新しいお家
気まぐれ劇場
フリージア「最近、狐さんが町中でたくさんですね。」
カルナ「は?狐どころか猫も犬もいねぇじゃねぇか。人しかいない。いるとしたらカラスくらいだ」
フリージア「何を言っているのですか?あの人もあの人も狐さんじゃないですか」
カルナ「だから何を言っているんだ?リアが指さした奴らは全員むせてるだけじゃねぇかよ。てか風邪引きだな。」
フリージア「だから狐さんですよ?」
カルナ「・・・解説を頼む。」
フリージア「?」
カルナ「・・首をかしげられてもなぁ・・。とりあえず、どうして狐さんなのか教えてくれ」
フリージア「狐さんと同じように鳴いているからですよ?」
カルナ「狐のように?・・・・実際は違うが、よく言われるのはコンコン・・・風邪・・咳・・こんこん・・・・・・・はぁぁぁぁぁ。」
フリージア「長いため息ですね。」
カルナ「ホント誰のせいだろうな?」
フリージア「?」
リカル「お嬢様は面白いですね。ですが、あの狐さんたちはうれしくないですね。かわいくないですし、うつされても迷惑ですし面倒ごとばかりです。」
カルナ「リカル・・お前もお前で辛辣だな・・。」
リカル「あはは!健康第一、お嬢様は我が癒しですから♪」
イリス「リカルは良いことを言うね♪健康じゃないと愛でることも出来ないからね。」
カルナ「はぁ・・このファミリーは・・ツッコミが間に合わん。」
ラウ「ここのメンバーのほとんどはボケ担当と言いますか、天然で、ツッコミ要員はほとんどいませんからね。・・頑張って下さい」
カルナ「そう言うならお前もツッコミを手伝え。」
ラウ「見ていて面白いのでいやです♪」
カルナ「・・こいつも同類だった。」
寄り道で武器屋さんに寄り、蛇腹剣を購入した私ですが、当初の予定通り私たちの新しいお家が建てられている羊さんたち、つまりスリープシープのいるところへやってきました。
「相変わらずおっきいなぁ。」
「ここまで近くで普通に眺めることが出来るだけでも珍しいんだがなぁ、普通は」
「アース、そうなの?」
「あぁ、知っての通りスリープシープは周囲に眠りに誘う魔力をまき散らすんだが、普通は数十メートルほどでも眠くなっちまうんだ。」
「けど、私たち数十メートルどころか数メートルくらいまで近づいてるよ?」
「それはつまり、この羊たちが魔力を制御して周囲に散らないようにしてくれてるってことだ。まぁ・・抱きついたりしたらさすがに眠りの対象になるんだが・・・」
「さすが師団長。」
「確かラナさんでしたっけ・・あの謎生物。」
「確かそうだ。彼?彼女?がいてくれるおかげだったはずだ。」
「師団長かわいい。」
「同感。」
「・・後で師団長にモフモフして欲しい//」
現在久しぶりに羊さんたちに抱きついて全身でモフモフを堪能中。
ここには既におじいさまもカルナたちもいました。
カルナ、シャスティ、ハディちゃんはおじいちゃんたち(グランさんたち)とお話をしてたんです。
今後、流星の里でお世話になると言うことと私の護衛兼教育係としてこれまでのことを軽く直接話をしたかったんだそうです。
ちなみにおばあちゃんはシャスティをお膝に乗せて撫で、おじいちゃんはカルナを撫で、お兄ちゃんとお姉ちゃんはハディちゃんの背中に乗ったり尻尾に捕まって軽く振り回されたりととても楽しそうでした。
宰相のグリルさんは、そんなアットホーム?な雰囲気の王族一族を凄い深いため息を吐いてましたけど。
たしか、王族なのに国民のようなことを・・とかなんとか。
どうやら、王族らしくかっこよくいて欲しいと思っているようですが、そんなのお構いなしで他の貴族の人たちも含めてのほほんとしてますからねこの国は。
それもあってとても穏やかな感じになってました。
カルナが申し訳なさそうにグリルさんをみてたけど、グリルさんはそんな気持ちがうれしかったらしくおじいちゃんたちがいないときはひっそりとカルナを撫でながらお話しすることは多いんです。
グリルさんとしてはそんな光景はあまり見せたくないんだそうです。
威厳に関わるとかなんとか?
気にしなくて良いのにね?
カルナもグリルさんの苦労を理解出来るらしく結構仲が良いです。
え?私とグリルさんは仲良しかって?
仲良しですよ?
色んなことを教えてくれますし、王族としてのマナーとか世間的には王族や貴族はこんな感じだとか普段ではなかなか知ることが出来ない王族や貴族だからこそのあれこれを教わってます。
私にはわかりやすくかなりかみ砕いた言い方ですが、翠ちゃんやカルナたちにはしっかりと教えているらしくその子たちからも教わることが多いです。
と言うより、そっちがほとんどですね。
で、モフモフを堪能してようやくお家へ向かいました。
全員「・・・」
「お!イリス様!どうですか?ご注文通り・・・よりちょいとはしゃぎすぎて凄いことになってますが。」
確かに平屋がありました。
けど、凄くおっきいです。
屋上付きの平屋のようです。
お家はレンガのような全体的に様々な色の石を組み立てたような感じになっており、外から屋上に行けるように壁には凄く丈夫そうな石の板が段々上に並んで突きささってる状態の階段があります。
屋上は半分は屋根付きの小屋が2階としてくっついているような感じになっており、もう半分が芝生?といいますか、短い草がたくさん生えているので草原みたいで寝転がったら気持ちが良さそうです。
屋上から家の中に入るための階段もありましたよ。
全体的には何と言いますか、屋根は緑で、壁は黄緑やピンク、黄色などの淡い色を使ったとてもかわいらしい感じだと思います。
そこまではパパの注文通り。
けど、お部屋の数は10くらいはありそうです・・というよりありました。
扉も廊下もどれもハディちゃんはゆったり出来るほど余裕があります。
例えるなら、通常の廊下の幅が1.5倍ほどです。
中は、木造という感じでとても温かい雰囲気のあるお家です。
バルコニーもあり、窓も大きめであちこちからお日様の光が部屋を照らすのでぽかぽかします。
お部屋の各地には、既に椅子やテーブル、家事で使う道具類など、必要なモノは既に揃ってました。
「思った以上に部屋が多くなってるんだね。」
「申し訳ねぇ・・相当はしゃいでたようで予定よりも部屋数が増えてしまいまして。」
「けど、助かったよ。ここに住む人数が増えそうだったから部屋数を増やしたいと思ってたんだ。」
「それは良かった。」
「お金は足りてるかい?」
「十分ですぜ。元々余裕を持って受け取ってたのに加え、追加で更にもらってましたから。」
「そっか。ホントに助かったよ。」
「気にしないで下さいよ。俺等は全員イリス様のためになりたかったんですから。あ、しっかりと防御の魔法と【隠密】関係の魔法は組み込んでるんで、遠目でみられてもそれほど注目されませんぜ。」
「助かるよ。」
「では、俺等はこれで。修理とかあれば遠慮なく言って下さい。」
「その時は頼むよ。」
「うす。」
お礼を込めて頭を下げると気にしねぇで下さいと言いながらおじさんたちはとても満足そうに去って行きました。
シャスティがお礼としてシャスティ団子を全員に配り、食べながらとても楽しそうにしてました。
「さて、ゆっくりと中を見て部屋を決めようか。」
「そうですね。」
それぞれの部屋を順番に見るとそれはそれは種類が豊富でした。
洋風で椅子とテーブルを並べたお部屋と、ソファーのあるお部屋に、洋風でカーペットを敷いた地べたに座るタイプのお部屋。
和風でお座敷になってるところ。
そして、バルコニーのある洋風のお部屋。
ベッドのあるお部屋がいくつかと、キッチンにお風呂、リビングに本だけを並べた部屋に研究室らしきお部屋。
靴は玄関で脱いでスリッパを履くタイプのようです。
「・・・あ」
「イリス様いかがなさいましたか?」
「うん・・ニアさんがよく気に入って使ってた部屋がこんな感じだったんだ。」
「ペチュニア様が?」
「そうだよ。建物の中で靴を履いているのは僕たちにとっては普通だけどニアさんにとっては違ったらしくてね。ニアさんの部屋だけは絶対に靴を脱がないといけなかったんだ。・・彼らは知ってたんだね。」
全くと言いながらパパは苦笑しています。
で、リビングは最も広いお部屋で壁もなく突き抜けてキッチンが見える状態です。
お料理用のテーブル越しにリビングと区切っている感じですね。
それと、リビングにはおっきなソファーが3つと、テーブルがあり、隣にはカーペットを敷いて地べたに座ることも出来るようになってます。
おまけに全面ガラスのドアで片方の壁は全て埋め尽くしてる状態なのでお外がよく見えます。
「うわぁ!エアロ!エアロ!!ここのキッチンすっごいよ!?凄くきれいでどれも最新式だよ!」
「あら、本当。食材用の保存庫もコンロも窯もご飯を炊くのもどれもそうね。」
ちなみに全て魔道具で魔力を流すだけで誰でも使えます。
それらの魔道具はより使いやすく、より消費が少なくをモットーに日々改良され続けているらしいです。
「しかも、保存庫はかなり容量が広いようですね。」
「それと、何気なく並んでる調理器具とか包丁とかかなりの業物だぜ?」
「あぁ。かなり切れ味も使い心地も良さそうだ。」
「ソファーも椅子もテーブルもよく見たらかなり良いやつだし、砥石とかそういうのもしっかり貯蔵庫があるな。」
「調味料凄いいっぱい種類があるけど、それとは別にレシピ集があるよ?」
「あ、これニアさんが過去に他の異世界人が広めたのとニアさんの知識を集めた調味料のレシピ集だ。しかも、あれから更に改良されて増えてる。」
「料理の本ではなく調味料限定なんですか?」
「あぁ。ニアさんはかなり気まぐれだったから調味料以外はその時の気分で煮るか焼くかどの調味料を使うか決めてたから一概にレシピを作れなかったんだよ。同じ材料なのにものすごい量の種類を作り出してたし。どれもおいしかったけどね。」
「あぁ・・つまりは調味料はレシピが必要だったけれど、料理のレシピとしては必要ない・・むしろあるのが邪魔だったと・・。」
「そういうこと。」
「ペチュニアさんって・・すっごい気まぐれな猫っぽいですよね。」
「うん。おまけに姉御肌だったよ。」
「なんとなく分かった気がします。」
「それと、すっごい量のクッションがあっちこっちにあるんだが・・誰か分かるか?」
どの部屋にも結構な量のクッションがあります。
大きさも色も形も触り心地もどれも違っています。
もちもちもふかふかもモフモフもどれも色々です。
「ん~、あ!手紙っぽいの発見!」
「ルミエール何が書いてあるの?」
「えーっと・・・おめでとうございますってだけ。」
「誰か書いてある?」
「えぇっと・・あ、影の親衛隊?って誰?何?」
「あぁ・・うん分かった。」
「カルナさん何か知ってるの?」
「知ってるも何も影の親衛隊はリアのファンクラブだよ。おまけにリアのためだけの治安維持活動部隊。名前の通り、リアが安全に平和に過ごすためだけに各地にいて、自らの存在は一切明かさずに影ながら見守り、護衛し、悪を排除する。そんなチームなんだ・・。誰がいるか、どれくらいいるか、どこが拠点かも一切不明なんだ。リアの近くには必ず誰かしらいるらしい。」
「あぁ・・なるほど。愛されてるんですね師団長。」
「そういうことだ。おまけにその活動によって表彰されることも一切嫌うからギルドだろうが国だろうが誰かを特定出来ないせいで表彰しようもないし出来ないさせないって感じなんだよ。」
「奥ゆかしいと言うべき?」
「ニアさんの言葉で言うところの忍びだよね。」
「イリスさんが言う通りそんな感じだと思う。どのくらいの規模の治安維持かは分からんが・・まぁ、悪事を働いているわけじゃないしってことでスルーしてる。」
「あぁ・・なるほど。」
それから、お部屋をそれぞれ選んで自分たちの荷物を運びました。
と言っても翠ちゃんもいますし、マジックバッグもあるのでそれほど時間はかかりませんでした。
私は、バルコニーのある洋風でカーペットを敷いてあるお部屋にしました。
座っている状態で丁度良い高さのテーブルが1つと、本棚が片方の壁いっぱい、クローゼットは1つ。
私がバルコニーを好んでいるのをあのおじさんたちは知ってたみたいですね。
これがあるとお外がすぐにあるので体のおっきいハディちゃんもゆったりです。
どのお部屋もみましたけど、凄く広々してます。
ハディちゃんがどのお部屋でもゆっくりとくつろげそうです。
それと、私のお部屋にはベッドはありません。
だって、使いませんし。
ハディちゃんをベッドにシャスティを抱き枕にしてカルナが近くにいて、翠ちゃんが私のお布団になってくれてラナちゃんがくっついてますからね。
しばらくして落ち着いたところで副団長であるエアロを筆頭に5人から師団長としてのお仕事内容を確認したり、どういったことをどれくらいの期間で行なっているか教わりました。
彼らはそれ以外の時間帯を魔道具の研究や改良、修理を行なっているようです。
基本的にお城勤めのままなのでこれまでと変わらないと言えば変わりませんが。
その後は、この国や、ギルド、教会などの公共施設などを守っている魔道具の点検を行ない、警備をしている人たちと軽くご挨拶をしたりしてその日を過ごしました。
いやぁ、どれも凄いですね。
様々な魔法の重ねがけによって複雑に絡み合って強靱な1つの魔法になっていました。
おまけにその魔法1つ1つだけでも様々な属性でした。
ホントに凄いと思いました。
こんな凄いのを作り出せるんですから。
主な点検方法を確認しつつ、私自身の目の力で確認したりして互いに意見を言ったりどの部分が弱ってるとか劣化してるとか確認しました。
そして、しばらくしたところでおじいさまとおじいちゃんおばあちゃんは、3人のメイドさんと共に荷運びのお兄さんたちと共に流星の里へ向かいました。
凄くさみしいですが、会おうと思えばすぐに会えるんですから。
また、会いに行きますね。
「・・その、師団長?」
(?)
「真面目すぎません!?頑張りすぎじゃないですか!?」
突然エアロさんが嘆きだしました。
それは、本日夕ご飯を食べ終わり、お風呂や歯磨きなどを一通り済ませた後、魔力制御の練習をしながら蛇腹剣や、アクセサリー(お守り等)等の私の装備品の全てを手入れしながら、影さんたち(手のひらサイズ)を数人出してそれぞれの武器を振って練習させている時でした。
装備品とかの整備などを終わらせたら歌を軽く歌って寝ようと思ってたんですよ?
ちなみに今もですが翼を出しっ放しにしてたりします。
何と言いますか、お月様を眺めてるときはなんとなく翼を出していたくなるんですよね。
凄く開放感と言いますか、落ち着くんですよ。
とせっせと磨いたり魔力を流したり(そうすることで修復出来るのもあるからです)としていたらエアロさんが突然叫びました。
それがさっきの台詞です。
「どうしたの?エアロさん」
「ルミエール!ティアもそう思いますよね!?」
「落ち着いて下さいエアロ。」
「そうだよ。突然どうしたの?」
「だってそう思いますよね!?師団長真面目すぎますよね!?頑張りすぎですよね!?既に成績トップでお城にいた数日間だけでも影さんたちを経由して何人と勉強し続けてたと思うんですか!?」
「あ、あぁ・・」
「私が聞いたところによると、礼儀マナーとかを含むと、イリス様が教育係として10人ほど様々なジャンルの人たちを連れていたのを記憶してますが?」
-正しくは、16人ですよ。-
私が出せる影さんは、最大サイズだと13人ですが、小さくすると増えます。
正しくは要領としては同じですがそれを小分けしているだけです。
つまりは最大サイズ13人分を1人を小さくすることで数を増やしている、ただそれだけ。
「ちなみに何を教わって?」
-礼儀マナーもですが、歴史や地理、薬草に毒草、魔物に、魔道具、魔法、文字、計算、種族、武器、防具、装飾品、貴族についてそれから・・-
「・・・後どれほどあるのですか?」
-1人から教えてもらえる範囲は一通り教わるようにしたので種類だけでも倍以上はありますよ。同じジャンルでもそれぞれの方々の出身地や考え方が異なるので内容はかなり変わりますし。-
「あぁ・・・たしか師団長、実戦訓練も魔力操作などの基礎訓練もがっつりしてましたよね?」
-がっつりはしてませんよ。周囲の観察を行ないながらなのでマイペースです。-
「えぇ・・」
「ですが、影さんたちを手のひらサイズとはいえ常に出した状態で何かしらのことはしていましたよね?家事とか訓練とか勉強とか色々」
-1人でやるより効率的で良いですよね。-
「・・そこでどうしてメイドたちや騎士たちに頼むという選択肢がないのですか?」
-そうホイホイと他人に頼ってはいけません。自分の力で成し遂げなければそれは自分に対する甘えで怠けです-
「何と言うまじめっ子」
「いや、ツッコミどころはそこじゃないでしょ。師団長は人を使う側の人間でしょ。」
「それに今現在、整備もご自身で行ないながら普通に魔力制御の練習してますよね?おまけに影さんたちはいまだに訓練してますし。」
-しっかり影さんたちも休ませてますよ?-
整備をしながらちらりと影さんたちを見ると交代で色んな武器の素振りをしながら他の子たちは遊んだりゴロゴロしたりしている。
「・・・・うん。休んでるね・・うん。」
「師団長・・魔法は解除して初めて休むと言うんです・・それは休むとは言いません。」
-カルナと同じことを言うんですね?-
「いえ・・誰も同じことを言うかと思うのですが・・。」
すっごいエアロさんがうなだれてる。
「師団長ってそんなに頑張らなくて良いのにどうして頑張るの?」
-私にはこれ以外に何もありませんから。-
「え?」
私は戦うことしか出来ない。
-私にとってはこれは頑張りすぎているという認識は一切ありません。私にとってはこれが普通です。これでもかなり手加減してるんですよ?-
「え!?」
私は戦う為の努力をする意外には何もない空っぽな存在だ。
趣味も楽しいことも何もない。
シャスティたちとの戯れは楽しいけど、正しく言うと私が戯れると言うよりシャスティたちが私に戯れている感じですから。
そんな私のことを知った上での行動なんですけどね。
「本気だとどうするんですか?」
-影さんたちを出せるだけ出して常に訓練させ続け、周囲で教えてくれる人は数十人でも良いので全員まとめて喋って教えてもらい、私自身も空き時間は全て訓練と勉強に充てます。-
「師団長って同時に色んな人の言葉が分かるの?」
(コクリ)
「すごーい!」
「師団長!頑張りすぎです!世間一般では今現在行なっている1割もしていないのが普通です。」
なるほど。
けど
-ですが、辞める気はありませんよ。-
「どうしてですか?」
-お母さんの娘としてふさわしくならなければなりません。ご先祖様の悲願を叶えるためにも足を止めるわけには行かないのです。-
立ち止まるわけにはいかない。
私が賢者としてこの世界で生きている以上、とんでもなく強い魔物がどこかにいるということ。
壊させるわけにはいかない。
この世界を。
私に優しくしてくれた人たちのためにも。
その人たちが楽しく過ごすために私はそれらの障害を全て消し去る使命がある。
これは、私自身のわがままだ。
「ペチュニア様の・・・て、ご先祖様って?」
私はそこから先は何も言わずにルミエールさんたち3人をなだめるのと、黙らせる為にモフモフして寝かしつけました。
ただ、その寝顔は赤くてトロンとしてました。
それぞれのお部屋にイグニスさんとアースさんが運んでくれたのですが凄いギョッとした顔と何かを我慢するかのような顔になってたのは不思議でした。
ちなみに翌日、彼女たちは私のモフモフアタックによってきれいさっぱりその日の夜のことを忘れてました。
・・話すつもりはありませんし、喋るわけにはいきませんからね。
桜華さんのことは。
私はそれから整備を済ませ、屋上の芝生の上で歌う。
羊さんたちが家の近くまで来てくれて聞いてくれます。
イグニスさんたちは階段下で静かに耳を澄ませている。
パパは私の隣で微笑ましそうに私をみながら魔法で結晶を作ってはワザと空中で粉々に砕いて、霧散させるのを繰り返している。
きれいな星空もあって、その結晶の粉がキラキラとして凄くきれいでした。
「明日から学校だね。」
-そうですね。パパは何をするのですか?お城での引き継ぎは全て終わったのでそう言うお仕事はなくなりましたよね?-
「うん。相談屋をするつもりだよ。後は、適当に依頼を受ける感じかな。」
ちなみに私、空いたときにはこまめに依頼は受けてはいます。
敷地内のお掃除とか修理のお手伝いとかそういう簡単なモノから、採取や討伐、捜し物などもです。
-そういえばパパはギルドランクはどれほどなのですか?-
私の翼をモフモフしてるパパに聞く。
「ん?僕はSだよ。ニアさんも同じだったんだ・・と言うよりペアで動いてたからね。」
パパはSランクでしたか。
「まぁ・・僕の場合は冒険者としては最近は動いてないからなんとも言えないけどね。王子として動いてた功績はあるけどそれは関係ないから。」
-では、これからは冒険者として動くことが増えるんですね。-
「そういうことだね。・・リアちゃんは歌が上手だね。」
-歌詞も何もないですよ。何の曲かも分かりません。-
「僕はなんとなく聞き覚えがあるからもしかしたらニアさんが歌っていたものなのかもね。ニアさんもよく口ずさんでたから。」
私がお母さんのお腹の中にいた頃に歌っていたと言うことでしょうか・・そうなんですね。
-そうだと良いですね。お母さんとの大事な繋がりですから。-
「きっとそうだよ。」
(コクリ)
-それよりパパは私の翼が気に入ったんですか?-
ずっとモフモフしてます・・魔法で出してるはずなんですがくすぐったいです。
「凄くきれいだし手触りもつやつやふわふわでね。それよりも、感覚があるのかい?」
-最近は触られていると感じることが多いです。-
少し前までは触られてる感覚なんてなかったんですけどね。
「翼は出しているときとそうでないときはどっちが楽?」
-出しているときです。-
触られてる感覚になってからそう思うことが増えたんです。
それとどこか、ホッとすると言いますか落ち着くんですよね。
「月光浴は日常的に?」
-星空を眺めるのが習慣だったので。-
「そっか。」
-何か気になることでも?-
「ちょっと気になっただけだよ。あぁ、もう!かわいいなぁ!!」
そう言いながら私を抱きしめてほっぺをすりすりしてます。
-パパは美人ですね。-
「・・うん、ありがと。」
凄く微妙な顔されました。
だって美人なんだもの。
そこらの女性よりも圧倒的に美人なんだもの。
・・女性服を着せてみたいと密かに思ってますし。
絶対似合う。
お化粧もなしで普通にいけます。
ナンパもいっぱいです。
パパモテモテですね。
同性に。
「なんか嫌な想像をされた気がするんだけど気のせい?」
気のせいだと思い込ませるためにパパに正面から抱きついて硬い胸板にすりすりとほっぺをすり寄せる。
するとあっさりとデレッとした顔になって抱きしめてくれました。
パパはかわいいですね。
大好きですよ。
ちなみに、魔術師団のみんなはパパが常にデレっぱなしでお顔がとろんとろんになってる光景を見て目を見開いてたり、顔を赤くして色っぽいと息を吐いたりしてました。
吐息を吐いてるのは女性陣ですよ?
男性陣は驚いたって方が強かったです。
「ねぇ、リアちゃん。」
(?)
「君の職業は、協奏師と賢者何じゃないの?」
耳元でそっとパパがそうつぶやく。
-どうしてそう思うのですか?-
「一番の理由はバレクたちが唯一主と誓ったってことかな。」
-それだけですか?-
確かに魔法の探求者と呼ばれた桜華さんのお弟子さんの子孫がそう言ったらそう思いますよね。
けど、もう少しとぼけてみる。
「後は、瞳に宿る魔方陣だよ。」
-それがどうかしましたか?-
「世間的には知られてないけど、アレ、世界で賢者の職業じゃないと絶対に現れない現象だよね?」
-それをどこで?-
「ニアさんと昔、遺跡を探検していたときに見つけたんだ。瞳に宿すあまたの魔法を手足のように扱う魔法使い、手の甲に宿す絶対なる聖なる剣を扱う剣士、額に宿るあらゆる怪我や病気、呪いを打ち消し、癒す女性。これって、今の心技体の伝説の3人のことだよね?」
・・・
「大丈夫。このことは僕とニアさん以外は誰も知らないから。その遺跡も中で遭遇したゴーレムとアンデットの群れに対応してる途中で跡形もなく崩壊しちゃったから。」
はぁ・・と私はため息を吐いた。
-そうですよ。私が今代の賢者。英雄賢者の正統後継者で、私が扱う杖はかつて英雄賢者が扱っていたモノで、私専用に姿が変わっているだけです。-
「普通の杖に見えるのはそう言う魔法がかってるってことかな?」
(コクリ)
私は、お母さんが英雄賢者である桜華さんの子孫であることも含めて私が知っていることを教えた。
「なるほど。そういうことだったか。大丈夫だよ。僕は誰にも話すつもりはないから。」
-お願いします。ただでさえ注目されているのに私が賢者だと知られると余計に面倒なことになりますので。-
「だろうね。じゃあ、ニアさんが4つも属性を扱えていたのも異世界人だからって理由だけじゃなかったんだね。」
-少なからず影響はあるようですよ。その人の思いや、頑張り、心の強さによって変わってくるそうですから。-
思いが強いと強く、弱ければその分たいした力は持てないらしいです。
それは異世界人がこの世界に来たときに覚醒する力が何になるかの基準になるんだそうです。
心の強さは精神力。
精神力は魔法を扱う中でとても大事なモノで、覚醒する力を自分の体が受け入れきれなければ寿命を縮めてしまう。
そんな危険なことでもあるらしいので精神力はその人の器の大きさでもあるんだそうです。
お母さんの場合は、向こうの世界にいた頃からだったそうですが。
-そういえば、お母さんは体のどこが悪かったのですか?-
「彼女は、生まれつき内臓がいくつかないらしいんだ。どこなのかはニアさん自身も覚えてないらしいけどね。おまけに、あらゆる耐性が弱かったらしくてね。」
-そうだったのですね。-
「けど、ニアさんは感謝したらしいよ。御両親に。」
-未熟に産んで恨んでいなかったと言うことですか?-
「うん。御両親からはかなり言われたらしいんだ。未熟に産んで申し訳ないって。けど、ニアさんはそんな自分を一生懸命育ててくれただけでも十分だって言ったんだって。ものすごい量のお金がかかるのにそれでもお構いなしで看病してくれたことに凄く感謝してたよ。」
凄く御両親に泣かれたらしいねとパパは言う。
お母さんの気持ちは凄く分かる。
私も同じ立場だったら、知らないふりして早死にしたら不幸だったねで終わらせると言うことも出来た。
お金がないから申し訳ないって言うことも。
けど、御両親はお金よりも娘が大事だと即答して頑張った。
実際、お母さんの御両親はとても優しくて一生懸命な人たちだったらしく、空いた時間は娘の為に過ごし、常に明るく優しい家族だったそうな。
おまけに、2人揃って仕事はかなり頑張ってた。
とにかく娘をさみしい思いをさせない絶対に助けると決めて、自分たちの趣味などは全て捨てて娘第一だけでとにかく頑張った。
そんな頑張りは周囲の人たちにとっては眩しいほどだったようで、多くの人たちがお母さんのために寄付をしてくれたんだそうな。
そして、そんな御両親は感謝の気持ちを決して忘れない人だった。
お母さん自身も優しい人たちに囲まれて常に感謝の気持ちを込めて、いつも明るく過ごしたんだって。
自分がさみしい表情を見せると周囲の人たちが悲しむから。
そうして、お母さんはいつも明るい人になったんだとパパは言う。
「ニアさんは僕と2人っきりの時だけはとても静かで穏やかな人だったよ。それに、凄くいっぱい泣く人だった。」
パパよりも早く死んでしまってごめんとお母さんはいつも言っていたらしい。
「それでも、僕はニアさん以外を愛することは出来なかった。いつも一生懸命で明るく努力をし続ける人がいるんだもの。支えたくなるよ。」
そんな一生懸命なお母さんの娘として今ここにいることはとても幸福で幸せなんですね。
お母さん。
あなたの分まで一生懸命生きます。
さて、明日はいよいよ学園生活1日目ですね。
・・学園生活が始まるまで凄く長く感じたのはどうしてでしょうか?
次回は22日です。
猫の日ですしね。