教会でお泊まり
春の大陸に到着した私たちは、お宿で一泊しました。
お宿で朝ご飯・・時間的にお昼ご飯を食べ終わった後、町で観光しながら旅支度のために必要な備品とか消耗品とか何かそういうのを買い揃えています。
「では、麦を10袋と米を20袋お願いします。」
「大量に買ってくれてありがとうな兄ちゃん!サービスしとくぜ。」
「ありがとうございます。」
「サービスついでに、この町で買える分は買っとけ?じゃないとこの大陸は広いから町と町の間がすっげぇ広いから途中でそういうのがなくなってやばかったってよくあるからな。」
「なるほど・・大陸が広いとそういうことがあるんですね。ご忠告感謝します。」
「気にすんなよ。ついでに、水を出せる魔道具は1個持ってたとしても数個は持っておいた方が良い。後は、野営道具と工具類、武器防具の整備品とかもな。」
「意外と色々と必要なんですね。」
「そのくらい注意して買いそろえとかないとマジで大変なんだよ。大陸が広いから人と遭遇するのも場合によってはなかったりするし、魔物もその分デカいのが多いし、群れも桁違いだ。・・念には念を入れた方が絶対に良い!!」
「では、そうさせてもらいますね。では、その辺りにある香辛料を10袋ずつと、追加で麦と米を10袋お願いします。」
「おう!毎度!」
「なかなか親切な方でしたね。」
「だが、大陸がデカいとそういうことになるんだな。ホント翠には感謝だな。」
-売らなかったアクアゲルの魔石も全部もらえたからもっと入るよー-
「頼りにしてるよ。」
「では、食料関係は最低限のモノは揃ったので、調理器具から工具関係、魔道具系も一通り買いそろえておきましょうか。」
「そうだな。だが、ここが港町って言うこともあって余所よりも安いから助かるな。」
「確かにそうですね。下手すれば2割引か3割引レベルですからね。」
「だな。と、次の店はここじゃないか?」
「あぁ、器具類ですね。」
「いらっしゃい。」
「旅支度のために工具類を買いたいのですが。」
「なら、こっちのセットの方が楽だよ。」
「セットですか?」
「あぁ、あんちゃんたちみたいなやつ専用で揃えてるんだよ。武器防具の整備品関連と、調理器具、工具が一通り入ってる。ランクがいくつかあるがどうする?」
「大まかにお伺いしても?」
「安いが買い換えが早いのが銀貨3枚、どれに関しても平均的なのが銀貨7枚、使い方を覚えたり整備品の扱いに慣れるまではちょいと苦戦するが上手く使えば10年やそこらは持つのが銀貨14枚だな。」
「では、銀貨14枚のを頂きます。後、扱い方のようなモノを頂ければ」
「なら銅貨10枚追加だな。」
「買います。」
「毎度。あいよ」
「ありがとうございます。」
「魔道具系が欲しいならここから向こうに5件隣のとこが良いぞ。腕”は”確かだ。」
「・・ありがとうございます。」
「達者でな」
「なぁんか・・気になる言い方だったな・・。」
「おそらく腕は良くとも・・・と言うことでは?」
「あぁ、人を選ぶタイプか。まぁ、なんとかなるだろう。その時はその時だ・・で、ここだな。」
「そうですね。・・・他のところより小さい建物ですね。」
「外装は気にしないんだろう・・とりあえず行くか。」
「えぇ・・失礼致します。」
「ん~?なんじゃい。」
「工具類を購入した際に、ここがおすすめと伺いました。本日は、旅支度のために魔道具を買いたいと思っているのですが。」
「ふぅん・・リーダーは誰だい?」
「こちらです。」
そう言ってラウさんは私を抱っこしておばさん?お姉さん?(30~40歳くらい?)の前に差し出す。
にしても、きれいな人なのに不思議なしゃべり方をしますね。
まぁ、どうでもいいですけど。
で、じーっと見られてます。
私もじーっと見つめ返してます。
そんな状況でラウさんたちはどうしたモノかと困惑中。
しばらくすると
「くく・・くっくっく・・・」
(?)
「あ~はっはっははははははははは!!!!!」
いきなり爆笑し始めました。
・・頭大丈夫ですか?
「くくく・・いやぁ、すまんな。これほど内心が見えず、波紋が全く無い水面のように静かなのは初めてだ。おまけにあんな状況でもぴくとも反応せん。くっくっく。」
(フルフル)
ちなみに私、お姉さんが爆笑し始めた辺りから抱っこされて高い高いされてます。
お姉さんはその状態でくるくる回ってます。
「初めは、幼女がリーダーで何考えてんだこのあんちゃんはと思ったが、くくく!納得した。確かに嬢ちゃんがリーダーじゃな。よし!好きなのを持って行け!原価で売ってやろう!」
「あの・・よろしいのですか?お金ならありますが・・」
「気にすんな。元々この店は趣味でやっている。売り上げなんぞ赤字じゃ無けりゃ良いのさ。本業は魔道具の修理だ。」
「ではお言葉に甘えて・・それで、旅支度に必要なモノを一通り買う予定だったのですが何が必要でしょうか?」
「そうじゃな。まず水が出るのと、消音消臭用、ランタン、着火用、簡易結界用・・こんなところじゃな。他の道具類は、魔道具じゃないがまとめて売ってやろう。で、テント、ロープ、折りたたみテーブル、折りたたみ椅子、レジャーシート・・んなもんじゃな。」
「簡易結界とは?」
「あぁ、虫刺されされない程度のモノさ。後は、周囲から気づかれにくくする程度の気配よけ」
「なるほど。」
「ついでに、浄化の魔道具も渡しておこう」
「浄化ですか?」
「あぁ、だがまぁ微妙に効果がずれてるんじゃが。」
「それはどういう?」
「確かに浄化の効果はある。じゃが、なぜかそれを発動している間、その空間内は自己治癒や自己回復が高まるんじゃよ。」
「範囲はどれほど?」
「せいぜいこのテントの中くらいじゃ。」
「つまりは、テント内でそれを使った場合ある程度のモノは浄化し清められ、その空間で休むと通常よりも回復が早まると?」
「ないよりマシ程度者がな。」
「それ、ランク上がってません?」
「そうなんじゃが、効果範囲としては世間的にはかなり狭く、効果も長時間いればそれなりじゃが、短時間じゃと弱すぎるんじゃよ。」
聞くと、通常であれば効果範囲は半径3メートルほどの広さで、効果も5分いれば全体の3割は魔法の効果が発動されるらしいです。
けどこれは、効果範囲はテント内・・つまりは2メートルを軽くきるくらいで、効果も5分ほどでは1割ちょっとらしいです。
で、それと同じくらいの威力で体力や魔力の回復速度を向上させてるらしいです。
「なるほど・・つまりは、効果範囲が狭く、威力も弱いと文句を言われると?」
「そういうことじゃ。」
「それも合わせて購入させて頂けませんか?」
「良いのか?」
「効果が何もないテントよりあった方がずっと良いですし、休んでいる間なんですから効果が弱かろうと何だろうと関係ありませんよ。全ては、リア様が健やかに穏やかに過ごして頂くためですから。」
「そうか・・ありがとう。」
「いえ。で、おいくらほど?」
「ふむ・・思った以上に大量じゃな・・・銀貨8枚じゃな。」
「安すぎませんか?それで本当に原価ですか?」
「計算は合っておるよ。」
「では、気持ちだけでもお受け取り下さい。」
ラウさんは銀貨を10枚渡した。
「・・ありがとう。受け取ろう。」
気持ちを汲んでくれたらしく、お姉さんは受け取ってくれた。
ちなみに私、ずっとお姉さんに抱っこされたまま撫で回されてます。
「にしても、大量に買ったな。そんなに道具がなかったのか?」
「いえ。ある程度は所持してましたが、この大陸に来た際、香辛料関係を購入する際に店主から持っていても買った方が良いと勧められたので。」
「なるほどなぁ。どんな状況でも万が一を考えておかないと対処しきれないからなぁ。それに、同じモノでもこの町で買った方が道具も質が良いだろうしな。何しろこの世界の4大大陸の内の1つである春の大陸の港町じゃからな。材料もその分良いモノが揃う。」
「そういうことでしたか。・・ありがとうございました。」
「おう。良い旅をな!」
「意外と早く揃いましたね。」
「あの道具屋の姉ちゃんのおかげで思った以上に安く済んだ。」
「そうですね。食料関係もこのくらいですよね?」
「そうだな。他にもいくつかもらってたりするしな」
「あはは・・」
実はお船を出るときに船員さんたちからすっごい大量に干物関係を大量にもらったんです。
お魚から軟体動物に海藻などを色々です。
どのタイミングで仕入れてきたのだろうかと思ってたところ、私が他の人たちとさよならの挨拶で時間をとられてる間に、手が空いている船員さんたちが手分けしてこの町であっちこっちで買いまくってたかららしいです。
「あ、カルナさん。」
「どうした?」
「あちらを見て下さい。」
「アッチ?・・お、何かすごいな。行ってみるか」
「そうですね。」
向かった先は、薬草専門店と書いてある3階建ての建物・・おっきいです。
中に入ると薬草でいっぱいです。
建物の中は緑の匂いで満ちていて良い匂いです。
「なるほどな。1階は生の薬草、2階は乾燥させたもの、3階はその種が売られているのか。」
「ここまでの規模はすごいですね。」
色々見て回った結果、魔力と体力回復を早めるタイプが数種類と、痺れ毒や、眠り毒などの状態異常関連のが数十種類、他には、怪我や病気ごとに数十種類ずつ
それらが数種類のランクごとに更にあると言う感じです。
ランクと言っても、短期間で効果のあるモノから持続性を持たせるモノ
飲むタイプ、塗るタイプ
粉、液体、薬草そのまま
と、なってる感じです。
その辺りはよく分かりませんが、シャスティの指示によりすごく色んなのをたくさん買ってました。
お店の人もびっくりしてました。
あまりにも大量に色んな種類を買っていくので。
銀貨が30枚は飛びましたよ?
まぁ、手持ちになかった分から少なくなっていた分をある内に揃えておきたかったらしいです。
それでも、道中で採取して揃える予定らしいです。
と言っても、薬草1束で銅貨数枚から十数枚にとどまる程度だったんですけどね。
とはいえ、全部まとめて買ったわけではなく、どれだとどれが良いってシャスティが確認しつつ、質が良いのを選びまくってる状態でしたが。
それでも、このお値段・・どのくらい大量に買ったのかは分かったでしょう?
多いに越したことはないらしいですよ?
「とりあえず、買い物はこのくらいだな。」
「そうですね。教会へお祈りしに行きましょう。」
「だな。」
そしてやってきました教会。
お祈りはアッチの大陸の港町以来ですね。
やはり港町だからなのでしょうか。
灯台の形をベースにした教会っていうちょっと不思議な形です。
と言うよりも、塔の形をしたおっきな教会という感じでしょうか。
作りはシンプルですが全体を白で彩っている。
シンプルで飾りっ気も所々にあるステンドグラス程度で、壁に彫刻があるわけでもない。
すごくシンプルなのに上品な感じがする。
これはこれで好きだなぁ。
「お邪魔します。」
「いらっしゃいま・・・・・・・・・」
穏やかにほほえみながら迎えてくれたシスターさんでしたが、私と目が合った瞬間固まりました。
しかも笑顔のままで、動きもそのまま凍っているみたいです。
近づいてつついてみましたが生きてますね。
けど、動きませんね。
「あの・・大丈夫ですか?・・・・カルナさん」
「あぁ、駄目だな。しばらく放置するか・・だとしてもどうするか。」
「とりあえず、もう1回同じ台詞を言ってみますね。」
「だな」
-テイクツー-
「お邪魔します。」
「あら?既に迎えが来ていると思ったのですが、申し訳ありません。ようこそおいで下さいま・・・・・・・ま、まさか・・・」
おばあさんなシスターさんがやってきました。
今度は、フリーズしませんでしたがすっごい震えながら私の元へやってきました。
で、近くで数秒ほどにらめっこした後、私に向かって膝をついてお祈りをし始める。
「あぁ・・ありがたやありがたや。」
んー
教会的な台詞を考えると微妙に違うような・・
何と言いますか、この運命を神に感謝しますーとかそんな感じ?
とりあえず、落ち着いて欲しいと願って頭を撫でてみる。
嫌なら嫌と反応してくれるでしょう。
ラウさんも頷いてますし。
すると、
「ありがたき幸せでございます神子様。」
10分後ようやくナムナムに満足したおばあさんが復活しました。
「失礼致しました。神子様遠渡はるばるようこそおいで下さいました。」
(コクリ)
「ちなみに、あちらで固まっているのは、もしや神子様を拝見した直後からでしょうか?」
(コクリ)
「はぁ・・申し訳ありません。しっかりした子なのですが、少々気が弱いところがありまして、精神的な衝撃が大きいとあぁなってしまうのです。どうぞおいで下さい。お祈りですよね?」
(コクリ)
「あの・・あの方は放置していてもよろしいのですか?」
「構いませんよ。その内元に戻るので。」
割とよくあるようです。
「こちらです。どうぞごゆっくり近くで控えておりますので遠慮なくお声がけ下さい。」
(コクリ)
そして、案内された場所に入り像へ向かってナムナム。
-はぁ//相変わらずかわいいわぁ//-
-あなたも飽きませんね・・気持ちは分かりますが。-
-飽きるなんてあり得ないわよ!!-
-あぁ・・あなたの場合はそうですね。そういえば、私が唯一弟子にした子の子孫があなたの墓守になってるようですね-
-そういえばそうだったわね。クラリティ王国にしばらくやっかいになってる頃にちょいちょいお世話になってた家族が確かそうだったわ。-
-にしても、私もあなたも他人事ではありませんが、全く自重しませんでしたね。-
-気持ちはすっごい分かるわ。-
-そうですね。それで、精神的な苦痛と社会的な死を町1つ全てに余すことなく発揮して、全員を追い出して町の敷地内全てを花畑、薬草畑にしてしまうとは・・さすがというか何と言いますか・・やり返しも思いつかないほど徹底的でしたね。-
-おまけに私のお墓がメインみたいな感じになってるし。まぁ・・・お墓をおいそれと見せないようにしているのは感謝するけど・・場所の名前もしれっと”流星の里”になってるし。もろ私じゃん!!まぁ・・シンプルにしてくれてるのはありがたいし、かなりセキュリティも高いから良いけど。・・アレで、ど派手にされたらたまったものじゃないわ//-
-あぁ・・確かに-
-でしょう?まぁ、墓守をしてくれてるのはありがたいし、彼らもなんだかんだで活き活きしてるからスルーしておくわ-
-そうですね。好きにさせておきましょう。治安維持もがっつりしてるようですし-
-全てはリアちゃんのため!-
-ぶれませんね-
-当然!!-
お母さんも神様も相変わらず楽しそうですね。
それにしても、流星の里・・お母さんのお墓があるところですか。
・・お船で聞いた占いのおばあさんが言ってたお花とかがいっぱいのおっきな壁に囲まれたところ・・・すごくぴったりですね。
聞いてた通りの感じです。
で、すごい今更ですけどあのお船でもらったおっきな種ですが、さりげなく私の魔力を吸い込んでるんですよね。
それに、実戦では問題ないですけど練習の時はがっつり周囲に漏れた私の魔力とか吸い込みまくってます。
まぁ、特に支障は無いのでスルーしてますけど。
むしろ最近は、暇があれば魔力を送り込んでますけど。
何と言いますか、どこまで吸い込むのかなー?という興味本位で。
悪い感じはしませんし、むしろ心地の良い感じがするのでカルナたちには内緒です。
と言っても全部を説明してないというただそれだけの話しです。
ふぅと一息ついて周囲を見ると私を中心に周りがすっごいきれいになってました。
・・・何故?
あ
私の加護のとこに増えてた浄化ですね。
祈ったら周りが浄化されるって描いてありました。
「終わったか?」
(コクリ)
「また、妙なことになってるなぁ・・」
カルナがため息ついてるけど、スルーします。
で、とりあえずさっきのお母さんのお話のことを伝えてみました。
「確かに船で聞いた占い師のばあちゃんが言ってたのと同じだな。」
「流星の里ですか・・通りすがりに調べながら探してみましょう。リア様のことですからある程度近くにあれば呼び寄せられるのではないかと」
「あぁ、アッチの隠里みたいな感じのか」
「えぇ。リア様には何かを感じ取る何かがあるようですし。」
「確かにな。よく分からんが第六感なのか何なのか分からんが・・あながちペチュニアさんの予知っぽい力が無意識に発動されてたりしてな。」
「あぁ・・あり得そうですね。・・本人に聞いても首をかしげるだけでしょうけど」
「確かに・・。」
とりあえず、お祈り終わりましたとその部屋を出た近くで控えていたおばあさんに伝えると
「本日は、こちらで休んで行かれてはいかがですか?時間はすっかり夕方を過ぎておりますよ。」
言われてお外を見るときれいな茜色からまっ暗になりかけてました。
あや?
「・・ホントだ。」
「思った以上に時間が経っていましたね。」
「ですので、これからの時間に出発せずともこちらにお泊まり頂ければ宿代も掛かりませんので」
「では、お願いしても?」
「えぇ、是非。対したもてなしは出来ませんが・・」
「いえ、むしろリア様に普段の食事と普段の生活・・普段と変わらない皆さんにとってのごく普通の生活を体験させてあげて下さい。」
「神子様もよろしいのですか?」
(コクリ)
わざわざもてなす必要はありませんよ?
お邪魔してるのは私たちですから。
「かしこまりました。食事の準備が出来るまでに部屋へご案内致しますね。」
部屋は、質素と言いますかシンプルな感じでした。
最終的に2部屋を借りて、私とラウさんで使うことになりました。
ベッド以外は何もないのでハディちゃんたちが一緒でも問題ないです。
食事は、パンとスープ、サラダととても控え目な感じでした。
・・おかわりはしませんでしたよ?
と言っても用意されてる量はラウさんたちに渡されてる分の7割くらいの量ですが。
食事している間は、おしゃべりはしない。
これは、そう言うルールだからだそうです。
と言っても目を合わせてほほえんだりと言葉を交わさずとも意思疎通をしてるようなのでそう言う雰囲気を楽しむモノなんだなと思いました。
体をきれいにしてから、眠る前に屋上へ行く。
ここは、塔みたいになってるので屋上があるんですよ。
「屋上なので当たり前ですが、星空を近くで感じますね。」
「そうだな。」
天井のない世界で地上より高いところで星空を眺める。
すごくきれいだなぁ。
「皆さんも星空を眺めに?」
おじいさんの声がしてそっちへ振り向くと神父さんでした。
「えぇ。リア様の毎日の日課なんです。付き合っている内に俺も日課になってます。」
「それは良いことですね。昔から月には浄化の力があると言われていますし、心を癒すのはこういう自然の得意分野ですから。」
なるほど。
お月様は浄化の魔法が使えるんですね。
確かに星空を眺めてたりお月様を眺めているときは心が安らいでましたね。
無意識のうちにその力を頼ってたってことでしょうか?
あぁ。
今日まで生きて来れたのはカルナやシャスティ以外にもお月様も星空さんのおかげだったんですね。
ありがとうございます。
これからも見守っていて下さい。
「神父様も日課ですか?」
「えぇ。私の職業柄人との付き合いが非常に多いですし、人との付き合いにはどうしても黒い感情が芽生えてしまうモノです。そんな感情を浄化するためにこうして毎日眺めているんです。・・私がそう思っているだけで本当に月に浄化の力があるかは実証されていないんですけどね。」
「俺の知り合いの方は、思いは力になる。思いを強く、その思いのために全力で頑張ることで未来は明るくなるんだと言っていました。その方は、それを言霊と言っていました。」
「素晴らしいですね。そうですね、まずは信じましょう。それから、その思いのために努力を惜しまない。・・ありがとうございます」
「いえ、教わったことを伝えただけですので。」
「ですが、あなたはそれを答えないという選択肢もありました。それでも話してくれた。その行動が善意の1つで、その善意によって少なくとも救われた思いはあるんですよ。」
「そう言うモノでしょうか?」
「そう言うモノですよ。その言葉を贈った方もそう思われてますよ。」
「そうですね・・ありがとうございます」
ラウさんは胸に手を当てて目を閉じた。
しばらくすると穏やかに笑いながらお礼を告げる。
「そういえば、食事の時間が合わずにまだ自己紹介がまだでしたね。私はここで神父を務めております。お初にお目に掛かり光栄です、神子様。」
(コクリ)
相変わらず教会の皆さんは丁寧な挨拶ですね。
「対したもてなしは出来ませんが、ゆっくりと休んで下さい。・・そうだ。本当はあまり良いとは言えないのですが、神子様。」
(?)
「本日は、あの祈りを捧げていたあの部屋でお休みしてはいかがですか?」
良いのでしょうか?
あの部屋を1晩と言っても私物化してしまうのは。
「神子様がよろしければですが。」
「ちなみに、理由を伺っても?」
「なんとなくですが、神子様が本日この教会で1晩を過ごすことになったにはなにか縁があると思ったのです。神子様は神様に愛されし者、だからこそあの部屋で休むことに意味がある・・・そう思うのです。」
神父さんは嘘は言っていない。
それに、私もあの部屋はきれいで好きなので
(コクリ)
「かしこまりました。至急、そちらに布団などの用意を致しますね。あまり遅くなっては体が冷えてしまうので私は失礼しますね。」
「・・にしても、この展開は予想外だったな。」
「カタクリの町で聞いてたとおり、リア様がこの教会で休むことになるのは協会側にとってはうれしいことだと言っていた理由が分かる気がします。・・あまりやっかいになると宿代をけちっているようで申し訳ないと思うので普段は宿を使ってますが。」
「色んなところで色んな経験をさせてやりたいからな。教会に泊るのも良いが、毎回それだとなぁ・・。だから、あちこちの宿に泊ることに意味がある。宿によっては値段も変わるし、サービスも部屋も変わる。そう言う変化も知っていて欲しいからな。」
「さすがですねカルナさんは。」
「俺にとっては娘・・・いや、妹みたいなものだからな。」
「にゃう!(私にとっても、愛しの妹のようなものです)」
「産まれる前から知っていて、お世話をしていたのですからそうもなりますよね。俺もカルナさんの立場だったらそうなっていると思います。カルナさんたちほどしっかりと教育出来たかはあまり自身がありませんが」
「ラウにはいつも世話になってるさ。」
「カルナさん・・」
「俺たちは教えることは出来る。だが、人としての常識や人同士のあれこれはどうしても無理がある。そう言う部分は俺たちでは出来ない、ラウじゃなきゃできないことだ。それに、リアがラウに懐いてるんだ。それだけで慕われてるてことだろ?」
「そうですね・・ありがとうございます」
「俺等も同じように教わってる状態だからな。お互い様だ」
「そうですね。それにしても、神父様がおっしゃっていたことはどういうことなんでしょうか?」
「勘っぽい言い方だったが、リアとしては特に嘘もなく善意だったからこうして受け入れてるわけだが・・リア、どうなんだ?」
{お祈りをすると神様とお母さんの話が聞こえるので、寝てると似たようなことかそれ以上の何かが起る・・・とかでしょうか?}
「あぁ・・」
「言われて見ればそれで納得しますね。・・すごい今更ですが」
「どうしたラウ?」
「リア様の容姿が非常に目立っているのは分かるのですが、それ以上にリア様が持つ賢者の杖・・そっちはもっと目立ちますよね。」
「確かにな・・世間的にはそっくりなモノだとか言ってるが、人によっては無理矢理にでも手に入れようとしてるのもいる・・・まぁ、リアの体質の餌食になる前に教会のメンツとかそれに属する奴ら・・後、リアのファンクラブもどき共が対応してくれてるからどうにかなってるが。」
「リア様の体質の餌食だと相手・・・生きてます?」
「そいつら次第だろうな。黒ければその分やっちまうだろうし、大して黒くなければボコボコで終わるんじゃないか?」
「そうですよね・・・・て、ファンクラブがあるんですか?」
「あぁ、世間的には影の親衛隊とか言われてるが。」
「何ですかそれ・・」
「リアは、身内贔屓抜きにしてもかわいいだろ?」
「えぇ、それはもちろん」
「で、【変態紳士ホイホイ】って称号があるのも知ってるだろう?」
「えぇ。」
「おまけに、あちこちで密か?に活躍して仲良くなったメンツもいるだろう?」
「いますね。今回のアクアゲルの件とか。」
「で、そいつらが冒険者稼業そっちのけで独自のコミュニティを作り上げたんだ。」
「それが、影の親衛隊・・」
「影からリアを守ることを信条にあちこちで治安維持活動とかリアを狙うメンツをどうにかしたりと動いてるらしい。おまけに、全員が各地でばらけてるからそいつらがあっちこっちで人を揃えてパーティもクランも組まずにやってるらしい。」
「冒険者稼業そっちのけって・・大丈夫なんですか?」
「と言っても、募金とかで金を集めたりというのはないし、依頼を受ける頻度が下がった程度らしいから問題ないようだ。それに、治安維持活動が結構好評らしくあっちこっちの店とか宿でサービスしてもらえる程度に仲は良好。結果として収入が減ってもどうにかなってるらしい。」
「・・・・で、どうしてそんなに詳しくカルナさんは知ってるんですか?」
「ん?そんなの決まってるだろ?な、シャスティ」
「にゃう(普段から周囲を警戒してるのでついでに分かっただけです)」
「俺等は、元々リア以外の人間を全員警戒してるだろ?だから、そのついでにそういうのも分かるんだよ。」
「そういうことでしたか・・俺もまだまだだなぁ。」
「その辺りに関しては、獣としての勘とかもあるし、ほどほどで良いぞ?ラウは、俺等に出来ない方面で頑張ってくれ。適材適所だ」
「はい。リア様、そろそろ休みましょう。買い物なども一通り済んでいるのでお昼頃まで寝ていても食事を済ませた後で出発で十分問題ないですから。」
そう言われて私は眠りにつきました。
寝ていると、夢の中のはずなのにお母さんと神様のやりとりが見えて聞こえた気がした。