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受験するために

-フリージア-

夕ご飯を姉さんとリカルさんが頑張って作りました。

正しくは、姉さんが作り、リカルさんが飾る。


で、ちょうど完成したところで兄さんはやってきました。

どうやら、お仕事はなかったらしいです。

イリスさんという方の気遣いというわけではなく、私たちが旅をしながら色々とやらかした部分がお仕事の内容に沿ってたり、それがきっかけだったりと無意識にお仕事をしてたんだそうです。



ルートさんたちと兄さんはサクッとあいさつをして、すぐに仲良くなれました。

互いにすぐにわかったらしいです。


すごいですね。





「リカルさん・・・すっっごい。」

「右に同じく」

「味は普通なのですが、飾るのは職業がら得意と言いますか好きなんです。」

「で、これか・・すごいとしか言いようがないな。」

現在テーブルには、お野菜で出来た立体の神々しい鳥さんが羽ばたいており、他にもドラゴンさんがいたりします。


で、私や兄さんはそれは結構前から普通だったので慣れっこなのでスルーして普通にいただきます。

「スルーか・・さすがだ。」

「でも、食べないと逆にもったいないし。」

という感じで普通にいただきます。



姉さんのご飯、前よりもずっとおいしくなってますね。



そして、食べながら改めて自己紹介をしています。

「えぇ!?バレクさんがあのフォルシェンファミリーで、フリージアちゃんはクテン様、おまけにリカルさんはあのビルドアーティスト!?」

「更にシャスティは、アリスからよく聞かされていたカタクリの英雄だったか。」

「縁に恵まれているというかーメンバーが色んな意味で濃いわぁー。」

「あはは・・俺も正直驚いてます。リア様は母親が母親だったので納得してましたが、よくよく思い出すと他のメンバーも色々とすごかったですね。」

兄さんがあははと軽く笑いながらそう言う。

「お嬢様は運が良いですからね。自分の場合は、そう言う反応はとっくに慣れました。」

リカルさんは毎回そんな反応をされていたせいなのか慣れてるようです。


「えぇ・・」

「運も実力の内とはまさしくこのことか。なるほど、納得だ」

「って・・あら?フリージアちゃんの母親って有名人?・・そういえばいないけどー?」

「あぁ・・リア様のお母様は元々病弱だったのですが難産で・・」

「あ・・・ごめんなさい。」

青ざめた表情でみんなが私をみてそう言って謝る。

-気にしないで下さい。既に割り切っているので・・・物心ついたときには既に。-

「え!?早すぎない!?」

「あぁ・・・リア様の場合は確かにそうですね・・。」

「お嬢様ですと、仕方がないかと。」

「そう言う反応なの!?」

「幼い頃から精神は大人っぽいのだな?」

-子供らしさという部分が逆に分かりません-

「ふむ?そう言うモノか?」


「あぁ・・リア。良いか?」

カルナが私の過去を話して良いか?と聞いてくるので頷きます。

で、翠ちゃんにアイコンタクトをするととある本を出します。


「あ、この本・・最近すっごい人気のあの絵本だよね?」

「確かリカルが描いていたと噂で聞いたが?」

「えぇ。バレクさんからの依頼で、私自身も描きたいと願い作りました。」

「これ、すごくいい話なんだけど、主人公の過去があまりにも暗すぎるというか、重すぎたから凄く覚えてるよ。」

「それ故、大人用の絵本と扱われることが多いんだ。」

なるほど。

そう言う扱いなんですね。

教本扱いしてる人もいると聞いてますし、納得です。


「それで、この本がどうしたの-?」

「それ、本当の話だというのはご存じですよね?」

「あぁ、知っている。」

「同じく」

「えぇ」

「で、場所としてはバレクたちが住む流星の里だというのも知っていますよね?」

3人とも頷く。


ちなみに、姉さんはすぐに気づいたらしいです。

この絵本の主人公のことが誰なのかを。




「何か気づきませんか?」

「え?」

「では、1つヒントを。リア様はバレクたちにどのように扱われておりましたか?」

「え?孫のようにかわいがられてるよね?」

「えぇ。ですが、再開した当初は違ったんです。」

「そうなんですか?」

「ワシや娘夫婦たちもそうじゃが、ワシらにとってはリアは忘れ形見なのじゃ。それでいて、忠誠を誓う主じゃ。この世界のどの国の王でもない。リアだけがこの世界に生きる者たちの中でワシらの主になれる唯一の存在じゃ。」

「最終的に、忠誠心より溺愛が勝って、お嬢様のお願いにころっと逝って親ばかならぬ孫馬鹿になりましたからね。」

「アレはしょうがない・・うむ、しょうがないのじゃ。それに後悔はしておらん。孫として扱うようになったからこそ多少は笑顔に慣れるようになったと思っておるからのぉ。」

「あぁ、確かにそうですね。親子や家族としての思い出をしっかりと作ってあげるのがある意味最も大事なことでしたからね、お嬢様にとっては」

「それに気づいたのはずいぶんと後じゃった・・・気づいた当初はワシ自身を恨んだものじゃ。そんなことすら思い浮かばなかったのかと。」

「俺も同じ立場だったらそうなると思います。」



「え?ちょ、ちょっと待って!?え?え!?」

「ルートどうした?何を慌てている?」

「だって、話しの流れではどう考えても・え?え!?」

「ルートは気づいたようじゃな。では、最もわかりやすい証拠を授けよう。」

「証拠?」

「お主らは、流星姫と呼ばれたお方の容姿を知っておるか?」

「もちろん」

「知っている」

「ヴァニタスのみんなが相当慕ってるからそれ経由で知ってるわよー?」

「で、リアをみて何か気づかぬか?」


で、3人とにらめっこですか?

面白い顔は出来ないのでずっと無表情ですが。



「・・・・・っ!」

「まさか・・」

「本当に?」

「フリージアさんが流星姫の・・・娘?」

-改めまして、フリージア・エトワールです。-

「っ!」

「そのファミリーネームは、流星姫にだけ許された名だったと聞いている。」

「そうだったのね・・・じゃあ、この絵本の主人公は・・」

-私です。それに描いてあることはどれも事実ですが、少々言葉を濁してあります。-

「これで!?」

-本当のことを描けば、並大抵の人は、精神が保たないらしいです。-

「うむ・・アレはのぉ・・。ワシは堪えたが、吐き気に一瞬襲われたのぉ。悔しさと悲しさと気持ちがおり混ざって混乱しておったからのぉ。」

「私は・・2~3日寝込みました。気持ちが落ち着かず・・」

「俺は仕事柄多少耐性がありましたが、その相手には殺意がわきました。」

-兄さん、殺意が漏れてます。-

すっごい濃度の殺気がダダ漏れでルートさんたちが怯えてます。

「失礼しました。」


「・・ラウさんって思った以上に強い?」

「ラウと戦うとなると一瞬で決着がつくので戦いになりませんよ?相当頑張らないと。」

「なるほど・・さすがだ。」


「て・・どうりでフリージアちゃんの精神というか、何と言うか、色々とおとなしいわけよ-。」

「自己防衛の一種か?」

「だろうね。そうでもしないと多分冗談抜きで命の危機だったんだろうし。」

「だから、この中では俺とシャスティが一番付き合いが長いんだ。俺たちはペチュニアさんがあの町に異動して数十日くらい後からずっとそばにいたからな。」

「じゃあ、カルナたちはフリージアさんが産まれる前から見守ってきたんだ?」

「あぁ・・ペチュニアさんが亡くなったあの頃は今みたいに強くなかったし、本当にただ魔力が少し多い動物に過ぎなかった。おまけにリアとの繋がりがバレないように潜んでたからな・・今でも後悔してる。例え繋がりがバレてもどんな扱いをされても、例え俺が死んでもあいつは殺すべきだった。あいつがいなければ少なくともリアは・・リアは・・」

カルナが凄く怒りを堪えきれないという表情で語る姿はみんなにも痛いほど気持ちが伝わったのでしょう。

凄く複雑そうな表情をしている。

私はカルナを抱きしめます。

{カルナ、落ち着いて。}

「・・悪い。だが・・。」

{確かにあの頃はつらかったですし、苦しかった。けど、カルナがいてくれた、シャスティもいてくれた。色んなことを教えてくれましたし、私にぬくもりを教えてくれました。}

「リア・・」

{私にとっては本当の育ての親はカルナとシャスティだと思っています。二人がいなければ例えあの地獄から脱出した後だったとしても生きようと思いませんでした。おそらくそのまま魔物に食われて死んでいたと思います。私にとっては死は苦しみからの解放ですから。}

「・・リアがそんなだから俺たちは守らないと駄目だと思ったんだ。ペチュニアさんからの最初で最後の頼みであったリアを守ること。・・守れなかったから無口無表情になっちまったけど、それでも笑顔を取り戻したいと思ったし、もっと自由にわがままを言ってもらえるようになって欲しかった。それに何より命がけでリアを産んだペチュニアさんの頑張りを無駄にしないためにもリアはいっぱい生きていっぱい楽しいことを知って、もっとたくさんの幸せを知ってもらうべき何だ。じゃないと・・・俺たちは無駄な存在になっちまうじゃねぇかよ・・。」

{いつも私のためにありがとうございます。カルナたちがいたからこそ私は生きようと思いましたし、カルナたちのためにも頑張りたいと思いました。}

「こちらこそありがとう・・リア。」

「にゃう(こちらこそよろしくお願いしますリア様)」

{シャスティもよろしくお願いしますね。私の2人目のお父さんとお母さん}

「止めろよ・・恥ずかしい//」

「にゃう!(その期待に全力全開でお答え致しましょう!!)」


私の話は、カルナとシャスティにだけ届く念話だったのでみんなには聞こえていませんが、カルナの台詞だけでも十分把握出来るモノだったらしい。

その故か、とても涙目で感動!っていう表情になっている。


特に・・

「ぐすっ・・良い人たちに出会えたんだなぁ・・ぐすっ・・」

ディオンさんがまさしく号泣!って感じで涙をどっぱどっぱを流しまくっています。


あまりにも泣いてるのでルートさんたちも軽く引いています。


「気持ちは分かるけど・・ディオン・・」

「てか、俺等人じゃないし」

「ぐすっ・・」


あぁ・・・これは、何を言っても駄目ですね。


・・・うん。

スルーしましょう。





で、とりあえず放置して外へ出ましょう。




夕ご飯を食べたのはお風呂に入った後だったことと、思った以上に喋っていたらしく外へ出ると空はすっかり満点の星空。

ちなみにお風呂に入ったときですが、正しくはお風呂に入ったのではなくお風呂へ攫われ、全身をきれいに丸洗いされただけです。

一切動いてません。

お風呂場まで攫われ、服を脱がされ、髪から全身まできれいに丁寧に洗われ、浴槽で愛でられ、きれいに拭かれ、服を着せられました。

・・モノの見事に等身大のお人形です。

まぁ、慣れっこですけど。


一応言っておきますけど、普通に1人でお風呂には入れるんですよ?

なぜか、女性陣がいると強制的に今回と同じことになるだけで。



それはさておき。

おぉ。

流星の里にいた頃よりは町が明るいせいなのかあまり星は見えませんが、それでもきれいですね。


まぁ、毎日みていますし、日課ですけど。


とはいえ、眺める場所が変わると同じ星空でも違って見えるのはやはり毎日眺めていても不思議な気持ちです。


・・・私の視線の先には屋根。

よし。


{シャスティ}

「にゃう?(いかがなさいましたか?)」

{ちょっと屋根の上まで登ります。}

「にゃう?(お連れ致しましょうか?)」

{いえ。登った後、ゆっくりと眺めたいので支えてて欲しいだけです。}

「にゃう(お供致します。)」


私は、遅れて着いてきたルートさんたちをさらっと無視して【影翼】を発動し、翼をバサッっと広げる。


「っ!?」

「これは・・」

「これが噂の流星の里にいる黒い天使の噂の正体なのねー。・・なるほど。」


で、スルーしてそのままふわりと飛び、屋根の上まで移動。

シャスティはするりと大きくなり、足取り軽く屋根の上までひとっ飛びで、飛び乗った後、私に尻尾をクルリと巻き付けて優しく固定。

それを見たカルナは普通に飛んで着いてきて

翠ちゃんは、ハディちゃんへ重さを軽くさせるシールを貼り、自身の体を巨大化させ、ハディちゃんを巻き込んで屋根の上まで移動。

翠ちゃんはどうやら、壁伝いに移動しているようです。

粘体ですから、壁でも天井でもどこにでもくっつけますからね。




そんな色んなことを私を含めてやらかす光景をルートさんたちは口をぽかんと開けたままフリーズし(ディオンさんは泣き止んだようです)

兄さんは微笑ましそうに屋根に登らず眺め。

リカルさんはなぜか瞳を輝かせて私を描いている。


どうやら、私の背後にちょうどお月様があったため、私の髪が月の光に照らされ、良い感じだったのだとか。

まぁ、絵描きさんですしリカルさんですから好きなようにすれば良いと思いますよ。







そんなこんなで翌日。

朝食(兄さんと姉さんが作ったので見た目は普通で味は凄くほっとする感じでした)や朝の準備にいつもの朝の訓練(私の準備運動をみてなぜか無言・・なぜ?)やお勉強(なぜか驚いた顔になってました)等々を済ませた後、とりあえず学園へ受けるための手続きを行いに向かっております。


ちなみになぜにお勉強の時に驚いた顔をされたかは、どうやら私がカルナや兄さん、翠ちゃんから習っている範囲が年齢的にはおかしい範囲だったからだそうです。


・・おかしいと言われましても私のペースに合わせて色んなのを教えてくれてるだけなので世間的にどのくらい出来るとか出来ないとか分からないです。




で、学園へやってきました。

カルナ、シャスティ、ハディちゃんは予定通り兄さんがいる騎士さんたちとの特訓という名の共同訓練の依頼として預かってもらうお話しのために一緒にお城へ向かいました。

姉さんはギルドへお仕事。

シルクのメンバーは、依頼でお出かけです。

なので、おじいさまと私、翠ちゃんとラナちゃん、リカルさんのメンバーです。


学園は、見た目は翠ちゃんが言うにはウィンザー城っていうところに凄く似てるらしいです。

なぜか、色は白いですけど。


・・・教会も基本的に白ベースの色でしたし、遠目に見えるお城も白いです。

翠ちゃんは、ソミュール城って言ってましたけど・・どこ情報ですか?

すっっごい長生きなので色んなことを知ってるのは分かってるのですが・・まぁ、いいですね。

と言うより、この国の偉い人たちは白が好きなんでしょうか?

どうでもいいですけど。



けど、所々の補強?部分は、学園は金属っぽい感じの赤と青で、お城は金属っぽい感じの黄色と黄緑でした。


どっちもきれいですけど、何と言いますか教会と学園が凄くきれいな建物なので、若干お城の方が控え目な感じ(十分立派ですしきれいですよ?)がしますけど、そこがなぜか落ち着きます。


何でしょう・・。

凄くこの国の王様たちには安心する何かと言いますか、ホッとさせるような人たちが集まってそうな気持ちになります。

別の意味で安心出来る王族の方々というのはどうなんでしょう?

けど、国民の方々に頼りにされて信頼されているという考えでは凄く良いと思います。



まぁ・・なんとなくですけど派手な見た目は疲れるし・・みたいな気持ちになってそうなのは私の気のせいでしょうか?


・・どこかで、その通りと賛同された気がしたんですけど気のせいですかね?

気のせいですね。

声も念話もお母さんたちの声も聞こえませんでしたし、幻聴です幻聴。

うんうん。





「教会でも思ったが、この学園も本当に見事じゃな。じゃが、防御関連から修復関連の魔法はかけられておるようじゃな。」

「お嬢様が勉学などの最中に是非描きたいですね。」

二人とも凄く冷静に言ってますけど、おじいさまは魔法が色々掛かっているのをしっかりと調べたいと目がぎらぎらしてますし、リカルさんも穏やかにほほえんでますけど目は爛々と輝いてます。

まぁ、二人とも好きなときに好きなようにすれば良いと思いますよ?

基本的にお二人の自由なんですから。


それでも、私の安全を第一に考えて下さるのは凄くうれしいですけどね。

でも、その理由がお持ち帰りされそうだからとか、食べ物につられそうとか何ですが、その辺りはどうかと思います。

少なくとも善悪の判断は私の目の力があるので絶対にないですし。

むしろ相手を滅ぼす気満々になるので、お持ち帰りされる前に相手が生きてませんよ?


まぁ、その時はその時ですね。

一応気をつけますとも。

それに、私が餌付けされるときは大抵翠ちゃんから餌付けされてるので事前に解決されてます。




・・・気にしないでおきましょう。

うんうん。




学園の門のところへやってくると警備のお兄さんと遭遇。

「この学園の生徒ではないようだが何用だろうか?」

「ワシの孫がこの学園へ通うための試験を受けに来たのじゃが、細かい日時や受けるための手続きが分からなくてのぉ。その辺りの確認などをしにここに来たのじゃ。直接学園に聞いた方が早いじゃろ?」

「確かにそうだな・・ちょっと待ってくれ。・・おい!」

「ん?どうした?」

「この子が今年度の受験生になりたいんだそうだ。その手続きを代わりに案内してくれないか?」

「了解。こちらです、どうぞ。」

「入っていいのかのぉ?」

「自分がいるので大丈夫ですよ。基本的に許可証か、生徒である証がなければ立ち入りは出来ませんね。」

「今のように、内部の者へ許可を取れば良いのかのぉ?」

「そうですね。ただ、少々確認に時間が掛かりますが。」

「なるほどのぉ。生徒である証があれば入れると聞くが、卒業した後に持ったままでは侵入されるのではないか?」

「大丈夫ですよ。証と言いましても卒業後にかけられている魔法を解除するので。」

「ほぉ?」

「基本的にギルドカードに組み込む形になるんですけどね。ステータス確認時にその表示はありませんが、タグの状態時に裏側に学園のマークが描かれるんです。」

「そのマークに生徒である証拠としての魔法がかけられると。」

「えぇ。学園長の話によるとそのマークが一種の魔方陣の役割となっているそうです。」

「ほぉ?そのマークというのはこの学園の建物の中央部分にでかでかと描かれておるアレかのぉ?」

「えぇ、そうです。アレは、学園全体にかけるための大規模な魔方陣である・・と、話の流れ的に思われているのですが、実は違うらしいのです。」

「でなければ、アレを壊して突撃するアホがいる可能性が出るからかのぉ?」

「おっしゃる通りです。なのでアレはただの印です。」

「なるほど。」

私がよく知っている丸の中に幾何学の模様ではなく、六角形でも五角形でもないです。

四角形の四隅を三角形が取り囲んでる感じですね。

それぞれの三角形の向きは上のとんがってるところが四角形に対して外側に向かうような角度になってます。

それと、その四角形と三角形の中には同じく幾何学が描かれてます。


凄く複雑ですね。


あれ自体に魔法が掛かってないので判別しようがありませんが、確かに色んな魔法をかけるための魔方陣で間違いないみたいですね。



「と、話をしている間に到着しましたよ。」

案内されたのは、ひろーいお庭の端っこを通り過ぎた先にある一番端っこの1階の1部屋。

その部屋は外からまっすぐはいるための扉があるようです。


お庭は訓練場になっているらしく魔法や武器での特訓を頑張る私よりいくつか年上の方々です。

結構な頻度でこちらをチラチラと見られてる気がしますが気のせいと言うことにします。

ちなみにお庭には一番外側部分からクルリと囲うように結界が張られてるようです。

これは、魔法や武器などのありとあらゆる攻撃が結界の外へ行かないようにする為のモノのようです。

と言っても、結界へ当てた攻撃を放った相手に強制変換される魔法で跳ね返ってくるらしいですけど。

けど、跳ね返ると言うよりは空間が歪んで魔法の飛ぶ向きが変わっただけのように感じました。


空間に作用する魔法もあるんですね。

-すっごい珍しいけどね。マジックバッグの仕組みも空間魔法だよ。-

そういえばアレは、あのちっちゃい中にすっごいたくさん入りますし、重さもガン無視されてましたね。

なるほど。




「失礼致します。」

「どうしたんだい?」

中には、眠そうな表情のお兄さん。

表情と服装がすっごい疲れてます。

「彼女が今年度受験をしたいらしくその手続きに来てくれたようです。」

「そっか。なんで俺?」

「何でって・・・受験生への案内などはあなたが担当でしょう。」

「まぁねー。理由も知ってるよ?一番向いてるからだってさ。」

「分かってるならなんでと言わないで下さいよ。」

「気にしない気にしない。」

どこか楽しそうに笑う疲れたお兄さんに微妙な表情になる警備のお兄さん。

「はぁ・・後は彼が案内してくれますので。俺はこれで」

「うむ、感謝する。」

何も言わずにこりとほほえみ、私の頭を撫でながら頑張ってねと言ってお兄さんは去って行きました。





「とりあえず、サクッと説明しますね。まず受験日は今日からだとちょうど20日後。受験資格としては、保護者が受験する際の手続き時に同伴すること。これは、問題ないね。次に、受験料が銀貨1枚。これは、受験するための準備とかでかかった費用だね。裏話するとただで受けられると軽い気持ちでここに来る受験生とかがいるから意識改善だね。次に、受験内容はざっくりと幅広い知識の確認のために筆記試験、実力を知るために基本的に何でもありの模擬戦。それから、その2つが合格ラインを超えると面接。まぁ、軽く俺みたいな誰かとお話しするんだ。

って感じだけど、大丈夫?」

さっくりとした説明でしたがわかりやすいですね。

「では、今銀貨1枚渡せば受験は出来るんじゃな?」

「そうなるね。はい、受け取りました。」

そうなるねと言われたところでおじいさまは、お金を渡しました。

「で、この指輪は受験生の証。一度つければ自分の意思で外そうとしない限りは外れないから安心して。受験が終了して、面接を受けるかどうかの結果を聞いた段階で全員回収。」

「面接を受ける者たちの区別がつくのかのぉ?」

「面接が決定した段階で、名前と顔を確認して、魔力を登録してもらうから大丈夫。ギルドカードを作ったときに魔力を流したあれと同じと思ってもらって大丈夫。まぁ、どこの誰っていうのを知るための部分しか分からないからステータスなどが丸裸に!とかは、ないから安心して。」

「承知した。」

「お嬢ちゃんも大丈夫かな?」

(コクリ)

「ならよし。ふわぁ~あ、じゃあ、はい指輪。どの指につけても大丈夫だよ。」

見た目は透明に少しだけ黄色っぽい色です。

とりあえず、右の親指につけておきましょう。

生身の肉体側の方じゃないと、駄目な可能性だって否定出来ませんし。


「よし、それでとりあえずOK。受験日は20日後の朝10時。時間厳守だから遅れたら受験受けられないから注意するんだよ?」

(コクリ)

「後、名前だけ教えてもらっても良い?筆記とか実力試験とかでそれだけは必要だから。」

-フリージアです-

「フリージアさんねー。俺は、ネル。怠けてて寝るのが好きだから名はテイを表すの代表格だよ-。」

からからと笑いながらそう言うネルさん。

本人が気にしてないからそれでいいですね。

深くは何も言わないでおきましょう。



「じゃあ、頑張ってねー。あまり学園内でうろちょろしてると今は生徒じゃないから生徒たちの好奇心で集まってくるから早めに学園を出るのをおすすめするよ。あまり人が集まるのは面倒だしね。」

(コクリ)

凄く分かります。


何と言いますか、眠そうで面倒くさいって表情になってるネルさんですが、凄く丁寧で優しい人です。

凄く仲良くなれそうな気がします。

距離感がすごくほどよいです。


・・何と言いますか、距離感ががっつり近いメンツばっかりなんですよね・・。

忠誠心だの信仰心?だの、溺愛だのと。


いやじゃないんですけどね・・うん。







「あ、クテン様ヤッホー」

学園を出てしばらくしたところでお兄さんらしき人に声をかけられ振り返ると、荷物運びのお兄さんたちでした。

-これからお仕事ですか?-

「いや、むしろ帰り」

-夜中から朝方にかけてと言うことですか?-

「そうなんすよ。あんまり人目につかないようにしたいらしいのに加えて、量が多いのって何のって。」

「まぁ、荷物が多いから俺等が依頼されたんだけどな。後は、荷物の扱いが優しいとか丁寧とかで。」

「師匠に色々教わったし、クテン様に相手の気持ちを思って行動するって言うのを教わったからそれを実戦してるんだけど、そこら辺が荷物運びの依頼が増えてる理由の1つだったりするらしいんだよ。」

「あ、ちなみに荷物はちょっと値段がやんごとないってだけで国の決まり事に問題が出るようなあれこれって意味じゃないよ?」

-多くの方々に頼りにされ、信頼されてるんですね。-

「クテン様と師匠のおかげっすよ」

-ですが、私は相手の気持ちを持って行動する・・というのを教えた記憶がないのですが?-

「あぁ・・確かに教わってません。けど、クテン様の行動によって起きた結果とか、クテン様を中心にした他のメンバーの動きとか、そう言うところが勉強になるなぁって俺等が勝手に思ってるだけですから。」

「師匠に鍛えてもらってるせいなのか、貴族とかそんな人たちからも依頼を受けるんだよなぁ。」

「言葉きついけど信頼されてるんだって分かるのは正直うれしいよな。」

「だよなー。ホント日々感謝してます。」

「礼の言葉はいらぬ。その代わり自身の生活をおろそかにせず、リアのために行動し、他人のために頑張るのじゃぞ?」

「うっす」

「了解です」


で、夜は寝てないからこれから帰って寝るのでーって感じでお兄さんたちと分かれました。

翠ちゃんが餞別とか言ってシャスティお手製の栄養団子(野菜と果物のジュースのブレンドした味のお団子と言われているモノ)を人数分渡してました。

栄養とって頑張れということのようです。


お兄さんたちも不思議な味がするとかどこか楽しそうに笑いながら去って行く背中をみているとお兄さんたちがまだ幼い頃、外ではしゃいで遊んでいた姿を幻視しました。




小さい頃の楽しい思い出でも思い出したんでしょうか?

良かったですね。

過去の楽しい思い出は力になりますからね。


私の場合は、過去はアレなので、今現在の幸せを大切にしたいと思っています。

さて、教会へお祈りへ行きましょうか。







-ネル-

朝のぼちぼち早い時間にお客さんが来た。

実戦慣れしてそうなじいさんとつやっつやのストレートの黒髪が思わずきれいだと声に出しそうになるほどの超絶美少女がやってきた。

いやーかっこよかったり美人だったり庇護欲をそそるような子たちは時折来るけど、今回のフリージアさんは別格だったわぁ。

それに、筆談だったなぁ。


あの子がクテン様と呼ばれてる子かぁ。

教会のメンツがなぜか喉に良さそうなモノを集め出すという謎の行動が数年前からあったけど、そういうことだったんだなぁ。

思えば、神子様をクテン様と呼ばれるようになった境目とほぼ同じ。

何かあったんだろうな。

それはさておき、字は凄くきれいだったし礼儀も正しい、それに感じる魔力はそこらの大人連中を遙かに上回る量だった。

けど、なんとなくだがその魔力を持て余してたりというのはなさそうだ。

しっかりとコントロールして使いこなせているようだ。


さすがだなぁ。

多分今ここの卒業予定の子たちとバトっても普通に勝てそうな気がするんだよなぁ・・フリージアさんが。


後、フリージアさんにくっついてた獣魔らしき子たちもかなり強そうだったなぁ。

まぁ・・あの謎生物とか言われるのも獣魔になってたのは驚いたけど。

懐く個体がいるんだ・・てか、それすらも懐かせるクテン様がすごい。



正直実力的には学園に通う必要はないけど、あの無表情の子の目に宿る意志は本物だった。

この学園に通いたいと言う気持ちはなんとなく伝わった。

それに、あのじいさんの眼力と漏れ出す威圧感が半端じゃなかった。


ヤバイよ・・。

アレは、1人で100人規模の指名手配犯を殲滅出来るレベルだよ。

おまけに執事っぽい絵を描いてるのもいたけど、そっちも得体の知れない強さを感じた。

それに、どちらも相当フリージアさんを気にかけてたし、俺を警戒していた。

男女としての男として・・ではなく、そんなの関係なしで全ての人間を警戒するという感じで。


・・教会に勤める知り合い経由で教わったクテン様の過去の話。

アレが本当だとすればアレも納得する。


個人的な意見だけど、あのビルドアーティストが手がけた絵本・・あの主人公は話の流れ的に実在していたというのは本当だろうけど・・・・フリージアさんっぽいんだよなぁ。

聞かないけどさ・・過去の重さが半端じゃないから下手に聞いて心の傷を開く可能性があるし。




「・・って、いつまで潜んでるつもりですか?学園長?」

部屋の角っこの死角になる部分に潜んで、気配とか感知などの類いを探らせないようにするための魔法を張りまくってるじいさんに目をやる。

このじいさんはこの国の学園長だ。

「学園の敷地内に生徒ではないが非常に優秀そうな魔力を感知した故な。ほっほっほ、なかなか面白く、凄い子じゃったなぁ。」

「学園長もそう思います?」

「まぁ、のぉ・・・じゃが・・」

「ん?どうしました?」

「まさか、あの子の忘れ形見がこの学園にのぉ・・。時の流れを改めて感じ取ってしまったわい。」

「あの子の忘れ形見?」

誰のことだ?

結構な長生きだから当時はここの生徒でも今は普通に大人になって子供がいるというのもいるけど。

「お主も気づいているのじゃろう?あの子の母親のこと。」

「・・俺の勘だったんですけど、それ当りなんですか?」

「そうじゃ。見た目も本当にそっくりじゃ・・・ただまぁ・・中身が全くの真逆故か思い出すのに時間が掛かったが。」

あの見た目に性格が真逆・・・それらしきメンツを思い浮かべているとあの絵本のことを思い出した。

・・・・・あぁ。

「フリージアさんは、エトワールさんだったんですか。」

「まぁ、の。じゃが、あまり他言するでないぞ?流星姫のやらかし・・コホン、行動の末の結果は多くの人たちに英雄として扱われる要因となっておる・・・さぞ、知られたら学園内がめんd・・大騒ぎになるからのぉ。」

「そうですねー、知られないようにするつもりでしたよ、面倒ですし。」

「お主も見た目をしっかり整えればそれだけでも十分イケメンなのにもったいないのぉ。」

「それで集まるメンツが面倒くさいんですよ。」

「モテぬ相手からすると喧嘩売ってると思われそうな台詞じゃな?」

「否定はしませんけど。良いんですよ。見た目はともかく清潔は保ってますし、やることはやってますから。」

「皆が信じぬがお主はワシの一番弟子じゃからのぉ。」

「そりゃそうですよ。俺みたいなやる気ゼロの酒飲んでないのに飲んだくれ扱いされてる俺が学園でも非常に優秀な学園長の一番弟子とか確実に嘘だって言われますよ。」

「なら、身だしなみだけでも整えてくれれば・・・」

「服を買い換えるのが面倒くさいんですよ。」

「はぁ・・誰かこれの良さを知って引き取ってくれる女性はおらぬのか・・。そうすれば最低限のことはしてくれるじゃろうに・・。」

いや・・そんな握り拳作ってそんな台詞を絞り出されても直す気はないぞ?

それに、このくたびれた感じの服が良い感じなんだよ。



にしても、不思議な子だったなぁ。

俺みたいな男が目の前にいたら大体は嫌そうな顔するか面倒くさそうな表情になるのに全く変化がなかったし、態度も変わりはなかった。

それどころかフリージアさんの瞳は俺を信頼してくれてるような感じがあった。


内面を見抜くことに長けているのだろうか・・・あぁ、あの絵本を中心に考えるとそうならざるを得なかったのか。



さて、面倒だけど受験生の試験用に準備しますかねー。






にしても今年は凄いメンツが揃ってるなぁ。

やけに剣術に対して玄人の気配を醸し出す女の子?とか、包容力のありそうな・・けど、すっごいはっきりした性格だけど緊張してるっぽい子だったけど、回復や治癒に長けてそうな女の子とか。

え?

なんで剣術の子がはてながついてるかって?


いやぁ・・どう見ても女の子なのに僕は男だーとか言ってたんだよね。



幼馴染っぽいけど、ちょっとだけ不思議な子たちだなぁと思った。



今年の受験生は色々と面白そうだ。

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