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魔法が使えない先輩

--アルナ--

この国の御姫様であるフリージアちゃんに救われ、その家でやっかいになることになりました。

私を追い出した血縁者とはしっかりと縁切り出来たから私リニューアルです。




とはいえ、まだ学園に行くのが怖くてフリージアちゃんの家に引きこもってる状態です。

家事とかお手伝いしてるんだよ?

ホントだよ!?


とりあえず、家の方々全員と仲良くなってから学園に行く予定です。




で・・

「リアの獣魔、カルナだ。こっちのワニはハディな。よろしく」

「ニャー」

-私は翠だよ。こっちはラナ-

フリージアちゃんの獣魔たちと自己紹介をしている途中です。


この子の獣魔は凄い子たちが集まってるようです。

意思疎通がしっかり出来るワニと、普通に喋ってる足3本のカラスと尻尾が長くて普通に文字を書いたりしてる猫と普通におしゃべり出来るゲル種の子とウールスフィア

・・バリエーションが豊富すぎません?


「よろしく・・しばらくお世話になります」

「あぁ、気楽にな。何かあれば俺等でも十分対処出来るから遠慮なく言ってくれ。」

「ありがとうございます」

鳥さん・・えと、カルナさんがどうやらこの子たちのリーダー格のようだ。

まるで年上のお兄さんと話をしている気分になるくらいしっかりしてる。


ちなみに今は、私が目覚めた翌日の朝。

朝食を食べた後、フリージアちゃんが朝の訓練をしている姿を眺めながら自己紹介の途中です。

私は一応魔力制御の練習だけしています。

・・それしか出来ないから。

それと、昨晩はフリージアちゃんの部屋(私が寝かされてた部屋)で一緒に寝ました。




・・けど、ちょっと違和感がある。

気絶する前よりも魔力が凄くスムーズに流れる。

それに、引っかかったような妙な違和感もない・・どういうことだろう?

と思っていると翠さんが教えてくれた。

-アルナを治療したリアの友達のセイが怪我の治療をしたときに違和感があった部分は取り除いて、魔力回路がボロボロだったりやけに不安定だったりって色々あったのをついでに治したらしいよ。そのせいで体力は削られるからしばらくはしっかりご飯を食べるようにだって。-

それに、体の調子もすごく良いと思っていたらそういうのも全て治してくれたみたい・・。


ホントに感謝しなきゃ。

どこか良いタイミングでお礼を言わなきゃ。

けど、ちょっと外が・・と言うより他の人たちが怖い。


で、なぜか草団子を食べさせられている私です。

朝食はしっかり食べたんだよ?

けど、食べさせられてる。

ついでにミックスジュース。

これは・・果物?

「あぁ、その団子は定期的に食ってくれ。それは一種の栄養剤だ。体には良いから安心してくれ。リアもよく食べてるし、下手な病人食よりもずっと良いものだから。」

「そうなんだ・・ありがとう」

これ栄養剤だったんだ・・。

昔はフリージアちゃんは凄く小食だったらしく少しの量で少しでも多くの栄養をとれるようにと色々考えて作られたのがこのお団子らしく、お野菜や果物、薬草などを調合した一品なんだとか。

で、こっちのジュースは絞りたての果物と味を整えるのにやはり薬草を使ったオリジナルの一品らしい。

・・器用な人たちが揃ってるみたい。




それにしても・・

「フリージアちゃんはいつも?」

魔法で作り出したらしいゴーレムを十数体呼び出してそれぞれが違う武器の素振りを行い、本人は蛇腹剣?っていう剣と鞭を組み合わせたようなものを振るっている。

・・扱いが難しそうなのに器用だよね?


「ん?あぁ、アレは毎日朝と学園から帰ってきた後の計2回は必須だな。休みの日は午前中いっぱいは勉強と訓練をしてる感じだ。まぁ、依頼次第ではやらずに夜に軽くするときもあるが。」

何と言うスケジュール・・。

みっちりと勉強も特訓も続けてるんだ・・すごいなぁ。

「それに比べて私は・・」

「それだけスムーズに魔力制御が出来てるのも凄いと思うぞ?」

「ありがとう・・けど、これしか出来ないんだ・・。」

「どういうことだ?」

「属性を帯びない初歩的な魔力制御による身体強化は出来るんだけど、それ以外は一切出来ないの。」

「それは、例えば火属性だったら火を出せないってことか?」

「うん。一度もでてきたことがないんだ・・ってごめんなさい!愚痴を聞かせてしまって」

「気にしないでいい。それならリアに見てもらえば何か分かるかもな。」

「え?フリージアちゃんに?」

魔法の天才だとは聞いてるけどそんなことも分かるの?

「リアは特殊な目をしててな?体内の魔力の流れから魔力を視て何の魔法か解析も出来る。」

それって・・

「相手が魔法を使おうと魔力を巡らせた段階でどの魔法を使おうとしたかも含めてバレるってこと?」

「そういうことだ。まぁ、身体能力が並以下だからその先読みでかろうじて対応出来てる感じだから魔法だよりなんだが。」

いや、それでも十分凄いから。

けど、魔力回路を目視出来るなんて・・しかも、魔力を視て何の属性かもバレるって・・凄いね。

さすが魔法の天才。


で、フリージアちゃんは丁度訓練を終わらせたらしい。

てくてくと戻ってきたと思えば、自然と私の膝の上に座り、近くにおいてあったジュースとおやつをもぐもぐ。

・・ホントによく食べるね?

さっきも朝ご飯どんぶりで4杯くらい食べてなかった?


「なぁ、リア。」

(?)

「アルナの魔力の流れを視てくれないか?魔力操作はできても属性に変換出来ないらしいんだ。」

(コクリ)

無言でサクッと話が進んだ。

フリージアちゃんは喉が弱いらしくしゃべれないらしい。

けど私はその声を聞いたんだけど・・と伝えたところ、歌は技だからのどに影響がなく、一言程度ならしゃべれるけどそれ以上しゃべろうと無理をすると吐血するんだとか。


・・無理したら駄目。

で、すっごいジーっと私の胸を見てる。

ついでに揉まれてます。


けど、私の胸・・の奥?心?内面?を見ている感じがしてちょっとむずむずする。

で、すっごい見てます。

ちょっと・・その・・美少女を膝にのせてじっと胸を至近距離で見られているという状況・・ちょっと目覚めそう//


しばらくすると何かわかったらしい。

-基礎と呼ばれる属性の表示はないですよね?-

え!?

なんでわかるの!?

「う、うん・・ないよ?」

「じゃあ、何と出てるんだ?」

「それが、文字が読めなくて・・」

何というかバグってるんだよ。

”ね”と”ど”という2文字は読めるけど。

-魔力を体の外に出すことはできますか?-

「出そうとすると見えない壁があるみたいに体から出ていかなくて・・だから身体強化しかできなくて・・」

「リア、わかるか?」

-体の中はセイちゃんがどうにかしてくれてるので特に問題はないですが、体の外に出ていく部分は縮んでると言いますかすごく穴が小さくて蓋されてるのと同じくらいです。-

フリージアちゃんが言うには、魔力回路を経由して体の外へ魔力を出す部分には見えない穴があるらしく、そこから魔力を出すことで魔法を発動させているのだとか。

その穴は、毛穴よりも小さく、そしてたくさんあるんだそうです。

「じゃあ、その穴をどうにか開けるか広げれば魔法が使えるってことか?」

-だと思いますが、アルナさんが今も発動できないということは10年以上続けても開かなかったということかと・・-

そう。

私は、ずっと続けてきたけどダメだった。

だから今も使えない。

「じゃあ、無理なのか?」

-1つ方法がありますが、かなりきついですよ?-

え?

「何か方法があるの!?」

「アルナ、落ち着け。その胸でリアを埋めるな。・・幸せそうだが。」

あ、つい抱きしめちゃった。

そのせいで私の胸にフリージアちゃんが埋もれてる。

で、そのまま揉まれ、顔をスリスリされ、においを堪能されてる・・たくましいなこの子。


「・・ごめんなさい。」

-いえ、ごちそうさまです。-

「お、お粗末様・・です?」

しっかり堪能したらしい。

「あほ言ってないで説明してくれ。」

(コクリ)

-翠ちゃんと同じ意見だったのですが、外から魔力を無理やり流し込んでその穴を広げるんです。私が魔力を流して、翠ちゃんが細かい部分を制御してくれる感じです。ですが、その穴をあける動作は全身に激痛が走るんだそうです。-

「構わないから・・お願い・・私を助けて・・」

縋り付くように私は年下の美少女にお願いしてしまう。

情けなく見えても構わない・・ほんの少しでも可能性があるなら私は信じたい。


-わかりました。ですが、これは私以外にも協力者が必要ですので、今日のお昼過ぎから始めます。ですので、それまでにしっかり休んでご飯を食べてください。かなりきついですよ?-

生理痛を数倍にしてそれを全身にやられちゃうレベルらしい・・うぅ・・頑張る。




って、あ!

「学園にいかないと!!」

「あぁ、アルナは休みだ。学園長から許可はすでに出てる。1週間や2週間は軽く平気だ。もし気になるなら家の連中が勉強を教える。特訓も手伝う。」

「い、いいの?」

「構わん。リアにはいつもしていることだ。」

-では、私は学園に行ってきますが大丈夫ですか?-

「う・・うん。」

正直フリージアちゃんがいないのはすごく不安。

-カルナたちが全員ついてくれますし、それ以外の人は全員追い出してるので大丈夫とは思いますが、なるべく早く帰ってきますから。それにここにはこの家に住む人たち以外は絶対に近づくことすらできないので安心してください。-

「え?それはどういう?」

「外を見ればわかる。」

え?

外?


・・見るとスリープシープがたくさんいました。

あ、ここってあの区切られた区域の中だ。

「わかったみたいだな。この区域は俺らの家族だけが唯一認められた場所だ。無理やり入ろうとすれば羊たちが動く。ちなみにリアはその羊たちと仲がいいからその関係者だとわかってくれればとりあえずは問題ない。」

なるほど・・この子ホント愛されてるなぁ。


で、部屋の奥から視線を感じる。

と思いそちらに視線を向けると獣人の女性3人が隙間から心配そうに私を眺めてる。


・・何といえばいいんだろう。

その・・あぁ、アレだ。

初めてのお使いを心配して陰から見守る親って感じだ!

・・体験したことないけど。


「はぁ・・アルナ、あいつらは大丈夫か?」

「え?・・・たぶん。」

「・・そうか。おい、そこのデバガメ共こっち来い。不用意に騒がずアルナから不用意に近づかないことを誓えばこの子の世話を許す。」

カルナさんがそういうと居心地悪そうにこっちにお姉さんたちが来た。

「申し訳ありません・・心配で・・」

「師団長が心配してたし私たちも心配だったんだよ?」

「ですので、師団長が不在の間、私たちでお世話してはいかがかと思ったのですが、怖がらせないか不安で・・」

あぅ。

すっごい心配されてた。


「はぁ・・気持ちは分かった。だが、ホントに気をつけろよ?基本的に俺らがそばにいるが、これ以上トラウマを植え付けたらリアのモフモフ地獄を外でやらせるからな?」

「ひぅ!それは!それだけは!!」

「はい!気を付けます!」

「外だけは!アレをされてるときの顔は見せたくありません!」

すっごい怖がった。

・・この子、この人たちに何したの?

って、モフモフ地獄って何?


コッソリ翠さんが教えてくれたんだけど、フリージアちゃんは撫でるのがすごく上手らしく、特に獣人相手や動物相手だと効果は抜群で腰砕けになるレベルで気持ちが良いんだとか。


・・・・あぁ。

ストレートに言ってしまえば気持ちが良くてとろけた表情を他人に見せたくないと・・うん、納得した。

確かにそのお仕置きはいやだ。


羞恥心で死ねる。

「ならよし。ついでに勉強も教えてやれ。それと、メイドとして学んだんだろ?その辺りも教えてやれ。一応学んでる最中らしいし。」

「そういうことでしたらお任せください。」

「任せてー。」

「かしこまりました。」


「それと、もう1組と1人も来い。ついでだ・・一応距離は大きめに離しとけ」

もう1組と1人?

と思うと、今度は男性が3人。

ちなみに表情は気まずそう。


がっちりとした体格のお兄さんと、髪をツンツンさせた熱血っぽいお兄さんと、穏やかそうな文学系なお兄さんがやってきた。

「順番にアース、イグニス、リカルだ。アースとイグニスはそっちの女性陣3人とまとめてこの国の魔術師団で、リアがその団長。」

え!?

フリージアちゃんはこの国の魔術師団長!?

騎士団長の魔法バージョン!?

ホントに優秀なんだ・・・。

「で、もう1人は、リアの専属絵師だが執事としても学んでるから、基本的な身の回りの世話は男が怖くなければ彼がしてくれる。」

「よろしく」

「よろしくな」

「よろしくお願いします。この家のあちこちに飾られている絵は一応俺が描いたものです。」

この家のあちこちにきれいな絵が飾ってるなぁと思ったらこのお兄さんのだったんだ。

すごくきれいで、上手。

「すごく素敵だと思います。」

「ありがとうございます。一応二つ名としては、ビルドアーティストと呼ばれていたりします。」

あのビルドアーティスト!?

すっごい大物がいたよ・・フリージアちゃんの専属絵師になってたんだ。


すごい納得する。

私も同じ立場だったらそうなると思う。

「一番わかりやすいのを言えば、あの芸術的な飯を作った張本人だ。」

あれ作ったのこの人!?

あのやけにリアルな鳥やドラゴンをご飯で作った!?

で、彼はというと。

「あはは!絵師ですので」

と軽~く流された。


えぇ・・それでいいの?

芸術方面っていうのはわかるんだけど、絵って・・関係ある?




とか言ってる間にフリージアちゃんは学園へ出かけた。

リカルさんは送迎としてついて行った。


・・ってアレ?

「イリスさんは?」

「あぁ、あの人は忙しい人だからな。すでに出かけてるよ。」

町のあちこちで預言者として相談屋をしてまわっているんだそうな。

後は、依頼をぼちぼち受けたりとか。

「それと私のために申し訳ありません。お仕事も休ませてしまったようで・・」

「あぁ、ご心配なく。元々私たちは師団長直属の部隊なので、師団長の命令が第一ですし、業務自体はここでもできますから。」

魔道具の修理などをメインにいろんなことをしているらしい。

すごいなぁ。


そういえば

「あの・・朝ご飯の時に出ていたパンすごくおいしかったんですけど、手作りだったりしますか?」

ホントにあのパンはおいしかった。

色んなのがあったけどどれもホントにおいしかった。

それに、すごく器用な人たちが集まってるし作っててもおかしくない。

と思ってたら

「あぁ、アレか。あれは死神パンだ」

・・・すごい物騒な名前のパンだった。

聞くと、この国にいる死神という二つ名の人が作ったパンらしい。


あ・・確かちらっとお店を見たことある。

すっごい物騒な看板のとこだよね?

・・こんなにおいしいパンを作ってたんだ・・実は良い人?

見た目で判断しちゃってたんだ・・すごく申し訳ない。

「去年卒業した元Sクラスだぜ?」

カルナさん・・おまけですっごい情報渡さないでください・・精神的にキマス・・。



けど、言われてみれば確かに去年まですごい威圧感を纏った人がいた気がする。


その後、お姉さんたちに勉強からメイドに関して色々と教わった。

やっぱりお城に実際に努めて学んだ人からの内容だからすごい。


それに、すごく気を遣ってくれてる。

お兄さんたちも不用意に近づかずにしてくれるし、基本的に視界に入らないようにしてくれるし・・ホントにお手数かけます。



でも、ホントに助かる。

たぶん近づかれると体が震えて動けなくなるから。

お姉さんたちでさえ1メートル以上は離れてもらわないと動けなくなるから。

そう考えるとフリージアちゃんとその獣魔たち、そしてイリスさんはかなり至近距離だったけど平気だった・・あぁ、美人でふんわりした雰囲気だったからだね・・うん。

なんていうかアレだ。

美人すぎて人じゃなくて精霊様とかそういうすっごい人を相手にしてる気分だうん。




で、フリージアちゃんはお昼ご飯を食べてからこっちに帰って来るらしいので私は食べてから待つことになりました。

・・お昼は威風堂々と立っている狼と、虎でした。


リカルさん・・・穏やかで真面目そうと思ったんですけど、何気にお茶目さんですか?


まぁ、普通においしいんですけど。

で、ちょうど食べ終わったところですっと1枚の小さな絵が額縁に入った状態で渡される。

大きさは私の両手サイズくらい?


描かれているのは、幸せそうに座る私と周囲にはシャスティさんたちがいた。

「えと・・・これは?」

「お近づきのしるしにどうぞ。」

「良いんですか?・・・あ、お金」

「必要ありませんよ。この絵はあなたが持つべきものですので。」

ビルドアーティストの噂は本当だったんだ・・。

一度決めた相手にしか渡さず、見せないって話。


「ありがとうございます。」

「ついでにこちらもどうぞ」

と渡されたのはすごくきれいで大きな木と周囲には花畑が広がるモノでした。

大きさは同じ。

「こちらは?」

「流星の里ですよ。お嬢様の後見人の方々が住んでいらっしゃる場所です。」

あ、あそこフリージアちゃんの故郷みたいなところだったんだ・・って、すごくきれい。

噂以上かも。

「ありがとうございます」

「その笑顔が見れるだけで十分ですよ。」

この人は本当に幸せそうに笑うんだね。

こっちもうれしくなっちゃうくらいだから、どこかうらやましい。





・・本当に幸せだなぁ。

こんなにやさしい人たちにたくさん優しくしてもらえて。

すごく私は運が良い。


この幸せを無下にしないためにも午後は頑張らなきゃ。






で、お昼ご飯を食べ終え、なぜか部屋のあちこちに大量に置かれているクッションを順番にモフモフしているとフリージアちゃんが帰ってきた。

ちなみにこのクッションの山はどの部屋にも大量にすっごい多くの種類があるらしく、それを設置したのはフリージアちゃんのファンクラブ・・というより自称親衛隊として治安維持活動をしている影の親衛隊らしい。

誰にも悟られず陰から守り、支えることがモットーな謎のチームで、どこに誰がどれだけいるのか不明らしい。

・・・フリージアちゃんかわいいし、治安維持は良いことだし・・良いの・・かな?


「師団長おかえり!」

「お帰りなさいませ。」

「お帰りなさいませ。あ、いらっしゃいませ」

「お邪魔します。」

「お邪魔します。あのお姉さん大丈夫ですか?」

「大分落ち着いてきたみたいよ?けど、あまり近づかない方が良いわね。まだ師団長とイリスさん以外は怖いみたい。」

「・・やっぱりそうだよね。あんな屑どもにアレだけいじめられてたんだもの。」

「どうどう・・大丈夫だよ。リアがしっかりとどm・・・忠告とお仕置きしてたし。」

「だねー。てか、リアちゃんの全力の威圧・・効いたわぁ・・。余波を浴びただけでも漏らしそうだったもん」

「あーうん。あれはきつい。アレをもろに受けたプラスやらかした人たちは全身ぼこぼこの刑、見て見ぬふりをした連中は鼓膜破壊の刑だったもんね。」



壁の向こうから聞こえる話し声。


あの・・途中で物騒なセリフがちらほら聞こえてくるんだけど。

私の同級生・・生きてるよね?

アンデットになってないよね?

五体満足だよね?


それと、協力者?というよりお友達?が来たらしい。

だとしても、フリージアちゃんとの仲はとてもいいらしくあのお姉さんたちの声はすごく弾んでる。



「そういえば2人も午後の授業は大丈夫だったの?」

「はい。私はあちこちで治療してたのでそれで免除に。ユウは、ノクスさんたちとしょっちゅう模擬戦してたので、ばっちりです。まぁ・・・いざとなれば教師を数人〆ればいいんだけど。」

「それは最終手段にしよう?一応入学式の時に忠告したんだし、リアが。」

「だねー。・・にしても広いね。それに、クッションがすっごい多いね。」

「それ思った。リアの親衛隊とかじゃない?」

「あーあり得る。実際リアちゃんのファンクラブが学園内にも既にできてるし。」

「入学してまだ日が浅いよね?それに影の親衛隊もいたのにまた増えたの?」

「リアちゃんだし」

「それもそっか。」


あ・・それで入学式の後から先生たちは真面目というか、融通が利くようになったんだ。

それよりも、また物騒なセリフが・・。

それでも、私のいじめはなくならなかったけど・・・まぁ、先生から見えない位置だったし、終わった後も毎回はぐらかされて話すタイミングもなかったしなぁ・・はぁ。

だとしても、入学して数日でファンクラブができたの?

けど納得する・・かわいいし。



そして、小さくノックがされ、ハイというと、まずそっとフリージアちゃんが入ってきた。

-ただいま帰りました。大丈夫でしたか?-

「うん。大丈夫だよ。皆さんすごく親切な方でしたから。」

-それならよかったです。-

あぁ。

やっぱり癒される。

こうして話をするだけでも心を癒してくれる。


そして、恐る恐る入ってきた2人の女の子・・?

1人はどうして男性用の制服を着てるんだろう?

「えと・・初めまして、セイです。一応治療した張本人ですが、調子はいかがですか?」

「は、はい。調子はとてもいいです。ありがとうございました」

「いえ。でしたらよかった。」

フワフワの黒い髪の女の子、この子、セイちゃんが私を治してくれた。

そして、こっちの剣を持った子もお友達らしい。

「初めまして、ユウと言います。・・・・・一応男です。」

「っ!?・・・ごめんなさい、勘違いしてたみたい。」

「いえ、よくありますので。」

男の子だった・・ほんと申し訳ないことしちゃった。

間違えたの2人目だよ・・と落ち込んでいるとセイちゃんが何か察したのか

「あぁ・・性別不明がここに2人固まってるのはある意味奇跡なので・・それ以上はいませんから大丈夫ですよ。こっちと、リアちゃんのお父さんが特殊なんです。」

苦笑いしてる・・あぁ、珍しい方が2人ここに固まっていて私がぐうぐう間違えたと・・なるほど。


それから、フリージアちゃんが簡素なワンピースに着替えてきた後、私を落ち着かせたいと思ったのか何なのか自然と私の膝に座り私に寄りかかって体重をかける。

今はこの重みとぬくもりがすごく落ち着く。

思わずフリージアちゃんの腰に手をまわして抱きしめると優しく腕を撫でられる。

・・心配してくれてたんだ・・ありがとう。



「あ、そうだリアちゃん。この家には初めて来たんだけど、すごくきれいでおっきいね。」

-ハディちゃんたちがゆっくりくつろげるようにお願いしたので。-

「あ、そっか。」

-屋上もありますからあちらが一番落ち着くかもしれません。-

「屋上があるんだ?・・あ、日課のためにわざわざ?」

-この部屋にあるバルコニーも大きい窓も私のことを考慮して作ってくれたんです。後、この家が靴を脱ぐタイプなのはお母さんの”実家”がこのタイプだったらしくそれに合わせたんだそうです。-

「へぇー。すごい職人さんに頼めたんだ?」

-ディフィスという建物を作る専門のクランにお願いしました。-

「聞いたことがある。建築だけに人生をささげる人たちが集まるクランだって。」

「すごいね。」

-アルナさん。早速で申し訳ありませんが始めても良いですか?-

「うん、お願いしてもいい?」

-とりあえず屋上に行きましょう。-

そう言われて私は屋上に向かった。


そこは、小さな小屋(大きい窓は各方面にある)と芝生?と呼ばれる短い植物を敷き詰めた天然絨毯の屋上。

確かにすごく落ち着くかも。


「わぁ!眺めが良いね。」

「だね。あ、羊たちとほぼ同じ高さになるんだ?」

-お話しするときは結構便利ですよ?-

「そっか・・話せるのリアくらいだけど」


フリージアちゃんは羊さんともお話が出来るらしい。

「じゃあ、早速ですが大丈夫ですか?」

「よろしくお願いします。」

「リアちゃん、私がするのは感覚を鈍らせることと、無理やり開けたときの負荷とかを治すってことで良い?」

-それで大丈夫です。魔力回路を対処してくださったときの感覚で構いません。後はこちらで対処するのでそちらの方面はお願いします-

「任せて」

-翠ちゃん-

-準備良いよ-

私は翠さんに包まれ、なぜか頭の上にラナちゃんがくっつく。

・・まぁいっか。


そして、フリージアちゃんが目を閉じて集中する。

すごい集中力

どことなくびりびりとした空気を感じる。



そして、開かれた瞳には魔法陣が宿る。

瞳に魔法陣?

初めて見るけど何かの技なんだと思う。


背中側からセイちゃん、正面にはフリージアちゃんが構える。


そして、作業は開始されたんだけど、セイちゃんが何か魔法をかけたのかすごく記憶があいまいなんだよね。

ぼんやりするというか、夢を見ているようなフワフワした感覚。

それでいて、体全体が触られても感覚がない。

けれど、体の中にフリージアちゃんの膨大な魔力が全身の全方面から余すことなく押し込まれて、流し込まれていく。

見えない何かが無理やり広げられていく感覚。

そして、次から次へと魔力を流し込まれ続ける。


流し込まれた魔力は体の中をめぐり、心臓に押し込まれていく感覚に襲われる。




しばらく時間が経過する。

それが数分なのか数時間なのか感覚がよくわからないけど、空が茜色に染まっていく頃に私は突然解放されたようなよくわからない不思議な感覚に襲われた。

何というか、狭い場所に閉じ込められていたけど突然そこから外に出ることが出来たような、押し込めていた何かが外に飛び出すような感覚。


「アルナさん!今溢れているのはあなたの魔力です!魔力制御で中に押し込めてください!!」

言われたとおりに魔力を制御して体の中に戻す。

すると驚くほどスムーズに対処できた。


しばらくすると体の中を暴れていたフリージアちゃんの魔力もなくなり、体全体が落ち着いた。




「ふぅ~、無事に完了だね。」

(コクリ)

「リアちゃん、アレすごかったよ?リアちゃんの魔力に影響されたのか何なのか、魔力量はすっごい増えたし、魔力回路もどれもすっごい太くなって丈夫になった。ま、まぁ・・ちょっと勢いが良かったのか、アルナさんの巨乳がさらに成長しそうな感じだけど・・元々成長途中だったけど拍車がかかりそう。・・おっぱいすっごい」

セイちゃん・・感謝はするけど最後の一言はいらないです。


すごく不思議な感覚。

朝よりも魔力があふれていて、体全体が活性化しているような気持ち。

なんとなく力があふれるような不思議な感覚。


-無事に処置は完了しました。これで魔法は使えるようになったはずですよ。-

フリージアちゃんはそう言った。

次回は4日です

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