アルナ、対人恐怖症対策
--アルナ--
魔法が使えるようになり、リア様専属のメイドになれた。
これまでの人生が嘘のような明るくて温かい人たちに囲まれて凄く幸せ。
とはいえ、私は対人恐怖症になっちゃったから、リア様やイリス様、セイちゃん以外の人たちだと1メートル以上は離れてもらわないと震えて動けなくなってしまう。
うぅ・・。
どうにか克服しないとメイド失格です・・・。
今はリア様本人による癒しでどうにか動けてる状態です。
私の天使、リア様。
そのかわいさで私を癒して応援して下さい。
傍にいてくれるだけで勇気がわいてくる・・気がします。
で、改めて実感しました。
リア様・・スケジュールがえっぐいです!!
私自身、勉強は暇さえあればしてました。
・・実戦である魔法が駄目だったのでその分を巻き返すつもりで。
けれど、それを上回る濃度で勉強と特訓が続きました。
時間の長さではなく濃度です。
1分1秒の間に教わる内容の深さがすさまじい。
単純に教えるのが上手というのもあるけれど、それ以上にすっごいハイペース。
とはいえ、ハイペースと気づいたのは結構後で、教わっているときは朝始めて気づけばお昼だったと思うほどだった。
で、朝と夜の2回、リア様と同じスケジュールで教わっています。
そして、先ほども言ったように1分1秒を無駄にしないわかりやすいけど凄い濃度の濃い勉強と特訓続きでした。
特に特訓。
暇さえあれば魔法の練習か魔力制御の基礎練習は必須で、言われたことをするのに慣れるとレベルが上がるの繰り返し。
しかもそのレベルは常に私自身が全力で出来る限界のやや上・・つまりは、限界を微妙に超えたレベル。
それを常に維持されている状態。
私自身魔法戦特化だけど、武器の扱いも慣れる必要があるのでそっちの素振りも行なっている。
・・どれをメインにしているというわけではないけど、全部してます。
リア様が言うには、扱えるモノはまんべんなく鍛えるべき何だそうです。
けど、メインに使うモノがあればそれを鍛える時間はその中では長めに。
何と言うか、これまで出来なかった分を一気に巻き返す感じでガンガン特訓してます。
私の場合、基礎練習はとんでもなく大量に行なっていたので逆にそっちの練習は少なく、実戦あるのみ!と言う感じで続けている状態です。
いやぁ・・うん。
食べる量が増えるのは納得だね。
けど、太るなんてことはあり得ない。
だって、その分動いてるから。
そして、寝付くまでに凄く早くなった。
だって疲れたんだもの。
それでも、リア様は疲れたと表情に出さないから凄い。
確かにキツいし大変だけど、私がずっと待ち焦がれていたことを今やってる。
それがうれしいし、頑張れば頑張るほど強くなれているんだと実感出来る。
それが凄くうれしいし楽しい。
翠さんが言うには、特訓は楽しいから続くし、魔法のバリエーションは広がっていく。
楽しくなければ続かないし、強くなれない。
実際、リア様は基礎練習でも素振りでもどれも楽しいから続いているし、アレだけ強いんだって。
凄く納得。
きついけど楽しい。
覚えるのは楽しいし、面白い。
最も大事なことは続けることじゃなくて好きになることなんだね。
で、お昼ご飯を食べている最中
-午後は、外に行きますよ。-
外・・・正直怖い。
多分リア様は、私の対人恐怖症のために出かけるんだと思う。
そんな私の気持ちを察したのか。
-大丈夫ですよ。皆さん優しい方々ですし、私の前で愚かなことはさせません。それに、そんな人はこの国に必要ありませんよね?-
薄らとほほえむリア様は凄いことを言いました。
・・リア様・・かわいいけど物騒です。
リア様にとっては、敵には容赦無用で、慈悲はないようだ。
怖いって言う気持ちが私よりも薄いのかな?
「わ、分かりました・・が、頑張ります」
「アルナさん、大丈夫ですよ。」
「リカルさん?」
ほどよい距離で離れたところからリカルさんが話しかける。
「俺もいますし、リア様もいます。我々は世界を敵に回しても家族を裏切らない。それが我々の鉄則です。」
シャスティさんたちも強く頷く。
そっか・・
私も家族なんだ。
-私にとって家族は、血のつながりではなく心の繋がりだと思っています-
「心の繋がり?」
-ご存じの通り私と血のつながりがあるのはパパだけです。カルナやシャスティたちは獣魔としての繋がりはありますが血のつながりはありません。当然リカルさんたちもそうです。-
うん、知ってる。
教えてもらったから。
-パパがパパと知るまでは血のつながりのある人は私の身近には一切いませんでした。育ての親となってくれたフォルシェンファミリーの皆さんやカルナたち。私にとっては血のつながりは家族とは思っていません。あくまでそれは知り合うきっかけ。そこから仲良くなり、互いに護り、正しい道へ導く。そんなことをするのが当たり前な関係が家族だと思っています。-
凄く私にとってはわかりやすかった。
血のつながりのある両親は正直クズだった。
実力だけで判断していたから。
そして、その周囲の人たちも全員がそうだった。
けれど、リア様やイリス様、リカルさんたちと出会った。
血のつながりよりもリア様たちとの心の繋がり・・と言うか絆?の方が大事だ。
それに、私が心の中で思い描いていた家族はリア様たちとの温かくて楽しい日々を過ごすことだった。
それは今まさに目の前で広がる光景。
うん。
「そうですね。」
本当に自然に笑みを浮かべることが出来た。
「改めてようこそ、お嬢様率いるエトワール家へ」
「はい!よろしくお願いします!」
とはいえ、他の人たちはやっぱり怖いのでリア様を抱っこしてます。
足下にはシャスティさんが近くで構え、隣はハディさんがいてくれて、その背中にはカルナさんがいる。
斜め前をリカルさんが先導してくれる。
ティアさんたちはお仕事を優先するのと、私に気を使って同行するのを辞めてくれたみたい。
・・いきなりたくさんの人とお出かけはまだ・・大変だから。
で、私は一言もしゃべれずにぺこぺこと頭を下げるだけになってた。
声はたくさんかけてもらえている。
そのたびにリカルさんが代わりに私が対人恐怖症だと説明し、その特訓中だと伝えてくれる。
そして、リア様はたくさんの人たちに愛されていることが幸運となり、あっさりと納得され、凄く優しくしてくれる。
凄くうれしい。
ありがたいのにやっぱり他人は怖くてしゃべれなくなってしまう。
頭を下げたり普通に歩けるのはリア様を抱っこしているから。
リア様のぬくもりを感じているから。
そのたびに、リア様は最高の癒しだと納得されたけど。
やっぱりそうだよね!?
私にとっても最高の癒しである天使様ですからね!
それと・・リア様はやっぱり食べるのが好きなようだ。
あっちこっちで色んなのを食べ歩きしてる。
どれもおまけしてくれたりサービスしてくれる。
で、凄い量を食べてる。
・・・朝、どんぶり5杯とおやつと山盛りのサラダとその他数種類と色々食べてませんでした?
私ももらってるけどさすがにどれも全部食べるのは無理だからリア様から一口だけもらって後はリア様に食べてもらってる状態。
・・・この細い体のどこに吸い込まれているんだろう?
凄く体重も軽いし、無駄なお肉もないのに・・・私はあっという間に太っちゃうんだよなぁ・・・。
どれも胸にいってるみたいでその他は・・ぼちぼち?って感じだけど。
まぁ、リア様との特訓は色々とハードだから太る以前の問題だけどね。
途中、教会にも行きました。
毎日必ずお祈りをするんだそうです。
シスターさんや神父さんたちがリア様へ向ける視線は凄かった。
何と言うか、崇拝相手って感じで。
・・・そういえばリア様ってクテン様だったっけ?
で、教会を後にしてあっちをウロウロこっちをウロウロしているとどこからか凄い砂煙をまき散らしながら突進してくる女性1人。
と、それを追いかける男女数人。
が、私の方に向かって襲って来た。
「ひぃっ!!」
「り~~~あ~~~ちゃ~~~~~~んぶへっ!!」
きれいな女性だったけど、リア様が張った結界に思いっきりぶつかった。
で、追いかけてる人たちが追いついた。
「大丈夫か?・・その前に毎回突撃するなよ。」
「そうだぞ?相手に迷惑だろうが。」
「落ち着きましょうよ・・フリージアちゃんは逃げないんですから・・多分」
「だって!癒しのリアちゃんがいるんだよ!?突撃するのが礼儀だよ!?」
「礼儀じゃない・・それは誰に対する礼儀なんだよ・・」
「慌ただしい奴だとしか思われないぞ?」
「ほら・・ね?頼りになるお姉さんなんでしょ?なら、落ち着いた方が格好いいよ?ね?ね?」
「そ、そうね!」
「皆さんは相変わらず忙しそうですね。」
「リカルか。久しぶりだな。それと、家のがスマン」
「いえ・・と言いたいところですが、今回に関しては悪手でしたね・・。」
とリカルさんがちらりと私を見る。
「ん?その子は?」
「アルナさん、4年生でリア様専属メイドとして勉強中。そのついでに対人恐怖症対策中です。」
「対人恐怖・・なるほど。本当に家の連れが失礼した。申し訳ない。」
「い、いえ・・お、お気になさらず・・」
翠さんに教わったんだけど、彼らはヴァニタスというパーティメンバーで、リーダーのダンさんと、リリさん、アンさん、ゼルさん。
で、さっき突撃しようとしたのはリリさんで、リア様大好きな人で暴走癖あり・・だそうです。
内面に関しては、リア様のお母様にそっくりだそうです。
・・・リア様そっくりでこの暴走・・・・・やっぱり想像がつかない。
「で、この子がリアちゃん専属メイド?・・・いーなー。私もリアちゃんの専属になりたい!」
「わがまま言うな。一応イリス様直属の部隊ってことになってるだろうが。」
「そうだけど・・ぶーぶー」
何かリリさんはかわいい人っぽい。
「お嬢様に対して何人もぞろぞろと専属にするのはあまり好まないようなので、イリス様に打診しては?おそらくイリス様の業務の補佐とエトワール家の護衛などの役割になるかと思いますが。」
「うん!そうする!イリスさんは今どこ?」
「・・確か、本日は西側一帯で相談屋として約束事が複数あると伺っているのでその辺りを探して頂ければ。」
「うん!行く行く!行こう行こう!」
「ったく・・依頼を休んでのんびりしようと思ったらこれだ・・まぁ、楽しそうだし良いけど。」
「ホント騒がしい奴だ・・慌ただしくて申し訳ないな。」
「い、いえ・・」
「まぁ、何か困ったことがあれば声をかけてくれ。依頼の時以外はこの国のどこかにいると思うから」
「は、はい。」
「では、また」
と言って去って行った。
・・明るい人たちというか、ホントに慌ただしい人たちというか・・嵐のような人たちだったなぁ。
特にリリさん。
で、そのリリさんを抑えようと頑張るゼルさんとアンさん
そして、保護者ポジションになってるダンさん。
うん。
ホント楽しそう。
次にギルドに来ました。
ギルドに私が1人で行くと毎回ナンパがひどいんだけど、リア様のおかげでそれは皆無になりました。
まぁ・・ハディさんが威圧を軽く発動してるからと言うのと、リア様本人が私に抱っこされている時点で関係者と認識されたらしい。
・・ありがたい。
リア様・・なむなむ。
「あら、リアさんいらっしゃいませ。」
わぁ・・きれいなお姉さん。
-こんにちは。-
「本日は依頼で?」
-私を抱っこしているのはアルナさんと言いまして私専属のメイドになったのですが、対人恐怖症なので私の知り合いがいそうなところを順番に回っています。-
「それでここにですね。アルナさん、私はアリス。イリスさんの懐刀である護衛兼執事のラウの嫁です。」
チラッと見たことがあるお兄さんだっけ?
凄く気配が薄くて印象が凄く薄いけど。
その人のお嫁さんなんだ・・。
「は、初めまして・・」
「他のところでメイドをするとかなり大変そうですが、リアさんの元ではそういうのは皆無ですから安心して良いですよ。ご存じとは思いますが、とても和気藹々としているので。」
はい・・それはもう実感済みです。
だって、イリスさんもティアさんたちもリカルさんたちも同世代の先輩後輩くらいの感覚だったし、メイドとか絵師とか私兵とかは、あくまでもメインで対応する範囲での商業名でしかなかったし。
職業名に対するそれ相応の態度などはほとんど皆無だった。
まぁ、そう言う場だとしっかりする必要はあるらしいので学んではいるし、きちんとした態度は出来るらしいけど。
でも、勉強中で人相手にダメダメな私にとっては凄くありがたいと思う。
・・この人・・リア様たちと印象というか雰囲気が似てるのか私でもある程度落ち着いて話が出来るかも。
とか思っているとこちらにとあるお兄さんがやってきた。
「あら、ラウ。いかがなさいました?」
あ、この人がラウさんでイリスさんの懐刀でアリスさんの旦那さん。
・・ホントに気配が薄い・・目の前にいるのに忘れそうになる。
でも、強いな・・この人。
「あぁ、アリスに用があってきたんだ。」
「私に?仕事は?」
「休憩中だ。アリス・・」
「はい?」
「俺と一緒に過ごさないか?」
「え?」
「今は、場所を間借りしている状態だろう?やっと、良い物件が見つかったんだ。俺等2人で過ごすには丁度良いくらいの広さなんだ。・・・ちょっと狭いかも知れないが、リア様たちの家もここまでも結構近いんだ。」
おぉ!
告白だぁ!
既に結婚してるらしいけど、どうやらアリスさんが入ってるクランの拠点の1部屋を間借りしているらしく、そこから離れて二人っきりで過ごしたいんだって。
キャー♪
しかも、ラウさんは自身の手持ち金だけでそれを用意した。
格好いい!
格好いいよ!
さぁ、アリスさんの返事は!?
と思っていたらフラフラしながら下を向いてラウさんの元まで近寄る。
「アリス?嫌なら嫌と言ってくれ。俺1人で過ごすのも良いし、今の形のままが良いならその通りにする。ムリはしてないし、無理強いはしたくない。」
すっごいおどおどしてるけど、凄く優しい。
「アリス?・・むぐっ!」
「何を言っているのですか!私はずっと待ってたんですよ!?ラウ、あなたと二人っきりで過ごしたかったのはこちらも同じです!嫌だなんて言うはずがないじゃないですか!」
満面の笑みでラウさんに抱きついてはっきりと断言するアリスさん。
おぉ!
OKでた!
おめでとうラウさん!
声には出さないけどおめでとう!
「よかった。・・正直不安だったんだ。」
「全く・・夫婦なんですから嫌だなんて言うわけがないではないですか。嫌なら最初から結婚してませんよ。」
「そうなんだが・・やっぱり不安だったんだよ。」
「ホントに心配性なんですから。」
「兄ちゃんよくやった!」
「おめでとう!!」
周囲の人たちがやんややんやと褒めて、ラウさんは恥ずかしそうに頬をかきながらありがとうございますと告げる。
「それで、リア様を抱っこしてる彼女は?」
「リアさん専属のメイドさんでアルナさんだそうですよ?対人恐怖症の対策中だとか。」
「あぁ、君がイリス様が言っていた例の・・・俺はラウ。イリス様専属の騎士であり執事です。何かあれば言ってもらえれば。」
-この国最強の黒騎士である騎士団長ノクスさんと互角レベルで強いんですよ?-
「え!?」
クラリティ王国最強のノクス騎士団長様と互角!?
「大げさですよリア様。彼とはジャンルがそもそも異なるのですから。」
「そう言いながらラウ。あなた、ノクスさんと模擬戦をして互いに決着がついたことがいまだにないとか言ってませんでした?」
「まぁ・・そうなんだが。」
ホントなんだ・・すごい。
「そうだ、アリス。」
「どうしました?」
「暇つぶしにお菓子を作ったんだ。後で食べて欲しい。」
「ありがとうございます・・ホントにラウは主夫ですね。」
「うぐ・・家事は意外とやりがいがあって楽しいんだ・・。」
「ふふ・・私も同感ですよ。ラウに負けないくらいお料理を頑張らないといけませんね。」
「それはお互い様だ。」
凄く仲が良いんだね・・この2人。
ちなみに結婚は出会って数分だとか。
あまりにも速すぎて本人たち以外は全員が大パニックになったそうです。
そりゃそうだよね。
その後、ギルドを後にして私たちは学園の学園長の下へやってきた。
そこには、ネルさんもいる。
「久しぶりじゃなアルナ。」
「はい。ご無沙汰しております。」
「元気そうで何よりだよアルナさん」
「はい。ご迷惑をおかけしました。」
「お主が気にすることではない。むしろいち早く気付けなかったワシらのせいじゃ。申し訳なかった」
「そんな!謝らないで下さい!私が・・私が未熟だったことが原因なんですから」
「じゃが、筆記試験ではトップ10に入るほどをキープし、魔法は扱えずとも武器を使った接近戦では平均を超えるほどの成績はとれていると報告を受けておるぞ?」
思った以上に成績は悪くなかったみたい・・よかった。
人相手は怖いけど、学園長とネルさんは怖くなかった。
「・・それしか取り柄がなかったので」
「世の中には、それらもロクに出来ず、魔法もしょっぼいやつしか使えぬ輩もおるというのに・・嘆かわしい。」
「大丈夫ですよ学園長。しっかりむしり取ってきましたから。それに、それらの被害はアルナさんの名を伏せて思いっきりあちこちに暴露してきたので。」
「よくやった。」
「いえいえ」
ネルさん・・穏やかに笑いながらえっぐいコトしてませんか?
それに、学園長・・褒めないで・・まぁ、ある意味私が原因なんだけど。
「それで、調子はどうだい?」
「リア様には大変よくしてもらってます。ホントに・・数日前までが夢だったみたいに」
ホントにリア様には感謝しきれないほど感謝でいっぱい。
「それだけ穏やかに笑えるならそれでいい。・・フリージアにも感謝するぞ」
-いえ。とても貴重な体験をさせてもらいましたので。-
リア様・・貴重な体験って・・
「貴重とは、いじめ対策という意味かな?」
-それもありますが、魔法が扱えないと言う部分ですよ。-
「そういえば、数日前よりも魔力をはっきりとアルナから感じ取れるが?」
さすが学園長・・わかるんですか。
-サクッと解決したので普通に魔法を扱えるようになってますよ。今は私を筆頭に鍛え直している最中です。-
私直属のメイドですからとリア様が告げながらそう答える。
「ほう!治ったのか!!原因は何だったんじゃ?」
学園長が凄い食いついてきた。
ネルさんもどこか期待した目をしている。
そういえば、今気づいたけどネルさん服リニューアルしたんですね。
凄く格好いいです。
-魔力を体の外に放出させる穴がかなり小さくなって蓋されているような状態だったので体内で魔力を扱えても外に放出出来なかったことが原因だったようです。-
「なるほど・・それなら身体強化が出来ても魔法を外に放出出来なかった理由が納得出来るね。」
「それで、属性は?」
「念動というものです。空間魔法の一種だとありました。」
「ほう?念動か・・それはまた珍しいモノを覚えたのう。」
「学園長、確かそれって・・」
「うむ、モノを動かすだけのモノじゃが、かなり強力なものじゃ。力加減がある意味では難しいな。」
「重さを一切無視して出来るんでしたよね?」
「そうじゃ。どちらかと言えば防御方面に強いな。攻撃するには投げつけるモノが必要になるからの。」
「確かにそうですね。フリージアさん、頑張って下さい。」
(コクリ)
やっぱり知ってたんだ。
ホントにこの魔法は凄いんだ・・頑張ろう。
「アルナのような心優しいモノが覚えていて良かったの。」
「そうですね。クズが覚えていたらかなりやばかったですね。」
動けないようにしてしまえばどんなことも出来るからと告げるネルさん・・言われて見ればそう言うやり方をすれば相手を殺すこともエッチなことをするのもやりたい放題なんだよね・・。
ホントにやばいとき意外はしないけど。
「それを抜きにしてもかなり鍛えられておるな。」
「はい。リア様を筆頭にしっかり鍛えてもらっているので。」
いや・・ホントに。
おまけに睡眠時間もきっちりとれてるし、ご飯も栄養たっぷりでたくさん食べてるし、癒しもいっぱいだし。
「そうかそうか。魔法の天才のメイドじゃからな。頑張らねばな。」
「はい。」
学ぶことも多いけど、どの人も様々な方面で優秀な人たちが集まる場所だからホントにそう言う意味では素晴らしいところだと思う。
「ふむ・・どうせじゃ。お主クラス異動せい」
「・・・はい?」
私がクラス異動?
「あ、それは良いですね。ですが周囲が色々言う可能性があるので適当な職員とがち戦闘させてしまえば納得出来るのでは?」
「そうじゃな。」
え?
何かとんでもないことを言われているような!?
「え!?あ、あの!?どういうことですか!?」
「む?アルナは目に見えて力をつけ始めておるからな?周囲を模擬戦で黙らせて勝てばSクラスに異動させようかと思っておるだけじゃ。」
フリージアに鍛えられているし確実に勝つだろうしとカラカラと笑う学園長。
けど相手は先生相手だよ!?
「わ、私が・・私ごときが先生方相手に勝てるなんて!」
「過小評価じゃのぉ。じゃあ聞くが、今お主が抱っこしてるお姫様は魔鏡姫と呼ばれている魔法技術最高峰である魔法反射を自在に操る天才じゃぞ?おまけにクマもどきのスタンピートもその子が率いるパーティメンバーだけで殲滅しておるのじゃぞ?・・そんな子がこの学園の教師ごときに負けるとでも?その魔法の天才に直々に鍛えられているのに加えて魔力のコスパも良い強力な魔法に目覚めたお主が生ぬるい生活を送っておる教師ごときに劣ると?」
「そ、それは・・」
はっきりと言うと条件的には私の方が上だ。
と言うより、リア様・・とんでもない魔物をしれっと倒してるんですね・・。
聞くと、その他にも何体も単独パーティだけで倒すにはほぼ不可能じゃない?って言うのをホイホイ倒してるっぽい。
けど相手には年齢に比例する経験があるんだし・・とか思っていると。
「たかだか十数年程度の経験で魔法反射を覚えられるのであればこの世界はもっとエグいことになっとるわ。」
・・・言われて見ればそうだ。
それだけ年月がたっているのに未だに魔法反射を扱える人は歴史上でも片手に収まる程度と言われているのに、いないと言うことはその程度だったってことだね。
「ちなみに言うが、ステータスにSが1つでもあればそれだけで十分教師と対抗出来るからな?どの項目でもだ。」
え?
「SがなくともAが並ぶだけでもあまり変わらん。その他はステータスに表示されない技術面程度じゃ。」
・・私、SとAは両方ともあるんですけど・・
「その様子だとあるようじゃな?」
「は、はい。」
「ちなみに、俺が知ってる念動は、技名がステータスに出てこない珍しい魔法ってことだよ?」
「え?それどういうことですか?」
「それが、結局は自分だろうが相手だろうがモノだろうが大きさを一切無視して動かし、操るだけだからね。」
あー・・なるほど。
「だから、万が一ステータスを見られたとしてもこの魔法をどれだけ上手く扱えるかはバレることがほとんどないから面白いんだ。」
過去に魔法について調べて知ったらしい。
ホントに珍しい。
大抵は何かしら出てくるのに。
「と言うよりも、魔法以外でもフリージアさんは優秀だし、その周囲のメンツもかなり優秀だからその人たちに教わってるなら実力がない方が逆におかしいって言うのが俺たちの意見なんだけどね。まぁ、そのくらいの実力を測れずして人生生きていけるなんて到底無理だと思うけどね。」
「な、なるほど。」
確かに・・
翠さんもシャスティさんにカルナさんもいるし、おまけに天才王子であるイリスさんもいる。
しかもその他にも魔術師団のみんなもリカルさんもみんなそれぞれの方面でかなり強いし優秀だ。
・・それと、リカルさんもかなり強かった。
固形物から液体にまで自在に変化させることが出来るらしくその特性を活かしてかなり変則的な攻撃をしてくるあの技は凄く対応が難しい。
本人が言うにはたいした規模が出来ないから奇襲程度らしいけど、その奇襲程度が逆に恐ろしいんだけど・・。
大きければ逆に対応しやすいけど、小さいから対処しづらいんだよ?
「と言うよりも、これはワシら学園側からのお詫びとして受け取って欲しい。」
「そ、そんな!う、受け取れません。皆さんが悪いんじゃないんですから!」
「いや、身分を無視する制度にもかかわらずいじめがでていたことがいけないのじゃ。しかもその理由が魔法を扱えない・・それは、学園の存在意義に問題が出るかなり大きな問題なのじゃ。きちんと対処しなければならぬ。」
「だから、今回の件はアルナさんの名前は伏せてるけど大々的に処罰させて、情報も各地に公開しているんだよ。こちら側の理由でもあるんだ。・・だから、ある意味では受け取ってくれないと逆に問題なんだよね・・あはは。」
「そういうことでしたら・・ありがたく。」
で、受け取ったのは扇子・・・・これは、黒檀っていうタイプだったっけ?
小さな花が掘られているタイプで凄くきれい。
「黒壇扇子というものでしたか?」
「よく知っておるな。そうじゃ、木彫りの扇子じゃな。これは、普通に扇子として使っても良いが、杖代わりにもなる優れものじゃ。」
「しかもそれ、普通に鈍器としても利器としても十分武器として扱える優れものなんだ。」
話しによると、これを経由して魔法を使うと魔力制御のサポートをしてくれるのに加えて、最適化してくれるので普通に魔法を扱うときよりもぐっと楽になるし、威力も上がるんだとか。
とじてそのまま殴ってもいけるし、広げて振えば利器として切り裂くことも出来る。
おまけに修理も魔力を長期間流せば直せるらしい。
聖魔の黒壇扇子
魔力制御のサポートと、魔力の最適化を行なってくれる黒壇扇子
非常に頑丈で鈍器としても利器としても扱うことが可能だが、かなり軽い。
常に所持することで魔力回復速度をささやかながら上げてくれる。
破損した場合、長期間魔力を流すことで修復可能。
ステータスに出てきた。
これ・・凄そうなんだけど。
「本当によろしいのですか?」
「構わぬ。是非受け取って欲しい。それのもらい手を丁度探していたところだったんじゃ。お主がぴったりだ。」
「俺もアルナさんがぴったりだと思うよ。恐縮するんだったらそれにふさわしい存在になれるように頑張ってよ。そう決断して良かったと俺たちが思えるようにさ。」
「はい。頑張ります。」
登校するにはもうちょっとかかりそうですけど、頑張ります。
けど、私が扇を武器として扱えるようになってたのは丁度良かったかも。
これからは、これをメインに頑張ろっと。