新しいお家とラウ帰還
ラウ兄さんと、アリス姉さんがまさかの互いに一目惚れで、そのまま文字通りスピード結婚しました。
そして、私は姉さんが所属するクラン:ポレール・ジュレへ加入することになり、その拠点でお世話になることになりました。
一応自分のお家はぼちぼち探すつもりではあるのでそれまでやっかいになります。
・・いつまでも居候しているのは、あまりよくありませんからね。
名前:フリージア・クラリティ・エトワール(悪心撃滅体質)
ランク:C(二つ名=魔鏡姫)
クラン:ポレール・ジュレ
パーティ:ハリーファ(リーダー)
性別:♀
年齢:10
種族:半異世界人
職業:賢者、協奏師
称号:絶望を知る者、幻獣の家族、変態紳士ホイホイ、英雄賢者の正統後継者、神子、狩人
属性:陰
体力:C
魔力:SS
攻撃:D
防御:E
俊敏:D
練度:SS
攻撃技1:【影操作】【射撃】【影纏】【影翼】【人形劇】
攻撃技2:【魔力反射】【物理反射】【性質変換】
攻撃技3:【杖術】【刀】【剣】【短剣】【鞭】【槍】【薙刀】【棍】【棒】【鎌】【斧】【かぎ爪】【合気】
補助技:【念話】【奉納】【心意加増】【精神統一】【アクロバティック】
自動技1:【圧縮記憶】【思考速度上昇】【並列思考】
自動技2:【心の瞳】【ショートクさんの耳】【心の歌】【騎乗】
覚醒:【侵食】【拡張】【守護者召喚】
衣類:精霊のストール、精霊樹のローブ
装備品:聖華の杖、教会の腕輪(EX)、幸運のイヤーカフ、聖木の義手
写真:フリージア・エトワール、ペチュニア・エトワール
契約
【幻獣】八咫烏:カルナ
【幻獣】ガルディエーヌ・キャット:シャスティ
【妖精】オニキス・ゲル:翠
【??】ウールスフィア:ラナ
【魔物】クロコディルガーディアン:ハディ
加護
母の溺愛、流星姫の過保護
元英雄賢者/現神様のお気に入り、桜華の子孫
下位精霊の親愛、上位精霊:リフの溺愛、精霊樹の巫女
ギルドでクランへ加入した為、登録してもらいました。
リーダーやサブリーダーなど、役割?と言いますか、役職があると括弧書きで描かれますが、そうではない普通のメンバーの1人の場合はクラン名だけが表示されます。
それは、パーティでも同じです。
「リア様、少々よろしいでしょうか?」
-兄さん、いかがなさいましたか?-
「これからしばらくはリア様のお側にいられることが非常に少なくなるかと思いまして・・それにこれから報告などもありますし。」
そういえば、この国の騎士さんでしたね。
-ずっと、私のそばにいて下さったんですから、その分お仕事があるんですね?-
「はい。」
-お仕事はサボってはいけません。しっかり働いて下さい。リカルさんも姉さんもみんないますから大丈夫です。-
「心遣い感謝致します。アリス、結婚して早々申し訳ありません。」
「気になさらないで下さいな?私もおそらく仕事を優先する似たようなものなので。その分、一緒にいる間は・・」
「えぇ、もちろん。行ってきますアリス。」
「はい。行ってらっしゃい、ラウ。」
細かく言わずとも互いが分かっているという雰囲気を醸し出す二人は確かに熟年夫婦に近いですね。
ちなみに二人は呼び捨てで呼び合うことにしたようです。
「では、こちらをどうぞ。」
「アリスこの紙は?」
「クランの拠点の位置を記載しておりますので。」
「感謝致します。では、失礼致します。」
そう言うとラウさんは気配を全力で消して素速く移動し、その場から姿を消した。
「先ほどの模擬戦の時も思いましたが、ラウの技量はすさまじいですね。その才能を見抜き、最も適した職へ導いた上司であり恩人でもあるお方は素晴らしい方のようですね。」
「らしいな。俺等も正直、そいつがどんな奴なのかさっぱりだが。」
「まぁ、そうなのですか?」
「その人に会うって言うのもここに来た理由の1つなんだ。」
「そうでしたの。焦らずともいつかその機会に恵まれますよ。案内しますね。」
「あぁ、よろしく頼む。」
「アリスは何でこの国に?」
「この国はご覧の通り非常に広いところですし、ギルドにもその分多くの方々が集まります。そんな中、様々な偶然が重なり、職員が不足していたらしくその時に私の名が上がったそうなんです。」
「へぇ~?推薦でこっちのデカいとこにランクアップしたって感じか?」
「えぇ。そして、受付嬢として仕事をしていく内に受付嬢と言うよりも、職員たちを教育し、指導する側がいいのではないかと声が上がったそうなんです。結果として、私はその立ち入りにいます。」
「職員たちの教育以外でやることってあるのか?」
「この国の上層部と教会の方々との連携も計っておりますよ。」
「何でそこと?」
「どこでもよくあることなのですが、ギルド、教会、国や町のトップ・・大きくこの3つの組織と言いますか団体と言いますか・・が、上手く連携がとれておらず、それぞれがそれぞれの考えで行動することが多いのです。そこで、教育係に上がった私が筆頭としてこの国の上層部が上手くこの3つの組織が連携出来るようにその調整中なんです。そうすれば、いざスタンピートなどのような大きな争いごとが起った際に出来るだけ被害者や死傷者を減らすことが出来ますから。」
「すごいじゃねぇか。」
「えぇ、ですがこの計画はこの国では比較的順調に行なっておりますが他の国ではなかなか上手くいかないようで・・・その辺りの調整なども私が主に対応しているんです。」
「あぁ・・どこも組織はそこならではのやり方や考え方があるから融通が効かない場合があるんだよなぁ・・。てか、なんでアリスが?」
「一応私がそれらの計画の要と言いますか、責任者・・と言いますか、取締役のような立ち位置で対応しているからなんです。と言いましても私はほとんど伝達係と言いますか、仲介役なんですけどね?」
「じゃあ、それぞれのトップとアリス・・計4人のメンツが対応・・詳しくはスリートップをアリスが仲介と言うか、仲立ちをしてるってことか。」
「そういうことです。」
「だとしても今日の動きを見てるとほとんどギルドのメンツの教育と事務処理が多かった気がするが?」
「毎回行なわれるわけではありませんし、この国は基本的にそれぞれのグループのトップは穏やかな方が多いですから、実は私が仲介するような状況はほとんどなかったりするんです。・・話す内容が複雑だったりすると記録係として参加することはありますが。」
「じゃあ、それほど大変ってわけでもないのか。」
「そういうことです。さて、着きましたよ。」
「へぇ~。結構広いな。」
「部屋はかなり余裕があります。それに、ここは庭が非常に広いんです。元々訓練をする前提で作られた場所らしいので。」
「だから、庭が広いのか。あ、池もあるんだな?」
「えぇ。泳ぎの練習も一応兼ねているのか、それなりに広いですのでハディさんは好きなときに泳いで頂いても構いませんよ。」
ハディちゃんはすごくうれしそうです。
泳ぐのは好きな子ですからね。
場所が場所なのであまり泳がせてあげることが出来なくてすごく申し訳ないです。
ハディちゃんは気にしてないって言ってますけどね・・。
確かに言われた通りお庭はすごく広いです。
軽い模擬戦も出来ますね。
建物は、色んな石を積んだ・・レンガというので作っているお家のようで、2階建てです。
と言うより1部屋1部屋がすごく大きいので、何と言いますか、身長2メートル以上のおっきな人たちのために作ったお家っぽいです。
「こちらですよ。」
門をくぐり、姉さんがドアノブに触れ、魔力を流すとカチリと音がしました。
どうやら鍵が開いたようです。
「魔力を登録することでその人が魔力を流せばこうして中に入れるんです。」
登録すれば、魔力が鍵という扱いのようです。
「誰か戻っているようですね。ただいま戻りました。」
「あ、お帰りなさいアリスさん。今日は早かったですね?」
「お帰りアリス。何かあったか?」
クリーム色の髪をしたちょっとだけ小柄(他の大人の人と比べると)で優しそうな男の人と、藤色の髪でがっちりとした体格のちょっとだけ威圧感のあるお兄さんが迎えてくれました。
「いえ、特に問題はありませんよ。新しい加入者を連れてきただけですよ、ルートさん、ディオンさん。」
「加入者って、ポレール・ジュレにですか?」
「えぇ。」
「その加入者は、後ろのメンバーか?」
「えぇ、順番にフリージアさん、バレクさん、リカルさん、カルナさん、シャスティさん、ハディさん、翠さん、ラナさんですよ。」
呼ばれた順番に頭を下げる。
「へぇー?こんにちは」
-こんにちは、お世話になります。-
「よろしく頼む。」
「お世話になります。」
「礼儀正しくて物静かな子ですね。」
「保護者と教育係がしっかりしてますし、本人もとても素晴らしい方なので」
「そうか。アリスとはどういう経緯で?」
-姉さんがカタクリの町にいた頃に大変よくして頂きました。-
「そうか・・・・姉さん?」
「リアさんの義兄であるラウと結婚致しましたので義姉です♪」
すぱっと満面の笑みで即答。
ついでに、婚約指輪を見せてます。
「えぇ!?」
「あまりにも唐突ではないか?」
「互いに一目惚れで、周囲を黙らせるために速攻で婚約の儀式も済ませて参りました。」
そう言いながら結婚指輪を姉さんはちらりと見せる。
左手の薬指につけるんだそうです。
なんで、そんな微妙なところに?とは思いましたけど、そう言うモノなんだそうです。
不思議ですね?
「えぇ・・・まぁ、本人が納得してて幸せそうだから・・良いか。おめでとうございます。」
「おめでとう」
「ありがとうございます。」
「それに、良い人っぽいですしね。」
兄さんのことを何も言っていないのに良い人とはっきり言えた理由を聞いたのですが、どうやらあの婚約の儀式(指輪を握ってお祈りするアレ)は、片方が結婚したくないとか良からぬ思いで結婚しようと企んでたりとかするとそもそも指輪にあの文様は現れないらしいです。
要するに、婚約の儀式は失敗ということです。
よく出来てますよね。
「ちなみにラウさんってどんな人なのかな?」
-過保護な専業主夫です。-
「は?」
「あぁ・・確かにそうじゃのぉ。護衛執事というよりはそちらの方が近い。」
「私もお嬢様に同感です。戦闘面で申しますと、暗殺者らしいと言いますか、スピードタイプという感じですね。」
「ラウは仕事熱心で、他人思いですよ。それと、正義感・・と言うより家族や仲間への思いがまっすぐで若干強いですね。」
「なるほど。」
「フリージアさんは、テイマーなのか?」
-さんはつけなくても構いませんよ。テイマーで合っていると思います。私個人が近距離戦が苦手ですので。-
「なるほど。この国には移住か?」
-学園に通うために試験を受けに参りました。-
「で、家を探す前にアリスに捕まってしまってのぉ。」
と、おじいさまがさらっと暴露。
すると、なんとも言えない表情になる二人。
「あぁ・・・アリスさんってかわいい物好きでしたっけ?」
「過去に縁があったと聞く。実の姉のように慕い、慕われてたのだろう。」
「なるほどねー。とりあえずよろしく。ルートです。」
「ディオンだ。会話は苦手だがよろしく頼む。」
-私も得意ではありませんので、お構いなく。-
「筆談とはいえ、それでも十分では?」
-ほとんどしゃべれませんが、実際に声に出すとかなり端的でストレートな言い方になってしまうので。-
「なるほど。気持ちはすごく分かる。頭では分かっているのだが・・」
うんうんと私も強く頷く。
すごく分かります。
多分私と同じタイプです。
・・慣れてくればもうちょっと上手にしゃべれるとは思いますけど。
だとしても、仲良くなれそうです。
「ルート?ディオン?お客さん?」
奥からピンクの髪を肩くらいまで伸ばした穏やかそうなお姉さんがやってきた。
おっぱいはDくらいですね・・いや、もうちょっとありそうです。
「今日から新しいクランのメンバーになるんだそうだよ?」
「らしい。アリスが攫ってきた。」
「攫って・・・」
「ディオン・・まぁ、あながち間違ってないか・・。」
「あまりにもかわいいのでお持ち帰りしてきました。お連れの方もまとめて。」
「・・アリスさん。あまりにも大胆すぎるのでは-?否定しないけどー。」
「確かにかわいい子ですよね。」
「うむ。将来はもっと美人になるだろうな。」
「こんにちはーお嬢さん?」
-こんにちは。お世話になります。-
「こちらこそよろしくねー。ハルよ。」
「ちなみに、お嬢様の義兄であるラウさんとアリスさんはその場で互いに一目惚れ・・そして、そのまま結婚しました。」
と、流れるようにリカルさんがさらっとアリスさんのことを一部暴露。
「ゲホッゴホッ!・・ケホッ・・え?本当に?」
「えぇ。その場で即決でした。一切の迷いが互いにありませんでした。」
私も含めて全員で強く頷く。
「・・・とりあえずおめでとー」
「ありがとうございます♪今はお仕事でここにいないので近いうちにご紹介致します。」
「えぇ。とりあえず、よろしくねー。」
ハルさんとも仲良くなれそうで良かったです。
「あ、そうだった。アリスさん」
「ルートさんどうなさいましたか?」
「ピエロさんとヴァニタスのみんなは今日中に戻ってこれない可能性が高いらしいです。」
「あら?それほど時間がかかる依頼は受けていなかったように記憶してましたが。」
「依頼先でトラブルがあってその対処に1日は掛かりそう何だって。」
「途中偶然居合わせた他の冒険者たちが伝言をそのように聞いたらしい。」
「なるほど。トラブルはしっかりと解決するまでは離れられないでしょうしね、あの方々は。」
「あの人たちの信条でもあるし」
「そうねー。」
-他のメンバーの方々は忙しいのですか?-
「えぇ。そのようです。明日か明後日にはお会い出来ると思いますよ。」
(コクリ)
「そういえばアリスさん。ラウさんって人はこっちにいつ頃来れそう?」
「忙しいらしいので滅多に会えない可能性があるそうですよ。この場所の地図は渡してあるのでその内会えますよ。」
「ふ~ん。」
「そのいつかを楽しみにしよう。」
「そうねー。アリスさんの好みが分かるわけだし-。」
そんな感じで挨拶はそこそこに私たちは空き部屋で好きな場所を選ぶことになりました。
最終的に私は1階の一番端っこの片方の壁が全てスライド式の扉になっているバルコニー?っていうのになってる部屋にしました。
そこだと、お外から部屋にまっすぐは入れるのでハディちゃんも好きに部屋とお庭を行ったり来たり出来ます。
リカルさんとおじいさまはそれぞれ私の部屋に一番近い部屋を順番に選びました。
兄さんもおそらく同じでしょう。
おじいさまたちが選んだお部屋は、私の部屋のようにバルコニーのようになっていないけれど、窓は大きく、そこを空けると部屋全体が温かい光が差し込まれて風通しも良い感じなのですごく心地が良さそうです。
で、外から見ても思ってたのですがやはり1部屋1部屋がおっきいです。
すごくありがたいですし、ハディちゃんも普通にどこでも行ったり来たり出来ますしね。
お部屋には、ベッドに本棚、机に椅子、カーペットがあり、木造の洋風のお部屋のようです。
ちなみに、バルコニーのある子のお部屋はどうして開いているのか聞いたところ、私のように外に直接出入り出来て便利という考えがなかったと言いますか、そんなことをするようなことがなさそうだし意味ないねと言うことで誰も使ってなかったらしいです。
後は、自分の部屋が客間扱いされるのはなぁ・・とかつぶやいてました。
さて、兄さんはイリスさんって上司さんにまずはご挨拶して、それからお城で騎士さんとしてのお仕事とかでしょうか?
忙しいのは知っているのでわがままは言いませんが、出来れば早めに会いに来て下さいね?
せっかく奥さんになった姉さんもさみしがりますよ?
-ラウ-
懐かしい。
ずいぶんとクラリティ王国から離れてたからな。
気配を消して足取り軽く屋根から屋根へと飛び移りながら城を目指す。
急ぐときは屋根伝いに走った方が早いしな。
それにしてもリア様は本当に美しく育ってくれた。
それに、ますますペチュニア様にそっくりだ。
・・内面は真逆だけど。
て言うよりは、内面はイリス様に似てるな。
・・うん、似てるな。
内面はイリス様、見た目はペチュニア様だなリア様は。
まぁ・・・ブチ切れたらペチュニア様そっくりだけど。
敵は1人残らず殲滅するとことか・・・・・・いや、それはイリス様も同じだった。
ある意味あの2人は似たもの同士だったんだよなぁ。
いざと言うときまで隠しているイリス様と隠さずに常に堂々としてるペチュニア様ってだけだし。
さてと、城に着いた。
俺はいつものように門をくぐらずに壁のわずかなでこぼこに足を引っかけて壁を飛び越え、そのまま適当に空いている窓から中に入り込む。
ある程度音を立てなければ大抵の連中は俺に気づかない。
軽く気配を消すだけでそれなんだからすっごい便利だ。
昔なら落ち込んでたのになぁ・・誰にも気づかれず存在自体を忘れられたりと。
けど、イリス様はそれを褒めてくれた。
そして、それを利用する道を示してくれた。
本当に感謝している。
イリス様の助言がなければ今の俺はない。
今ほどの実力を持つこともなかっただろう。
さてと、イリス様にとりあえず挨拶って思ったけどどこにいるんだろうな?
んー?
あ、いたいた。
ちょうど謁見の間で話しが終わったとこだな。
王族メンバーと宰相だけか。
にしても、相変わらずイリス様は美人だよなぁ・・本人は女性っぽい顔立ちは若干不満そうだが。
それに、イリス様の妹君であるアイリス様に弟君のルイス様。
どちらもずいぶんと立派になられた。
アイリス様はますます美人になったし、ルイス様はかっこよくなった。
それでいて二人とも王族らしい独特の覇気を纏うほど出来る人間という感じもする。
・・誰がこの国の次第のトップになってもおかしくないな。
すごく複雑な気持ちだ。
三人ともすごく兄弟仲が良いから余計に。
アイリス様もルイス様も多分イリス様がなるんだって思ってそれ前提で動いてる節があるし、町の連中もそんな感じっぽいしなぁ。
騎士たちやメイドたちもそんな感じだ。
この国の不思議なとこは、第一王子や第二王子、第一王女など、それぞれの権力というか、勢力争いみたいになるのが普通なんだが、この国はそれもほとんどないんだよなぁ。
ホントにのほほんとしてるというか、貴族も平民も王族もみんな仲が良い。
と言っても必要なときはしっかりしてるから時と場合はしっかりと分別出来てるし。
「ラウ、お帰り。」
・・さすがイリス様。
「さすがですね。気づいてましたか。」
「まぁね。」
イリス様はリア様同様なぜか俺のことを普通に認識してるから、どんなに隠れようとも気配を消そうとも見つけてしまう。
けど、アイリス様とルイス様は若干目が見開いてるから、気づいてなかったか・・てか、それが普通だしな。
「ラウ・・あなた相変わらずですわね。」
「だとしても久しぶりだな。」
「アイリス様もルイス様もお久しぶりです。長い間お側を離れてしまい大変申し訳ありませんでした。」
「気にしないでくれ。僕の頼み事のために動いてたんだから。」
「いえ。」
そういえば、宰相は俺がリア様のために護衛としてそばにいたっていうことはどういう風に聞いてるんだろうか?
宰相は、冷静な雰囲気とたたずまいを常に纏わせている細身の男性だ。
と言っても、一度スイッチが入るとなぜか熱血だから、ちょっとだけ面倒くさい。
けど、仕事は出来るからすごく頭の回転は速い。
それでも、イリス様の方が頭脳戦とかは早いからなんとも言えないらしく、宰相にとってはイリス様を超えることが目標らしく日々勉強中なんだとか。
「この国で多大な影響を与えた流星姫、ペチュニア様のご息女の護衛兼、現流星の里の元領主の件の被害者である方の護衛、お疲れ様でした。」
「はっ。ありがたき幸せ。」
なるほど。
ペチュニア様はこの国で昔かなりの規模で活躍してたし、今は流星の里となっているあの町の領主は一応この国が管理してるからその後始末として俺が派遣されたってことになってたのか。
・・なら、イリス様とペチュニア様の娘っていう部分がバレるんじゃないのか?
て思ったけど、そういえばイリス様とペチュニア様がリア様を孕むようなあれこれをしたってことは、宰相は知らなかったんだっけ。
まぁ、知ってたらペチュニア様の最初で最後のわがままはとおされることなくこの国でおとなしくさせてただろうし。
何と言うか、仲の良すぎる兄妹みたいな扱いだったしな。
「そういえば、ラウ。イメチェン?似合ってるよ?服装も髪色も」
「あ、ありがとうございます」
すっかり忘れてた。
そういえば、髪色も色々あって変わってたし、服装も騎士服から執事服だった。
執事服は特に着慣れてしまったし、俺自身に馴染んでたから余計に忘れてた。
「細かいとこは時々来る報告書で聞いてるから良いよ。」
「かしこまりました。」
「で、どうするの?騎士から執事になる?」
・・そこまで想定済みかよイリス様・・さすがすぎる。
「自分自身は、護衛も身の回りのお世話もどちらも出来るようになりたいと思っております。」
俺は正直に答えた。
執事になると言うのも違うし、騎士って言うにも何か違う。
専属の護衛であってはいるけど、護衛自体は役職関係なく出来ることだから少し違う。
執事でもあり護衛でもあり騎士でもある。
異世界人が言うところのシークレットサービスとも微妙に違う。
一番近いと言えば近いが。
それに、近衛騎士とかだろうか?
いやぁ・・とも違うんだよなぁ。
正直になると俺は何になりたいのかがよく分からない。
「なるほどね。まぁ、とりあえず暗部という扱いにしとく?元々ラウはそっちなんだし。」
そう。
俺は、一応騎士で偵察部隊と言うことになっているが、正しくは暗部だ。
俺の力は、とことん暗殺者に向いている。
その証としてあるのが俺の二つ名である暗紅騎士だ。
アレは、大量にリア様が言うところの悪心の持ち主たちを殺しまくった結果だしな。
「なら、暗部だから日頃は騎士や執事になりすまして暗部と思われないようにしてる。それでいいんじゃない?偵察部隊に所属になってたからそっちの印象が強くてラウは騎士ってことになってたけどさ。」
「そうなると今の自分は、騎士でありながら執事の格好をしていると言うことになります。他の者たちが気づく可能性があるのでは?」
「ラウは僕の懐刀だ。だから、執事としても動けるように勉強中だから今は騎士と執事を兼任してるってことにすればいいさ。」
それで解決するモノなのか?
と思っていると。
「意外とそう言う者たちは他にもいますよ。」
「宰相様?」
「料理班と魔術師団を兼任している者もいる。門番と薬師を兼任している者もいる。」
「この国はやりたいことがあれば本人任せなので兼任はよくあることですわ。ラウはまじめだから気づかなかったかも知れないけれど。」
「アイリス様・・はい、ではお言葉に甘えてそのように。」
「わかった。それにしてもラウは、更に実力をつけたみたいだね。」
「色々と大物と戦い続けましたし、フォルシェンファミリーとも頻繁に稽古をつけて頂いてましたし。」
「そういえばそうだったね。それで、クテンと呼ばれている子はどう?」
どうやら、クテンと呼ばれてるリア様の護衛をしているということは宰相も一応知っているらしい。
と言うより、俺の任務としての護衛相手がそのクテン様扱いされてるリア様と同一人物とは知られてるようだ。
「現状、学園へ通うため試験を受ける準備を進めている最中です。」
「それで、ここにしばらくとどまることになったのか」
「はい。」
「そういえば、ずっと気になっていたのだが、ラウ。その左手薬指のは?」
ルイス様がちらりとそう言う。
俺の左手薬指にはアリスとの婚約指輪がつけられている。
この指輪は特殊なモノで、俺以外には触れることが出来ない。
おまけに常に左手薬指につけられている状態となるから、外せないのだ。
まぁ、風呂だったりとかそういうときは外せるが。
それと、戦闘中でも外れることがないし、つけていたからと言って動きに支障が出ることもないからすごく不思議だ。
神様が認めたあかしであるこの文様と白い宝石はそういう部分の魔法も込められているのだろうか。
「はい。ギルドで補佐官を務めているアリスと結婚いたしました。」
「おぉ!おめでとう!」
「おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「彼女とは以前から?」
「いえ、互いにいわゆるひとめぼれでそのまま・・//」
あぁ・・素直にそういう部分をイリス様に報告するのはすっごい恥ずかしい。
「ラウが一目ぼれかぁ。意外だなぁ。」
「ラウは、付き合って絆を深めてじっくりと・・というイメージだったが。」
「ですが、聞く話によるとアリスという方はラウと色々と似ているらしいですわ。」
「あぁ、そういえばそうだね。」
「兄上はご存じで?」
「うん。彼女はすごくまじめだよ?それでいてその場のあれこれに流されることはないし、どんな人相手にも平等に扱い、しっかりと必要なことは言うからね。それと、不思議なことに彼女に言われると素直に従う子たちがすごく多いんだ。」
「それで、特例で補佐官にしたのですね?」
「良いだろう?結果として、僕たち王族と教会の神父、ギルドのギルドマスターって3つの組織のトップが普通にやり取りできるんだから。そうなれたのは彼女がいたからだよ?」
「そうですね。彼女の優秀さは他の者たちからも報告は受けております。」
「それでイリス様・・離れていた間の業務をこなしたいと思いこちらに参ったのですが・・。挨拶もですが。」
「やっぱりそうだったんだね。大丈夫だよ。そういうのはないから。」
「え?で、ですが・・。」
「というよりラウは頑張りすぎなんだよ。それに、ラウが特別任務でうろちょろしてくれてたおかげで、解決したのも多いし、特訓代わりなのか偶然巻き込まれたからなのか、悪い芽は摘んでくれただろう?」
「えぇ、様々な縁と成り行きで。」
正しくはリア様の体質の餌食になったのでその手伝いだけど。
「頼む依頼はその辺りだったから結果としてラウは働いてくれてたんだよ。」
「そうだったのですか・・」
「だからラウは、引き続き護衛を継続。時々僕の話し相手になってよ。ラウは僕の大事な後輩なんだから。」
「はい。ありがたき幸せ。」
俺は、元々イリス様の部下として雇われ、拾ってもらったわけではない。
正しくは、イリス様に友達になって欲しいと言われ、俺は身分の影響で恐縮していたところで
「なら、僕は先輩でラウが後輩だね。先輩と後輩なら仲良くしててもおかしくないだろう?先輩は後輩を育て守り、後輩は先輩のために力をつけて色々と頑張ってくれる。それならいいかい?僕は、ラウを部下ではなく親しくなりたいんだ。」
幼いころのさりげない言葉であり、色々とあきらめていた俺を前向きにさせるための方便だったのかもしれない。
けれど、俺にとってはその言葉は今も忘れない大事な言葉であり、俺が今の俺になったきっかけだ。
ギリさんがリア様の命の恩人なら、俺にとってはイリス様が命の恩人であり、憧れであり、お世話になった分のお返しがしたい。
「はい、先輩。」
今この場でしか言えない。
けれど、俺にとっては大事な先輩だ。
俺は先輩のために、リア様のために明るい未来へ足を進め、守ろう。
俺は、頭を下げ、アリスにもらった地図をもとに新しい家へ足を進めた。
ポレール・ジュレのメンバーはどんな人たちなんだろうか。
アリスが認めているからいい奴ら何だろうが、どんな感じだろうか。
噂で聞くと色々とゆかいなメンバーのようだ。
楽しい生活が出来そうだ。
また、新たな技術を学ぶいい機会に恵まれるといいな。
次回は22日です。
その次は日曜日でいつも通りです。
ただの気まぐれですよ?
1122とよさそうなぞろ目?もどきですし。