っていうか硬化してるし・・しかも全部。
「これ・・多分パウダーゴーレムだけでもクマもどきを軽く越えるくらいの硬さとパワーはあるね。」
「マジか・・じゃあ、パウダースフィンクスとかは?」
「基本的に平均的にパウダーゴーレムの2倍って言われてるけど、変異してるから変異してる今のパウダーゴーレムの3倍レベルかも。」
パウダーゴーレムだけでAランクを超えるレベルで強化されてないか?
おまけにパウダースフィンクスだとSランクオーバーだろ・・。
そうなると・・
「まさかカイザーローズはSSかそれ以上ってことはないよな?」
{私が視た限りではそのくらいはありそうですね。}
マジかよ・・。
{これは、出し惜しみする暇はないですね。シャスティ、カルナ}
「おう」
「にゃう(かしこまりました)」
出し惜しみ?
とか思っていると2匹は巨大化した。
マジかよ・・巨大化するのかよ。
「巨大化出来たのか・・」
「あぁ。デカくなった分身体能力が向上している」
純粋に凄いな。
「頼りになるぜ全く。」
「まぁな。リアを守るためだ。」
そりゃあ大事だな。
{まずは、数を減らしてからボスを潰します。そうでなければ数が多すぎます。}
「確かにな。それぞれがそれぞれの個体を産み出すから全部倒している間に増やすだろうし、ある程度減らしたところでボスを倒す方とそいつらを潰す方で組み分けする感じが良いだろうな。」
(コクリ)
{とりあえず広範囲で魔法で潰しましょう。それから、カルナたち、お願いしますね。}
「あぁ。」
そして、リアは上空にものすごい数の針状の影を作り出す。
さすがだな。
あの影の軍勢は1体1体がそれぞれが生きていて自身の考えで動いていると言ってもおかしくないと思えるほど動きはスムーズでアレは1体1体が別々で、それぞれ個別で生きている1体の生物だと言われ、実はゴーレム(操る奴がいないという意味)の類いではないと言われてもそのまま信じるだろう。
それに、上空におびただしい量の魔法を作り出す技術と発動までの速度。
これぞまさしく魔法の天才
それを見てふと思う。
「リア、ちょっとそのままにしててくれ。フォローする」
(?コクリ)
俺は、黒炎をその針状の影全てに纏わせた。
リアはそれを見て瞬時に察してくれた。
「俺たちの合体魔法。その方が威力があるだろ?」
にっとワイルドにリアは笑う。
俺も同じくほほえみ返すが、おそらく同じ感じで笑っているんだろう。
リアはどう猛な笑みを浮かべたままだ。
どうやら、戦闘狂の類いらしい。
俺も似たようなモノだが、リアのそんな笑顔も良いなと思う俺は重症か?
「んじゃあ、その名も獄炎針」
地獄の炎と地獄にあると言われている針の山など、とにかく地獄そのものを具現化したような魔法になったからそう名付けてみた。
俺とリアはどちらも闇に関連した魔法故に、その部分が相乗効果でも起こしたのかあらゆるモノを焼き尽くし、どんなモノでも飲み込んでしまいそうな深い深い漆黒が揺らめいている。
そして、それをそいつらにまんべんなくたたきつける。
ズガガガガガガ!!!!!
ゴォォォォオオオオオオオオ!!!!!!!!
ズガァァァァァァァアアアアアアアアアアン!!!!
ものすごい速度でそいつらを貫き、燃やし尽くし、全てが着弾し、軽い飛び火だけで更に周囲のそいつらを燃やしているところで大爆発し、更にそいつらを漆黒の炎は飲み込み、焼き尽くす。
我ながらすげぇ合体魔法になったな。
ある意味じゃあ俺とリアの魔法の相性が良かったからこんなことになったんだろうな。
周囲がそいつらのせいで枯れ果ててたから焼き野原にならずに済んだな。
それどころか、枯れてるからそれらが燃え、倒れ、そいつらへの攻撃としての追撃と化している。
更に燃え広がるって言うより、そいつらをより燃やしている。
まるで森が俺たちの攻撃と共にそいつらへやりかえしているかのように思った。
実際、まだ生きている植物などは一切燃えておらず、燃えて倒れたのは完璧に枯れているモノだけだったからだ。
「かなり減らせたが、ある程度落ち着くまではそのままだな。俺たちも巻き添えを食らう。」
カルナがそう言うと俺たちは素直に頷いた。
とりあえず、魔力回復薬を飲むか。
・・俺も俺で結構な量の魔力を注いだが、リアもリアで遠慮無用でやったのか、俺たちの合体魔法が相乗効果を起こして威力を互いにプラスではなく倍加させたかのごとくものすごい勢いだ。
燃えるのもだが、爆発する威力も貫く威力もだ。
おかげで10分くらい経つがまだ勢いよく燃え続けている。
って言うより、相手は土属性に該当される土って言うか粉で出来たゴーレムだ。
つまりは燃えない素材。
だというのに勢いよく燃えている。
もしや、俺たちの合体魔法の炎はあらゆるモノを燃やすって感じに進化したりしたのだろうか。
いや・・どちらかと言うより敵認定された相手ならば全てを燃やし尽くすって感じだろうな。
実際、森の中だというのに枯れ果てたモノ以外であるまだ生きている草木は全く燃えていないからだ。
そう考えると凄く納得がいく。
だとしてもとっさの思いつきだったがかなり良い感じの合体魔法じゃないか?
リアもどこか感心した感じになっている。
カルナたちも同様に関心って言うか予想以上の威力に呆れているが、翠さんはサムズアップしている。
お気に召したらしい。
で、込めた魔力がなくなり始めたのか強引に俺たちに襲い掛かろうとする個体が出始めた。
「動き始めたな・・リア、頼む」
(コクリ)
カルナがそう言うと、リアは俺も含め、全員に影を1体ずつくっつけ、するりと全身をすっぽりと覆い尽くした。
さながら黒い全身アーマーって感じだな。
て、よく見るとリアの目には魔法陣が宿っていた。
初めて見るが、リアの技か何かだろう。
魔法の天才だしな。
「リア、これは?」
{防御は私が行ないますので遠慮なく攻撃に専念して下さい。カウンターや魔法反射なども勝手に行なうので}
要するにあの影の軍勢がしていたようなことを俺も出来るようになるってことだな。
リアの魔法を見て思ったが、おそらく物理防御も当然出来るだろうし、魔法防御はもちろん反射もだろうし、ただ腕で防御したとしてもそのまま針状に形を変えて相手を貫くこともするのだろうな。
・・これ、かなり凄いぞ。
さすが魔法の天才。
魔法によるフォローでここまで万能なのは見たことも聞いたこともない。
せいぜい魔法攻撃で相手を翻弄させるか、それぞれの武具に魔法を込めるか防壁を作り出す程度だろう。
防壁だと防御は出来るが行動範囲に制限が出来てしまうが、これだとそれはない。
ますます惚れちまうよ。
さて、格好いいところも見せたいし気合い入れて頑張るか!!
そして、先陣をかけるのはシャスティ
このチームの中で一番足が速いから同時にスタートしても圧倒的に速いんだ。
俺自身も身体強化をして駆けるが全く追いつける気がしない。
わかりやすく言うと、俺が50メートルを素の身体能力では6秒ほどで、身体強化を行なうと5秒を軽くきる。
で、シャスティの場合、普通の猫サイズでさえ50メートルを3秒で駆けているのにあの巨大化の状態だとそれを優に上回る。
一応説明しておくと、素の速さだと俺の足は結構速い方だが、身体強化を行なった場合では、平均は7~5秒ほどで、稀にそれを越える奴がいる感じだ。
まぁ、魔物や動物の場合では平均は5秒を軽く超えてるんだがな。
シャスティの動きは一言で言うと凄い。
あの長い尻尾はただでさえリーチが長いのにあの剣を扱っているから更に長い。
それを縦横無尽に振り回し、本人もものすごい速度で動き回っているし、動きが何と言うかアクロバティックだ。
まさに無双状態だと思う。
そして、カルナは上空からものすごい数の針状の何かを相手へ飛ばしている。
それは関節部分に当たる部分に刺さり、動きを阻害している。
後にそれは毒を針状にしたモノだと教えてもらった。
生きている相手であればじわじわと動きを阻害し、最終的に毒殺してしまうのだとか。
今回はゴーレムで無機物だったために動きを阻害する程度になっているそうだが・・どっちにしてもどれも性格に狙い撃っているだけでも凄い。
・・改めてシャスティやカルナは怒らせないようにしよう。
とか言っている間に、ハディはあの咆吼のトリプルコンボに【衝撃波】を更に加えている。
精神的と耳にダメージがいくものに追加で物理的な攻撃が加わっている。
アレはまさに範囲攻撃だな。
おまけにハディの体はものすごく頑丈でそいつらが殴ってきても普通に耐えているし、あの尻尾の薙ぎ払いだとゴーレムたちが木の葉のように飛ばされ、あっけなくへし折られている。
そして、翠さんはものすごく広範囲にゲルを広げ、片っ端から溶解している。
更にハディの体中にも纏わせ、ハディの攻撃や防御に併せて相手との接触部分を溶解している。
サポートがものすごく上手い。
これは負けていられないな。
俺は駆ける。
魔力はある程度は温存しておきたいから、物干し竿を片手にもう片手に小太刀を握り振う。
物干し竿を薙ぎ払うようにして数体のゴーレムを斬り飛ばし、俺の懐に潜り込もうとした他のゴーレムには小太刀で腕を切り攻撃を阻害し、足を切って動けないようにして核となる中央部分を突く。
こいつらの弱点である核の部分は同じ場所だからな。
だとしてもホントにこの武器には世話になっているよ。
ものすごく頑丈でこいつら程度なら軽く切り裂く。
しかも刃こぼれしないし、作った本人が言うには定期的に魔力を込めておけばより頑丈になるし、修復も魔力を込めれば良いと言われた。
それでも定期的なメンテナンスはするべきだと言われているのでしている。
ホントこれ・・何で出来ているんだよ。
今まで色んなのを切り裂いてきたが、刃こぼれしたことすらないぞ?
まぁ、結構頻繁に魔力を込めてるからじいさんが言うにはかなり頑丈になってるんだろうけどな。
一応魔力を剣に纏わせて強化しているが。
属性を込めない魔力を扱ったワザで、身体強化があるが、それは武器にも同様に出来る。
と言っても魔力で膜のように覆って頑丈にするんだ。
ただ丈夫にしているだけで魔力操作次第ではある程度の切れ味などは強化出来たりする。
だとしてもさすがリア。
俺の動きに合わせてくれる。
防御とカウンターを併せて小太刀で攻撃すると、それに併せて俺の死角となってる奴らを俺に纏わせた影で貫いているし、場合によっては俺の刀に影を纏わせて切れ味を強化してくれる。
と言うより、刀には最初からそうなってたりする。
おそらく俺の魔力の消費を極力減らすためにしてくれているんだろう。
おかげで動きを速くするための最低限の身体強化だけしている状態だ。
体を頑丈にするためだったり、腕力を上げたりするための身体強化をする分の魔力すらも必要がなかった。
その分は防御はリアの影の防御があるし、攻撃は俺の刀に影を纏わせて切れ味を強化しているからほとんど素の力だけで十分だったからだ。
すげぇよホントに。
このサポートを俺以外のメンバー全員にしているのに加えて、リアは周囲へ影の針を飛ばして核を的確に狙って潰しているのに加えて、影の軍勢を操り、そいつらでもゴーレムどもを潰している。
しかも、その影の軍勢は1体1体が別々に動きながら相手の核を狙い、貫いている。
動きを速くする為なのか4足歩行の姿で動き、顔?に当たる部分は鋭い刃になっている。
それで貫いたり、相手に攻撃されてやられたふりをしてするりと腕を伝って核に迫り、潰したりとホントにやり方が先読み出来ない。
おまけに側面や背後から狙っても尻尾が刃になって貫いたり側面から突然刃が出てきて貫いたりと、まさしく死角はなかった。
やっぱりリアは凄い。
俺も負けていられないので自身の動きの無駄を省きながら出来るだけ体力を温存するようにして的確に核を潰していく。
今日までずっと俺は一人で闘ってきた。
俺自身、常に威圧を纏っている状態のせいもあるし、目つきも結構鋭い。
それもあって多少の会話はしても一緒に依頼をしたりといったパーティやペアを組んだりしてくれるメンツはどこにもいなかった。
だから、どんなことでも一人で対処出来るように必死で頑張ってきた。
そういうことも学園で学んだんだ。
そして俺は今日初めて一緒に組んでくれるメンバーと出会った。
リアだ。
一応学園の後輩たちや店を営んでる連中とも多少は仲が良いが、それでも一緒に組んでくれるような奴は誰1人としていなかった。
そして俺は今、リアと共に闘っている。
普段であれば周囲の警戒も何もかも自分で対処しなければならないが、今日はそういうのはリアがしてくれる。
今日ほど背中が頼もしいと思ったことはない。
どことなく体が軽い。
力がどこまでもわいてくる気持ちになってくる。
俺は走り、刀を振う。
それに併せて俺の体と刀に纏われているリアの影が動き、振う刀の先を伸ばし、リーチを広げ敵を追加で巻き添えにして始末している。
リアと出会うまではペアやパーティを組みたいという気持ちもとうの昔になくなっていた。
だが、リアには俺の得意技である威圧の扱い方などを教えてやりたいと、俺のもつ技術も教えられる範囲は教えてやりたいと思った。
それを何かの依頼をしながら教えたいと思ったのと、俺がよく使う素材がとれるこいつらの討伐の依頼が偶然見つかり、今回の依頼を共に受けることにした。
そして、予想外なことにスタンピートになっており、こんなことになっていたが。
けれど、ある意味では俺たちらしい気がする。
騒動を引き寄せると言うわけではないが、困ったことがあれば解決し、敵がいればとことん倒す。
それが少々大規模になっただけだ。
俺の背中はリアが守ってくれる。
俺と共にシャスティたちが駆けている。
共に駆け、共に闘い、互いの背中を預け合い、未来へ進むために。
生き残るために
守るために戦い続ける。
そうか・・
親父・・今なら分かるよ。
幼い頃に守りたい人がいる人間はどこまでも強くなれるし、誰よりも強くなれるって言っていた意味が。
守りたい人を見つけたらその気持ちを大事にしろって言っていた意味が。
これまでとやっていることは同じなのに違う。
以前よりもずっと体が軽く、リアのためならと思うだけでどこまでも力がわいてくる。
それと母さんの言葉の意味も凄く分かった。
ただ守られているだけじゃなく、互いが得意な分野でお互いに護り、支え合い、信頼出来る人を見つけろって言っていた意味が。
ただリアを守りたいって気持ちだけではこんなに背中が頼もしいと思わなかっただろう。
リアが俺を守ってくれる。
俺はリアを守るために先陣をかける。
リアが背中を守ってくれるから俺はどこまでも頑張れる。
俺頑張るからさ。
いつかリアのことを二人に紹介したい。
その紹介が、俺の恋人だって言えるようになれるように・・もっと頑張るさ。
さぁ!
来い!ゴーレムども!
そして、その親玉に幹部!
俺とリアの最強ペアがお前らを1体残さずに倒し、俺たちの未来への糧としてやるよ!
カイザーローズのイメージは、ドラ〇ンク〇ストのロ〇ズバ〇ラーです。
・・色はともかく。
次回は日曜日です。