ニーズヘッグ戦
おまけ:こいのぼり
フリージア「・・おいしそうに泳いでる?」
カルナ「・・・・・おもしろそうな?」
ラウ「その鯉のぼりは焼き魚なのでしょうか・・」
フリージア「おいしそうな滝登り?」
カルナ「・・・・鯉のぼりに何をさせたいんだ・・リアは・・・」
ラウ「あ、あはは・・・屋根より高価なのでしょうか?」
カルナ「ラウ・・お前もぼけるな・・。ツッコミが間に合わん・・はぁ・・」
私の加護に精霊樹の巫女が追加されました。
その効果の1つとして精霊樹に祈りを捧げると祈っている精霊樹が存在する場所にある木々を経由して周囲の状況が分かるようになるらしいです。
その効果を早速試すために私は精霊樹へ祈りを捧げる。
それ以外が何も出来なくなるけど、確かにすごい。
森の中全体がわかる。
なんとなくこんな感じっていうイメージが流れ込んでくる感じですね。
どうやら、レッサーニーズヘッグは片っ端から魔物に襲い掛かって食べてるようです。
その魔物を食べて自身の強化をしてるみたい。
・・・けど
あまりよろしくないことが分かっちゃった気がします。
ふぅ・・
祈るのを止めて一息入れる。
はぁ・・どうしてでしょう?
お腹が空きますね。
そういえば、私が持ってる考える関係の技のあれこれがギルドカードに出るようになった後も前よりお腹が空く頻度が上がったような気がします。
とぼんやりしてると
「リア様、どうぞ」
ラウさんがお野菜のスティックをカップに入れてくれた。
ありがたく頂きます。
私はどれっしんぐ?というのをかけない方が好きです。
そのままですそのまま。
お塩も何も必要ありません。
おいしいです。
で、もぐもぐしてると
「リア、何か分かったか?」
「にゃう?(それと問題もあったような表情でしたが?)」
カルナとシャスティがそう言った。
{あのドラゴンは今、魔物たちをたくさん食べながらここに向かってます。食べるごとに強くなってるみたいです。それと・・・}
「それと?」
{あのドラゴンの力である相手から魔力や体力を奪う力が強くなってるみたいです・・それも、強くなるのに合わせてどんどん・・。}
「それはつまり、攻撃することで奪っていたのが触れるだけで奪うか、いっそのこと近くにいるだけで奪うほどになってる・・もしくは、1回で奪う量が増えるという感じか?」
{その両方が増えてるみたいです。・・・なんとなくですが、力を蓄える器の蓋が壊れて普通よりもいっぱい力が入っていけるような・・そんなイメージを感じるのですが・・・すみません・・言葉が変です。}
「リア様、言いたいことは分かりますよ。つまりは力を吸収して蓄える量や度合いが普通よりもあり得ない量を自身の器に受け入れている・・まるで容量の制限が壊れたかのように・・と言うことでしょう?」
(コクリ)
「おそらく、ゾンビとなったことで生きるために使われていた分の魔力も全て能力強化に回ったことと、身体面もたがが外れた状態なんだろうな・・生きていると無意識のうちに力を制御するモノだからね。」
そう言うモノですか?
言いたいことは分かりますが・・
「リア、生きているうちに力を100%出すと体が耐えきれなくなって壊れてしまうんだ。食器も大きくて重たいモノをのせると壊れるだろう?耐えられる量があるんだ。」
なるほど。
さすがカルナですね。
わかりやすいです。
そうですよね。
お皿におっきな石を置いたらお皿が壊れちゃうもんね。
カルナが言うには、そのお皿をおっきくしたり強くすることで発揮する力を大きくしてるのがいわゆる特訓のことらしいです。
私はいつもそんなことをしてたんだなと思いました。
「フリージアが言ったことをまとめると早い内に仕留めた方が良いね・・けど、ここから離れない方が良い」
「リフ様・・どうしてですか?」
「あいつの目的はこの精霊樹だ。ここを護りながらあいつを倒すとなると守るべきモノから離れない方が良い・・それと、精霊樹から離れるとあいつの瘴気にあてらえてしまう。」
「瘴気・・とは?」
「どうやら、ゾンビになったのに合わせて瘴気を纏っているようなんだ・・呪いが強化された状態だね・・つまりは、相手の魔力や体力を奪う力が倍以上に強くなってると言うことだよ。だが」
「精霊樹の近くだとその効果がある程度は抑えられると?」
「それと、君たちに浄化のちからが一時的に付与されるからね。」
「浄化ですか?」
「大雑把に言うと、相手の呪いに対抗するための力だよ。普通よりも攻撃の威力が上がるとでも思ってくれれば良いさ。昔から言うだろう?悪に対抗するのは善だってね。」
「なるほど・・・では、どうするのですか?このままでは、どうしようもないくらい強化した状態でここに来ますよ?早いに越したことがないのは確か何ですから。」
「おそらくそれは、大丈夫だと思うよ。・・良いのか悪いのかは別として」
「どういうことですか?」
「フリージアがこの精霊樹の巫女になっただろう?それと、フリージアがこの精霊樹に力を注いでくれたおかげで結界も強化された。通常であれば認識しづらくなる類いが強化され、純粋に結界の強度も広さも上がった。だが、あいつはターゲットの力が上がったとしか思ってないんだよ・・・言い方を変えれば」
「餌となる相手がよりおいしくなった・・という感じですか?」
「的を射ているよ・・・だからあいつはまっすぐここを目指している。ここにたどり着くのもこの森の広さからすると遅くとも半日・・・だろうね。」
「戦いは、俺たちのチームでやります。だからリア、今はゆっくり休め。力を蓄えておくんだ。・・・おそらく今回は近接戦闘の類いはあいつを逆に強くさせるからリアだよりになる可能性が高い・・俺たちはあいつを翻弄させる程度だ・・・情けないがな。」
カルナがそう言うとラウさんたちもみんな申し訳なさそうにしてる。
{そんなことありませんよ}
「リア?」
{いつも守ってくれてるんですから・・今回くらいは私に守らせて下さい。私は精霊樹の巫女なんですよ。それに、ご先祖様である神様が守ったこの地を子孫であり正統後継者の私が守るのは運命です。}
「あぁ。かっこよく倒してぱーっと盛り上がろうぜ。」
(コクリ)
頑張ろう、
えいえいおー
とみんなで気合いを入れつつ私はお腹一杯食べた後、一眠りすることにしました。
この戦いは里の中でもあっという間に広がった。
当然と言えば当然。
なにせ、この里の運命を決める戦いと言ってもおかしくはないのですから。
ゴブリンさんたちは、予想通り申し訳なさそうにしてました。
ここに襲い掛かってくる原因だって思ってるようです。
けど、そうじゃないと思います。
いつかあのドラゴンとは戦うことになっていた可能性が高いんですから。
それが少しだけ早まっただけ。
私はそう思いました。
だから、そう伝えたらすごく感動してました。
頑張ろう。
そして、舞台は整えられた。
「お、お久しぶりです・・・む・・・むす・・・け、けけ・・賢者様。」
・・かみっかみの狼さんです。
あまりにもおどおどしてるのでラウさんたちも苦笑い。
ラウさんは結構な頻度で模擬戦を狼さんとしてたらしいのでそれなりに仲が良いらしいですが、普通にお話し出来てたらしいですが・・・駄目ですね。
軽くパニックになってますね。
とりあえずなでなでしながら
-普通に呼んで下さい。敬語も必要ありません。私は年下なのですから-
「よ、よろしいので・・すか?」
・・まだ固いですね。
-じゃあ命令です。敬語も様付けもなし。最初に出会った頃と同じように呼んで、話して下さい。-
「そういうことなら・・・今回はよろしく頼む。結界の維持に力を注ぐことに専念することになる為、戦いには参加は出来ないだろうが・・よろしく頼む。」
(コクリ)
ようやく元に戻りましたね。
私はずっと考えていた。
私の魔法は私自身を守ることは出来るけれど、カルナたちを守ることは出来ない。
触手さんを出してお手伝いして守ることは出来るけどそれは守ると言うよりも共闘しているだけだ。
それに、今の私は遠距離攻撃ではなく、中距離攻撃程度しか出来ない。
触手さんの射程範囲も限られているのだから。
そして、目の前にそいつは現れた。
けれど、精霊樹さんを経由してみた時よりもずっと体は大きく、そしてどこか邪悪な感じになっていた。
「嘘だろ・・・進化してやがる・・」
カルナがそう言った。
-リア。あいつ、レッサーニーズヘッグじゃなくて、ニーズヘッグヴァンパイアだよ-
ニーズヘッグヴァンパイア
レッサーニーズヘッグがゾンビ化し、他者から生命力と魔力を奪うことに特化して、進化した存在。
ゾンビ化したことによってあらゆる能力やステータスが上がっており、近づくだけで生命力と魔力を奪う。
奪うのと同時に、相手に痺れ毒を与え、感覚を鈍らせてしまう。
獲得部位:魔石、魔核、鱗、牙、爪、骨、魔宝石(呪、毒、生命)
大量に魔物を食べたりして進化してしまったようです。
あの短期間で?
やっぱり・・ぶっつけ本番になるけど、アレを使う時が来ましたね。
リフさんと精霊樹さんに相談してやっと完成したんです。
え?
精霊樹さんとどうやってお話ししたのかって?
お祈りをするときに周囲のことを知りたいとお願いしたらそうなったので、試しにお話がしたいなって思ったらなんとなく精霊樹さんの心が伝わってきたんです。
これを発動させるには私の強い想いと信念が統一されないと駄目なんです。
信念は大丈夫でしたが、大変だったのは想い・・つまりは感情です。
そして、リフさんたちと色々お話しした結果、私が私自身を精神的に追い込むことでどうにかなりました。
いわゆる激情状態?の状態にして、【心意加増】を使うことになりました。
目の前にいるあいつは、私の家族を殺そうとしている。
私の大事な人たちを殺そうとしている。
壊そうとしている。
自分の私利私欲のために・・ただそれだけのために壊そうとしている。
良いのか?
何も出来ないままで壊される様を眺めていて。
良くない
良いわけがない
ならばどうする
守る
家族を
守る
私の大事な人たちを
私をたくさん愛してくれた人たちを
私を慕ってくれる人たちを
守るためには力が必要。
今家族を守るためにはみんなが力を合わせる必要がある
そうなるとあいつに生命力も魔力も奪われてしまう。
そうならないようにするには私の触手で守れば良い
けれど出来るのは私の影だけ
ならばどうする
カルナが言った
家族というのは心がつながった存在だと。
ならば家族の影を私の影にしてしまえば良い
守るだけで良いのか?
良くない
だが、それには時間が掛かる。
まず必要なのは家族を守るための力だ。
私の心は敵に対する怒りと、家族を守りたいという想いに埋め尽くされる。
杖さんを経由して魔力を影に流し込む。
どんどんどんどん流し込む。
私の感情も高ぶっていることもあり、影が沸騰したお湯のようにボコボコと波打ち、泡立つ。
足りない
もっと強く
もっと濃く
どんどん魔力を流し込む。
ボコボコが激しくなり続ける。
それでもどんどん流し込んでいると急に影は私の中に全て吸い込まれ、私の足下の影は他の人と同じ濃さになった。
影に流し込んだ力が私の中で暴れ回る。
自分の魔力を戻したわけではない。
私の感情で強化された魔力と、それに混ざり合っていた影・・つまりは私の魔法自体が私の中に流れ込んでいる。
それを私自身に浸透させながら、体中を巡らせる。
瞳を閉じる。
杖さんをぎゅっと握る。
ふわりと杖さんを経由して精霊樹さんの温かい気持ちが流れ込んでくる。
すると私の中に流れ込んでいた力がきれいに馴染んだ直後、目を開く。
私の瞳には円上の幾何学模様である魔方陣が黒く浮かび上がる。
この力は、賢者のように魔法に優れた人にだけ使える必殺技・・みたいなもの。
完璧に発動させたのは今が初めてだから後でカードさんに教えてもらうけど・・。
この力は、発動させる人によって変わるらしいけど大雑把に言うと発動させている間だけ、自分の魔法の威力を全て倍加して、魔力の回復速度も急速に早める技。
この技を発動させることが出来るのは、純粋な想いと強い力、信念が必要になってくる。
それに、純粋な心じゃないとほんの少しでもそうでなかったら発動出来ないからとても珍しいらしい。
だからこそ、賢者だけが扱うことが出来ると言われている。
賢者は元々純粋な心を持っていることがなれる条件の1つだから。
「リア様・・その瞳は・・」
「リア・・それが、リアの中に眠っていた力なんだな・・」
私は軽く頷いた。
すごく体が軽い。
周囲のことが手に取るように分かる。
特にカルナたち、家族の状況がすごく分かる。
力がわいてくる。
そして、今なら分かる。
今なら出来る。
カルナたちの影は、私の影。
私の影だから自在に操れる。
私は、カルナ、シャスティ(大)、ラウさんのそれぞれの影から触手さんを召喚して体を纏うように薄らと纏わせる。
違和感は全く無いはず。
自分の影なんですから。
「これは・・」
{これであいつから触れられても、近づかれても力を奪われることはありません。ですが、攻撃されればそうではないので気をつけて下さい。}
「ありがとうな」
「グルル(ありがとうございます)」
「ありがとうございます、リア様」
そして、戦いは始まった。
カルナがあいつの動きを翻弄しながら目などの急所であり柔らかい部分を狙う。
シャスティとラウさんが素速く動きながら脚や尻尾を斬り刻む。
けれど、あいつは強くなった分体がすごく硬くなっていた。
効かなくはないけど、ほとんど掠り傷と言えるレベルだ。
おまけに周囲から無作為に力を奪っているせいで回復してしまう。
私自身も触手さんを剣の状態にしてそいつの顔面を中心に脚などを斬り刻みながら、鞭の状態でたたきつける。
そして、定期的に突進してくるので、全力で硬くした触手さんで防御して串刺しにする。
軽く刺さる程度でも、針を出した分だけ距離を開けることが出来るので、その隙を見てシャスティが思いっきり攻撃して吹っ飛ばして距離を開ける。
それを何度も何度も繰り返す。
カルナたちの影からも触手を召喚してカルナたちの動きの支障にならない程度にサポートしている。
攻撃は出来ないけど防御だけは出来る。
私の家族の影を操る力は、そう言う制限のようだ。
けれど、この戦いは長期戦になると私たちの方がやばかった。
何せ向こうは空気中から魔力を奪いたいだけ奪っているのに、こちらはそんなことは出来ない。
かろうじて戦えているのは、ラウさんとシャスティの体力がかなり多かったことと、カルナが動きを制限させたりしてるから。
そして、私の魔力が普通よりも多かったことと、戦いながら並行して【精神統一】を発動させてるから魔力回復をより高めている。
それだけだ。
そう。
この戦いは私の魔力が切れれば一気に大変なことになる。
私の魔力が切れれば、カルナたちにかけている触手さんたちも消えてしまう。
そうなるとあいつから魔力も生命力も奪われてしまう。
そうなればこちらの負けだ。
それは嫌だ。
負けない。
勝つんだ。
でも、私はカルナたちを守るのに精一杯だ。
あいつは戦い慣れてるし、体は硬く、回復も早い。
だから、カルナたちの攻撃もたくさん出来てない。
強いて言うなら、カルナたちが10%分攻撃してあいつがその内の7割を回復しているようなモノだ。
それに、カルナたちの体力も限界がある。
しかも、私の力では防御が甘いからそれすらも貫通してカルナたちが傷ついている。
それでも、私の防御で軽減されてる状態だ。
おまけにカルナたちも攻撃を受け流したりして直撃を避けてる状態で・・だ。
だから私は無理矢理魔力を使ってカルナたちの防御にまわす。
体がふらつくけど負けない。
負けられない。
翠ちゃんは今回は戦うことが出来ない。
どうしてと言われると翠ちゃんとあいつは相性が悪すぎるからだ。
翠ちゃんは魔力がなくなるとしんでしまう。
例え私の魔力でカバーしてたとしても攻撃するために触れた状態でも奪われてしまう。
カルナたちよりも多くの量を。
・・しょうがない。
後が大変だけど、アレを使うしかありませんね。
{翠ちゃん。この辺り一帯の・・あいつの周囲の地面の下を丸ごと食べてくれる?}
-○-
翠ちゃんは、私の足下の土を食べながら地面に潜る。
{カルナ、シャスティ、ラウさん。私が合図したら全力でそいつから距離を開けて下さい。それまでは私にそいつを近づけさせないで下さい。しばらくは、防御も出来ません。}
ラウさんたちから了解の返事が来た。
私は、ラウさんたちにかけている触手さんカバー・・防御結界で良いですね・・結界だけを残して、その他でしていた防御を解除する。
私自身も最低限の防御だけで攻撃していた分も全て解除する。
強く強く願う。
あいつを倒すと
あいつを倒すために力を貸して欲しいと杖さんに願う。
そして、ありったけの魔力をその願いと共に杖さんを経由して自身の足下の影に流す。
今発動している瞳に魔方陣が出ている状態・・・これを発動させるとき以上に私の影は濃く、そして強く波打って、ボコボコと沸騰したお湯のようになっている。
限界になっても構わないと後のことを考えずに魔力を流し込む。
普通のお湯とかなら爆発しそう?というくらいぼこぼこしたと思った直後、影はシンと静かになる。
漆黒に染まった私の影が静かに広がる。
半径3メートル。
ドクン
影が鼓動する。
ドクン
ドクン
鼓動に合わせて影が波打つ。
ドクン
ドクン
ドクン
鼓動が徐々に早まっていく中、その鼓動も強まり、影もその分強く波打つ。
ドクン
ドクン
ドクン
ドクン
ドクン
ドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドク!!
これ以上にないほど強く早く鼓動する影。
限界だ。
限界まで魔力と強い思いを注ぎ込んだ。
-リア、いつでもいけるよ-
翠ちゃんから準備OKの連絡が来た。
さぁ。
一気に終わらせましょう。
この私の全力全開の技によって・・
消え失せよ
{全員、どいて}
私がそう言うとカルナたちは全力でジャンプして後方へと待避する。
するとそいつは邪魔をする敵がいなくなったラッキーとでも思ったのか私の方へ全力で駆け寄ってくる
だが
ズゴォォォン!!!
「っ!?」
そいつを中心にそいつの体格プラス、半径5メートルの幅の地面が陥没した。
高さは1メートルほどと低いが相手の隙を作るなら十分なほどだ。
そして私は、声の出ない言葉で最後の私の本当の必殺技を発動させるために唱える。
出でよ
私の影の守護者
ドォォォォン!!
私の影が水柱をあげるようにして空高く舞い上がり、伸びていく。
その影は空中でうねり、鱗のような模様が全身に付き、先頭部分にはどう猛な顔に、鋭い牙が生える。
そして、胴体になる部分には長い両腕が生える。
その腕は長くしなやかでありながらもとても力強い。
そして、その影の瞳が開眼すると同時に
「グォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
空気中も、地面も盛大に震撼させる。
振動させる。
その咆吼は、私の敵である存在全てに絶大な威力を誇る。
そして、私が敵と認識した相手には更に絶大なる威力の殺気もこもる。
そいつは一瞬、私の影の守護者を前に怖じ気づいた。
アンデットの1種にもかかわらず、怯えた。
だが、自身が生み出した恐怖に苛立ち、お構いなしに襲ってくる。
守護者は、両腕でそいつを押さえつける。
軽々と
そして、顔面をお構いなしに噛み付く。
すると、おどろおどろしい悲鳴を上げる。
食いちぎることは出来ないけど、かなり深く牙が食い込んでいる。
そして暴れ回りながら力を奪おうとしたり、尻尾で攻撃をしてくるが、片手で尻尾をガードし、噛み付く力を上げる。
そこで更に掴んでいる腕にある鋭くい爪を思い切り食い込ませる。
牙よりは浅いけれどそれでも深く食い込んでいる。
そして、かみつきを止めて至近距離から再度殺気を纏わせた咆吼を放つ。
「グォォォォォオオオオオオオオオオオ!!!!」
至近距離で食らわせたことと、攻撃を続けていたことで先ほどよりも効いた。
そして、再度噛み付き。
先ほどよりも更に深く牙が食い込む。
そいつは周囲から魔力等を吸収しようとしたので、守護者の姿を解いてそのままそいつを包み込む。
そいつは当然暴れ回るけれど、守護者の中は私の触手としての成分の中だ。
つまりは、どんなこともやりたい放題出来る。
そいつの体を包んでいる部分を硬くして動きを拘束し、その上から串刺しにする。
頭だろうが脚だろうが尻尾だろうが全方位からの串刺し。
それでもそいつは生きていた。
と言っても虫の息と言われるほどだ。
私は串刺しにした影を更にとげとげにして内部からも串刺しにしてとどめを刺した。
そいつは全てアイテム類となった。
だが、肉体を作っていた部分がドス黒くて毒々しい色の煙を周囲へまき散らしていた。
勘だけどそれは、放置したら駄目だと察知した。
影で全身を覆っていたことが幸いしてそれらも全て逃がさないように出来た。
効くかは分からなかったけど、再度串刺しにしてみたらどうにかなったらしい。
「リア!!そのまま圧縮しろ!!加圧だ!!」
「そのまま影を縮めて下さい。小さく!!」
「グルル!!(ぎゅっとするんですよ!パンをぎゅっとすると小さく、硬くなるのと同じです!!)」
言われたとおりにぎゅっとした。
すごく力と魔力が必要だけど頑張る。
ぎゅぎゅぎゅっと
すると、そいつの魔宝石の中に吸い込まれていった。
ようやく終わった。
{フリージア。最後にこの森に散らばっているそいつがまき散らした瘴気を浄化するから力を貸して}
リフさんの念話ですね。
{どうすれば良いのですか?}
{今出してる影をさっきのドラゴンに変えて咆吼をしてくれれば良い。気持ちは、全てをきれいにするって感じかな}
{分かりました。}
言われたとおり、影をさっきの守護者に変化させる。
でも、今回は腕は必要ないので、腕は出さない。
その代わり胴体を太く、顎を大きくする。
{フリージア!今だよ!}
私は、守護者を咆吼させる。
強く強く。
どこまでも響けと願いながらきれいになれと想いながら。
体がふらつく。
意識が遠くなる。
それでも止めない。
{もう大丈夫だよ・・ありがとう。後はゆっくりと休んで。}
その言葉を聞いて私は緊張を解いた。
全ての魔法を解除した。
すると、それまでムリをさせていたことによって、肉体的にも、魔力的にもそして、頭にも負荷がかかりまくっていた。
かなり前から・・瞳に魔法陣が出ていたアレを発動させていたあたりには実はとっくに限界を超えていたのです。
魔力をかなり長い間回復させ続けながら大量に使いまくってましたからね。
おまけに、小さい技を大量ではなく、大技を連続・・・体の負荷を考えるとどちらが大変かはなんとなくわかると思います。
基本的には、それほどの害にはなりませんが、ぎりぎりの状態だとその差はほんのわずかでも影響は大きい。
そんな状態で大技を出しまくったのに加えて、頭をいっぱい使ってた分もまとめて耐えきれるはずもなく私は吐血して、意識を失った。
目を覚ますと精霊樹さんのところでした。
「お疲れ様。何か食べれるかい?」
リフさんのお顔とおっぱいがありました。
眠気は・・ないですね。
どのくらい寝ていたのかわかりませんがすっきりしてます。
けど、お腹はすきましたね。
私はうなづいた。
それからは、我ながらびっくりするくらい食べました。
いつもは年齢的に平均の量の7割くらい。
けど、今回は大人の人の平均の1人前は食べました。
すごいでしょう?
普段の私からするといっぱい食べました。
というより、幼女が大人の量をぺろりと平らげてるのはすごいんです。
で、食べ終えて落ち着いたところで
「じゃあ、とりあえずもうひと眠りしましょうねー」
再度寝かされました。
で、数秒もたたずに寝ました。
我ながら単純ですね・・くぅ。
そして、再度目が覚めた後、またもやご飯をたっぷりと食べさせられ(大人1人分の7割くらい食べました)て、落ち着いたところで状況を教えてもらいました。
どうやらあの後は、私が気絶したくらいで特に問題はなかったそうです。
森全体にはびこっていた瘴気(呪いや毒などがたっぷり含んだ魔力や霧みたいなもの)はきれいになくなってました。
私はあれから10日くらい寝てたらしいです。
それから、あの時に食べさせられて寝て起きたのが3日後。
ふむふむ。
いっぱい寝てましたね。
道理ですっきりしたわけですね。
とか言いながら果物をかじりながら聞いてる私。
・・最近、食べる量がもりもり増えてるような気がします。
気にするなどんどん食えとカルナたちに言われてるので気にしませんが・・おデブちゃんにはなりたくないので運動も頑張りましょう。
でも、おいしいしお腹が空いて仕方がないのでもぐもぐ。
このお腹が空くのといっぱい寝てた理由は、私の能力の副作用みたいなものらしいです。
いっぱい動いてエネルギーを使ったからその分休ませて、いっぱい食べる必要があるらしいです。
しばらくしたら落ち着くらしいですが、それまでは寝てる時間は長く、食べる量は増えるようです。
「そんなわけで後片付けとかも特にはなく英気を養ってる状態さ。」
なるほど・・ところで・・
{私の着ていたローブはどこに行ったのでしょうか?}
今は、いつから翠ちゃんに収納されてたのか不明なシンプルなワンピースを着てます。
「あぁ、あれ?あれは今、フリージア専用の防具に改良中。」
ふぇ?
余りにもサクッと言われてしまい、おまけに予想外なことを言われてしまいました。
おまけにこんなことまで言われてしまいました。
「後、あいつのアイテム類も全部使ってるんだよ?」
あれって・・あのニーズヘッグのですか?
・・私の防具・・というよりローブはどうなってしまうのでしょうか?
というより、どうして改良を?
次回は6日日曜日です。