遠征-その4-
-フリージア-
盗賊狩りというか悪心狩り?という名の山狩りをしてると途中であちこちで冒険者のお兄さんやおじさんたちが善意で協力してくれることになりました。
セイちゃんが治療して五感の強化をしてあげて、私が陰さんたちを増やしてサポートする範囲を広げる。
結構ギリギリですね・・影さんたちの人数。
て感じで、ペースがすっごい上がりました。
元々すごく順調に進んでたから余計にスピードアップ。
と言っても、歩きながらシャスティ団子とかを口にしつつのノンストップ作業です。
冒険者の方々もそれは最初から承知の上で戦ってくれるので騎士さんはそれぞれにお団子をおすそ分け。
って感じで作業を続行中。
作業は順調と言ってもお山は広い。
なので、時間的に明かりをつけるのですが、そこは個人的には明かりをつけずに作業をしてほしい。
明かりで見えるということは相手側にもこちらのことが見えているということなので。
例え仲間たちの悲鳴などが聞こえて察したとしても明かりを見てからの方が待ち構えなどをしている可能性が高いのであまりしてほしくない。
と言っても、私のように夜目が利く人はいなくはないけど私のように真っ暗闇までできるかと言われると微妙。
なので、影さんたちを皆さんの目元へ移動させてそのままゴーグルみたいに装着。
ノクスさんは剣についてるので頑張って分裂させて・・ってしようとしたら夜目は聞いてるし暗闇でも月明かりだけで十分と言われたのでする必要なし。
影さんは、私と同じ目なので夜目でもばっちり見えます。
なのでそれを見ている感じです。
えっと・・映像を眼鏡越しで見ているような感じに近いです・・異世界人が言うには。
そして、悪心撃滅センサーはその視界の中で矢印を表示させてます。
後はその矢印に従うだけ。
おまけで数も表示させてます。
そうなると攻撃のサポートが難しくなってくるのですが、そこは表示させて注意させます。
まぁ、防御は無理やり影さんの体を伸ばして防ぐか跳ね返すくらいは可能です。
反撃するとしたらウニにして串刺しくらいですね。
私とセイちゃんはそんな感じで遠隔でサポートをしながら合間にシャスティ団子を食べたりしてます。
後は、眠くならないようにする飴玉とかもちょいちょい。
味は?
んー
おいしいけど辛いスープの味ですね。
それ以上はどういって良いかわかりません。
辛すぎる!とかは、ないんですけどお口の中がピリピリしてますし、味もおいしいので妙に目が覚めます。
ちょっと不思議な味です。
翠ちゃんが言うには、スンドゥブに近いらしいですけど・・それ何ですか?
という感じで進んでるんですが、その中で一際すごいのは私の獣魔たち3体。
ハディちゃんはお山の中だというのに全力疾走しながらかみ砕き、尻尾で潰したりとしてるし、シャスティは爆走しながら黒月(シャスティ愛剣)を振り、斬りまくり、カルナは段々慣れてきたのか無駄のない動きと正確さで毒針を突き刺しまくって毒殺中。
そんな3体のおかげで3日を予定してたのに彼らだけでお山全体のうち4割は1日で済んでたりします。
で、騎士さんたち人間メンバーで5割。
人数とか考えると相当以上です。
おまけに、騎士さんたちもすごいペースで殺りまくってるのでペースがすごい。
と言ってもこのお山。
世間的にはあまり大きくないお山なんですよね。
いや、大きいと言えば大きいんですけど、高さ1000メートルは超えますねってくらいですし。
他のところは2000とか3000とか軽くありますしね。
それと、精霊樹があるおかげなのかこのお山には魔物が出てこないようです。
それもあって、こんなあほどもが棲み処にしてたんでしょうね。
ちなみに言うと中央であるお山のてっぺんに集まっていく形で進んでいるわけなので進めば進むほど他の方向から進撃してきたメンバーがお山の中でも視界に入るほどの距離になるので連携も可能になってきます。
なので、進めば進むほどペースも上がります。
で、1晩が経過してお日様がお空にお顔を出し始めたころには半径約百メートルほどの範囲だけになりました。
そこに集まるころには全員が集合している状態になります。
影から様子を見ていると盗賊共はいました。
どうやらそこに固まってるメンツでラストのようです。
人数は40人くらいですが。
そんな中、首に首輪をつけられてまとめられてる若い女性や幼い子供たちがいました。
翠ちゃんが言うには奴隷にされてるようです。
けど、周囲の状況としては違法奴隷っていうもののようです。
聞くと、奴隷は人を人の扱いをせずにペット扱いすることらしいです。
基本的に犯罪を犯したときに罰せられることが普通なんですが、稀に犯罪を何もしてないのにお金が欲しいというただそれだけの理由で何の罪もない人を攫って無理やり奴隷にすることがあるんだそうです。
それが違法奴隷。
かつてお母さんが大陸中で殲滅したはずなのにやはりいつの世もそんなことをするクズがいるんですね?
私の怒りは最高潮。
セイちゃんもユウちゃんもみんな怒っている。
許せるはずがない。
そんな怒りが届いたのか何なのか、ノクスさんが
「俺に任せてほしい。」
普段よりもすごく冷たくて淡々とした言い方でした。
本気で怒っているんだとすぐに察しました。
ノクスさんが許せるはずがない。
絶対なる悪がいるんですから。
騎士さんたちも同様。
冒険者さんたちはそれを察したのか周囲の警戒と逃がさないようにする手伝いはしておくから大本の殲滅は頑張れと言ってくれました。
怒りを思う存分ぶつけて来いってことらしいです。
すごくいい人たちですね。
そこで、カルナは元のサイズに戻り空から警戒するくらいにとどめ、ハディちゃんとシャスティは陽動役兼、真正面から大暴れする組。
で、その裏をかいて騎士さんたちがその他の方角から特攻して殲滅です。
--カルナ--
途中で通りすがりの冒険者たちが手伝ってくれることになったこともあり予定よりもかなり速いペースで作業は進んでいた。
そして、1晩明けたころに最後の仕上げと行きたかったが、そこには違法奴隷と思われる若い女性と幼い子供たちが奴隷に着けらえる首輪をつけられ、一か所にまとめられていた。
服装はかろうじて服と呼べるくらいボロボロで、本人たちもボロボロで、目には生きる力が残っていない感じだった。
人生をあきらめているような目。
・・かつてのリアと同じ目だ。
そんな連中が俺らが許せるはずがない。
だが、その怒りはノクスも同じだった。
正義を目指し、正義の塊だったペチュニアさんを目標にしてるノクスが許せるはずがなかった。
俺らと同等・・下手すればそれ以上の怒りがこみあげていた。
だから、俺らはメインを譲った。
俺は周囲の警戒
シャスティとハディが陽動をしながら真正面からあばれ、その反対側からノクスが暴れ、残りの2方向から騎士たちが2チームに分かれて特攻という形だ。
で、冒険者たちがその周囲を囲っている。
で、怒りが頂点になってるノクスはすごかった。
普段以上に踏み込みのスピードが速く、速攻で相手の首を斬り飛ばす。
斬っているときにはすでに次のターゲットを見つけ、斬り終わったところで切ったそいつを足場に踏み込んでさらにスピードを上げて斬首。
それを繰り返しているが・・すげぇ。
ラウも早いが、あいつは暗殺者って感じだ。
だが、ノクスは違う。
どこまでも純粋な剣技で、剣士だ。
ただその1つ1つの動作の無駄がほとんどないのに加え、踏み込みのスピード、剣を振るう力、狙う箇所や相手が攻撃をする動きを読んで懐に潜り込む技量。
どれもすさまじい。
おまけにリアもノクスに協力的なのか影がノクスの目元と両腕の肘まで覆っている。
目はゴーグルのようにして視界のサポートを。
両腕と剣を覆うことによって腕も武器の1つとして扱うことが出来る。
おまけに魔法反射があるから腕で払うだけで十分防御になるし、リアの結界だから物理防御も可能。
ついでに防いだ瞬間に串刺しにしてとどめも刺してくれる自動反撃付き。
・・・リアとノクスのペアはヤバいな・・。
リアのサポートがかみ合いすぎる。
おまけにセイの五感強化と怪我や状態異常の回復付きだから、多少怪我をしてもあっという間に治るし、リアの防御の技術はすさまじいから滅多に怪我をしない。
とどめにノクスはあの国最強の騎士だ。
過去に400人規模の盗賊相手に1人も門をくぐらせずに守り切ったという話を聞いたし、300人相手に1人で全戦全勝したって話も聞いたし。
ラウもラウで暗殺にトラップを仕掛けたりと町1つ分規模のあほどもの殲滅もさらっとしてるし・・なんて連中が集まってんだよあの国。
で、ノクス相手に数人がかりで襲ってきても全員が一瞬で斬首され、命乞いをしていてもしゃべる前に斬首。
既に、話を聞く価値がないと判断してるらしくすごく淡々としてる。
そこは、さすがだと思う。
その切り分けは意外と難しいって聞くしな。
リアの場合は善悪が判るし、人も魔物も全く関係ないしな・・敵か味方かしか判断してないし。
そして、ボスっぽいのもいたが何か言う前に斬首され、あっさりと終了。
物語のようなボスとの戦いでとても壮大な争いが!とかは全くなかった。
すごくあっさり終わった。
ただ人数が多かっただけの有象無象だった。
ちなみに他の騎士たちやシャスティたちもしっかり暴れてたので文字通り1人も残らずに殲滅完了。
だって、影たちが全員で殲滅完了とアピールしてるし。
それと、冒険者たちも完了ということでお疲れ様と言いながら一緒に騒いでる。
で、影たちは元の手のひらサイズに戻り各自の肩の上にいる。
冒険者たちは周囲を警戒してくれて、つかまってる連中の救出を行った。
「とりあえず鎖は破壊したが首輪はどうしようか・・カルナはわかるか?」
「あぁ・・なんか魔法がかかってるっぽいがわからん・・リアだとわかるんだが。」
「そうか・・影よ、わかるか?」
影を通じてリアに見せてみる。
すると、1人の若い女性の足元からお腹、胸、肩という感じで影が2体よじ登る。
・・腕を伝って登れよ。
わざわざ胸を使うなよ。
・・言わないけどさ。
それと、すっごいボロボロの服だからすごいきわどい恰好をしてる。
だから、騎士たちもなんとなく視線をそらしている。
そこらへんは一応紳士というべきか?
で、よじ登られ、両肩の上から首輪を眺める影たちに他に捕まってた人たちも注目する。
・・さすがに気になるわな。
この妙な生き物は。
子供たちの方はちょっとだけ瞳に光が戻る。
しばらくするとわかったらしく挙手をする影。
「わかったのか?」
Yesとサムズアップ。
「外せそうか?」
Yes
「そうか・・とりあえず合流する必要があるか。互いに休みたいのは山々だが・・片付けるまでは無理だな。」
あっちこっちに死体が転がってるしな。
と、とりあえず合流するかと話してるとシャスティがすっごい勢いでリアの方向へ飛んでいき、大半の影たちがくっついて大きくなり、手のひらサイズに戻る。
最終的に数が5体になった。
向こうも移動を始めるために数を減らしたか。
じゃないとあんな数を操るには操作以外のあれこれを全てやめる必要があるからな。
しばらくすると爆走するシャスティの背中の上でリアとセイが乗っており、俺たちは合流した。
--フリージア--
ノクスさんと影さんたちを通じてやり取りをして奴隷の首輪を見たところ、無理に外すと首を絞めるようになってるみたいでした。
後、動きを制限したり抵抗しようとしたら激痛が走るようになってる有様。
で、それは翠ちゃんがその魔法を食らった後に首輪を食べれば問題なしとなった。
その辺りの魔法は翠ちゃんは過去に知ってるらしいので問題ないらしいです。
そして、爆走するシャスティの背中にセイちゃんと乗って合流。
私の登場で周囲が静かになってるけどスルー。
セイちゃんに全員の治療をしてもらった後に、翠ちゃんにお願いする。
{翠ちゃん}
-了解-
翠ちゃんが巨大化しておまけに薄ーく広がって周囲に散らばる死体や血などすべて吸収し、被害者たちを包み込む。
首輪の解除(正しくは魔法の破壊)と首輪の【溶解】をしてあげると被害者たちは目を見開いていた。
助けてもらえるんだと、奴隷にならずに済むとわかったらしい。
包み始めたときは死を覚悟してるっぽかったですしね。
確かに目はいつ死んでも構わないって感じでしたけど、私からするとそれなりに光は戻ってました。
で、その後は信用してもらえたのでついでに体中の汚れを吸い取ってきれいにして、過去に大量に無駄にもらいまくったお洋服の山(男女のどっちが着てもおかしくないデザインばかり)を出してそっちに着替えてもらいました。
サイズはすごい大量にあるので問題ないです。
だって、大きくなった時のためとか言って無駄にくれるんですもの・・5歳児に渡すには早いですよね?
まぁ、今回やそれが役立ちましたけど。
そして、男性陣を全員追い出して着替えてもらった後、シャスティ団子を数個ずつ渡し、飲み物を渡してとりあえず落ち着かせました。
その後は、私たちの休憩もありましたけど、こんなところにいつまでもいたくないだろうとノクスさんが言ったのでとりあえず移動することにしました。
歩く体力はギリギリあったようです。
まぁ、無理そうだったりしたら各自が抱っこしてましたけど。
子供たちは巨大化したシャスティとハディちゃんの背の上で楽しそうだったのでよかったです。
カルナも手伝いとして仕方がないと思ったらしく大きくなって背中に乗せてあげてゆっくりと移動中。
すごく好評でした。
心の闇を取り除く手伝いにはなれたかな。
「なぁ、お嬢ちゃんなんだろ?あのサポートした小型ゴーレムを操ってたのは。」
冒険者のおじさんが1人声をかけてきた。
小型ゴーレム・・あぁ、影さんたちですね。
(コクリ)
「やっぱりそうか。ほんと助かった。あれはすごかった。」
ほめてもらえたようです。
-みなさんの力になれたようでよかったです。-
「ならないわけがねぇよ。そこらにいるような冒険者連中よりも圧倒的に力になったよ・・なぁ?」
他の冒険者の人たちも強くうなづく。
本当は、私やセイちゃん、ユウちゃんを自分たちのパーティに誘いたいくらいだったらしいけど、あえて何も言わなかったのは、私たちが気を使わないようにしてくれたからだったらしいです。
-こちらこそ、手伝っていただいてありがとうございました。-
「気にすんなよ。元々体力が有り余ってて暴れたかったところで偶然見つけたから、手伝いを言い訳に暴れたかったんだよ。」
本心のようです。
-では、言葉だけでも。ありがとうございました。-
「おう」
-お帰りはどちらに?-
「俺らは向こうだな。」
私たちが帰るクラリティ王国とは逆ですね。
-私たちとは逆ですね。-
「そうなのか、向こうだと・・クラリティ王国か?」
(コクリ)
「なるほどなぁ。」
-お礼も兼ねて晩御飯でもいかがですか?-
「んじゃあ、お言葉に甘えますかな。」
で、山を下りて適当なところで野営の準備をします。
まだ朝方ですけど気にしません。
そこで、被害者の皆さんにはとりあえず休んでもらうことにしました。
私たちも食事を済ませてから、交代で眠りました。
目を覚ますとお空はすっかり茜色。
夕方のようです。
・・結構長く寝てたみたいです。
「起きたか」
(コクリ)
・・・なぜか、ノクスさんが私を膝枕してました。
セイちゃんとユウちゃんは仲良く並んで大きくなったシャスティを枕にしてました。
-起こして下さっても良かったんですよ?-
「俺たちも交代で休んでいた。それと、出発は明日の朝の予定だったからな。問題ない。」
ちなみに、翠ちゃんに教えてもらいましたが、私は何を考えたのか寝ぼけたままフラフラとノクスさんの元に行き、そのままぽてりとノクスさんのお膝を枕にして寝てしまい、動こうにも動けなくなったノクスさんはそのままになったんだそうです。
避ければ良かったのにと思いましたけど、優しく私の頭を撫でたりとどこか微笑ましかったので全員で眺めてたんだって。
・・楽しそうならまぁ、いっか。
それと、冒険者の方たちは既にいないようです。
「彼らは、昼過ぎに帰った。礼代わりに銀貨を1チーム3枚ずつ渡しておいた。」
食事はしっかりこちらがお腹いっぱい食べさせてたので問題なしです。
それにしても、ノクスさんのお膝はしっかり鍛えられてるので硬いですね。
けど、どこかお父さんに膝枕してもらったらこんな感じかなと頭の隅で考えながらぐりぐりと顔をお膝にこすりつけてるとノクスさんは優しく頭を撫でてくれた。
・・お兄ちゃんではなく、お父さんっぽいです。
「セイたちが起きたら夕食にしよう。そして、1晩すごしてから出発だ。被害者たちも疲れているからなそのためもある。」
なるほど。
で、寝てる私たちはそのまま放置ってことですね。
納得です。
「それにしても、本当に助かった。フリージアの技量は予想以上だった。本当に感謝する。」
-こちらこそありがとうございました。普段ではあんな形で魔法を使うという発想がありませんでしたし、とても良い経験になりました。-
影さんたちを遠隔で操作する・・・しかも、かなりの数です。
普段は、近くで一緒に鍛えつつ、遊ばせてるくらいですし。
「そうか。それなら良かった。かなりムリをさせたのではないかと心配だったんだ。ぐっすりと寝ていたからな。」
-体力はありませんが、頭脳戦と魔法戦は得意ですので大丈夫ですよ。それに-
「それに?」
-ノクスさんがお父さんみたいだったのでとても良い夢が見れた気がします。-
ふんわりとほほえんでそう言ったら
「そうか。それなら良かった。」
凄く穏やかにほほえみ返してくれた。
その時の笑顔は凄く素敵でした。
お父さんがいたとすればこんな感じだったのかな?
今だけ・・今だけは・・ノクスさん・・あなたをお父さんと思わせて下さい。
そう言葉を心の中にとどめながらノクスさんのお腹にぐりぐりと顔をこすりつけてると撫でてくれました。
ノクスさんも私が血のつながりのある親がいないことを知ってる(父親は不明なのでいない扱い)ので、それを察してあえてこんな対応をしてくれたのではないでしょうか。
・・本当に優しい人です。
-それで、騎士さんたちは何してるんですか?-
「すまない・・。じっと休むこともせずにはしゃぎまくってたからな・・ハディの提案によってハディとじゃれてる。」
戦いのおかげで興奮が収まらないらしいです。
おまけに、体力は思った以上にとどまったのに加え、私たちのフォローがあって負担はかなり少なく、シャスティ団子のおかげで体力も体調も良い感じ。
って感じで眠くないらしいです。
何をしてるかと言われますと、騎士さんたちがハディちゃんの尻尾を数人で掴んで引っ張り、ハディちゃんが踏ん張って前に進むという綱引きをしてます。
綱ではなく尻尾ですけど。
力比べのようです。
「ハディはさすがだな。」
-一番の力持ちさんですから。-
「そうだな。」
ちなみに私、ずっとノクスさんに膝枕してもらってる状態で、ノクスさんもずっと頭を撫でてます。
そして、私が寝ている間にお山に散らばるあほ共の死体と道具類等々は翠ちゃんがしっかり回収済みです。
ついでに落とし物等もあったらしいですがまとめて回収。
それは、後でノクスさんに渡して後処理をお任せする感じです。
それからしばらくしてセイちゃんとユウちゃんが起きた後、夕食を食べた後、体をきれいにして休みました。
「お嬢様、改めてありがとうございました。」
被害者さんたちが私に向かって全員が頭を下げる。
-どうして、私なんですか?実際に助けたのはノクスさんの騎士さんたちですよ?私はサポートをしただけです。-
「えぇ、おっしゃる通りです。ですが、既に騎士様方にはお礼の言葉は済ませておりますので。」
-では、どうして?-
「お嬢様があの首輪を外し、衣服を下さり、汚れた体をきれいにして下さいました。それに、子供たちが明るいのはあなた様の獣魔たちのおかげです。」
シャスティやハディちゃんを中心に子守をしてます。
私を相手していたこともあってあやすのが上手ですからね。
まぁ・・私は普通の子供と同じ扱い出来ませんけど。
-その言葉、受け取りました。-
「はい。それと、いつかこのお礼と、この衣服は必ずお返し致しますので。」
-それらは差し上げます。-
「で、ですが・・・」
ちなみに予備として各自1セットずつ追加で渡してます。
-それらの服は私が持て余していた分ですから。使わない方がもったいないですし、お洋服も着てもらえた方が喜びます。-
「本当によろしいのですか?」
-着てあげて下さい。それに、5歳児に皆さんが着ているサイズの服をこんなにたくさん普通渡しますか?-
「・・普通は渡しませんね。せいぜい数歳後くらいのサイズを想定して渡すくらいかと。」
やはりそうですよね?
-そんな感じで数年以上放置されてたんです。-
「そういうことでしたらありがたく。」
-それと、私やセイちゃんたちに対してのお礼は必要ありません。-
「え!?」
被害者の皆さんは子供たちも含めて全員が驚いてる。
なぜ?
-私たちは、お礼がして欲しくて助けたわけではありません。あいつらが気にくわなくて殲滅した結果、皆さんが助かっただけですから。-
「ですが・・それは結果では。」
-では、1つお願いがあります-
「何なりと」
・・そういえばどうして正座してるんですか?全員
まぁ、いいか
-これからの人生を悪事を働かずに明るく楽しいものして下さい。-
「え?」
-そして、身近に困っている人がいれば助けてあげて下さい。-
「ですが、そうなるとお嬢様が得をしないのでは・・」
-私は既に満たされています。ですので、他に不幸な方々に今回感じた幸せを。絶望の中に差し込む光となってあげて下さい。-
かつての私のようにならないようにと一言告げると周囲の私の過去を知る人たちが全員くらい表情になる。
その光景を見て被害者の大人チームは察したのか。
「かしこまりました。お嬢様のお言葉通りに。」
で、私は頷き、それ以上は何も言いませんでした。
「リアちゃんホントに凄かったね。」
「ホント凄かったよ。凄く助かったもん。」
-二人とも凄かったですよ。-
星空を眺めながらセイちゃんとユウちゃんと互いに褒めあう。
「そんなことないよ。リアちゃんが凄かったから私が治療することが凄く少なかったんだもの。」
「僕なんて、影さんがいてくれたから正面の敵にだけ集中出来たからいつも以上にスムーズだったから助かったよ。いつも周りを気にしながらだからなかなか前に進めないんだ。」
-ですが、今回の作戦が成功したのは二人もいたからですよ。-
「フフ♪そうね。私たちみんながいなかったら成功しなかったかもね。」
「あはは!そうだね。じゃあ、今回はお疲れ様」
「お疲れ!」
-お疲れ様です-
「そういえばリアちゃん、ご飯の時間までずっとノクスさんに膝枕してもらってたけどどうだった?」
「それ思った。寝てるふりしてしばらく見てたけど、ノクスさんも凄く優しい顔でリアを撫でてたよね?」
-ここに向かうときはお兄ちゃんのようだと思いましたけど、実際はお父さんのような人はノクスさんのような方を言うのかなと思いました。・・思わず甘えてしまいました。-
「あぁ・・分かる。」
「うんうん。頼りになるところも心配してくれるところもしっかり守ってくれるし、私たちの頑張りや努力には積極的に協力してくれる。」
やはり、二人も分かってくれたようです。
「それに、甘えたいときに甘えて良いと思うよ?」
「うんうん」
-ですが、ご迷惑では?・・先ほどは、軽く寝ぼけてたのでアレでしたけど-
「そういうときは迷惑をかけた方が逆にうれしいんだと思うよ?」
-どうしてですか?-
「だって、迷惑をかけるって頼りにしたってことでしょ?逆の立場になれば頼ってくれるんだって逆に安心するし、うれしいと思うけどなぁ。」
「僕もそう思ったよ?」
そっか・・。
カルナやシャスティたちがもっと頼れって言ってた意味が分かった気がします。
-私が頼らないから逆にカルナたちが過保護になってたんですね。-
「多分そうかも。甘えすぎたらアレとかいわれることはあるけど、リアの場合は甘えすぎた方がちょうど良いんだと思うよ?」
「そうそう。過去が過去なんだし。私とユウみたいに親離れが早いのがおかしいのよ。」
-そうなんですか?-
「まぁね。家族柄っていうのもあるけど、世間的には僕たちの年齢だと親元から離れたくなかったりするのは結構ある話だし。人によっては一緒にお風呂とか一緒に寝たりというのも普通だったりするらしいし。」
-私は1人で寝ることもお風呂も出来るのですが、一緒に住んでる女性陣とシャスティたちが積極的に私を攫っていき、ベッドに勝手に潜り込まれるのですが、どうすれば良いでしょうか?-
「あぁ・・・相手が男だったらたたきのめして良いけど、女性の場合は・・やりすぎなければ放置かなぁ・・。」
-やりすぎればたたきのめして良いんですか?-
「ほどほどなら良いんじゃない?同性同士でもべたべたされたくない子だっていると思うし。私の場合はバッチ来いだけど。」
そう言って抱きついてくるセイちゃん。
とりあえず抱きしめ返して頭を撫でる。
「はぁ//リアちゃん好き。」
-私も好きですよ。-
「えへへぇ//」
お顔がとけてます。
「ったくもう、セイってば」
呆れた表情をするユウちゃんですが、どこか微笑ましそうです。
-ユウちゃんも抱きしめて欲しいのですか?-
「え・・遠慮しておく。」
「後で私がしてあげる。」
「うん・・・ありがと。」
どこか複雑そうな、うれしそうな顔になってました。
そんな感じで私たちは休みました。
明日は、朝ご飯を食べた後、クラリティ王国へ帰還です。
次回は11日投稿です。