グリムさんとデート その2
--フリージア--
と言うわけで本日は、グリムさんと依頼です。
何がと言うわけなんだとツッコミが聞こえてくる気がするので一応説明です。
パウダーゴーレムの討伐とパウダーベリーの殲滅の依頼をグリムさんと受けることになったんです。
で、そこまで私とグリムさん、そして私の獣魔メンバーだけです。
つまりは、人だけと言うくくりで言うと2人っきり。
ちょっぴりドキドキです。
このどきどきは、何なんでしょうか。
緊張とも言えますが、違うとも言える。
ワクワクしているし、不安もいっぱい。
グリムさんと一緒にいることが出来るのはうれしいけど、その分良い子として見て欲しい。
嫌な子と思われたくないし、失望されたくない。
なんでグリムさんにだけそう言う思いを浮かべるのかは分からないけど、この気持ちは無下にしたらいけないと翠ちゃんが教えてくれました。
その理由は教えてもらえず、自分で気づかないといけないらしいですけど・・むぅ。
準備は万端。
と言っても荷物その他諸々は翠ちゃんが持っていますし、装備はいつもの黒い精霊樹のローブに蛇腹剣に杖、それとアクセサリー関係がぞろぞろ。
これ以外の装備なんてありませんし、これ以上に優れているモノはそうそうないと思います。
まぁ、精霊樹さんからもらった大事なモノですからこれ以外を使うつもりはないんですけど。
・・それと、セイちゃんが言っていたことをルミエールさんたちにこっそり相談して、かわいい下着上下をつけました。
ま、まぁ・・・さりげなくレースが入っていたりとどこかおしゃれな感じなやつです。
色は、なぜか白一択と断言されちゃったんですけど・・何ででしょう?
何か、白いパンツは男のロマンとか、青と白のしましまは定番だけど、ここは白以外あり得ない!とかよく分からないことを言ってましたけど。
・・・けど、これグリムさんに見せることってあるのでしょうか?
見せちゃ駄目と言われたけど、偶然を装って見せて籠絡させろとかよく分からないことも言ってましたし。
ま・・気にしないことにしましょう。
その時はその時です。
で、集合場所であるギルドにやってきました。
朝はまだまだ早い時間なのでほとんど人はいなかった。
「フリージアおはよう、早かったな?」
{おはようございます。待たせてしまったようで申し訳ありません。}
予定時刻の20分前につくように来たのにグリムさんは既にいた。
おかしいなぁ。
翠ちゃんが10分前にたどり着くのは常識だから10分前の5~10分前につくのが理想的って言ってたから良い感じについたのにもういました。
「気にしないでくれ。元々パン焼いたりするのに早起きなんだ。家で待つのもアレだしこっちに来てただけだから。・・家にいたらそわそわしてそれどころじゃないしな。」
{少々早いですがいきましょうか。}
「そうだな。カルナたちもおはよう。今日はよろしく」
「あぁ、よろしく。グリムが闘うのは何気に初めてだから楽しみにしてるぞ。」
「おう、期待に添えるように頑張るだけさ。それにこっちの台詞でもある。」
「まぁ、ほどほどにやるさ。」
で、城壁の門へ向かいながら
「そういや、馬車とか馬の準備はいらないと聞いてたが、どうするんだ?」
{ハディちゃんに乗っていくので大丈夫ですよ。荷物は翠ちゃんが全て持ってくれますし。}
グリムさんの荷物はウエストポーチタイプのマジックバッグに含んでたので必要なさそうですけど。
しいて言うなら武器くらいですがそれは手に持っていないと駄目ですし。
「あぁ、なるほど。よろしくな」
「ニャー(まかせとけ)」
で、門をくぐります。
「姫様おはようございます。これから依頼ですか?」
{おはようございます。えぇ、これからです。}
「姫様ですから大丈夫とは思いますがお気をつけて。」
(コクリ)
「と言うより、グリムさんと一緒なんですね。」
(コクリ)
「あまり長話も迷惑でしょうし、頑張って下さい。」
(コクリ)
門番さんと軽くご挨拶して国を出ました。
{では、ハディちゃんお願いしますね。}
「よろしく頼むな」
「ニャー(まかせて)」
ハディちゃんの背中に私が座り、その後ろにグリムさんが座る。
翠ちゃんは私のお膝の間にいて、ラナちゃんはいつも通り肩にくっついてる。
カルナは、その上空を飛びながら並走し、シャスティは隣を並走。
{グリムさん、しっかり捕まってて下さい。}
「あ、あぁ。」
と、グリムさんに言うとグリムさんはハディちゃんの背中の鱗の突っ張り部分に捕まる。
むぅ・・。
{それですと不安定ですから私の腰に腕を回して下さい。}
「っ!・・い、良いのか?」
どうして顔を赤くして驚いてるんでしょうか?
--グリム--
ハディの背中に乗っていくまでは良かった。
で、落ちないように捕まれと言われたのも納得した。
なのにフリージアの腰に腕を回せと言われた。
本人に
それって・・抱きしめろってことだよな?
で、良いのか?と聞いたらどうして駄目なのかとでも言いたげなのかきょとんとした顔で首をかしげられた。
くっ!
かわいいなぁ畜生!!
で、カルナは微笑ましげに眺め、シャスティはどこか呆れた表情になってる。
背中越しでハディの顔は見えないから分からないしラナは顔がどこかも分からないが、翠さんはニヤニヤして楽しんでる。
どこか玩具にでもなった気分だが、うれしかった。
俺を怖がらずにいてくれる。
それに、拒絶する言葉は全く無かった。
まだそうとは言われたないが、フリージアとまずは恋人になりたいという俺の気持ちを無下にされてないんだってことは嬉しい。
フリージアの傍に居るにふさわしくなる為に店の看板もリニューアルしたし、ご近所付き合いと言うことであちこちの店をはしごして料理を教わりつつ教えている。
色んなジャンルを上手く作れるようになりたいしな。
それに、俺はパンを焼くのは我ながら自信がある。
だから互いに教え合っているからお互いに利益はある。
それと・・フリージアにおいしいと言って欲しいから。
まずは、フリージアのことをリアって呼べるくらい仲良くなりたいな。
{グリムさん?}
やべ、考えごとしてた。
「い、いや、何でもない。じゃ、じゃあ失礼するな?」
(?コクリ)
何が失礼なんだと言いたげに首をかしげられたが、フリージアの腰に腕を回し後ろから抱きしめる。
思った以上に細い体にとても良い匂いがする。
それに、女性特有の柔らかさを感じる。
む、胸は触ってないからな!?
ま、まぁ・・・まだまだ幼いから膨らみだしたくらいだろうからアレだとしても、胸は胸だしなゲフンゲフン。
うわぁ・・これはヤバイ。
フリージアが魅力的すぎる。
そして、あろう事かフリージアから追撃があった。
なんと
なんと!
俺の股の間までわざわざ移動して座り、俺に背中を預けてくれたんだ。
くっそぉ。
かわいすぎるだろう!
やっぱ俺、フリージアが好きだ。
メロメロだ。
骨抜きにされてる。
特にフリージアの声を聞けるようになったからその魅力は倍増してる。
倍加と言っても過言ではない。
{グリムさんも楽しみだったんですか?}
「え?どうしてだ?」
{どこか嬉しそうだったので、これからのちょっとしたお出かけが楽しみだったのかなと。}
やべ。
フリージアを後ろから抱きしめてて悶えていたとはっきり言えるはずもないし。
「ま、まぁな!そ、それに慣れてるだろうけどフリージアが落ちないか心配だったんだ。」
ちょっと苦しい理由だったか?
{大丈夫ですよ。グリムさんは優しいですね。}
ふんわりとほほえんでくれた。
下手すれば見過ごすほどの変化だが確かにほほえんでくれた。
あぁ、やっぱりフリージアは魅力的だ。
かわいい。
性格も見た目も声も好きだけど、俺はフリージアの笑顔と目が好きだ。
あの純粋で透き通るようなフリージアの目は凄くきれいだ。
オッドアイとか言われる両目がそれぞれ色が違うのも珍しいと思う。
それと、何者にも染まらないというどこか芯のある強さを感じるからだ。
多分俺は、そんなフリージアの目と笑顔に惚れたんだろうな。
・・こんなこと恥ずかしくてフリージアとか他の奴らには絶対に言えないな。
{とりあえず行きましょうか。}
「行きはシャスティがやってくれるからのんびり楽しんでくれ。」
「カルナ良いのか?」
「構わないさ。色々と忙しそうだしな。」
幸せそうだなと言いたげな表情でカルナに言われた。
シャスティもまかせとけと尻尾を振る。
「じゃあ、よろしく頼む。」
「おう」
「にゃう(まかせなさい)」
そして、俺たちは出発した。
で思った。
ハディ・・すっげぇ速ぇ!!
馬の何倍もの速度で走ってる。
「すげぇ速いな。」
{ハディちゃんは力持ちさんでもありますが、走るのも好きなんです。お馬さんの何倍もの速度で走れますし、体力も倍以上あります。}
すげぇ。
と言うことは休憩なしで1~2時間くらいでたどり着くってことか。
ホント頼りになるよ。
「すげぇな。けど、ムリはしなくて良いぞ。途中で1回休んでも良いし。」
{良さそうなところがあれば休みましょう。なければ目的地まで一直線です。}
「おう!」
フリージアとどうでもいいことを色々と話をしながら俺はフリージアに見惚れていた。
俺の腕の中に今大好きな人がいる。
そんな人が俺に背中を預けてくれている。
それに、風でなびくフリージアの髪が日の光に照らされてキラキラしていて凄くきれいだ。
あぁ、やっぱり守りたい。
この子と一緒にいたい。
それに、出来るだけ経験を積ませてやることもフリージアの寿命の件を解決する可能性があるんだしな。
セイが言っていたが、フリージアは種族進化する可能性が高いらしい。
どういう物になるかはわからないが、色々と条件があるらしいからな。
その条件が分からない今、出来ることは様々な経験を積ませてやることと人助けを積極的に行なうことくらいだ。
この子はまだまだ幼いんだ。
こんなに華奢な体をしているのに過酷な人生を送っている。
俺が代わってあげられるなら代わっている。
けどそれは出来ないから少しでもその背負う荷物をもってやるか支えてあげたい。
俺の好きな相手を救いたい。
俺、頑張るからな。
だが、ちょっと思うのは俺ってこんなに惚れっぽいというか好きな相手の有無でこんなに変わるものなのか?
まぁ、特に問題ないし、むしろ守りたいという思いから以前よりも向上心とかは、上がってるからプラスだな。
{そういえば、グリムさん}
「ん?どうした?」
{グリムさんが身につけている装備、似合ってますよ。格好いいです}
「あ、ありがとう//」
くっ!
不意打ちで良い一撃を食らったぜ。
けど、ホントに嬉しい。
この装備は、前にも言ったが、色々と扱っている素材が凄い。
これは元々、当時は半ば家出も同然に飛び出して学園に通うことになった。
と言っても喧嘩別れとかではなく、故郷は村で、みんな狩りや農業をしているのんびりとしたところだ。
そんなところで細々と贅沢は出来ないが食べるモノには一応困らないくらいで暮らしていたんだが、そこで俺は一生を過ごしたいとは思っていなかった。
それに、俺自身がこんな感じで威圧感がバリバリだったから村のみんなも俺と接するときはどこか萎縮していた。
嫌がっているわけでもないし、嫌われているわけでもなかった。
どうしようもないことだとみんな理解していたがやはり怖い物は怖いらしい。
で、そんなみんなに囲まれて嬉しくはあったが、申し訳ない気持ちになった俺はこの国にやってきた。
ここの学園は優秀だって聞いていたから俺の威圧についても何か対策があるんじゃないかと思った。
学費も得意だった料理を利用してあちこちの店で働いたし、この威圧を利用して冒険者としても暇を惜しむように働いた。
当然両親には金は自分で稼ぐからいらないと告げてあった。
で、結果として力をつけてある程度のコントロールが出来るようになった。
一応Sクラスとして卒業出来たと定期的に仕送りをしていた金と一緒に手紙を添えて送ったところ、この装備品がやってきた。
仕送りは俺自身のお詫びとお礼のようなモノだ。
これまで俺を育ててくれたことと、俺を怖がりつつも可愛がってくれたことに対して。
で、この装備品が送られてきたことに対して添えてあった手紙には俺の仕送りと、学園側から届いていた活躍などのおかげでささやかながらも商人などがやってくる頻度が上がり、家の村から出しているモノなどを高く買い取ってくれるようになったらしい。
そして、結果として俺のことを心配したのか怖がっていたことを申し訳なく思っていたのか、村のみんなが俺が村から飛び出して卒業するまでの8年間もの間、ずっと貯め続けていたお金を使って依頼して手に入れたモノだった。
これを受け取ったときは俺は泣いた。
凄く嬉しかったんだ。
怖がりつつも可愛がってもらった。
アレは本心だった。
俺はただの嫌われ者じゃなかったことも、俺の頑張りは無駄じゃなかったんだって分かったことが嬉しかった。
そんな思い出もある装備品だ。
まぁ、今も仕送りは続けているわけだが。
・・ただの自己満足だ。
ちなみに武器として使っているこの2本の刀は、依頼の途中で偶然助けたじいさんが鍜冶士だったらしく、その人が作った渾身の作品だったモノをもらった。
申し訳ない気持ちもあったんだが、じいさん曰く、命の恩人だったことと、この刀2本は俺が扱うにふさわしいと思ったらしい。
まぁ、確かに命の恩人ではあるんだが・・とは思ったが、刀のためにも使ってやって欲しいと言われたんだ。
かなり小規模なスタンピートが起こりかけていてそれに巻き込まれていたところを敵を黒炎で殲滅して助けたんだけどな。
で、だから俺はありがたく頂戴して大事に使っている。
後々に分かったんだが、あのじいさんは昔々かなり優秀な鍜冶士で引退して姿をくらましていた人だったそうな。
結局名前も聞きそびれたし、銘も何も書かれてないから分からないんだよな。
おまけにご丁寧に顔は隠していたからほとんど分からなかったし。
それでも凄く良い人だった。
{とても大事なモノなんですね。凄く丁寧に大事にされているのが分かります。}
「あぁ、思い出が詰まっているんだ。」
{そうでしたか。}
フリージアは俺の気持ちに気づいたのかそう言った。
そして、それ以上の深追いはせずにただ頷いてくれただけだった。
・・ホントにいい女だよ。
「と言いつつも、フリージアが着ているローブに杖も大事に扱ってると思うぞ?」
{グリムさん同様、思い出がたくさん詰まっているんです。}
「そっか。」
母親が母親だったし色々あったんだろう。
聞きたい気持ちはあるが深追いはしない方が良いと思い俺もただそう言った。
もっと仲良くなればいつか教えてもらえるのだろうか。
その時は、俺の装備の思い出もついでに話してやろう。
そして、ハディが嬉々として頑張ってくれた結果、2時間かからずに目的地に到着した。
・・頑張りすぎだよ。
本人(本ワニ?)は走りたくて走っただけだから気にするなだそうだが・・まぁいいか。
で、たどり着いたわけだが・・。
{グリムさんが言っていた通りの状況ですね。ゴーレムたちはいないようですが。}
「あ、あぁ・・まさか文字通り覆い尽くされてるとは思わなかったが。」
村に着いたのは良いが、文字通りパウダーベリーに村が丸ごと覆われていた。
本来であれば村を囲っている丸太の壁のみが目に入るはずが、その丸太の大きな柵は村を囲う柵ではなく、ただの畑同士の敷居にしか見えなかった。
・・なんて言うか、植物で出来たドームって感じだ。
確かにこれはどうにかして欲しいと思う。
で、だからといって丸焼きにしたとすれば建物ごときれいに焼き尽くされるからどうしようもない。
おまけに育つのが早いわ、1つ1つがデカいわ重いわだとそこらの人間が1人や2人集まっても焼け石に水としか言いようがない。
「さて・・これが1つ1つ燃やしても良いが、そうなると素材が駄目になるな・・ハディたちに順番に手伝って貰うしかないか?」
さすがにフリージアには厳しいだろう。
見た目通り力仕事とかは難しそうだ。
出来るそれば魔法で引っこ抜いたりする感じか?
{建物などが壊れなければ何をしても構わないのであれば簡単に解決する手段はありますよ?}
「マジで?」
(コクリ)
え?
マジでどうやるの?
って言うより、建物が壊れなければって・・それ、その他はとんでもないことになるってことだよな?
{翠ちゃんに根っこごと村中を溶解してもらいます。建物を避ける程度は朝飯前ですから。}
なるほど。
その手があった。
翠さんは、今は小さい人の姿だが、あのゲルを出してそれで囲えば全て取り込むことが出来ると聞いている。
しかも、それは魔力量に依存するため、結構な魔力量のある翠さんだと村を丸ごと囲うくらいはたやすいだろう。
って言うことは、地面がボッコボコになるって言うか、かなり土が減ったりするという意味だったか。
「確かにそれだと、手早いし、それしかないだろうな。・・俺たちが1つ1つやっても良いが根っこが残る可能性がある。」
根っこが残るとそこから増える可能性があるため、やり残しというかやりこぼしを考えるとその手段の方が確実だ。
「だが、あの村の村長に許可を取ってからだな。」
(コクリ)
さてさて
村があんな状態だと昼飯をのんびりと食ってる余裕はなさそうだ。
一応時間的にはまだ先だが・・。
とりあえずさっさとベリーだけでも終わらせてゆっくりとゴーレムどものことを聞きながら飯にしたい。
「ようこそおいで下さいました。来ていてだいて早速で悪いのですがパウダーベリーだけでもどうにか出来ないでしょうか?・・丁度種まきの時期なので今蒔かなければ色々と不都合があるので・・」
優しそうと言うかメンタル的に控え目なじいさんが村の入口近くにいてそのまま出迎えてくれた。
この村は、ラカノンという名の村で、主に野菜が名産品のところだ。
品質も良いし、ほぼ1年中様々な野菜を作っているから、この村の野菜はそこそこ人気が高い。
「それで、1つ試したいことがあるんだが・・」
と、翠さんのことを簡単に紹介(ゲル種の亜種と説明した)して、その対策を伝えた。
「確かに、その方法ですとやりこぼしはないでしょうな。」
「あぁ、だがこのやり方だと地面がボッコボコと言うか、土が大幅に減ったりするから許可が欲しい。」
「村はこんな有様ですし、手段を選んでいては再びベリーに苦しめられます。許可します。その代わり、それらの根や茎、葉などを燃やした焦げかすなどを土の養分として利用したいのでその手伝いもお手数ですがしてもらいたいのですが・・。」
確か植物を燃やした灰は、そこそこ土に良い栄養になるって話しが異世界人の描いた本にあったっけ?
「構わないぜ?俺等も欲しいのは実くらいだし、ゴミにならずに済むならその方が良い。それに取り除いてはい終わりって言うのは後腐れが悪いからな。」
「そう言って頂けてありがたい。村の皆にはそのように説明しますので先にお昼でも食べていて下さい。一応村の外へ避難させたりするので時間が欲しいですから。」
「確かにその方が良いだろうな。じゃあ、1時間くらいで良いか?それとも2時間?」
「1時間で構いませんよ。皆、あなた方が対策してくれることを察しているのでそう言う準備は既に出来ているでしょうからな。」
なるほど。
確かによそ者で、しかも冒険者っぽいのが来たらそうとしか思わないわな。
「じゃあ、1時間後に開始する。」
「よろしくお願いします。昼は、こちらをご利用して頂ければ・・あ、何か用意しましょうか?」
「構わないさ。手持ちがあるからそれを食うよ。」
「そうでしたか。何かあれば近くにいる者であれば誰でも構わないので言って下さい。」
「あぁ、じゃあありがたく場所借りるぜ?」
「えぇ。」
で、俺等は村長の家の一角を借りて昼飯にした。
食べながらあーだこーだと言いながら楽しんだ。
フリージアが持ってきた弁当はあのファミリーのみんなが色々と作ったらしくホントに様々だった。
イリスさんが作った焼き菓子はそこらのと比べるもなく旨かったし、リカルさんが作ったのは芸術的で色んな意味で驚いた。
他にも色んなメンツが作ったであろうモノたちはどれもおいしかった。
フリージアもどれもおいしそうに食べていたし、俺が作った弁当を旨そうに食べてくれて嬉しかった。
今回はサンドイッチを作ったんだ。
パンはもちろん俺お手製だし、挟むものも一応自力で調達しているからな。
で、フリージアはかなり食うって言うのは知ってたから8斤分は作っておいた。
本人も持参してくるって聞いていたが念には念をってことだ。
それに、ハディたちもいるって聞いてたからな。
ハディたちからの評価も良かったし、フリージアもおいしいと笑顔で言ってくれたからとても満足だ。
フリージアが持ってきてくれた分も当然旨かった。
って言うよりも、重箱5段で1段が30センチの正方形でだ。
重箱からするとかなりでかいサイズ。
それと別で、3段の重箱があった。
こっちは、おやつだけが入ってた。
しかも、それとは別にジュースとお茶が2~3リットルずつあった。
・・翠さんがいるから保存出来るとは言え、量がパない。
それを、ハディたちと共にきれいに食べきった。
本人曰く、腹8分だそうだ。
「ホントにフリージアの腹はどうなってんだ?」
(?)
首をかしげているフリージアのお腹を撫でたり抱っこしてみたりしてみるが、体重はすっごい軽いし、細いし、贅肉とか無駄な部分はなかった。
それにしても、無駄な肉はついてないが、この年で既にくびれはあるし、女性特有の柔らかさを感じる。
うん、スタイル良いな。
・・って、やば。
ついやっちまった!
これ、普通に考えてセクハラだよな!?
「悪い、女性相手に気安く触った。」
即座に手を離して謝る。
{別に構いませんが、どうして謝るのですか?}
「リア・・普通は男は女に気安く触るモノじゃないんだよ。」
(?)
カルナが即座に説明してくれる。
正直ありがたい。
・・・そういうのを謝った本人が説明とは色々とキツい・・。
フリージア本人は首をかしげてなぜ?と疑問を浮かべている。
「リアからすれば、胸や尻とかそう言う部分を異性が触ったときがセクハラと思っているんだろうが、世間的には手やお腹でも十分セクハラの対象なんだよ。」
{そういうものですか?}
「そう言うモノだ。」
(・・コクリ)
よく分からないけどそう言うモノなら仕方ないか?と言う感じで頷いた。
んー。
色々と心配だ。
俺自身も気をつけないとな。
こういうところで嫌われたら立ち直れないし。
とはいえ、フリージアの腹の中は疑問が増える。
翠さんたちが言っていた仮説としては、燃費が悪いって言うのと、かなり頭を使っているからその分栄養をとらないと均等がとれないからじゃないかとのこと。
後は、あの幼い頃に満足に栄養をとることが出来なかった反動ではないか・・だそうだ。
確かにその辺りが正しそうだ。
けど、おいしいと笑顔で言ってもらえて俺は大満足だ。
やっぱりかわいい。
守りたいな。
「さて、腹もふくれて良い感じに落ち着いてきたし、時間もぼちぼち良い感じだから村長さんに始めて良いか聞いておこうぜ」
(コクリ)
それから俺たちは、村長さんの家を出て、軽く周囲を見渡す。
村の外に出ることになっていると聞いていたから、とりあえずその入口へ向かうと、そこに村長さんはいた。
「ずいぶんと早かったですね。もうよろしいのですか?」
「あぁ。これでも結構ゆっくりさせてもらったさ。そちらさんはどうだ?」
「えぇ、丁度皆外へ出たところですよ。」
「じゃあ、始めちまって良いか?」
「よろしくお願いします。」
「んじゃ、翠さん頼むわ。」
「オッケー」
翠さんは、ぴょんとフリージアの肩から飛び降りて、両手を地面へかざす。
すると、そこからものすごい量のゲルが流れ出し、地面の中へ流れ込んでいく。
それに併せてボコボコボコボコと地面が揺れる揺れる。
だが、建物は言っていた通り避けているらしく建物とこの村を囲っている柵だけは一切揺れていない。
・・ホント器用だな。
とか思っていると、周囲を覆い尽くしていたパウダーベリーがものすごい速度で地面の中へ引きずり込まれていく。
それはホントもうあっという間に。
そして、10分経過したかしてないかというわずかな時間で村の中には、建物以外雑草の1本どころか1かけらすらも残らない状態となった。
で、地面はと言うと、思った以上に問題はなかった。
地面の高さは微妙に下がっている気はするが、すっごいふかふかだ。
なんて言うか耕されている。
あぁ・・。
地面の中から引きずり込んだりゲルを通したりしてたからか。
「おぉ・・ここまできれいになくなるとは・・。」
「村長。」
「あぁ、彼らは期待以上だ。」
「ありがとう!」
「ホントに助かった!」
「アレのせいで畑仕事は出来ないし、洗濯物も満足に乾かなかったのよ。」
「そうそう。おまけに、村がアレに囲まれてたせいで気味悪がって商人すらも寄りつかなくなってたから買い物も満足に出来なかったし。」
「これまで俺等、狩りと保存してた食料でどうにか食いついないでたんだ。」
村のみんながとても感謝している。
ホントに良かった。
だが、その分これまでの苦労もついでに語ってくれた。(頼んでない)
ホント大変そうだな・・。
「んじゃあ、さっきのアレの灰をサクッと作っちまおうぜ。それらを蒔いたり混ぜたりした後でも良いから、パウダーゴーレムについて教えてくれ。」
「そうですな。とりあえず言えることは、パウダーゴーレムはこの周辺を数日に1回うろつくだけで村自体には襲ってくることはないと言うことです。ただし、村を出れば襲ってくるので村から出ることが一切出来なかったのですが、数日前から一切姿を現していないのです。」
「姿を見せない?なら良いんじゃないか?」
「そう思ったのですが、何と言いますか、嵐の前の静けさと言いますか、いやな予感がずっと続くのです。」
「気のせいだと思ったりしなかったのか?」
「最初はそう思いました。ですが、ワシ以外の者たちが同様の意見を告げたのです。それも、その感覚は毎日続くのです。」
不安って言うか、妙な状態が続くわけだな。
確かにそれが続くのはおかしいな。
それに、精神的に疲れがたまり続けるから良くないな。
「わかった。退治って言うより周囲の探索と解決って感じだな。どちらにしても見つければ退治するから安心してくれ。そこに探索が増えただけだ。」
元々この村に大量に襲い掛かってるとか、周囲をたむろしてるとかうろついてるとか思ってた俺等の勘違いだったわけだし。
「お手数ですがよろしくお願いします。」
さて、とりあえず灰を作るか。