左手と鳴きと心技体の伝説
フォルシェンファミリーの皆さんのお世話になってから早30日は経過しました。
特訓していたおかげで左腕も無事に動くようになったので今は感覚を取り戻すためにこまめに動かして練習中です。
しばらく左腕を使ってなかったというのもありますけど、動かすイメージをして実際に動くまでに微妙にズレがあるからです。
後は・・
グシャッ!
「・・・」
「・・・・うん。慣れるまでは、野菜ジュースと果物ジュースが増えそうだが・・まぁ、問題ないか」
と、カルナに言われてます。
ついでに、まだ素の握力とかがまだ弱いから惨事にはまだならないしな。
とまだの部分を強調してつぶやいてましたけど。
何をしているのかと言いますと、左腕は動くようになったんですけど、力加減に慣れないので握りつぶしてます。
・・練習で果物を。
お野菜とか果物だったら潰してもジュースにすれば良いし問題ないよね!むしろ有効活用!
って感じでこうなりました。
そういえば、私の義手は私の素のパワーの倍以上の強さになるんでしたね。
・・頑張らないと挨拶の握手で相手のお手々をぐしゃっとしちゃいそうです。
という感じで現在は、左腕を動かす練習と力加減の感覚を覚える練習中です。
カルナがつぶやいてた通り、元々の力が弱いから果物やお野菜を潰す程度ですが、このまま成長したら、さりげなーく握手してそのままおててをぐしゃとか冗談にならない状態になりそうですし、頑張ります。
まぁ、そっと握ってどのくらいまで力を入れたら大丈夫かなー?と思ってやってるんですけど、ついやっちゃうんですよね。
もうちょっといけそうとか思いつつ、ちょいとやりすぎまして-。
で、翠ちゃんから
-持ち上げる程度の力加減くらいでいいんじゃない?-
と言われてからは、とりあえず持ち上げることが出来るまでの感覚でやってるのでどうにかなってます。
まぁ・・ちょいちょい失敗して潰してますけど。
私の魔法をみたいと言われたのでちょいちょい外にいる魔物相手に戦って見せてます。
「それにしても、フリージア様の魔法は多芸だな。」
「えぇ、同感ですわ。」
「近距離攻撃と遠距離、防御の多さもだが。」
「まさか、魔法反射を自由自在に操れるとは、さすがだな。」
「それもあるが、同時に魔法反射と物理防御と硬さを同時に変えるなんて芸当・・そこらの若造共では到底無理なレベルじゃ。おまけに、攻撃時も同時にいくつも別々に操作し、それぞれ別の姿形に変え、それらに合わせて操作するなど・・さすがじゃ。」
「頭の回転が良いんだろうな。イメージ的には頭の中ですっごい桁数の数字を計算しながら手は別のごとをしている感じだろ?」
「イメージに関してはそんな感じだろうね。それに・・それもあるけど、柔軟性もあるね。そうでなければここまでワザを編み出さないよ。」
「そうですわね。本当に魔法に関してはフリージア様の場合、何も教えずとも自然と伸びそうですわ。むしろ教えることは基礎的なことだけにしておかないとフリージア様の柔軟さがおかしくなるでしょうし。」
どうやら、私の魔法はとてもすごいんだそうです。
よく分からないですけど。
で、時々私は鳴きます。
「にゃあ」
「・・・どうして、フリージア様は時折・・鳴く?」
(?)
リードさんが我慢出来ないという表情で私にそう言うのでなぜ?と首をかしげると苦笑しながら頭を撫でてくれます。
「その、猫耳のような髪の影響ですか?」
どちらかというと狐さんのお耳です。
髪ですけど。
「あー・・・それは、リアが持つワザ?の1つなんだよ。・・時折使ってるんだ。」
「ほう?どんなワザなんだい?」
「猫のように鳴けるワザだ」
「・・え?」
「猫のように鳴けるワザだ。ついでに猫とその関連の生き物と意思疎通が出来るらしい。」
「・・それだけ?」
「それだけだ。」
「え?・・・なんで?」
「さぁ?なぜか、このワザを覚えた。」
「・・・・」
なぜか微妙な表情になるリードさん。
「あなた?そんな微妙な表情になっていかがなさいましたの?」
「いやぁ・・うん。」
なぜか私をチラ見するリードさん。
あぁ、なるほど鳴けってことですね?
「にゃあ」
「あら、かわいい。」
「うん・・かわいいね・・うん。」
「なのにどうしてそんな表情に?」
「これは、ワザらしいんだよ。」
「まぁ。どんなワザですの?」
「猫のように鳴けるワザらしいよ?」
「え?・・それだけですの?」
「それだけだ。」
「・・・」
「・・・俺の気持ちを理解してくれたかい?」
「えぇ・・・かわいいから気にしないことにしますわ。」
「そうだね・・」
なぜか、クリアさんも微妙な表情になって私を撫でました。
なぜ?
で、同じリアクションをバレクさんにされた後、お昼ご飯を食べながらふと
「そういえば、歌を知っておるか?」
「歌・・ですか?」
「あぁ、歌にも色々ある。純粋な歌は人の心を癒すこともアリ、気持ちを高ぶらせることもあるそうだ。さらに、それは人ではない者たちの場合はまた異なるらしい。」
「人ではない・・者?」
「あぁ、動物たちの歌はその地に安らぎをもたらし、妖精や精霊たちが歌うと様々な恩恵を授けてくれるのだという。」
「恩恵?」
「それが、土地に対してだったり、生き物に対してだったり様々らしいよ?後、悪心を持つ者に対しては滅びと災いをもたらすのだという。」
「歌にも色々あるんだな。」
「まぁ、それ以上にその歌はとても美しいんだそうな。」
「へぇ~。いつか聞いてみたい気もするな」
「そうですね。そんな機会があると楽しそうです。」
そんな穏やかな会話をしながら私たちはご飯を食べた後、
私はお昼寝しました。(強制的にさせられました)
・・・いつものことです
と言いながらあっさりと寝る私も私ですけど。
てな感じでものすっごくフォルシェンさんたちは過保護らしくすっごいペースで休憩が挟むし、色々食べさせられるし、飲まされるし、寝かされるし、魔力操作をしようとしても器用に止められるし。
え?
どうやって止められたのかって?
それが、私のおでことお腹辺りをちょんと触られただけなんです。
まぁ、その瞬間に魔力が流し込まれたので何かしたんでしょうけど・・むぅ。
それと、ちょっとクシャミしたり咳をすると速攻でベッドまで攫われて病人さん扱いされます。
なので、現実逃避のような感じで鳴きます。
鳴くだけなので問題なしです。(自称)
そのせいなのかな?
そんな毎日を過ごしているせい?
と言うより、お外が明るいときはほぼずっと精霊樹のそばにいる私ですが・・と言っても寝る前の星空観察も精霊樹のそばでしているわけですが鳴こうとしたらある日突然鳴けなくなりました。
?
首をかしげていると
「リア、どうした?」
{鳴けなくなりました。}
「は?」
-ギルドカードをチェックしたら?変化があったのかも-
(コクリ)
言われて見ればそうですね。
カードさんお願いします。
名前:フリージア・クラリティ・エトワール(悪心撃滅体質)
ランク:C(二つ名=魔鏡姫)
パーティ:ハリーファ(リーダー)
性別:♀
年齢:6
種族:半異世界人
職業:賢者、協奏師
称号:絶望を知る者、幻獣の家族、変態紳士ホイホイ、英雄賢者の正統後継者、神子
属性:陰
体力:C
魔力:S+
攻撃:D
防御:E
俊敏:D
練度:S+
攻撃技:【影操作】【魔力反射】【物理反射】【性質変換】【杖術】【射撃】
補助技:【念話】【奉納】【心意加増】【精神統一】【アクロバティック】
自動技1:【圧縮記憶】【思考速度上昇】【並列思考】
自動技2:【心の瞳】【ショートクさんの耳】【心の歌】【騎乗】
覚醒:【侵食】【拡張】【守護者召喚】
衣類:精霊のストール、精霊樹のローブ
装備品:聖華の杖、教会の腕輪(EX)、幸運のイヤーカフ、聖木の義手
写真:フリージア・エトワール、ペチュニア・エトワール
契約
【幻獣】八咫烏:カルナ
【幻獣】ガルディエーヌ・キャット:シャスティ
【妖精】オニキス・ゲル:翠
【??】ウールスフィア:ラナ
【魔物】クロコディルガーディアン:ハディ
加護
母の溺愛、流星姫の過保護
元英雄賢者/現神様のお気に入り、桜華の子孫
下位精霊の親愛、上位精霊:リフの溺愛、精霊樹の巫女
攻撃が1段階上がったみたいです。
それと、鳴くが変化してます・・お願いします。
【鳴く】→【心の歌】
鳴けなくなった代わりに歌うことが出来る。
込める気持ちによって歌に籠もる力が変化する。
例
怒り→鼓膜を破るような音波を放つ
喜び→心を落ち着かせ、精神面の癒しとなる
正義感や思いやり→味方と判断した者限定で仲間同士のチームプレイが上手くいきやすくなる
おや?
まさかの歌ですか?
「・・・今度はそうなるのか。」
「変化する基準が分かりませんね・・。」
「翠は何か分かるか?」
-昔よりも感情がはっきりしてきたことと、精霊樹のおかげかもね-
「精霊樹が?」
-そーだよ。精霊樹が精神的な部分・・リアの場合無意識の部分の暗い気持ちをいやしてくれてたんだと思う。-
「そうか・・ギリたちはどう思う?」
私のワザの変化とその効果を伝えてみた。
「翠と同感だな。」
「ふむ。翠の言う通り、精霊樹が関わっているのじゃろうな」
「えぇ。精霊樹は昔から精神的な癒しをもたらし、暗い感情を完全には難しいがある程度払拭してくれるといわれていますわ。」
「らしいな。後は、フリージア様の成長にあわせて精霊樹があのワザを変化させたのかもね」
「後は、フリージア様が成長した故に、ようやく本来の形に戻った可能性もあるな。」
「本来の?」
「つまりは、元々歌としてのワザだったけれど、このワザはフリージア様の気持ちや心に強く反応するワザなのよ・・だから」
「だから、その心がようやくここまで成長したからこそ今こうして変化したのかもしれないね。」
「で、歌うから声を出す・・とりあえず鳴くって感じで応急的にそんなワザになったのかもな。」
「言われて見れば納得するな・・精霊樹が心のケアをしてくれたからこそっていうのもあるんだな。だから、精霊樹のおかげか・・なるほど。」
「今もほとんど無表情ですが、行動から見ると大分素直に・・いや、気持ちを表に出せるようになりましたしね。」
「怒りの感情も、素直にお腹が空いた、眠たいとかの受け答えも増えたし、念話でも執筆・・というか魔法で会話も以前より増えた・・うん。良かった・・本当に良かった・・」
カルナとシャスティは特にうれしそうにしている。
・・そうだよね。
と言っても自分のことはよく分かりませんが、カルナとシャスティは私が生まれる前からずっとそばにいてくれてるんですから。
十分私の家族・・お兄ちゃんとお姉ちゃんです。
お父さんは誰だか知らないけれどお母さんはお母さんだからきっとそうだよね。
恥ずかしいから言わないけどね。
「・・・そういえばリア様は歌うほど長くは喋ることは出来ませんよ?」
「そういやそうだな。て言うより、よく耳を澄まさないと聞き漏らしそうになるくらいの声音が限界だしな。・・歌えるのか?」
「あの【鳴く】というワザは喉の負担を一切かけずに使用出来たワザであったな?」
「だったはずだぞ?」
「そのワザが進化・・または昇華ワザであるのは確かだが、説明文からすると鳴くと言う行為が歌うと言う行為に変化しただけのようじゃ。」
「つまりはどういうことだ?」
「つまりは、新しいワザに変わったのではなく、そのワザが変異したと言うことよ。」
「あぁ!鳴くと言う行為が歌うと言う行為に入れ替わっただけなんですね?」
「文面からするとそういう風に感じ取れるが?」
「試しにやってみるのが一番だが。」
「・・いかがですか?歌えますか?」
歌えるかと言われても分からないですが、とりあえずやってみましょう。
(コクリ)
何を歌おうかなーとか思いつつ鳴く時と同じように深く考えずに声に出してみる。
~♪
歌詞も何もない歌。
いわゆるア~とかラ~とかルールーみたいな感じだけですけど。
何の歌なのか
どこで聞いた歌かのかもわからない。
穏やかでしっとりと、ゆっくりと、ゆったりとした歌。
どことなく心の奥がホカホカほわほわしてくる感じです。
この歌を歌っているとなんとなくお母さんをそばに感じることが出来る気がします。
「良い歌ですね」
「癒しの歌とはまさしくこのことなんだろうな」
「同感ですわぁ。すごく心が穏やかな気持ちになりますわね。」
「じんわりと感じるこの心地よさ・・良いな」
「フリージア様の気持ちがそのまま歌となる・・これほど穏やかで幸福を感じる歌は産まれて初めてじゃな。」
「だろうな。こんな幸せな気持ちになれる歌を歌うやつがそこらにホイホイいるわけがない。それだけ良い歌だよ。」
「妖精の歌や精霊の歌を聞いた時の幸福はこんな感じなんだろうね。」
「そうですわね。」
すごく不思議な気持ち。
すごく心の奥がじんわりと温かくなって心地が良い。
言葉に出来ないところが気持ちよくなるこの感じ。
これが幸せなんですね。
どんなに歌ってものどは痛くならない。
やはり、そういうものなんですね。
私が歌っているとここの敷地内にコッソリ隠れて過ごしていた小動物たちが集まり、鳥たちも集まってきた。
みんな私を囲うようにあちこちにいるけどみんなどこか心地よさそうにしている。
それからどのくらい歌っていたかわかりませんが落ち着いてきたので、ゆっくりと歌を終える。
拍手はありませんでした。
むしろ拍手をした方がこの空気を壊すようで嫌だったと後にみんながそう言っていました。
実際にすごく幸せそうな笑みを浮かべて音のない拍手を私に送ってくれてたんですから、それだけで十分です。
動物たちもちらりと私をみてありがとうと言葉を残して去っていきました。
私の精霊樹の巫女としての能力がなくともお礼を言っているように感じたと断言できるほど幸せそうにしてたんです。
その日から私はちょくちょく鳴いていた部分をそのまま歌を歌うことに置き換えて暮らしています。
そのせいなんでしょうか?
普段は数日に数回ほどの間隔でここを覗きに来る人達がいるんですけど、その人たちがのぞきはしないけれど壁に外側から寄りかかるように休憩がてら私の歌を聞いてから去っていく人が増えました。
稀に、邪魔しないから!と土下座しながら壁の外側の近くで野営させてくれと言った人もいました。
特に問題ないですし、むしろ去っていく前にお礼代わりに魔法や武器で技を見せてくれるようになりました。
翠ちゃん曰く一発芸みたいなものだったらしいですけど、どの技も面白かったです。
ギリさんたちも面白そうに拍手してましたし。
そんなある夕ご飯の時にカルナがぽつりと質問した。
「そういえば、英雄賢者って1人で世界を旅してたのか?」
「知らんのか?」
「あぁ。人間のことはそこまで知らん。」
「それもそうじゃな。心技体の伝説の1人と呼ばれておったんじゃよ。英雄賢者様は」
「心技体の伝説?」
「大まかに言うと、心技体とはその名の通り心と技、体の3つじゃ。心は想いや願い、技はあらゆる技術、体は身体能力でな?それぞれを司る3人の英雄がおったんじゃ。」
「英雄賢者様は技を司り、心は聖女様、体は勇者なんだよ。」
「たった3人で世界にはびこるものすごく邪悪な魔物を倒して多くの人々を救ったんだぜ?勇者が聖剣を使って接近戦をこなし、英雄賢者様があらゆる魔法を放ち、聖女様が2人を癒し、サポートしていた。冒険者の連中はこのフォーメーションを基準にして自分たちのチームプレイを作り上げてるんだ。けど、あの3人ほど技や力に優れてるわけじゃないからその分を人数や道具とかに頼ってるから他の役割を持ってるのがいたり、一人で複数の役割をやったり同じ役割を数人でしてたりするんだけどな。さすがに3人だけでそんな芸当ができるほどの力を持つのはSランク以上の冒険者だけだ。まぁ・・大抵のSランク以上の連中はソロかペアがほとんどだけどな。」
「へぇー。けど、なんで勇者や聖女は英雄賢者ほど噂に聞かないんだ?」
「地域的なものもあるけど、そのチームのリーダーで、姿を消す前日まで戦い続け、救い続けたのが英雄賢者様だからそちらが目立ってるということよ。」
「姿を消す?」
「あぁ、かなり長い間英雄賢者様が生きていたんだ。で、ある日突然姿を消した・・そして、その日以降何十年とたっても誰も見かけることはなかったんだ。一部の噂では天使や精霊になったんだとか、元の世界に帰ったとか言われているけれど実際はよくわからないんだ。」
「あれ?じゃ、なんであんた達は賢者の杖を持っていたんだ?」
「あれはある日1枚の手紙と一緒に家に届いてたんだよ。」
「その手紙は読んだ直後に跡形もなく消えちゃったらしいけどな。」
「なんて書いてあったんだ?」
「次の代の賢者が現れるまでその杖を守ってくれってあったそうだよ。」
「ふぅん。で、勇者と聖女は?」
「もともと3人とも異世界人だったとか、さらに昔に転移してきた異世界人の子孫だとか言われてるから全員異世界人の血が混ざった3人だったんだけどね。で、勇者は聖剣という聖なる力がこもった剣を扱うことが出来る唯一の存在だった。英雄賢者様は接近戦ができない代わりに魔法では右に出る者はいなかった。その逆が聖剣の勇者様だ。」
「てことは、接近戦とか身体強化とか聖剣に宿る聖なる力だけに特化した‥その代わり、遠距離戦が苦手だったと?」
「そういうことだ。で、聖女様はありとあらゆる状態異常や怪我を直す回復や治癒の魔法の使い手だったらしい。その代わり戦闘に関しては一切からっきしだったらしいけどね。けれど、治療で取り除いた状態異常をそのまま敵に擦り付けたりとか同じように怪我をそっくりそのまま相手に負わせたりとかできたらしいからある意味では一番怖かったらしいけどな。」
例えば両腕の骨が折れちゃったときは、それを治して、相手に渡すと両腕の骨が折れると・・すごい怖いです。
おまけに体がしびれたり毒になったらそれもそのまま相手にポイ・・・・・
私神子とか呼ばれてますし、聖女さんとは一番お会いする可能性が高そうです・・怒らせないようにしましょう・・うん。
「英雄賢者は姿を消したとして、後の2人はどうなったんだ?」
「聖女様は教会を陰から支えながらこの世界で子を産んで技と力を先祖代々授けているらしい。その優しい心も当然な。」
「噂だと、悪心が宿らないように徹底的に心とか精神を鍛えているらしいし、悪心が宿れば即廃嫡らしい。」
「すごいな・・」
「で、勇者はどこかの田舎に永住することになったらしい。どこかの1人の村娘と仲良くなったようだよ?そして、農業と木こりとかを兼任しながらその村で静かに暮らし、技と力を子へ授けているらしい。」
「そっちも精神的な部分のは徹底させてるのか?」
「そのあたりに関しては農業や木こり、狩などの仕事柄、村人全員で育ててるらしいし、全員がそういう部分は目を光らせているらしいからね。」
「そっちはそんな感じか。何というか、生きるためっていうのと仕事柄そういう風になる以前に阻止するって感じか。」
「仕事柄なることがほとんどないだろうしね。まっすぐ飢えにつながるし、大抵は自給自足みたいなものらしいし。」
「ていうより、貴族になったり王族になったりとかはないんだな?」
「全員興味がなかったらしいよ?」
「ていうより、自由を優先したっていうのが本音らしいと俺らのご先祖様から聞いてる。・・あとは、めんどくさそうだからいやだとか言ってたとか。」
「あ~納得した・・ん?」
「カルナ、どうしたのじゃ?」
「英雄賢者様が姿を消したって言ってるのにどうしてリアが今代の賢者だってわかったんだ?いくら勘と言っても血筋で受け継いでるんだろ?なんで知ってるんだ?」
「俺たちはその英雄賢者様の唯一の弟子だった魔法の探究者の子孫だ。血筋的なものでなんとなく感じ取ることが出来るんだよ。後は、ペチュニア様が英雄賢者様の子孫だっていうのもとある筋から聞いてたしな。」
「とある筋?」
「詳しくは言えぬが、血を視ることで祖先が何者だったか、両親がどんな人物かを知ることが出来る能力を持った者から以前聞いてな?」
「確かな話なのか?」
「うむ。そやつは信じられる。」
「じいちゃんがはっきりと即答してるから安心しろって。な?」
「そうだな。後は、あんたたちの血筋的な力でペチュニアさんからそれを感じ取ったってことか。」
「うむ。そういうことじゃ。」
「・・・ん?じゃなんで、ペチュニアさんは賢者にならなかったんだ?確か違ったよな?」
「あぁ、ペチュニア様は別格じゃ。」
「は?なんで?」
「あの方は、杖そのものを使わずに魔法をまき散らしていたのですわ。」
「えぇ・・・普通は使うんじゃないのか?魔法がより強化したりサポートしてくれるから楽だし」
「移動中に荷物になるし邪魔・・と言われてしまってのぉ・・・」
「ペチュニアさん・・・武器は持っておくべきだろう!邪魔とかで放置するなよ!手ぶらで行くなよ!!」
「よくペチュニア様は無事でしたね・・あの方は体が弱かったのであまり長期間動き回ると文字通り危険でしたよね・・。」
「故に、陰から守るものは数多くおった。ワシらもそうしてたが、あちこちでペチュニア様に救われた者たちが勝手にサポートするクランを作り上げてのぉ・・・。」
親衛隊みたいなのができて、陰から率先して守ってたんですね。
バレクさんが遠い目をしてます。
「後は、偶然を装った冒険者たちが臨時でパーティに勧誘したりと様々なやり方で1人にしないようにしてたらしい。」
「・・よく無事だったな・・貞操とかそっち系のは」
「あぁ・・というよりペチュニア様の逆鱗に触れたくないっていうのと、無理やりして死なれたら冗談じゃ無くなるし・・っていうのが本音だったらしい」
「あぁ・・よく吐血してたしなぁ・・確かに下手なことすれば命の危機だな・・うん。」
お母さんは体が弱かったことが良い方面で助かってたそうです・・何のことはよくわかりませんけど。
「後は、ペチュニア様に純粋に憧れてたとか信仰してた感じなんだろうな。助けられた恩を返したいとかいろいろあったろうし」
「なるほど。お礼とか言っても受け取らないだろうしなペチュニアさんの場合。」
「あぁ、だから途中まで送るよ的な感じで臨時パーティを組んだりして町から町までの同伴者になってたらしい。」
「ペチュニアさんらしいなぁ。」
「やはりそう思うか?」
「まぁ、な。すごい素直な性格だったし。」
「確かに。遠まわしな言葉もなくストレートだったしな。・・・身分とかガン無視して。」
「うんうん。王様に向かってストレートな発言して周囲を凍らせたのは記憶に新しい。」
お母さんは王様相手にすごいことを言ったらしいです。
「怖いもの知らずだなぁ・・大丈夫だったのか?」
「大丈夫大丈夫。ストレートなこと言いながら吐血してたし。そういうとこに呼ばれてるときは大抵多くの人間が救われた後でペチュニア様がどんな性格かすでに周囲が熟知してたから事前に伝えてたらしいし。」
「なるほど・・周囲のサポートはそこまで・・」
「そういうこった。」
「とりあえず心技体の伝説はこういう感じだ。」
「把握した・・・で、なんで最終的に心技体の伝説って名前になったんだ?周りがもっとすごい名前とかにしてそうじゃねぇかよ。」
「あぁ・・それはな。かつて3人がよく口にしてたらしいんだ。」
「心技体を?」
「らしいぞ?勇者様は剣を振ることしかできない。聖女様は回復関係しかできない。英雄賢者様は魔法を放つことしかできない。シンプルに言えばそれ以外はできないが、出来る部分はものすごい才能があった。故に、3人が揃えば最強のチームだ。勇者は力の象徴である体、聖女は癒しを象徴する心、賢者は魔法を象徴する技。そろって心技体。1人だけだとできないことが多いが、3人揃えばどんなことでも出来る!・・・ってな?」
「3人の絆をより強く結ぶための合言葉のようなものだったらしい。その言葉を旅するあちこちの町や国で言っていたから多くの人が耳にした。ゆえに、伝説として書物に残そうとしたときにとっさに出てきたのが」
「心技体ってことか。」
「3人の合言葉なんだから余計な言葉に変換するのは逆に失礼だってことになってな?」
「なるほどな。サンキュー助かった」
「気にするでない。こんな話をするいい機会じゃった。大抵の連中は知っておるから説明しても補足情報程度なんじゃよ。」
「誰もが好きな物語なんですよ。大人も子供の関係なく好まれています。吟遊詩人もよくこの伝説に連なった歌を歌っていることは多いらしいですし。」
「大人も?」
「えぇ。その伝説は冒険者として戦いながら旅をする者として学ぶべきことが多いからよく教本代わりにするのですわ。下手にギルドマスターがあれこれ言うよりも伝説の方々がしてたから俺たちも真似しようと素直に言うことを聞いてくださるので。」
「なるほど。確かに説得力はあるな。」
「まぁ・・そのせいなのかは知らぬが、異世界人はなぜか自分が勇者だとか聖女だとか勘違いしておる者が多くてなぁ・・」
「は?」
「こちらの世界に来れる異世界人は必ず勇者か聖女だと思い込んでいるようなんだよ。実際は適正のある職業になるだけだから勇者になるか聖女になるか魔法使いか剣士になるかはその人次第なんだけどね・・。」
「で、勇者か聖女かっていうのは、さっきも言ってたように血筋が大きく関わってくるから、向こうの世界では周囲には秘匿されつつも先祖代々受け継いでいるはずだから上位の貴族かそれに関連した地位の一族のはずだ。」
「そういうもんなのか・・てか、異世界人も面倒な思い込みをするな・・それ、ギルドカードってかそいつらのステータスを公開した後の説明でかなり手こずるだろ・・なんで勇者、聖女じゃないんだ的な感じの部分で」
カルナが呆れた表情でそう言うとギリさんたちはすごく遠い目をしながら頷いてた。
異世界人って大変みたいです。
・・私も半分は異世界人ですけど。
というより、桜華さんは、勇者さんと聖女さんと3人で旅してたんですね。
いつかそんな勇者さんと聖女さんの子孫の方と会うことがあるんでしょうか?
次回は10月10日に投稿します。