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人生ならぬ羊生

私たちは先に進む。

色んな魔物がいるけど、襲い掛かって来たのだけ倒して先に進む。


そんな中、おっきな羊の魔物だけは襲い掛かってくると言うことは一切なくのんびりとしてお昼寝している。

通りすがる羊さんたちは全部同じでした。

稀に、近くで爆睡してる(実際はさせられてる)その他の魔物がいたりしますが、大抵他の魔物に襲われてたりと言う状態。



好戦的な魔物が多い中、のんびり屋さんと言いますかお昼寝大好きって感じのおっきな羊さんは色んな意味で目立ちます。

敵として認識されると大変なことになるほど強い子らしいし、近づけば羊さんがまき散らす魔力に当てられて眠くなってしまうので色んな意味で近づくと危険なんです。


と言っても、あのモフモフの毛は魅力的ですよね。

シャスティもラナちゃんももふもふして気持ちが良いし、カルナのつやつやした羽も、翠ちゃんのプニプニも、ハディちゃんのひんやりの後にほんのりと温かい硬い鱗もどれも良いんですけど、あのモフモフはそれはそれで気になりますよね。




とか思いながら襲い掛かってくる鳥さんを私の結界でガードしたところでシャスティとラウさんが左右からザク!で終わりです。

まぁ、私がガードする前にやっちゃうことが多いんですけどね。





とそんな感じで進みつつあります。

そんなある野営している時、おっきな羊さんたちの群れが私たちの元に近づいてきました。

ゆっくりとのっしのっしと合計30頭くらい。

どの子も平均10メートル前後レベルとすごいおっきいので白いもこもこな巨大な雲が近づいてきたようにも感じます。





スリープシープ

半径4メートル以内の生物を問答無用で眠らせようとする魔力をまき散らす全長平均8メートルの羊

毛でふくれているため非常に大きく見えるが、実際の肉体は半分以下である。

眠らせるからと言って眠らせた後、襲い掛かることは敵と認識されるか怒られなければ基本的に穏やかな性格をしている。

実は怒らせると非常に危険で、突進されると数百メートルは軽く吹っ飛ばし、走る速度は馬の全力疾走が子供の駆け足程度に思えるほど速く、怒らせた相手に最低でも一撃入れるまで追いかけてくるので気をつけましょう。

獲得部位:魔石、毛皮、稀に肉、稀に眠り毒袋






翠ちゃんがものすごーく物知りなので今のところ出会ってきた魔物はすべて翠ちゃんから教わってたりします。

どうやら翠ちゃん、十年や二十年なんて生やさしいレベルで長生きらしいです。

途中から数えてないらしいけど、500~600年は軽くいってるんだとか。

なら、英雄賢者さん・・えぇっと、桜華さんがこの世界で生きてた頃も知ってたのかな?

と聞いたところ、

-どの人間も桜華さんのことばかりだったから逆に興味がなかったよ。私は、目立たないように影から色んな生き物や世界を眺め続けてるのが好きなんだもの。-

今の私のように仲良くしたい人はいなかったのかな?と思ったんですが

-なかったね。むしろ見てるだけの方が面白かったし、1人でいた方が気楽で良かったしねー。-

と、カルナが言うところの一匹狼の状態が基本的に好きだったようです。

おまけに、かなり物知りな生き物(その地に住む主的な存在)とかに色々と教わったり、大図書館のようにたくさん本があるところに潜り込んで本を読みまくって情報を集めたりと世界中を旅しながら見て回ったらしい。

大陸間の移動は、空を飛んだり海を泳いだり出来る生き物の背に乗って移動したんだとか。



で、話を戻します。

攻撃するつもりがないとわかった理由の1つとして、その子たちが今私たちとの距離は1メートルほどだと言うのに眠くならないことが原因でした。

おまけに近くまで近づくと全員がふせをした状態でじっと私たちを見ていたからです。

敵として認識されておらず、むしろ何か相談したそうな不安そうな感じがします。


ラウさんがとりあえず

「何かご用でしょうか?」

通じるかどうかはさておき聞いてみる。

すると

「メェー?(お前たちは我々を見ても襲い掛かってこないんだな?)」


おや?

どうやら、普通の動物扱いとして言葉が私限定で分かるみたいです。

翠ちゃんたちもとりあえず分かるみたいだけど私みたいに完璧に聞き取ることは出来ないみたいです。

とりあえず、ラウさんに念話で私が聞こえたとおりのことをそのまま伝える。

「敵対しなければ襲い掛からないと伺ってますので。」

「メェー(なら良かった。1つ聞きたいことがある)」

そこからは私がリアルタイムでラウさんに念話で伝えてます。

「何か悩み事ですか?」

「メェー?(我々を襲わないような場所はあるのだろうか?)」

「と言いますと?」

「メェー、メェー(人間は大きな壁に囲われた安全な場所を作っている。我々はただ静かに過ごしていたいだけだ。)」

「そうなると自由に動き回れない可能性がありますよ?壁に囲われてるので」

「メェー(同士にはそう言う場所を好まない者もいるが、我々はそれでも構わないからのんびり邪魔されずに過ごしたい)」

「・・・・1つだけ心当たりがあるのですが、提供する代わりに何か対価のようなモノがあれば交渉しやすいのですが」

「メェー?(では、我らの毛はどうだろうか?)」

「よろしいのですか?弱体化とかそう言う心配は?」

「メェー(ない。人間で言うところの服と同じだ。全裸になっても内包する魔力は変わらぬのと同じだ)」

「なるほど・・どれほどの頻度でそれほどまで伸びるモノなのでしょうか?」

「メェー(人間で言うところの1つの季節分ほどだ。ただ、この地は年中温かいがその中でも最も寒い時期は避けて欲しい)」

「あぁ、年中穏やかな土地ですが、確かに冬の時期だけは多少寒くなりますね。・・・確かに、皆さんの毛でしたら良い交渉になるかもしれません。・・・場合によっては自力でそこまで駆けて頂く必要がありますが?」

「メェー(事情説明するモノをもらえれば自力で向かおう)」

「かしこまりました。・・1つ質問よろしいですか?」

「メェー?(何だ?)」

「あなた方は、魔力を周囲へ流すとどんな生物も眠くなる・・それは、制御が出来るのでしょうか?」

「メェー(可能だ。全くなくすことは難しいが範囲を狭めたり広げたりすることは出来る。)」

「最も狭くするとどれほどに?」

「メェー(今くらいだ)」

「なるほど・・場合によってはその力も借りる可能性がありますが・・」

「メェー(敵対せずに仲良くしてくれれば構わない)」

「それなら、交渉はしやすいかもしれません。少々お待ち下さい。」








「リア様。文字は書けましたよね?」

(コクリ)

「あの羊たちの要望をイリス様宛に描いて頂いてもよろしいですか?最後にリア様の名前もお願いします。」

{私で良いのですか?}

「えぇ、リア様が実際に話を聞いていたわけですから。その方がわかりやすいかと。後は、リア様の文字の練習です。実戦ですよ実戦」

(コクリ)

「お願いしますね。」

「てことはラウ。イリスさんって人に頼むのか?」

「えぇ、場所の提供と安全確保が条件ですし、彼らから許可が取れた分で十分交渉材料としていけると思うので。」

「そうか。ムリさせてないなら良い。・・にしても、あっさりと交渉しようとよく思ったな?」

「リア様の体質が反応してませんし、かなり穏やかですし。それに、彼らの毛が一定時期にそれなりにとれればリア様に服やクッションなどを差し上げる良い機会になるのではと。」

「リア以外にもそういうのを使う頻度があるって訳か。それに、依頼をして手に入れるより圧倒的に質も良いし、傷もなく手に入る。手入れとかもするようにすればもっときれいなのが手に入るわけだしな。」

「えぇ・・と言うわけでこれからイリス様と話しをするので彼らと戯れてるか何かでお待ち下さい。」


そう言ってラウさんはちょっとだけ距離を開けて話をし出した。




で、待っている間私は我慢出来ずに羊さんたちの元にやってくる。

「メェー?メェー(どうした?触りたければ好きにして構わないぞ。眠くなっても知らんがな)」

意外と面倒見は良いようです。

許可が取れたのでもふっと毛の中に飛び込む・・と言うより突きささりに行く。


ほぉぉぉぉ!

もっふもふですね。

お日様の優しい匂いがします。

ふっかふか♪


で、モフモフと全身で堪能してると

「メェー(眠くならないとは珍しい)」

「あぁ・・多分リア・・その子にくっついてるそいつが原因だと思う。そいつが状態異常とかを吸い取って無効化してるんだよ。」

と、カルナがラナちゃんのことを説明する。

私は一言一句きれいに聞き取れるけど、カルナたちは全部はムリでも7割くらいは分かるらしいです。

何で分かんないのだろうかと思ったけど、魔物同士・・とか動物同士などは、基本的に同種か、何らかのつながり(カルナとシャスティだと、私との契約)がないとだいたいそんな感じらしいです。

翠ちゃんが私と同様全部の生き物の言葉とかを理解出来てるのはそれほど長生きしてるから言葉を知っていると言うこともあるらしいです。

「メェー(なるほどな。そいつか・・それに気に入られてるとはまた面妖な。まぁ、好きにしてくれて良い)」

ラナちゃんは羊さんたちからも謎生物という扱いのようです。


そして、どこか楽しそうにしてる羊さんたち。

その後、他の羊さんたちも自分も触って良いぞ?とどこか触って欲しそうにしてたので順番にもふっと突っ込んだりして楽しみました。


はぁ//

もふもふ。


と、いけないいけない。

もふもふに戯れてる内に忘れかけてました。

お手紙お手紙。


私は、もふもふに埋もれながらお手紙を書き始めました。







--ラウ--

後ろでリア様が眠気などそっちのけでどこか楽しそうにモフモフと羊たちに埋もれてる姿にほっこりしつつイリス様に連絡する。

-やぁ、ラウ。報告の時間じゃないけどどうしたの?-

「お忙しかったでしょうか?」

-大丈夫だよ。どうしたの?-

「実は、1つお願いがありまして・・」

-ふぅん。提供して欲しい内容と、提供出来るのを教えてくれる?-

さすがイリス様。

言う前にある程度のことを瞬時に察してくれる。

「実は、スリープシープ30頭よりゆっくりと穏やかに静かに生活出来る場所を提供して欲しいという話がありました。彼らからは、4ヶ月ごとに1回、冬の時期を除く年に3回、自身の毛を丸ごと提供してくれることになりました。更に、彼らは眠りの魔力の放出範囲はある程度制御が出来るとのことです。」

-へぇー。面白いね。素材の定期的な提供は正直ありがたいよ。場所の提供と共に世話係を何人かつければもっと上質なのが手に入るね。彼らの食事は確か草食で、普通の動物の羊と同じくらいしか量は食べなかったはずだし。眠りの魔力に関しても、不眠の悩みとか、イライラしてるメンツをリフレッシュさせるには良いね。おまけに、うるさいのをとりあえず黙らせるのにかなり楽に出来る・・・良いね。良いよ。ちょうど、城壁を弄る予定だったから。-

「城壁を弄るんですか?」

-うん。彼らが1頭分くらい楽に通れるくらいの幅の城壁をなくして、そこから牧場みたいな感じでくるっと丸くおっきく城壁を伸ばそうかなって思って、今土魔法の使い手のメンツ総出でやらせてるんだ。-

ひょうたんみたいな形の城壁が出来るみたいだな。

と言うより、城壁は国を守る要

そんなのをホイホイと弄っても大丈夫なのだろうかと思ったが、どうやら補強というか強度を上げたりするのとついでに少々場所を広げようと言うことになったらしい。


「その土地は何かに使う為にしていたのでは?」

-大丈夫大丈夫。とりあえず周辺の土地をうちの国に手に入れることが出来たからさっさと広げようかなって。空いた土地はおいおい何かに使おうって思ってたんだよ。で、ちょうど良くラウが言ってきたってわけ-

「運がと言うよりタイミングが良かったんですね。」

-そういうこと。場所の許可は、数十分もあれば取れるよ?その場の指揮は僕がしてるし。で、その子たちはどうやってこっちに?-

「今リア様に手紙を文字の練習代わりに書いてもらってます。彼らの言葉を丸々聞いてたのはリア様のおかげですし、俺はリア様を経由して翻訳してもらってただけなので。」

-そっかそっか♪わかった。・・お迎えはどうする?-

「その手紙を彼らに持たせて自力で向かってもらうことになります。彼らはスタミナもスピードもかなりありますので十数日ほどで到着するかと。」

-そういえば一度怒らせたのが数日間ぶっつけで追いかけられ続けたって言ってたっけ?おまけにすっごい速いから馬に乗ってもあまり意味がなかったとか泣き叫んでたね。あはは!-

あははって・・それ、トラウマレベルじゃね?

最終的にその追いかけられた人物は逃げ切れるはずもなく一度だけぶっ飛ばされただけで済んだらしい。

馬は、ギリギリで逃がしてたらしいので悪い奴ではないようだ。


・・その後の彼はというと、羊を見ると速攻でUターンして即逃亡するほどになってたりするらしい。


「では、そのように・・・あ、そういえば今回はリア様のおかげで言葉が分かりましたが、翻訳はどうやって?通じなければ難しいところがあると思うのですが・・一応、先ほど提示した条件は本人たちに許可はもらってるので通じずとも態度である程度は意思疎通は出来るとは思いますが。」

-大丈夫大丈夫。冒険者の子たちで何人か僕直属の特別部隊をクランとして作ってもらったんだけど、その中で面白い子たちが増えたから。そのこの内の1人が多芸でね。言葉が動物でも何でも分かるらしいんだよ。すごいよね、ピエロくん-

・・・・ん?

俺たちが乗ってた船にも似たようなピエロがいたよな?

動物の言葉が分かるかは知らんが、天井を走ったり火を吹いたりとかなり多芸だったような・・・偶然だよな。

・・てか、あの町出てから5日も経ってないんだが。


「て、冒険者からですか?」

-うん。治安維持に積極的で、人を見た目で判断せず、周囲の言葉に流されないようにするって日々頑張ってるし、僕好みの頑張り屋さんなんだよ。-

「イリス様が気に入ってるならば大丈夫ですね・・では、そのように致しますので、よろしくお願い致します。」

-良いよまかせて。むしろ、いい話をくれて政治的にも感謝だよ。父様と母様が寒がりだからね。-

「それなら良かったです。春の大陸には上陸しました。とりあえずクラリティ王国を目指して進んでますが、その前にペチュニア様が眠っている草花の生い茂る土地を目指しているところです場所の探索も含めてですが。」

-そっか。うちの国を目指してたら多分進路上に自然と見つかると思うよ。じゃあね。-

「情報感謝します。ではまた。」



よし、とりあえず話はついた。

てか、イリス様すごすぎ。

偶然とか言ってたけど、何か勘が働いてそうしたんじゃないかと思う。


・・イリス様って何かと勘・・と言うより第六感が鋭かったんだよな。

何かの拍子に突拍子もないことをし始めたかと思ったらそれがものすごく役立つような出来事がその後で起きたりと。


さすが天才王子


と言うより、さすがペチュニア様の旦那様って感じだよな。

ペチュニア様は自ら騒動に突っ込んでいったし、おまけに裏でこそこそされてるような類いを盛大に表に放り出すような感じだった。

で、イリス様はそういうのの対処・・というか、フォローとかをしてたし・・・それがイリス様が天才王子になった原因か。

元々すごかったけど、拍車に掛かって更にすごくなったのはそれか。



それはさておき。

リア様は・・とりあえず、手紙は書いてるな。

にしても、全く眠そうにならずに背もたれにしてるな・・・あ、ラナさんのおかげか。





で、リア様はと言うとなぜか羊たちに囲まれつつも普段通り翠さんに体を包み込まれた状態で寝てた。


「話は終わったのか?」

「えぇ。場所は偶然準備していた場所があるらしくそこを使って良いことになりました。」

「ふぅん。まぁいいか。とりあえず、手紙は書けたみたいだ。俺もチェックしたし問題はないと思う。」

「公式なモノではなく、あくまでも私情のようなものですから読んで理解が出来れば大丈夫ですよ。」

「そうか、なら良かった。」

手紙を受け取った。

表には、きちんとイリス様へと書いてあり、裏側にはフリージアと書かれている。

幼女が書いたとは思えないほど丁寧できれいな字だ。

イリス様たちが書くモノと比べるとまだまだという感じだが、それでもそこらの下手な大人よりはきれいに書けていると思う。

さすが、カルナさんとシャスティさんだな。


・・・・1つ気になることがあったから聞いてみた。

「あのカルナさん・・この手紙の裏側にあるイラスト・・・誰が書いたんですか?」

表面にはシンプルにイリス様へとしか書かれていないが、裏面には右下の端っこにフリージアとサインが書かれているのと同時にミニマムサイズでなぜかリア様とペチュニア様が書いてあった。


・・なぜか、2人揃ってかっこよく魔法をぶっ放している状態のポーズをとっているが。



「あぁ・・それは、シャスティだ。」

まさかのシャスティさんだった・・てか、上手いな!?

かわいくデフォルトされてるとはいえ、誰が見てもリア様とペチュニア様だと分かる。

「上手すぎないですか?」

「それに関しては、シャスティが器用という言い方も出来るが、身内・・しかも、崇拝してる相手限定で出来るワザだ。」

俺を書いたとしても、そこまで似てないだろうし、ただのカラスにしか見えないだろうなとカルナさんが言う。

・・あぁ、なんとなく分かった気がする。

大好きだからこそよく見てるし、特徴も知ってると言うことなんだろうな。


・・まぁ良いか。

モノクロ画だが、今のリア様がどんな感じかよく分かるし、かわいくそしてリアルに書けてるし、イリス様も微笑ましく思ってくれるだろう。




「それで、リア様はどっちの理由で眠りに?」

「もふりまくって疲れたのと合わせて、本人の体力切れと時間切れ。」

羊たちの眠りの魔力は全く関係なく、もふるのに忙しくて体力が切れ、時間的に寝る時間になっていたからそれのダブルパンチでへばったと。


リア様らしいな。


「夜の番は、羊たちがお礼にしてくれるらしいし布団代わりに寄りかかっても埋もれても好きにしてかまわないらしい。」

良いのだろうかと羊たちをチラッと見ると頷いた。

「ありがとうございます。手紙も手配も出来たので明日、その国と場所を教え、手紙を渡します。・・お休みなさいませ」

「メェー(ありがとうお休み)」

その時だけは、俺にもお礼とお休みという言葉はキチンと聞こえた気がした。




--フリージア--

目を覚ますと世界は真っ白で真上だけ青かった。

・・あ、羊さんたちに囲まれてたからなんですね。


「メェー(娘よ。起きたか)」

(コクリ)

羊さんたちがみんなおはようと言ってくれました。

私は頭を下げてご挨拶してから身支度や朝ご飯などを済ませました。






「・・これでよし。」

「メェー?(これを見せればいいのか?)」

「はい。後は、この先に進んでいくとクラリティ王国と呼ばれる大きな国があります。地図で言うとこのあたりで、今はこのあたりです。」

「メェー(ふむ、それなら10日と少しでたどり着くな。)」

地図が読めるらしいです。

羊さんすごいですね。


私が書いたお手紙は、小さな巾着袋に収納され、ひもを長ーくして首元に巻き付けました。



「メェー(本当に感謝する。)」

「いえ、こちらも何かと楽しかったですよ。それにまた会えますから」

「メェー(そうだな。礼だ、これを受け取れ)」

そう言って羊さんの体のもふもふの中からコロンと1つ何か出てきた。

「これは?」

「メェー(知らん)」

「知らんのかい!!」

カルナが思わずツッコミを入れる。

ちなみに、コロンと出てきたのはきれいなピンク色の透明なガラス玉のようなものでした。


「メェー(昔、誰かは知らんが人間がくれたものだ。われらはそういうものは知らんし、使う必要がないゆえに宝の持ち腐れだった。それだけだ)」

「そうですか。とりあえずありがとうございます。」

「メェー(では、またな。本当に感謝する)」

そう言って羊さんたちは爆走していきました。








「にしてもこれ・・何なんだ?」

「ただのガラス玉では・・・ないですよね。」

「あぁ、魔力がこもってるし、間違いなく魔道具だろうな。」

「にゃう?(単発式ではありませんか?)」

「その可能性が高いな。・・だとしても、何の魔法かがわからん。」

-それ、マジックストッカーじゃないの?-

「翠、知ってるのか?」

-それは、魔力だけを保存出来るモノだよ?-

「詳しく教えてくれるか?」

-良いよー。魔力の込め方は、普通に魔力を流すだけで良いよ。1人じゃなくても何人でも。-

「複数人の魔力が混ざっても構わないってことか?」

-そうだよ?で、最後に魔力を込めた人の魔力に全部変化するんだー。-

「複数人が込めた魔力が全部最後に込めた奴の魔力に変化するってことか?」

-そうそう。-

「それは具体的に何に使うんだ?」

-戦いの時のいざって時に魔力がないときにストックとして使ったり、魔道具を作るときにそれを使ったりするんだよ。一度込めた魔力だけじゃ足りないほどたくさん魔力を使うことがあるからねー魔道具作りって-

「てさ、かすめ取られて魔力込めたらそいつの物になるってことだろ?・・場合によっては一気に大ピンチじゃないか?」

-血を1滴つければその人で固定も出来るはずだよ?-

「なるほどな。さすが、長生きしてることはあるな」

-町とか人間相手とかそう言うのは知らないけど、モノや魔物とかその他諸々なら大抵のことは知ってるよ-

「これからも頼りにしてるよ。」

-リアのためだからまかせてー-



その後は、その玉にはみんなが暇があれば魔力を込めることが増え、私が一番込めつつ、私のポケットに収納してることが増えました。

当然私の血をつけることになりました。


・・なんとなくだけど、ストックとして使うんじゃなくて何か必要なときがあるような気がするんですよね。

あのおっきな種と一緒で何かある気がするんです。





そんなことはありましたが、私たちは良いリフレッシュが出来ましたねーくらいで終わり、先に進みます。

にしても、港町で言われたとおりホントに広いですね。

それと、何もかもがおっきいです。


ちなみに言うと、基本的にハディちゃんの背中に乗ったまま進んでますが、途中から急いでも急がなくてもどうでもいいですねーということになり、ハディちゃんの気分でスピードが変わることになりました。


なので、全力疾走によってお馬さんの全力の2倍の速度だったり、お馬さんの全力より微妙に遅いくらいだったりと結構バラバラ。

どっちも楽しいですよ?

ラウさんも微笑ましそうだし。


それと、ハディちゃんはのんびりするのも好きだけど、こうして全力で走るのも好きらしいのでとても活き活きしてます。

のんびりが好きでもどうしても野生の本能?によって動かないとうずうずするらしいです。


なので、時折魔物狩りにハディちゃんが自ら突っ込んで戦闘することも極々まれにあります。

基本的には私のガード&カウンターアタックですからね。



現在私のガード役としているのは、翠ちゃんとハディちゃんです。

翠ちゃんは【溶解】によってとかすことが出来るけど、体を硬くしてガードは出来ないので衝撃やそういうのは苦手なんです。

一方ハディちゃんは、体はとても頑丈だけど、翠ちゃんのような特殊なやり方は出来ません。

なので、魔法関連や、特殊なタイプ(状態異常や癖のある武器など)は、翠ちゃんが担当し、

ハディちゃんは物理特化という感じです。

ラナちゃんは、私の状態異常を無効化してくれてるので、戦闘員としてはカウントされません。

動いてもゆっくりですしね。


けど、気にしません。


ラナちゃん1人の戦闘としてはこう言ったらあれだけど、戦えません。

でも、私からあらゆる状態異常を守ってくれたり、危険なモノを感知したりしてくれるのでとても頼りになります。

気配を探ったりというのはシャスティが得意ですが、ラナちゃんの方が危機感知能力は圧倒的に上なんです。


だからこそ、ラナちゃんは常に私にくっついていることが重要だったりします。


邪魔にならないのか?

と思うでしょうけど、ご存じの通り私には左腕がありません。

そして、今身につけているローブは左腕の部分には隠しボタンのように一見目立たないけど切れ目があるんです。

そこにラナちゃんはすっぽりと収まる感じになるので、肩幅より若干大きいかな?位で済むのでほとんど邪魔になりません。

それに私自身、動き回って戦うわけではないですからね。


どこまでも遠距離攻撃特化で、防御専門ですから。


まぁ、どっちが得意?と聞かれると防御が得意なんですけどね。

確かに攻撃力はありますけど、やりやすい方はと考えると防御なんです。


魔法の属性とかが影響してるんだろうなとカルナやラウさんは言います。


例えると炎や雷などは、防御より攻撃が多く、土や水などは防御や補助が多い。

そんなモノらしいです。


ただ、多いと言うだけで片方しか出来ないと言うわけではないです。

その辺りは行使する人たちの頑張り次第なんだそうです。


私は、お母さんのように色んなことが出来るようになりたいですし、カルナたちの足手まといにならないように頑張るんです。







それから、10日を過ぎた頃、ラウさんの通信用魔道具によって羊さんたちは無事に到着し、仲良く過ごせていると報告があったそうです。


その内クラリティ王国には向かうのでまたモフモフさせて下さいね?

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