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歌に音楽、羊さん、それとカルナたちの預かり所

-フリージア-

受験を受けるための手続きを済ませた後、私たちはとある一角に足を運みました。

そこは、城壁がなぜか一部形が変わり、そこだけ別枠で作られた丸い一角。


で、その入口となる部分は柵となっており、なぜか



--騒音注意--



とかかれてあります。

騒いだら駄目ってことなんでしょうけど・・

「どうしてそんなことを注意する必要があるのでしょうか・・。」

「その向こうに騒ぐと問題を起こすような何かがいるということなのじゃろう。」

「それ、大丈夫なのでしょうか?」

「騒がなければ大丈夫という判断なのじゃろうな。この国のメンツから考えると念のための注意事項という感じじゃろう。」

「なるほど。どなたもとても穏やかな方々でしたからね。お嬢様、中を覗いてみますか?」

-良いのでしょうか?-

「ちょうど柵のところに警備している者がおる。聞いてみれば良いのではないか?」

-リカルさんお願いしても良いですか?-

「かしこまりました。」


その柵のところへ近より

「すみません。この先には何があるのでしょうか?」

「ん?あぁ、スリープシープだよ。」

「そうなのですか。どうしてスリープシープがこの柵の向こうに?」

「誰かは聞いてないが、この場所を提供する代わりに自身の素材を提供するって契約をしてるらしいんだよ。で、基本的におとなしいから問題ないが、万が一ってこともあるし、魔物だからアホをやらかすのもいる。その辺りを警戒してこんな感じになってるのさ。」

「そういうことでしたか。スリープシープの中でも自由よりも安全第一だったのでしょうか。」

「だろうなー。じゃなきゃ壁に囲まれて好きに走り回れないからな。確かに広いけど」

「やはりそうですよね・・お嬢様どうしましたか?」



さっきからすっごい聞き覚えのあるお話しがポンポンと・・


で、チラッと翠ちゃんをみると頷かれました。

やはり、私の思い違いじゃなかったですね。

-その羊さんたちと私たち知り合いです。-

「そうなのですか?」

-元々この国をおすすめしたのは兄さんです。お話しを聞いたのは私ですが-

「ラウさんですか・・なるほど。」

-お兄さん、中に入ってもよろしいですか?-

「え?あ、あぁ・・・出来れば遠慮して欲しいなぁ・・と・・」

けど、はいそうですかで引き下がるつもりもないのでじーっとにらめっこ。

私はずっと無表情ですけど。


すると警備のお兄さんはなぜか引きつった笑みとうっとりを繰り返すという器用なことをしてます。


「えと・・あの・・・」

「・・・・」

「その・・・・えっと・・・」

「・・・・」

警備のお兄さんとのにらめっこは続き、うれしそうだけどなぜか助けを求める視線をリカルさんたちへ向けている。

「あ、あぁ・・お嬢様、ちょっと控えて下さい。ファンサービスはそこまでです。」

と言われてリカルさんに引きずられていく。


ふぁんさーびす?

って何と聞いても笑顔でスルーされました。


{翠ちゃん、ファンサービスって何がですか?}

-不用意に近づいてにらめっこしてた部分のことだよ。-

{駄目なんですか?}

-駄目じゃないけど、リアの場合はほどほどにしないと思い上がって襲ってくるのがいるから。-

{襲うんですか?}

-多分リアが考えてる襲うとは違うけど・・まぁ、一緒だね。とりあえず不用意ににらめっこはしないように。-

(コクリ)


と、翠ちゃんに教わっているとなぜか翠ちゃんを英雄でもみているかのような目を警備のお兄さんは向けている。

でも、同時に残念そう。


なぜ?

にらめっこ好きなんですか?






「ふぅ・・・お?珍しいこっちに来た。」

と警備さん(長いのでお兄さん省略)がつぶやき、とある方向を見てます。

で、その視線の先へ顔を向けると羊さんたちがこっちに近づいてきてました。



「メェー(あのときの娘か。久しぶりだな)」

(コクリ)

「メェー、メェー(元気そうで何よりだ。それと礼を言いたい)」

(?)

お礼?

「メェー(ここはとても居心地が良い。)」

あぁ、ここを案内してくれてってことですね。


で、しれっと【念話】でリカルさんとおじいさまの頭の中へ話しを流してたので、ついでにリカルさんから

「気にしないで下さい、とお嬢様がおっしゃってます。」

伝言をお願いしました。


「お?マジで知り合い?」

(コクリ)

「けど、一応この柵は誰も通すなと言われてるんだよ・・すまない。」

「メェー(これ以上近づくことは出来ないようだが、いつでもここに来ると良い)」

(コクリ)

「メェー(ではな)」


そして、私たちは、そこを後にしました。







「リアに話しを聞かせてもらっていたが、物わかりの良い魔物じゃな。」

-出会ったときからあんな感じでした。-

「面白いのぉ。」








-ラウ-

「と言うわけで、彼らをここで騎士たちの訓練相手にいかがかと思いまして」

「なるほど。確かに彼らはかなり強そうだ。それに滅多に人以外との訓練は出来ない。とても良いな。」

俺の目の前にいて俺が説明している相手はこの国の騎士団長。

この国で最も騎士の中で実力を持つ人物だ。

剣のみに力と技術を注いで日々努力し続けているからこそ騎士たちの人気も非常に高い。


「カルナさん、彼はノクス。この国の騎士団長です。団長、彼らは順にカルナさん、シャスティさん、ハディさんです。リア様・・・・・フリージア様の獣魔になります。」

彼はワインレッドの髪を持ち、とてもまっすぐで正義感溢れる男だ。

見た目も中身もその期待を裏切らないと言っておく。

「よろしく頼む。」

「ほう?しゃべれるのか。」

「まぁな。」

「なるほど、構わないぞ。むしろこちらから頼みたい。」

「本当か?」

「あぁ。では、契約内容の確認を。期間は、契約主であるフリージア殿が学園へ通っている間、彼らが特に予定がない場合。その際にこの地で身柄を預かるのと同時に騎士たちとの特訓の手伝い。また、常識の範囲内で研究者たちなどその他のメンツの依頼に応える。報酬としては、1月銀貨1枚。これでいかがかな?」

「報酬があるのか?場所を提供してくれるだけでもありがたかったから無償だと思ってたんだが。」

「当然だ。場所を提供するのはあくまでもそちらの都合。こちら側の意見としては特訓と研究の手伝いをしてもらっている。正式な依頼であり報酬がなければおかしい。」

「わかった。研究者たちやその他のメンツの依頼って具体的に?」

「魔法に長けている者たちであれば君たちが扱う魔法についての質問。研究者たちからは君たちの種族に関連する質問や、場合によっては抜け毛や一部爪などを提供してもらう場合もあるがその辺りは素直に拒否してもらってもかまわない。後、薬師のように自身の技術として嗜むモノがあればその部分に関連する者たちと情報共有を行なっても技術を教え、教えられても構わない。ただし、その辺りは該当者たち個人で頼んでくれ。報酬も必要であればその際に決定される。」

「わかった。よろしく頼む。」

「承知した。・・報酬が少ないと言われるかと思ったのだが。」

「元々無償扱いのつもりだったからもらえるだけ十分だ。むしろ下げてもらってもかまわないぞ?」

「気遣い感謝する。では、報酬はそのまま。場合によっては加算する場合も考慮していて欲しい。」

「増える場合もあるのか?」

「君たちの頑張り次第では、報酬を上げなければならない可能性もあると言うことだ。頑張った褒美は対等でなければならない。」

ホントに正義感溢れる男だ。

格好いいよなぁ。


何気にこの男、モテる。

実際イケメンだし、正義感溢れるからちょいとばかり融通が効かないときもあるが、それでも騎士の中の騎士として凄く尊敬出来るから、憧れの存在と思う連中も多い。

実際、この国の騎士の大半はノクス団長に憧れて・・が志望動機だったりする連中も少なくない。




「それにしても、ラウ。お前戻っていたのだな?」

「えぇ、数日前に。」

「例の件のか?」

イリス様からある程度聞いてるらしい。

「えぇ。俺にとっては、とても向いている仕事ですよ。それに、個人的にも。」

「そうか。俺とは方面が異なるが、俺と並ぶこの国でも最強だからなお前は。」

方向性は確かに違うな。

俺は、スピード特化で力がない代わりに技術を学んだ。

一方、ノクス団長はスピードはそこそこだが、力と技術のバランスがすさまじい。

攻撃も防御もその彼の剣術を前にはどちらもとんでもないレベルだ。

故に、数百人の指名手配犯が襲ってきても彼が1人防衛ラインを超えないように決意すると文字通り任務を完遂する。

逆に殲滅すると決めれば、何人敵がいようとも1対1を淡々と続けるようにすべてを殲滅し続ける。


真正面から正直戦いたくない相手だ。

俺は真正面からはあまり向いてないしな。

純粋なパワーは全く無理。



「俺個人としては、ノクス団長のように力がないのでうらやましいところではありますけどね。」

「俺も似たようなものだ。お前のように素早く死角に入り込む技術などは俺が目指す先の1つだ。」

「だから、あれだけ幅広い技術を学んでたんですか?」

「そうだ。俺にとっては素早さは無理でもお前の技術と技を超えたい。」

「どこまで強くなるんですか。」

「当然、聖剣の勇者様の背中を守れるくらいが理想だ。実際にそういう機会を得ることが出来ればうれしいが、あくまでも理想の基準としての話だ。」

聖剣の勇者

つまりは、剣術において世界でナンバーツーになりたいと言っているようなものだ。


やっぱりすごいよ。

そのまっすぐな思いと日々鍛え続けるところは。

「まっすぐな性格をしてるんだな?」

「よく言われる。」

「だろうな。とりあえず、頑張れと応援しておく。そのくらいしか言えない。」

「その気持ち、受け取った。ゆえに、君たちとは、個別でも集団でも模擬戦を早速頼みたい。」

「俺らは、遠距離戦はほとんどできないぞ?」

「構わない。むしろありがたい。近接戦闘において通常とは異なる戦いをすると噂で聞いた。」

あぁ、クテン様経由ってことか。

「その期待に応えるようにするよ。」

「あぁ、楽しみだ。」

ノクス団長・・楽しそうだなぁ・・。

何気に、鍛えたり仲間と切磋琢磨するのが好きだったりするからな。

周囲からは訓練大好きという扱いになっているが、実際は努力した末に自身が成長したと実感し、自身の頑張りとともに仲間も同じ気持ちを共有することが好きなただの向上心の塊だ。


わかってるメンツは意外と少ないんだけどな。

本人が、そんなことを堂々と言うのは愚か者がすることだとか言って説明しないでいるし。


もったいないよなぁ。

まぁ、俺も無理してそのあたりを周囲に暴露する気もないけど。




って感じで、俺らは夕方までみっちりと模擬戦を、ノクス団長とカルナさんたちのことを聞きつけた他の騎士たちと集団戦をすることになった。

ついでに俺も巻き込まれた。


今日は、1日説明と模擬戦とかそういうので時間がかかるとリア様に説明しているからな。



向こうは、学園に受験するための準備とかの説明を聞きに行ってるから、通うときのメンツで行った方がいいと思ってわざと俺やカルナさんたちをこっちに連れてきたんだよな。

どのみち話を通しておく必要があったしタイミング的にはちょうどいい。




ちなみに言うと、ノクス団長はかなり疲れていたが非常に楽しかったようだ。

非常に活き活きとした表情でさわやかな笑みを浮かべて汗をかいてたし。

カルナさんのトリッキーな空中からの動きや、シャスティさんの素早くも縦横無尽な動きも、ハディさんの非常に頑丈な防御とパワー、カウンター技も、どれも好奇心も追加されて非常に興奮するモノだったらしい。


で、今回は他の騎士たちも似たような感じで非常に満足そうな笑みを浮かべつつも肩で息をするほど疲れ果てている。


それと、模擬戦の邪魔にならない程度に研究者たちが陰からカルナさんたちを観察してたりする。

まぁ・・そこら辺のメンツは様々な種族や生き物を研究してるんだよな。

と言っても解剖だのなんだのと言った命を粗末にしたり相手を傷つけたりするようなことは決してないと言っておく。


近いうちに、直接会話をしたり抜け毛や抜けた爪などをもらえるくらい仲良くなるために色々と頑張るんだろうなと思いつつ。

まぁ、悪い連中じゃないしむしろわかったことを本人たちに教えることもするだろう。

それによって新しく判明したこともあるし、本人たちが知らなかったりする部分もあるしな。



という感じで、報酬は当日で1枚から3枚に上がった。

・・あまりホイホイ上がらないようにカルナさんがあらかじめそれ以上上げるな・期間も縮めるなと言って、賛同させていたのはさすがだと思ったのはここだけの話。

なるほど。

報酬額は同じでも渡す頻度を増やすということもあり得るのか。

さすがカルナさん。




シャスティさんたちはと言うと、それはもうくたびれてたがかなり充実していたのは確かだったので満足そうではある。

けど、ハディさんの背中の上で休む二匹・・。


ハディさんは疲れてはいても体力も元々あるらしいので普通に移動してる。

さすがだよなぁ。


こういうときに、ハディさんは縁の下の力持ちを体現したような感じだなと素直に褒めたくなる。

と言うか褒めた。


すると何も鳴かれなかったがぷいと顔を背けられた。

普段ではあまりない動きだったが、なんとなく気恥ずかしかったのではないかと推測しそれ以上は追及しなかった。









で、家へ帰るとなぜか入口で楽器で音楽を奏で、その演奏を眺める観客によって門がふさがれていた。



・・・何がどうなってこうなった?













--フリージア--

あれから町中を適当にうろつきながら観光したり所々でリカルさんが絵を描いてたり教会でお祈りをしていると私に祈りを捧げる人たちがいるという少々不思議な光景が広がっていたりしましたが。



で、うろちょろすればするほどなぜか後ろを着いてくる人たちが増え、露店で買い食いすると同じモノを購入し、それを見たほかの露店の人たちが割引してくれたりおまけしてくれたりして買っていかない?と言われ、ホイホイされて購入し、同じように購入する人たち。

と言う流れが何度か続いたりしました。


とはいえ、着いてくる人たちも私の邪魔にならないようにある程度配慮しているのか私が不快に思わないくらいの距離感や視線を送らないようにしてはいたようなので思った以上に気になったりはしませんでした。

多分




そんな感じだったのでお昼ご飯は露店で済ませ、その他のところでも色んなのを見て回りました。


この国は本当に良いところですね。

みんな優しいですし、私のことが気にはなっていても不快に思わないように不用意に話しかけたり視線を向けたりしない。

それに、私のことをクテンと知りつつも普通の女の子として扱ってくれる。


こんな扱いは何気に初めてですし、その何気ない気遣いが凄くうれしかった。

・・いつも崇拝?されてるような感じでしたから。


相手さんの気持ちも十分伝わるのでアレはアレで嫌いではないんですけど、どうしても・・ねぇ・・。

1人の女の子としては、普通に扱って欲しいと思うわけですよ。



ちなみに、私をナンパ?しようとした人たちがチラホラいた(らしい)ですが、そんな人たちは全員着いてくる人たちが事前に対処(具体策については不明)してくれたらしくとても快適に過ごしてました(無自覚)。


で、そんな感じでお買い物をしていく中で、観光するならどの辺りがいいよーと教えてくれる人たちがチラホラいたのでそれにしたがった感じです。

なので、大まかなところは回れたんだと思います。

リカルさんはとてもホクホクしてます。

色んなのをみて、描けたので満足そうです。

後で、見せてもらえるものは見せて欲しいですね。


リカルさんの絵は凄くきれいなんです。

見た目もですが、みたときにその時のリカルさんやその絵に描かれている人たちの気持ちがダイレクトに伝わるような気がして凄く不思議な気持ちになるんです。

そんな絵を掛けるリカルさんだからこそ絵師さんとして凄く有名なんだろうなと思います。


ちなみに、リカルさん販売用の風景画はちょいちょい描いており、それらは教会を中心に販売をしているようです。

値段は、サイズごとで多少は異なりますが、どれも銅貨何枚とかそのレベルらしいです。

最も高くても銀貨数枚程度。


世間的にはもっと高くても良いという声が上がってるらしいですが、リカルさんにとっては趣味で、だしてるだけで儲けるつもりはないらしいのでそれでいいんだそうです。


リカルさんの風景画も好きですよ?

そう思う人も結構多いので、ワザと多めにお金を渡すお客さんも少なくないと主に売り子さんになってる教会の方は言ってました。

リカルさんは教会へ販売するための絵画を卸に来てる状態なんだそうです。


ふむ?

つまりは、売るモノをリカルさんが渡して、受け取った売り子さんと言いますか今回だと教会の方が販売。

って流れのようです。






で、良い時間になったので家へ帰るとシルクの方々は帰っており、なぜかお外で楽器の準備をしてました。

-ただいま戻りました。何をしているのですか?-

「あ、お帰り。これから外で演奏をしようと思ってたんですよ。」

-ご趣味ですか?-

「始めたきっかけは趣味だ。元々俺たちは幼なじみだからずっとこうだ。」

「昔から外で弾いて日銭を稼ぎながら孤児院とかに貯金してたのよー?」

-趣味と実益を兼ね備えるとは、ご立派ですね。-

「ありがとう。良ければ聞いてくれるか?」

-よろしいのですか?-

「むしろ聞いて欲しいな。」

-では、お言葉に甘えさせて頂きますね。-


何気に演奏を聴くのは初めてです。

で、どんな楽器なのかを教えてもらいました。


ルートさんは、フルートという横向きの笛

ディオンさんは、アコーディオンというピアノを抱えてビヨンビヨンしたところで音を変えたりするようです。

ハルさんは、ハープという糸を弾いて音を奏でるもので、膝に抱える形らしいですが、抱える種類としては最も大きいらしいです。

もっと大きくなると地面に置いて奏でる形になるんだそうです。



ちなみに3人。

これらの楽器で戦うことも出来るんだそうです。

フルートを吹いて自分たちへ補助魔法をかけたり。

アコーディオンで相手を阻害する魔法をかけたり

ハープで弓矢のように魔法の針(矢よりもシンプルな形という意味)を奏ながら飛ばしたりと完全な補助のチームらしいですが、その組み合わせはとても強力でパーティ同士でチームを組むときは非常に役に立てるのだとか。




そして、演奏はお家の門の外側で行なわれた。

演奏がいざ始まると自然とお客さんたちが集まってきた。

話を聞いているとどうやら、毎回演奏が始まるたびに聞きに来ている人たちが大半のようです。


それにしても、シルクの皆さんの演奏はどこか心が弾むような気持ちになるほど楽しい演奏です。

時に激しく、時にゆったりとしているのに常に心が弾んでいる気持ちになります。



思わず踊り出しても違和感がないほどの楽しい気持ちが伝わってくる。

お客さんたちはその心の弾みを手でさりげなくリズムをきざんだり手拍子したりとしている。


なるほど。

そうやって一緒に演奏を楽しむんですね。



リカルさんもどこか楽しそうに彼らの絵を描いている。

リカルさんが私以外を描いていると言うことはそれだけ素敵なモノに見えたと言うことなんでしょう。

リカルさんは素直ですから凄くわかりやすいです。

ちなみに、その絵はシルクの方々にプレゼントされ、非常に喜ばれたのはここだけの話。





「リア、ただいま。」

小声でカルナの声がしたので振り返るとシャスティたちも揃って帰って来てました。

-お帰りなさい-

「ただいま戻りましたリア様。・・どうして演奏中なのでしょうか?」

-シルクの皆さんは昔から楽器を嗜んでいるそうなんです。その時にたまったお金は近くの孤児院に渡しながら旅をしているらしいです。-

「なるほど。一緒の船にいたピエロさんと似たような感じですね。」

「そういえばいましたね。」


で、甘えまくってるシャスティを中心にハディちゃんたちを愛でながら

-そちらはいかがでしたか?-

「えぇ、話しは上手くいきましたので、カルナさんたち3名はいつでも預かって下さるそうです。その分、特訓漬けになりそうですが。」

「にゃう(特訓好きのメンツが揃ってました)」

「ニャー(戦闘狂予備軍)」

なるほど・・。

言いたいことが凄く分かりました。

それで、疲れてるんですね。


-お疲れ様でした。-

「けど、凄く充実した。」

カルナもシャスティたちと似たような感じのようです。

-近いうちにお話をしに向かいますね。一応主になるわけですし。-

「あちらさんも一度話をしたいと言ってたよ。」

-ちなみに、その代表と言いますか、カルナたちを預かる責任者になる方はどなたなのでしょうか?-

「ノクス団長って言う、正義感と向上心の塊のような男だった。」

なるほど。

カルナはそう感じたと。

で、兄さんも頷いてますし間違いなさそうですね。


「そっちはどうだったんだ?」

-学園に向かい、今日から20日後に開始されるらしく、受験するための手続きは済ませてきました。-

「そうか。俺たちは普段やってくことくらいしか出来ないが頑張ってくれ。」

(コクリ)


「にしても、良い音楽だな。」

-心が弾むような気持ちとは、こんな感じなのでしょうか?-

「そうだな。それが、楽しいって気持ちだ。」

楽しい。

そっか。

-これが、楽しい何ですね。これまで感じたことのある楽しいとは違った楽しい何ですね。-

「そうだな・・楽しいにも色々ある。悲しいにも色々あるのと同じだ。うれし涙に悲しい涙ってかんじでな」

なるほど・・そっか。



-それと、羊さんたちと再会しました。-

「それって、毛皮を提供する代わりにのんびりする場所を提供してくれとか話してたあの?」

(コクリ)

「向こうに柵で隔離されている状態でしたが、とても穏やかで満足そうでした。」

「そうか。要望は叶ってるみたいだし良かった。」

「ただまぁ・・その檻越しに話しをするくらいしか許されませんでしたが。」

「あぁ・・万が一ってこともあるししょうがないといえばしょうがないか・・。」

あのもふもふをまた楽しみたかったんですけど、またの機会にしましょう。


あきらめませんよ?





それから、シルクさんたちの演奏は終わりおひねりが飛び終わった後、私たちはお家へ帰りお風呂に行きましょうかとハルさんに攫われ出そうとしたとき。


「・・なんだ?」

-カルナ、どうしましたか?-

「いや・・何か向こうから叫び声と騒音が・・」

「にゃう(叫び声と言うよりは奇声と言いますか、絶叫ですね。)」

「ニャー?(興奮が収まらないって感じ?)」

「そんな感じだな・・おまけにこっちに向かって一直線って気がする・・。」

「にゃう?(アレではありませんか?)」

と、シャスティの尻尾で指さされた方をみると砂煙がもっくもくと立ち上がる中、1人の女性を筆頭に4人がこっちに向かって凄い勢いで走ってきました。


「なんだなんだ?・・って、アレ?帰って来たんだ。てっきり明日になるかと思ってた。」

ルートさんがそうつぶやく。


あぁ、ヴァニタスってパーティの方々のことですね。

後、シルクのメンバーのリーダーさん。



・・・・・って

-どこかでみたことのある人たちにとても似ている気がするのですが気のせいですか?-

「あ、あぁ・・・・気のせいじゃないな。」

「にゃう(おまけに全員1人残らず知ってますね。)」

「ニャー(俺は1人だけ知ってる)」

-私は全員知ってるかなー。-




とか言ってる間にその暴走する女性が私に視線をロックオンして、そのまま

「フーーーーーーリーーーーーーージアーーーーーーーちゃーーーーーーーーーーん!!!!!!」

勢いそのままで私を抱きしめて家の中にそのまま攫われました。


・・この自分に素直でこの抱きしめ具合・・おまけにこのおっぱい・・まさしくあの人ですね。

「あぁ・・やっぱりこいつらだったか。」

「ったく・・いきなり走り出して何なんだよ・・・って・・」

「はぁ・・少しは落ち着け・・近所迷惑だろうが・・って、お?」

「はぁ・・はぁ・・はぅ・・ダンさん・・おろして下さ・・・い?」

「ようやく、暴走は収まりましたか・・と、おや?」



「一応聞くが、カルナとシャスティで間違いないよな?」

「そうだな?ダン。」

「やっぱりそうだったか。久しぶりだな。」

そうです。

私を一番最初に助けてくれた冒険者のお兄さんとお姉さんたち・・つまりはカタクリの町でとてもお世話になった人たちです。




「ホント久しぶりだな。元気だったか?」

「まぁな。色々あったが元気にやってるよ。」

「久しぶりですねシャスティちゃん」

「にゃう(久しぶりですね)」

「翠も久しぶりだな」

-久しぶりー-

「そちらさんは初めましてだな。」

「ニャー(よろしく)」

「そちらさんはニャーなのか。面白いな」

「・・で、相も変わらずうちのアホがスマン。」

「あぁ・・なんていうか、前よりもパワーアップしてないか?主に暴走する方面で。」

「・・スマン。俺も操縦不可だ。」

「俺も全力でリリのありとあらゆる欲求を受け止めてるが・・・ムリ。フリージアを視界にとらえた瞬間抑えようとしたけど、普通に吹っ飛ばされた。」

「俺も抑えようとしたが、その前に凄い勢いで逃げられてな・・。」

「すみません・・私は最初からそういうのはムリです・・下手なことすれば食べられちゃいます・・うぅ//」

「アンのせいじゃない・・アレを、完璧にしつけが出来るのはある意味フリージアだけだ。アレは、第二のペチュニア様だ。」

「ダン・・お前上手いこと言うな。思わず頷いたぞ。」

「カルナにそう言われたと言うことはやはりペチュニア様はあんな感じだったんだな?」

「まぁ・・・だな。」

「にゃう(そっくりそのままですね。)」



あの・・そちらで再会を喜びつつほのぼのしてるのは良いのですが、この暴走し続けて軽くおかしくなってるリリさんをどうにかして下さい。

翠ちゃんが必死で抵抗してくれてますけど、お外にいるのにお洋服を脱がされそうになりつつ、リリさん自身も服を脱ぎだしてますから・・誰か止めて下さい。

私は抵抗しないのかって?

最初からリリさんに器用に抱っこされたまま押さえつけられてるので動けないので無理です。

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