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ミドルネーム

--フリージア--

学園生活1日目!

と思って制服に着替えて準備が整ってさぁ行ってきますと言って、みんなが行ってらっしゃいと言った直後、この国全体にかかった放送によって学園生活1日目は延期となった。


翠ちゃんが言うには、町内放送みたいな感じで国全体にマイク?とかで声を出すとその声を伝える魔道具で周囲に声を拡散させると言うものらしいです。



で、その結果この国全体が大騒ぎになりました。

と言うのも


「イリス様が辞退!?なんで!?」

「あの人がこの国の王になるんじゃなかったの!?」

「しかもかなり前から決めてたって話しだろ?」

「らしいな。」

「なんてこった・・予想外だ・・いや、アイリス様もルイス様も優秀な方だし否定しているわけじゃないけどさ。」

「あのお二人も素晴らしい方よね。」

「そりゃあな。と言うよりもイリス様が一際際立ってただけと言うのもあるけど。」

「あぁ・・うん。」




どうやら、この国、クラリティ王国の王様が引退すると言うことで次の王様が決まったという話しでした。

でも、周囲の人たちからすると第一王子様であるイリスさんという人だと全員が思っていたところでその人の妹と弟の二人がなることになったんだそうです。


他の国では、次男と長女の場合は、年や優秀さなどは一切関係なく次男が王位継承権は上で、女性が下になるんだそうです。

まぁ、相当ひどければ逆にあり得るそうですけど滅多にないことらしいですね。

けど、この国はそういうことはないらしく2人とも王位継承権は第2位で、どっちがする?となった結果、2人で頑張りましょうと言うことになったそうな。





・・・・おや?

そういえば、兄さんが私に会わせたい人ってイリスさんって名前でしたね?

同姓同名でしょうか?

で、兄さんに聞いてみようかと思いちらりと隣を見るといませんでした。

姉さんに聞いてみると

「あの放送が流れた頃にはお城の方へ跳んでいきましたよ?」

だそうです。


・・逃げられたように感じたのは私だけですか?


で、いつものように抱きついてるリリさんを撫でながらどうしようかと考えます。

と言うわけで、次の王様がアイリスさんという人とルイスさんという人になったと言う放送が流れた後、学園も今日から3日くらいは休みだからと言われたわけです。

日が具体的ではないのは、多少前後することがあるからなんだそうです。



「お嬢様。とりあえず着替えましょうか?」

(コクリ)

リカルさんに言われ、とりあえず制服から着替えました。




で、着替えたのは真っ白でシンプルなワンピース。

いつもの黒いローブを着ようと思ったんですよ?

けど、リカルさんに

「今日は、新しい王が決まった特別な日。ですので、たまには普通の服を着ましょう?」

とのこと。

よく分かりませんが、どうやらリーリスさんのところでしれっと購入していたらしい。


実際、特別な日・・と言いますか、おめでたい日らしいですが、この国全体がイリスさんという人にならなかったことに大騒ぎで大混乱!って感じですが。








「それで、俺のとこに来たの?私服かわいいねー」

町のどこをウロチョロしてもトラブル真っ最中という感じだったので一番落ち着いてそうなネルさんのとこに来ました。


ちなみに、セイちゃんとユウちゃんも同じくここにいます。

理由は私と同じだったようです。


で、まったりとお茶をしながらふと思い出して

-ネルさん-

「んー?」

-あげます-

「ありがと・・う?・・・何これ?」

リーリスさんのところで購入したお洋服(黒い着流し)をほいと渡す。

「リアちゃん・・何と言う自然な動きで・・」

「さすがリア。有無を言わせずに渡すとは。」

なぜか2人が戦慄してますけど・・まぁ気にしません。


「開けても良いの?」

(コクリ)

で、ネルさんが不思議そうに箱を開けると目が見開いてフリーズ。


「・・・いいの?こんな俺なんかに・・こんな良さそうなの。」

「私たちはこれ、着ませんから。勿体ないので」

「リーリスさんと仲良くなったときについ買ってしまったんですよ。買った後で誰が着るかなぁ~って話をしてたんです。」

ネルさんはどこか泣きそうでうれしそうな表情で話す。

「僕なんかよりもずっと似合う人はいるはずなのに・・どうして?」

-なんかではありませんよ。-

「フリージアさん?」

-私たちは普通の子供とは違います。知識も実力もおそらく同世代の子たちとは異色です。けれど、ネルさんは普通に・・普通の子供として接してくれました。それだけで十分幸せなんです。-

「そうですよ。私たちはネルさん以外の先生は嫌ですよ。」

「僕たちはネルさんが担任としていてくれるのが一番うれしいんです。」

-なので、ネルさんともっと仲良くなりたいですし、先生として色々教えて欲しいです。-

「みんな・・」

「そうですよネルさん。」

「私たちは、ネルさん以外の先生は担任と認めませんよ?学園長は別ですけど。」

「はい・・ありがとうございます。頑張りますね。」


凄く泣きそうな顔で凄くうれしそうに私たちのプレゼントを抱きしめてお礼を告げるネルさんでした。





で、早速着てもらいました。

「すごい・・すごく動きやすいしゆったりしてる。」

「おぉ。予想以上に似合う。」

「ゆったりですけど、みた限りではだらしなくは見えませんよ。それに、ネルさんの雰囲気とその服が凄くしっくりきます。」

「そ、そうかな?//」

照れくさそうにしつつもうれしそう。


-その服、私たちもですが、リーリスさんもネルさんなら似合うって言ってたんですよ?-

「リーリスさんが・・そうでしたか。今度お礼を言わないと。」

「その服を着て素直な感想を言いに言ったらそれだけで十分だと思いますよ?それを着た姿を見たかったんだと思いますし。」

「うん・・ありがとう。大事に使わせてもらうよ。それにしても、和服って凄いね。しっかりしたのはぴっちりしてるらしいけど、この着流しって凄く俺好みだ。」

「ちょっと着るのに慣れが必要な気もしますけど、それでも似合いそうだなって思ったんです。」

「ホントすごい似合う。」

「ありがとう。今度からはこの系統の服を着ることにするよ。ホントにありがとう。君たちがプレゼントしてくれなかったらこんな良い服・・見つけることはなかったと思うよ。」



いやぁ・・。

ホントに似合うんですよ。

のんびりまったりとした雰囲気のネルさんに凄く似合うんです。

それに、格好いいです。

ふんわりとした中に、どことなくただ者じゃなさそうな雰囲気が凄くしっくりくるんです。





「それにしても・・服を替えるだけでこんなに気持ちも変わるモノなんだね。」

「師匠・・ノクス騎士団長が言っていたのですが、服にはその人の心が現れるんだそうです。」

「心?」

「どれだけ大事に使っているかとか、どれだけ着こなせているかとかそう言う部分がと言うことらしいです。」

「ノクスさんも良いこと言うなぁ・・俺は見た通りだらしのない感じだったからねぇ。」

「えー?私はそうは思いませんよ?」

「セイさん?」

「だって、あんなになったら普通の人はさっさと捨てちゃうのにネルさんはそれでも使い続けてきたんですよ?それに、アレ、捨てる気はないんでしょう?」

「まぁね。何か小道具か何かに使えないかなぁって思ってるんだ。モノによっては掃除道具になるかも知れないけどね。」

「ほら、そういうことですよ。ネルさんほどモノを大事に使う人はいませんよ。」

「そっか・・ありがとう。」


とほっこりしつつお話をしていると、学園の門番さんがやってきました。

「ネルさ~ん。」

「はぁい?」

で、扉を開けたネルさんをみてなぜか固まる門番さん。

「ネルさん?・・ですよね?」

「そうだよ?・・あ、これ?この子たちがくれたんだ。これからよろしくだって・・良い子たちだよねぇ。」

「そうですね・・・って、ネルさん凄く似合ってますよ。てか、なんで今まであの服装だったんですか!?そんだけかっこよく着こなしてるんだから勿体なさ過ぎでしょう!!」

「えー。俺ってそれほどかっこよくないって。やる気ゼロだよ-?」

「いや・・それは否定しませんけど・・はぁ、本気でもったいない。ちびっ子たち、よくやった。こんな掘り出し物を発見してくれて!」

「いえ・・」

「偶然見つけて着せてみたかっただけですから。」

なぜか、感激してる門番さん。

「実は俺、ネルさんに密かに憧れてここの門番になったんだよ。」

「そうなんですか?」

「てか、ネルさんに憧れてる連中って表には出てこないけど意外といるんだぜ?この人、教えるの上手いしさりげなく手伝ってくれたり助けてくれるし。命を救われた奴だっていたりするんだぜ?」

「すごーい!」

「だって言うのに、面倒だから黙っててねーって一言でどこか行くし、その服装のせいでみんな勿体ないって思ってたんだよ。」

「わかります!すっごい分かります!」

「まぁ、そんなの知ってるのはこの国にそれなりに長くいる連中だけなんだけどさ。」

「ネルさんってここの卒業生だからってことですか?」

「そうそう。その頃から知ってるってこと。それを知らない連中がネルさんを馬鹿にしてるんだ。まぁ、君たちのおかげでがっつり改善されてるけどな。ざまぁ!!」

凄く楽しそうです。

「それで、何か用?」

「え?・・・あぁ、そうだった!フリージアって女の子ここにいる?」

「そこにいるよ?がっつりおやつタイムだけど。僕はシャスティさんのお団子。以外とおいしいんだよねー。ほら、1つどうぞ。」

「あ、どもっす・・あ、うまい。・・・じゃなくて!!!って、主席のお嬢ちゃんじゃん。てか、クテン様がフリージアさんだったのかぁ・・はぁ。」

「それで?」

「あぁ、騎士団長様がお探しだぜ?」

「ノクスさんが?なぜに?」

「なんか、大事な話があるんだとさ。」

「なんだろう?」

「さぁ?けど、騎士団長様が言うには、ラウが会わせたい人がいると言っていた件だ・・だとさ。何のことだ?」

会って欲しい人・・・あぁ、上司さんのイリスさんって人ですね。

-わかりました。私1人ですか?-

「お嬢ちゃんが良ければそっちの友達も連れてって良いらしいぜ?ちなみに、保護者のじいさんとかは、既に向かってるらしい。」

「リア・・どうする?大事な話なんでしょ?」

「そうだよ?・・元々ここであったのも偶然なんだし。」


んー。


-一緒に来て頂けませんか?-

「いいの?」

-なんとなく一緒にいて欲しいから・・と言いますか、知っていて欲しいんです・・。-

「わかった。」

「うん・・あぁ、かわいい//」

と抱きつくセイちゃん。

「お出かけか。行ってらっしゃい。シャスティさんにごちそうさまって言ってて?」

(コクリ)

「それと、これ、ありがとう。」


そして、私たちは門番さんについていきました。






「フリージア様。お迎えに上がりました。」

と片膝ついてかしこまってるノクスさんがいました。

ついでに騎士団の皆さんも勢揃い。



「・・・・・師匠、どうしたの?いつもリアのこと様付けじゃなかったのに。」

「フリージア様に関しては、それは出来ない。」

「それって、これからリアちゃんに会わせようとしてる人と関係してるんですか?」

「そういうことだ。大変お手数ですがいらして頂けませんか?無理強いはしてはならないと厳命されておりますので。」

「ノクスさんをここまでさせるなんて・・・まさかね。」

-セイちゃん?-

「ううん。何でもない。どうする?」

-ノクスさん、質問をよろしいですか?-

「なんなりと」

-これから向かう先へ行けば、私のことが・・家族のことが分かるんですか?-

「もちろんです。」

-それと、それによって私の生活は変わりますか?-

「フリージア様がお望みであればいかようにも。」

私の意志次第なんですね。

-分かりました。連れて行って下さい。-

「承知致しました。」


そして、ノクスさんについていきました。





そして、思ったのは、

「ねぇ・・これから会う人って絶対凄い人だよね・・色んな意味で。」

「そう思う・・と言うより、みんなのかしこまり方が普段以上に凄い・・。」

お城の中を歩いて行ってる私たちですが、メイドさんも執事さんもみんなかしこまってます。

ちなみに私を筆頭にシャスティ、カルナ、ハディちゃんと続き、リカルさんにおじいさまもついてきてます。

兄さんはいません。

きっとこの先にいるんですね、お仕事ですから。


それと、セイちゃんとユウちゃんは私の隣。



そして、たどり着いたのはそれはそれは豪華そうなおっきな扉。

無駄に大きいと思ってしまう私はずれた子なのでしょうか。


「フリージア様ご一行、到着致しました。」

「入りなさい。」

「はっ!」


扉が開かれ、奥へと導かれる。

その先にいたのは、白銀の髪をした王様っぽい人と王妃様っぽい人。

そして、凄く美人なお姉さんと格好いいお兄さん。

そして・・凄く中性的でこう言ってはなんですが、男性用の服も女性用の服もどっちもお化粧なしでばっちり着こなしてしまいそうな凄い美人さん。


どうしてでしょう。

この美人さんと何か繋がりを感じます。

この繋がりは・・血?



とりあえず、予め言われていた通り片膝をついてかしこまる。

「面を上げなさい。」

いわれた通りにします。

「まずは、突然の呼び出しに謝罪しよう。申し訳ない。」

セイちゃんが凄くびっくりした顔してる。

どうやら、王様はちょっとやそっとじゃ頭を下げてはいけないらしいです。

実際、そこですっごい普通に下げますけど。


私は首を横に振る。

「そうか。早速ではあるが、本題に入らせてもらおう。フリージアさん、あなたの名前をフルネームで教えてもらえるかな?」

-フリージア・エトワールです。-

「ありがとう・・だが、今求めているのはそうではないのだ。」

(?)

「略せずに言って欲しい。本当のフルネームだ。」



「え?・・リアちゃんミドルネームあったの?」

ぽつりと凄く小さな声でセイちゃんがつぶやく。


ですが、それは兄さんが言ってはいけないと・・それと、誰にもバラしてはいけないと言ってたのですが・・。

なぜ知ってるんでしょうか王様は。


隅にいる兄さんをちらりと見ると。

「あぁ、そうであったな。元々はワシが指示していたのだ。故にここでは問題ない。」

本当に?と兄さんをちらりと見るとふわりとほほえんで頷く。


-フリージア・クラリティ・エトワールです。-


私がそう言うと、全員が声のない驚いた反応をする。

特にセイちゃんとユウちゃん。

「やはりか・・ミドルネームについてはラウから教わっていたね?」

(コクリ)


ミドルネームは対象の国に長い間住み、優秀な成績(ジャンル問わず)のある人だけもらえるんです。

で、そのミドルネームにも例外はあり、ミドルネームが国の名前と同じ場合は。

「王族に連なるものの証・・」

ぽつりとリカルさんがつぶやく。

すると、それを耳にした王様が頷く。

「その通り。」

「お待ち下さい、陛下。」

「はぁ・・なんだね、グリル。」

宰相さんらしいです。

「本当にそうなのですか?ただ言っているだけの可能性もあるんですよ?」

「嘘を言っていると?」

「本当だとしても証拠がないと言っているんです。」

「ギルドカードを見せたとしてもか?」

名前とランクの部分だけフルネームで見えるようにして、他の人も見えるように承認して見せました。

「・・確かにそう記されていますが、それでも歴とした証拠にはなりません。」

「父上、アレを使ってみてはいかがでしょうか?」

「アレ?・・おぉ、そうであったな。」

美人さんが何か言いました。


アレ?


「フリージア殿。申し訳ないが向こうへ行っては頂けないだろうか?」

(コクリ)

指さされた方へ行くとカーテンで囲われた箇所があり、そこを騎士さんたちが開くとありました。




凄くきれいなものでした。


「それは、ピアノと呼ばれるモノでこの国に代々伝わる魔道具だ。それを正しく扱える人間はこの国の王族の血を持つモノだけだ。」


そのピアノと呼ばれるモノは、凄く大きく、中を覗くと細長いモノや小さな部品がたくさん並んでおり、全体的に木の色を極限まで自然な緑に近づけたようなまるで木が活き活きしているような色をしていました。


凄くきれい。


-触っても良いのですか?-

「あぁ、構わない。」


ピアノとは何なのかは分かりません。

けど、私はなぜか知っている。


どうすれば良いのか。

そのピアノが何を求めているのか。


ゆっくりと周りを回り、椅子に座る。

そして、隣の壁に杖を立てかけ、両手をのせて構える。





~♪



何の曲かは分からない。

やり方も知らない。

なのに知っている。

使い方を。

弾き方を。

曲を。



私がピアノを弾く。

ゆったりとしっとりと。

なめらかに軽やかに。

「凄くきれいな音・・。」

「どことなくあのピアノって魔道具・・活き活きしてる気がする。」

「うん・・いつまでも聞いていたくなるね。」





ピアノを弾きながら思う。

どことなく体が軽い。

体の中の何かが凄くフワフワする。


私は【影翼】を発動して翼を広げ、歌を歌う。

私の歌にも歌詞はない。

知らない歌。

歌詞のない何かの歌。


そして、知らないはずの歌を歌える。

そして、何も分からないのに弾けるピアノの伴奏とマッチしていた。



心が軽い。

心が清められるみたい。

なんとなくお母さんと一緒に弾いているような・・そんな気持ちになる。



私は自然と笑みを浮かべた。





「リアちゃん楽しそう。」

「うん。ペチュニアさんと一緒にいる気持ちなのかな?」

「きっとそうだよ。あんなに楽しそうなんだもん。リアちゃんにとってはペチュニアさんは憧れで大好きなお母さんなんだから。」





「グリル、アレでも疑うか?」

「・・・いえ。ありがとうございます。」

「分かれば良い。」

「兄様・・本当にフリージアさんはペチュニア様そっくりですわね。」

「そうだね・・あんなに楽しそうにしてくれて良かった。あの笑顔が見れて本当に良かった。」

「あぁ、私にもなんとなくペチュニア様が共にほほえんでいる姿がどことなく感じる。」

「あの子は本当に・・ペチュニアさんのご息女なのね。凄く懐かしいわ。ねぇ、あなた?」

「あぁ、あの姿が見れただけでもここに連れてきて良かったと思う。ノクス、礼を言おう。」

「いえ、彼女があんなに楽しそうにしている姿を見れただけでもとてもうれしく思います。」

「そうだな。」



そして、私は弾き終える。

「お母さん・・聞いててくれたかな。」

ぽつりとつぶやくとどこからともなく



-聞いてたわ。上手だったわよ。-




そう聞こえた気がしました。








「フリージア殿ありがとう。まず、説明しよう。アレは、先ほど聞いててくれてたように楽器だ。しかも、王族でなければ例え音楽に才があろうとも決して音は出ないのだ。ユウと申したかな?」

「はい。」

「試しに軽く1つ2つ弾いてみてはくれぬか?」

「はい・・・アレ?ホントにならない。」

鍵盤を軽く押すと私だと鳴るのにユウちゃんだと鳴らない。

その後、セイちゃんもしたけど鳴りませんでした。


「不思議であろう?故にフリージア殿・・お主はれっきとしたこの国の我ら王族の血を持つ一族だ。・・ここで言うのも何だが、ここにいる誰がお主と繋がりのあるモノか分かるかな?」

私は、あの美人さんの元へ向かう。


「迷わずまっすぐか・・ちなみに理由を聞いてもいいかな?」

-私は昔から繋がりのある人のことを感じることが出来るんです。-

「ほう?詳しく聞かせてもらっても?」

-契約をしているのであればその繋がりをカルナやシャスティたちと、ご先祖様と縁があるモノであれば親子としてのモノを含め、血のつながりをなんとなく感じるんです。・・ずっと不思議だったんです。お墓にいたお母さんとは繋がりを感じたのに、あの町にいたあの男・・お父さんだと思っていたあの人とは一度もその繋がりを感じることはありませんでした。-

「では、その者からはその繋がりを感じると?」

(コクリ)


「そして、最後に聞こう。お主はこの国に誰に会いに来た?」

-兄さん・・ラウさんよりイリスさんというラウさんの上司さんに会いに来ました。-

「もう一度名を聞こう。」

-フリージア・クラリティ・エトワールです。-


で、私の目の前でプルプルしてる美人さん。

-イリスさん・・あなたが私のお父さんなんですか?-

「そうだよ・・僕のことを呼んでくれないか?」

「おとう・・さん。」

「パパと呼んで欲しいな。」

どこか泣きそうなうれしそうな顔でそう言う。

「パパ」

そう呼ぶと膝から崩れ落ちてそのまま私を強く抱きしめる。

「会えた・・やっと会えた。ニアさん・・僕は頑張るよ。絶対にリアちゃんを幸せにしてみせる。これまで一緒にいることが出来なかった分までいっぱい・・いっぱい・・幸せにしてみせるから・・リアちゃん・・ずっと親らしいことを一度も出来なかったどうしようもない男だけど・・こんな僕は君の父親として傍にいて・・いいかな?」

「何を・・当たり前のことを・・言っているのですか・・・パパ。私のパパは・・世界中で・・あなただけ・・です。」

「うん・・うん!」

そして、凄く泣きながらうれしそうに抱きしめてくれる。



パパ。


温かい。

これが、親子のぬくもりなんですね。



すると涙が溢れてくる。

「リア・・良いんだ。」

カルナ?

「こういうときは思う存分泣いて良い。ずっと飢えてたんだろう?家族のぬくもりを。どんなに言ってもバレクでもリカルでも優しくは出来ても、抱きしめることは出来ても親のぬくもりを与えることは出来ない。親には甘えて良いんだ。」


私はこれまで泣けなかった分をいっぱい泣いた。


さみしかった。

つらかった。

悲しかった。


そして・・



「ずっと・・会いたかった。」











「では、今回の件はリアちゃんのお父さん・・えぇっと、フリージア様のお父上であるイリス様とのことを?」

「2人はリアちゃんの友達なんだからいつも通り良いんだよ?」

「ですが・・」

「いいの。そんな言い方をするとさみしいんだから。」

「はい。」

「だから、僕のことも王子としてではなく、リアちゃんの1人の父親としてみて欲しいな。僕は王にはならないんだから。」

「良いんですか?」

「良いよ。むしろ命令さ。」

「はい。イリスさん・・で良いですか?」

「良いよ。」

「はい。」


「・・ホント驚いた。リアがお姫様なんだもの。」

「けど、ノクスさんがあんなことになったのは納得だよね。」

「うん。そりゃあ、様付けじゃないといけないよ・・・思いっきり上司なんだし。」


「それでイリスよ。フリージア同様、これからどうするのだ?」

「どうするとは?住む場所などの話しですか?」

「そうだ。この城でも構わぬが、お主のことだ。ここで過ごすつもりはないのであろう?」

「はい。」

「どこに住むつもりだ?フリージアたちがいるあの場所か?」

「そこでも良いのですが・・リアちゃん。住みたい場所とかある?」


住みたい場所ですか・・・。




・・あ

-わがままを言っても良いですか?-

「良いよ。どんどん言って?」

-羊さんたちがいるあの場所に住みたいです。-


そう。

ずっと我慢してたんです。

羊さんたちをモフモフするのを!!

あそこにお家があればいつでも好きなだけモフモフ出来ますし、セキュリティ?と言うのも、羊さんたちがいるので安心安全。

おまけに結構広いですからハディちゃんたちものんびり出来るでしょうし。

「うん、良いよ。家はどのくらいの広さにしようか。」

-ハディちゃんたちが窮屈しないくらいの広さで部屋は1つか2つあれば十分です。-

「それなら、平屋で全体的に大きめにしよっか。」

(コクリ)

「他には希望はある?」

(フルフル)

「そうだね。じゃあ、早速お願いしに行こうか。」

-誰にお願いするのですか?-

「ん?このお城や教会の建物、この国の色んな建物の修復や一般市民たちの家の建築を主にしているクランがいるのさ。」

-建物を建てたりする専用の方々がいるのですか?-

「そうだよ。様々な魔法からワザ、技術を持つ者たちが建築する為だけに集まった。建築にのみ力を注ぐこの世界でもかなり珍しいチームなんだ。」


クラン:ディフィス


様々なワザ、技術、魔法、種族の人たちが集結した建築に人生を捧げるクランなんだそうです。

建築に関する職業の人たちはいるそうですが、大抵の人は、修復をメインにしてたり、副業に別のをしてたりと建築オンリーで副業禁止で、空き時間は自給自足&特訓というとことん建築にだけ人生を捧げているのはこのクランだけらしく、建築に憧れや職にしている人たちからすれば憧れのクランなんだそうな。


どうやら、この国にはそのクランの人たちが最も多くいるらしいです。

と言うのも、この国にはとてもきれいな建物が色々あるのと、本がたくさんあるから凄く人気な場所らしいです。

修行も含んでと言うことらしいですが。



-ギルドでお願いするのですか?-

「そうなるね。と言うわけで父上。」

「うむ、承知した。まずはこれを2人に渡しておこう。」


それは、ナイフでした。

デザインは凄くシンプルで、鍔の中央にはお花(ペチュニアというお花のようです)が1輪描かれています。

鍔やグリップは純白で出来ていて、刃の部分は切れないようにつぶされていますが、白銀で出来ていて凄くきれいです。


「これは・・良いのですか?」

「あぁ、アイリスとルイスを王として既に国民には公開している。だから、問題ない。イリス・クラリティ。公爵の地位を授け、名をイリス・クラリティ・エトワールと名乗ると良いだろう。このナイフは、公爵としての証だ。」

「承りました。」


パパは、王様から公爵になったようです。

そして、その公爵としての証がこのお花のようです。


「既に気づいているとは思うが、この花はペチュニア殿と同じ名前の花だ。彼女の頑張りが今のお主たちを作っているからな。」

「お気遣い感謝致します。」

パパと揃って頭を下げます。


私は、公爵という地位の貴族になったようです。



貴族にはランクがあるらしく、上から順に侯爵、伯爵、子爵、男爵とあるらしく、基本的に侯爵は最も高く、男爵が一番低いらしい。

男爵は言い方を悪くすれば一般市民よりも微妙に上くらいで、一般市民が10とすれば12や15ほどなんだそうな。


では、私の公爵は?となると思いますが、それは王族の血が流れる貴族で、貴族の中では本当の意味ではこっちが一番上。

では、公爵と侯爵の違いは?となりますが、一般市民から成り上がることが出来る最も高い地位が侯爵で、王族の血が流れていなければ決して慣れないのが公爵なんだそうです。





そして、私はパパに抱っこされてギルドへ向かいました。



それと、ギルドカードにはこんな感じで変化がありましたよ。








名前:フリージア・クラリティ・エトワール(悪心撃滅体質)

ランク:B(二つ名=魔鏡姫/夜叉姫)

クラン:ポレール・ジュレ

パーティ:ハリーファ(リーダー)


性別:♀

年齢:10

種族:半異世界人?

身分:公爵

職業:賢者、協奏師

称号:絶望を知る者、幻獣の家族、変態紳士ロリコンホイホイ、英雄賢者の正統後継者、神子クテン、狩人


属性:陰

体力:C

魔力:SS

攻撃:D

防御:E

俊敏:D

練度:SS


攻撃技1:【影操作】【射撃】【影纏】【影翼】【人形劇】

攻撃技2:【魔力反射】【物理反射】【性質変換】

攻撃技3:【杖術】【刀】【剣】【短剣】【鞭】【槍】【薙刀】【棍】【棒】【鎌】【斧】【かぎ爪】【合気】

補助技:【念話】【奉納】【心意加増】【精神統一】【アクロバティック】【威圧】

自動技1:【圧縮記憶】【思考速度上昇】【並列思考】

自動技2:【心の瞳】【ショートクさんの耳】【心の歌】【騎乗】

覚醒:【侵食】【拡張】【守護者召喚】


衣類:精霊のストール、精霊樹のローブ

装備品:聖華の杖、教会の腕輪(EX)、幸運のイヤーカフ、聖木せいぼくの義手、クラリティ王国公爵家の証(儀礼剣)

写真:フリージア・エトワール、ペチュニア・エトワール


契約

【幻獣】八咫烏:カルナ

【幻獣】ガルディエーヌ・キャット:シャスティ(装備:黒月)

【妖精】オニキス・ゲル:スイ

【??】ウールスフィア:ラナ

【魔物】クロコディルガーディアン:ハディ


加護

ペチュニアの溺愛、流星姫ペチュニアの過保護

元英雄賢者/現神様のお気に入り、桜華おうかの子孫

下位精霊の親愛、上位精霊:リフの溺愛、精霊樹の巫女




クラリティ王国公爵家の証(儀礼剣)

とてもシンプルなデザインのナイフ。

クラリティ王国の公爵家の証としてペチュニアの花が1輪描かれており、グリップと鍔の部分は純白、刃の部分は白銀で出来ており、切れないよう潰されている

実はイリスがフリージアの父親と公言するのはフリージアが5年生か4年生の頃の予定でしたが、イリスが父親としてフリージアと学園生活での思い出を作ってあげたいんじゃないかと思い、予定より早く親子と公言することになりました。


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