遠征からの帰還
山狩りによる殲滅戦が無事に終了した翌朝、私たちはクラリティ王国へ帰還します。
馬車には被害者のみんなが乗り、私、セイちゃんがハディちゃんの背に乗り、騎士さんたちが全員歩きながらぐるりと囲んでいます。
主に体力や走る速度を考慮してこうなってます。
ユウちゃんと騎士さんたちは、特訓と言って走ってますけど。
で、通りすがりに襲ってくる魔物はカルナとシャスティがメインで倒してます。
ユウちゃんが特訓代わりに戦うのかと思ってましたけど、帰りくらいは保護者にまかせろとのことで、シャスティたちです。
ならなぜ走ってる?となるのですが、おとなしく座っているのはもったいないと思ったらしく走ってます。
疲れ果てればハディちゃんの背中に乗りますけど。
「予定より早く出発出来たからな。多少速度が落ちても本来の期間日に到着するだろう。」
要するに、依頼の約束だった5日目には到着出来ると言うことらしいです。
入学式が控えてますけど、それでも2~3日はあるので多少送れても問題なしです。
「被害者の皆さんはどうするんですか?」
「国が管理している孤児院に一旦預かってもらい、そこから教会を経由してそれぞれに適した場所へ帰すか向かってもらうことになる。」
帰る場所があればそこに送り、なければそれぞれが最も適した職につくためにそう言うところへ向かってもらうことになるそうです。
子供たちは人によっては親がいない、帰る場所がないと言う場合もありますから。
大人もですが。
そういうときは後見人を探したり、本人たちの自主性を尊重してそれに沿った場所へ導くんだそうです。
で、今回殲滅したアホ共によって発生する報酬金や換金するお金は、全額そんな人たちのために使ってもらうように既にお願いしてノクスさんが承知してくれてます。
当然、私が持つ指名手配犯のファイルによって発生するお金も含みます。
人数も結構いましたのでこれだけあればかなりの額になるはずなのである程度は問題ないはずです。
ついでに通りすがりに倒した魔物の分も換金してそっちのお金も追加する予定です。
・・・それによって更に恐縮されるのはここだけの話。
で、ノクスさんはなぜか被害者の皆さんから黒騎士様と呼ばれてる。
なぜ?と聞くと、戦っているときに黒いゴーグルに黒い両腕、黒い剣を扱って疾風のごとく敵をことごとく殲滅する姿を見て思わず被害者の皆さんはそう思ったらしく、あっという間に定着したんだそうです。
ノクスさんは複雑そうでしたけど、凄く格好いいですし、似合ってると思います。
と思ったのは私以外にも他の騎士さんたちも納得し、そのまま二つ名は黒騎士で決定しちゃいました。
だって、ノクスさんのギルドカードに二つ名として黒騎士ってはっきり表示されたんだもん。
そう言ってました。
とまぁ、そんな感じで帰りは比較的平和に帰れました。
・・・・が
「・・なぜ、門前があんなことになってる?」
ノクスさんがぽつりとつぶやく。
で、クラリティ王国に予定通り出発してから5日目のお昼と夕方の真ん中くらいの時間帯に到着しました。
ですが、門の前はなぜかすっごい行列。
歩行者の方も馬車の方も。
とりあえず、馬車の方に並びつつ近くの人にノクスさんが尋ねる。
「すまないが質問を良いだろうか?」
「ん?おぉ、騎士団長様じゃないですか。どうしたんですか?」
「ちょうど任務からの帰りだ。ところで、なぜ今日に限ってこんなにも人が多い?」
「俺も気になって近くの連中に聞いたんですけどね?今年学園に入学した子たちの中でとびきり優秀な子たちがいるって聞きまして、その勧誘といいますか、何と言いますか、つばをつけに来た連中が多いらしくて。」
「は?入学したばかりだぞ?と言うより入学式はまだ数日後だぞ?」
「そうですよね?けど、今回のトップスリーは歴史至上最高得点と最速記録を更新したという噂もありまして。」
「・・そうか。あまりしつこくしても嫌がられるぞ?」
「俺もそう思ったんですけどね?どいつもこいつもそんなのは後回しで勧誘する気満々何ですよね・・。普通に考えれば頭が良いだけじゃなくて実力も折り紙付きなんだからそこらの連中だと逆にやりかえされるのが落ちな気がするのは俺の気のせいですかね?」
「気のせいではないと思うぞ?入学する為には頭だけではならない。実力もサポーターにしても戦闘特化にしても何かしらの強みと伸び代、本人の向上心が必要となってくるからな。頭が良くとも実力が伴わなければ入学生のランキングトップにはならん。あくまでも実力と知識の合計とそれぞれの平均を含んだランキングだからな。」
「へぇ~。ってことは、知識は折り紙付き、それにふさわしい実力もってことですかい?」
「そういうことだ。」
「勧誘したくなる気も分らなくはないですが、返り討ちにされたくないので拝むだけで俺は十分ですがね。」
「それが賢明だろう。例え騙そうとしてもそれだけ頭が良いのだ。その程度軽く見破り、社会的にとことんとやりかえされるのがオチだ。」
「そうですよね。」
「すまない。助かった。」
「いやいや。騎士団長様と会話が出来ただけでも光栄ですよ。」
「そう言ってもらえて助かる。」
なるほど。
・・・
「ねぇ・・それってさ。」
「やっぱりそう思う?」
-やはり私の思い違いじゃなかったんですね。-
こっそりとセイちゃんたちとお話し。
やっぱり、私たち3人のことらしいです。
とりあえず
-面倒なので黙っておきましょう。バレたらバレたでどうにかなりますよね?-
「うん。なるなる。」
「僕たちだけでも十分だけど、ハディさんたちもいるからまず大丈夫でしょ。」
「まぁ、そんなの関係なしでリアちゃんにはカルナさんたち獣魔たちがいないとムリだけど。確実にお持ち帰りしちゃう。」
そう言いながら私に抱きつくセイちゃん。
「あぁ・・けど、大丈夫じゃない?多分無理矢理したら獣魔たちが潰すか、リアがやり返すだろうし。」
「確かに・・この子にはアレがあったもんね。」
微妙な顔をして私をみる2人。
アレ?
あぁ。
悪心撃滅ですか。
やりますね。
おまけにシャスティたちが目を光らせてるので下手なことをすれば問答無用で処分しちゃいますね。
「まぁ、大丈夫だろう。数日もすれば飽きる。それに、客が増えるのも国にとっては良いことだ。」
ノクスさんは深く考えるのを止めたようです。
けど、納得です。
何事も前向きにですよね?
それにしても・・長いですねぇ・・。
-二人は、寮に行くんですか?-
「まぁね。2人で1部屋とるつもりなんだ。」
-聞く話によるとベッドが1つと椅子とテーブルがある程度であまり広くないらしいですが、大丈夫ですか?と言うより、許可されるんですか?-
「あぁ・・大丈夫と言えば大丈夫みたいだよ?一応1部屋借りるのも1年いくらでお金払う必要あるし・・。」
で、凄く複雑そうな顔をしてるユウちゃん。
首をかしげるとセイちゃんが私にこっそり教えてくれる。
「2人で1部屋借りるのは恋人同士だったり相当な仲良しな子たちしかしないんだ。だから、同棲でそう言うことをするのは相当仲が良いか、そう言う関係ってこと。」
-そう言う関係?-
「あぁ・・特殊な人たちもいるってことだから深くは考えないで?」
(コクリ)
-セイちゃんは、ユウちゃんが好きなんですか?-
「うん。好きだよ。」
即答でしたけどお顔は赤いです。
「ユウも口にはしないけど私のこと好きって知ってるんだ。ユウも私がユウを好きなんだって知ってる。」
-相思相愛というものですか?-
「そういうこと。じゃないと、子供同士だからって言って2人で1つのベッドを使うなんてコトしないわよ。私だって色々と成長してるんだから。」
-口に出して好きって言ったんですか?-
「んー・・互いに分かってるから言ってないよ。何と言うか、口にするのが恥ずかしくて。」
-私は口に出して互いに言うべきだと思います。-
「リアちゃん?」
-実際に言ってもらわないと分からないこともありますし、言いたくても二度と言えなくなることもあります。嫌なことではないですから口に出して直接言ってもらった方が相手もうれしいと思いますよ?-
「リアちゃん・・うん。言う。言わずにずるずる先延ばしにしてユウが私以外の子を好きになるのはちょっと嫌だもん。」
かわいい。
セイちゃんが凄くかわいい。
抱きついたままなので優しく抱きしめてなでなで。
「・・ユウは、リアちゃんを好きになるんじゃないかってちょっと心配だけど。」
-それはありませんよ。-
「どうして?」
-私は好きという気持ちはよく分かりませんが、ユウちゃんは、セイちゃんのことばかりを考えてますし、行動する時は常にセイちゃんのためです。-
異性としての好きという気持ちは私には分からない。
けど、誰が誰のためにどんな気持ちで行動しているかは見ればわかります。
ユウちゃんはいつもセイちゃんのために頑張ってる。
「リアちゃん・・ありがとう。」
それに、セイちゃんもいつもユウちゃんのために頑張ってるのも知ってる。
二人は互いのためにいつも頑張ってるから凄く良いと思います。
それなら、
「ユウちゃんに好きっていって下さいね?」
「は、ふぁい//」
セイちゃんに耳元で囁くようにお願いしたら蕩けました。
よし。
これで完了です。
で、蕩けて私のお膝に倒れ込んだので膝枕してあげながら撫でてあげます。
今、ハディちゃんの背中の上にいます。
「リア・・セイに何言ったの?」
-今日の夜になればわかりますよ。-
「そうなの?」
-セイちゃんに聞いて下さい。-
「そっか。うん。」
「リア」
-どうしましたか?-
「僕とセイの友達になってくれてありがとう。改めてこれからよろしくね。」
-こちらこそ私の友達になって下さってありがとうございます。よろしくお願いします。-
心のどこかがぽかぽかします。
友達は凄く良いものですね。
確かに実際に経験しないと分からないことがありました。
こんな感じで楽しい思い出をいっぱい増やしたいです。
そういえば、イリスさんって何者なんでしょうか?
適当なとこでぼちぼち調べましょう。
いざとなればアッチから訪ねてくれますよね、うんうん。
その内何もしなくとも会える気がするんです。
ちなみに門をくぐることが出来たのは、それから数時間が経過し、お空が茜色に染まり、徐々に暗くなり始める頃でした。
「今日まで本当に助かった。まずは、報酬だ。」
銀貨はなぜか10枚から15枚に増えてました。
「ノクスさん・・増えてますよ?」
「頑張ったから追加報酬だ。」
「なるほど・・。」
「それと、君たち3人はいつでも俺たち騎士団の元に訪ねることが出来るようになった。」
「それって、お城の敷地内でもノクスさんたちがいるところまでなら自由に入れるってことですか?」
「あぁ。それ以外の場所は許可が必要だがな。ここまでであれば陛下からも既に許可を頂いている。カルナたちとの特訓はかなり好評だからな。」
なるほど。
王様も大丈夫って言ってるわけですね。
「いえ!十分です!」
「そうか。それから・・」
「まだあるんですか!?」
「あの教会にある本の閲覧許可だ。」
「え?許可がないと読めない本があるんですか?」
「内容によっては、不用意に読めないようにしておくモノもあるんだ。それを許可された。」
不用意に読んで危ないことをする人もいるから一部の本はそうしないといけないんだそうです。
「良いんですか?」
「あぁ、教会のシスターたちか神父のいずれかが常に同行する必要はあるが、あの建物の中にある本は全て読めるぞ。」
「調べ物では凄く助かるかも。」
確かにそうですね。
翠ちゃんも知識欲がいっぱいなのでうれしそうです。
私も気になることが色々ありますし、お勉強に良いかもしれません。
「それらの許可は、君たちのことを関係者に告げている故、顔を見せれば問題ない。フリージアに関しては、獣魔たちのことも話している。単独で訪れてもおそらく大丈夫だろう。」
カルナやシャスティみたいにお話ししたり本を調べたりする可能性があると分かってたようです。
後、翠ちゃんも。
-ありがとうございます。-
「これで以上だ。後は、アリス頼む。」
現在、お城の門をくぐった先のいつもの訓練場にいます。
で、そこになぜかアリスさん。
「リアさんは、ギルドランクをBに。お二人は、Cランクにランクアップです。今回の依頼で丁度上がりましたよ。おめでとうございます。」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます。リアちゃん、私たちの1つ上だったんだ。」
-ありがとうございます。姉さん、どうしてこっちでその手続きを?-
「ギルドの受付で行なうと依頼開始の時と違って目立ちそうだったので。ギルドマスターには許可はいただいてますよ。」
なるほど。
ノクスさんからの指名依頼でしたからね。
と言うわけで、二人とお宿で別れようとしたんですが・・・・
「ごめん・・リアちゃん。」
「リア・・ホントごめん。」
-気にしないで下さい。部屋はいっぱいありますし、いざとなれば一緒のお部屋でも大丈夫ですから。-
何があったかと言いますと、この国に入るときにあの大量にいた人たちがいたせいで、2人が借りていた部屋を空けておくということが出来なくなった・・と言うより、空けといて?っていうお願いが許されなくなっちゃったんです。
で、泊まることがないので、私が今住んでるところに入学式が始まり、寮を借りるまで一緒にいることになったんです。
-お金などは必要ありませんが、おそらくお風呂に攫われたり等身大人形の扱いをされると思いますが。-
「あぁ・・リアちゃんは分かるんだけど、私も?」
「僕、男なんだけど・・。」
-二人とも十分かわいいですよ?それと、あの人たちは基本的にスキンシップがすさまじいので、そう言う人たちだと思って下さい。-
「あぁ・・了解。」
「複雑だけど了解・・弟や妹をかわいがるってことなんだね・・程度が半端じゃないっぽいけど。」
「うん・・泊まらせてもらってる宿賃と思っておこう?」
「そうだね・・。」
ちなみに、ユウちゃんはおっぱいがおっきいお姉さんたちに愛でられてうれしい?と聞いたんですけど。
「その気持ちは否定しないけど、精神的な疲れとかがひどくて大変そう・・・と言うより、僕が結構な頻度で女の子に間違われるからうれしいよりも悲しい気持ちになるんだよね・・。」
と大変微妙な表情になってました。
なるほど。
かわいがられる=弟扱いではなく妹扱いが目立つわけですね?
で、女の子扱いされるのは大変嫌なことにあたるのでうれしいどころではないと。
なるほど。
そうやって、唯一異性として大好きなのはセイちゃんだけにとどまるわけですね?
セイちゃんに可愛がられるのはそんな嫌な気持ちになる唯一の例外と。
まぁ、一応私も例外らしいけど、セイちゃんに劣ります。
そりゃそうですよね。
好きな人とそうでない人なわけですから。
よく分かりませんけど、雰囲気でそんなものかって感じで納得してる私です。
-と言うわけで、ただいま戻りました。そして、入学式の日まで一緒に住むことになりました。セイちゃんとユウちゃんです。ユウちゃんは男です。-
「よろしくお願いします。」
「お邪魔します・・リア・・すっごい自然な流れで性別も言ってくれてありがと。」
「お帰り。よろしくお願いしますね。」
「よろしく頼む。」
兄さんとおじいさまは既に挨拶が済んでるので知ってます。
で、リリさんたちがすっごい2人を愛でつつ、
「えー?ホントに男の子?・・あ、ホントだ。」
「キャー!?」
「ちょっと、リリ!子供だからってそんな普通に揉まないの!と言うより、すっごい自然流れで握ったわね。」
リリさん、ユウちゃんが男と信じられなかったらしく、オマタを鷲づかみして揉んでました。
で、今、セイちゃんの後ろに隠れてます。
若干内股でお顔を真っ赤にして。
セイちゃんは抱きしめてあげてかばいつつ頭をなでなで。
「こら、リリ。セクハラはするな。謝れ」
「はい・・ごめんなさい。」
「い・・いえ・・。」
ユウちゃん、この家の人たちのスキンシップの激しいという本当の意味で知ったようです。
セイちゃんも同じく。
ちなみにリリさん、以外とおっきいかもとつぶやいてましたけど、何のことかは教えてくれませんでした。
と言うより、ユウちゃんが速攻でリリさんの口を両手で塞いで黙らせてましたし。
ちなみにお風呂の時は、セイちゃんは私と同様攫われて一緒でしたけど、ユウちゃんは全力で逃げて、男性陣と入ってました。
・・なぜか、胸までタオルで隠せと言われたらしいですけど。
本人は微妙に目が死んでました。
「リアは毎日星空を眺めてるけど、好きなの?」
寝る前に、屋根の上で習慣化されてる星空観察をしてると一緒に参加してるユウちゃんとセイちゃんから質問がとんでくる。
-今は、そうですね。-
「今は?」
-当時は、星空を眺める以外ですがりつくモノがなかったので。おそらく現実逃避だったんだと思います。-
「あ・・」
「ごめん」
-気にしないで下さい。今は、眺めていると心のどこかが凄く穏やかで心地が良い気がするんです。-
「なんとなく分かるかも。落ち込んだときに星空を眺めてるとどことなく癒されるんだよね。」
「うん、確かに。泣きたいときに星空を眺めてると慰めてくれる気がする。」
そして、なんとなく私は歌を歌う。
身内や本当に中の良い人たち以外がいないとき限定で歌うことが多いんですけどね。
そんな、穏やかに歌う私の歌を2人は心地よさそうに耳を澄ませながら星空へ目を向けていました。
その時の星空はいつも以上に輝いてきれいに見えたとセイちゃんたちはつぶやいてました。
ちなみに、夕ご飯の時はリカルさんが作ってくれたのでとても凄い飾り方をいつものようにしてくれてたのですっごい驚いてました。
「そういえばリアちゃん。その歌って聞いたことないけどどこの歌?」
「僕も聞いたことないかも。けど、いつもそれ歌ってるよね?」
-さぁ?-
「さぁって・・」
-私も知りませんがなぜか知っています。いつ聞いたのか。どこで聞いたのか。誰が教えてくれたのか。何も知りません。けど、とても大事な歌のような気がするんです。-
「そっか」
「いつか分かると良いね。」
(コクリ)
私が歌う歌は、私の歌を聴く人の誰1人として知っている人がいなかった。
けれど、私は知っている。
けれど、いつ、どこで、誰から聞いたのかは一切分からない。
けれど分かる。
とても大事な歌なんだって。
いつか分かると良いな。
翌日
2人は私のスケジュールに併せるとのことで、朝の身仕度から朝ご飯、朝のお勉強に特訓、おやつと続きます。
で、おやつを食べながら。
「何気に初めて一緒に勉強したけど、翠さんすっごいわかりやすいし、内容が面白い。」
「ホントに思った。リアはいつも翠さんに?」
-最近はそうですね。これまでは、兄さん、カルナに教わってました。-
「今は翠さんだけなの?」
-と言うより2人の知ってることを翠ちゃんが聞いて、まとめて翠ちゃんが私に教えてくれてる感じです。翠ちゃんは知識欲が凄いので兄さんたちが知ることも知りたかったらしいのでその方が互いに楽と言うことになりました。-
「なるほど。それで、教会の本の閲覧許可が出たときにうれしそうってリアが言ってたんだね。」
これまでは、兄さんとカルナ、翠ちゃんに教わってたんですけど、ここ1~2年ほど前から、兄さんとカルナ、その他で色んなことを教えてくれる人たちはそれらを翠ちゃんに伝え、翠ちゃんが知ってることと総合してまとめたのを私に教えてくれてる状態です。
なので、翠ちゃんが専属の先生です。
元々翠ちゃんは知識欲がすっごいのでどのみち色んなことを知りたかったらしいのでその方が翠ちゃん個人が知りたいことなどの質問もその人たちに出来るので二度手間にならずに済むんだそうです。
という感じで、セイちゃんとユウちゃんも私と一緒に翠ちゃんのお勉強を受けたわけですが、わかりやすくて内容もしっかりしてて、それでいて興味深いことがいっぱいで楽しいととても好評です。
「じゃあ、リアちゃんはこれまでの分がいつものスケジュールでそれからは自由時間なんだ?」
-そうですね。依頼を受けるにしても外へ遊びに行くにしてもそうですね。-
「なるほどねぇ。私たちも午前中は勉強と特訓するけど、リアちゃんほどみっちりとしたスケジュールじゃないから素直に凄いって思う。」
「僕も同じく。そりゃあ、学園トップになってもおかしくないというより当たり前だよ。普段からの努力から凄いんだもの。」
-正直すごいと言われましても、私にとってはこれが普通なのでよく分かりません。それと、この範囲が世間的にどれほど先に進んでいるかも分からないんです。-
「私たちも似たような感じかな。元々教わってたときも余所様のあれこれは知らん。自分が分からないことはとことん追求しろ!だったし。」
「うんうん。」
私のお勉強はそう対しておかしくないみたいです。
まぁ、セイちゃんとユウちゃんも世間的にはずれてるらしいとユウちゃんから聞きましたけど。
それと、余談ですけどセイちゃんとユウちゃんは空き部屋を2人で1部屋借りることになり、その部屋でしっかりとセイちゃんはユウちゃんが好きだと告げて、ユウちゃんも同じく好きと言ったらしく、正式に2人は恋人?になったらしいです。
人生をともに歩むパートナーらしいですけど、冒険者とかが言うところの相棒とどう違うのかよくわかんないです。
と言っても、2人にとっては普段とあまり変わらないみたいなんですけどね。
常に一緒なのは普通で、当たり前だったらしいですし。
けど、どことなく2人はこれまでよりも幸せそうなのでやっぱり、口にして言った方が良いと思ったのは正解だったみたいですね。
で、暇つぶしに何か依頼を受けようか?となったので、ギルドへ到着です。
「何かあるかな?」
「そんなに時間がかからないのが良いよね。」
「だよねぇ。・・・・お?」
「セイ、どうしたの?」
「ねぇ、これ。どう思う?」
「ん?内容は説得・・暴力厳禁・・で、ランクはB・・・なんで、こんなにランクが高いの?」
ギルドの依頼は、自身のランクより上は基本的に受けることが出来ません。
ですが、同じチームやパーティで受ける場合は、1人が例えばBランクがいれば普通であれば受けることが出来ないDランクやCランクの人もBランクの依頼を受けることが出来ます。
今回で言うところの私がいるから2人はBランクを受けられるということですね。
「暴力はダメっていうのはわかるけど・・拷問の類になるんだろうし。」
「何をしゃべらせるんだろうね?」
-冒険者に頼まずに騎士さんや国に使える人たちがするのが適していると思うのは私だけですか?-
「確かに。私たちよりもよっぽど説得とかそういうのは得意なはずだよね?」
「どうする?受けてみる?ペナルティとかなさそうだし。」
依頼内容によっては、ペナルティがあります。
報酬が半分になるとか、逆にお金をいくらか支払わないといけないとか。
「・・・もしかしたら意外と簡単にいけるかも。」
「なんで?私たち子どもだから油断してくれるとか?」
「だってさ・・・」
と言いながら私を見るユウちゃん。
で、同じく私を見たセイちゃんは
「あぁ・・うん。納得した。」
(?)
「気にしないで良いよー。リアちゃんが可愛いのがいけないんです。アリスさ~ん、これ受けま~す。」
私を抱きしめながらそう叫ぶセイちゃんと、そそくさと依頼受領の手続きをしに向かうユウちゃん。
「かしこまりました・・完了です。相手は、奥の部屋にいるので。」
「は~い。」
そして私はセイちゃんに引きずられていきました。
部屋の中に入ると、20代前半くらいのお兄さんが3人。
どこかやさぐれてます。
「リア・・リアは、何も言わなくていいからただ相手をじっと見つめるだけね?」
耳元でこっそりとユウちゃんがつぶやく。
(?・・コクリ)
「ユウ・・私も?」
「そう・・良い?」
「わかった。」
よくわかりませんけどしゃべる内容も何を言うべきかもわかりませんし、指示に従っておきましょう。
で、ちょこんとお兄さんたちの向かい側に座った私たちはじっと相手が呼びかけようが手を振ってみようがとりあえず首をかしげるだけでじっとにらめっこしてます。
10分くらいするとお兄さんたちは何をしても返事をしてくれないとわかったらしく何もせずにおとなしくしてますけど、どこか居心地が悪そうにしてます。
で、更に30分ほど経過したところで
「・・ごめんなさい。しゃべります。しゃべるので何か返事をしてください。」
「お願いします。」
「・・ます」
なぜか、げっそりとした表情で頭を下げられました。
それからは、いろんなことをしゃべってました。
何のことかはわかりませんけど、しゃべった内容を纏めて姉さんに提出です。
「あら、リアさん、セイさん、ユウさんもお帰りなさい。意外と早かったですね?」
「ある意味作戦勝ちです。これ、お兄さんたちがしゃべった内容です。」
「ありがとうございますね。はい、報酬です。」
報酬は、1人銀貨5枚でした。
「あの・・多くないですか?」
「この依頼は実は10回ほど失敗者が出ているんですよ。なので、依頼主も値段を引き上げて頼んでる状態です。この内容からすると値段にふさわしい働きを3人はしてくれたと思いますよ。」
そんな感じでよくわからないまま依頼は完了しました。
ちなみに、お兄さんたちにしゃべらせたかった内容というのは、依頼人の娘さんとその同じパーティの人たちがとある依頼を受けて帰ってきたときに無傷で依頼も大成功なのになぜか目が死んでるということがあり、その理由を知りたいというもの。
で、本人たちは一切口にしてくれず。
そのお兄さんたちはその時のやり取りをすべて見ていた・・というよりも、偶然近くで別の依頼を受けていたのでさりげなくサポートをしたり、アドバイスをしたりとお兄さんとして手助けしてたらしい。
なので、その理由も知ってるはずだ!けれど、お兄さんたちは教えてくれなかったので、しゃべらせてくれ!娘の今後にもかかわるかもしれないから!!と親ばか全開で依頼を出したのが今回の分。
で、なんで目が死んでるのかと言われますと、その時の娘さんたちの依頼内容がとある昆虫の討伐依頼だったのですが、その昆虫が実は娘さんたちはもちろんそのパーティの子たちが全員大の苦手な昆虫だったことが原因らしく、一度は失敗してもいいからキャンセルして別の依頼を受けなおそうという声も上がったらしいですけど、その昆虫がものすごい大量発生したのに加えて取り囲まれて戦わざるを得ない状況になり、トラウマを受け付けるなんて生易しいレベルで精神が限界を迎えた状態で討伐して脱出。
で、依頼は完了したけど心の傷が埋まらず・・という状態だったらしいです。
その昆虫ってどんな昆虫だったの?と思ったら、
1メートルサイズのG
としか言ってくれませんでした。
何なんでしょうね?
セイちゃんとユウちゃんはわかったらしく青い顔でご愁傷様と言ってました。
んー?
次回は通常通り日曜日投稿です。