隠れ里のあの方とは
-ラウ-
リア様の左腕が失われ、そのやりとりのお詫びとリア様が実は英雄賢者様の正統後継者で或ったことが判明した。
そして、この隠れ里はそんな英雄賢者様が作った結界で囲まれた場所だった。
そのため、ここでリア様のリハビリや看病などを初め、正統後継者であるリア様の歓迎のためにしばらく滞在することになった。
翠さんとラナさんは眠り続けるリア様の看病につきっきりで、シャスティさんとカルナさんは交代で看病しつつこの里で手伝いなどをして仲を深めている。
その合間にシャスティさんは薬草や調合関係で情報共有したり材料の物々交換などをしてより優れた調合薬を作成し、リア様のために使っている。
そして俺は、1日の大半を彼らの手伝いをしていた。
内容は色々ある。
キノコを増やしてる喋るキノコたちからはキノコを生やす木と水を運んだりかけたり。
木の実集めや、薬草集めの手伝いをしたり。
魔物狩りを共に出かけたり、模擬戦をしたいといった体を動かしたいとのことで俺がその相手を彼らの動きに合わせてやったり、話し相手が欲しいと言われ聞き専門になったり逆に喋り続けたり。
その合間に、自己鍛錬をしている。
自己鍛錬と言っても基礎体力と魔力制御、双剣を我流の動きで振う。
そんな生活を俺たちはしている。
人間のことを忌み嫌っていると思ったが俺とリア様は良い人間だと分かってもらえたらしく初日にあっさりと受け入れてもらえた。
とはいえ、住まいを借りているのだから手伝っている。
長であるフクロウさんからは気を使わせて申し訳ないといつも言われるがそれはこちらの台詞だ。
だから、自己鍛錬や今後のために働かせて欲しいと逆にお願いして動き回っている。
後は、仲良くなるためには一緒に同じことをするのが一番だというのもある。
ここに滞在して5日目
リア様はいまだに眠り続けている。
倒れた初日と比べれば大分回復しているらしく失った左腕を除いて血行も血色も大分良くなっている。
翠さんが言うには全体の7割は回復しており、後は疲労部分だという。
後は、ゆっくりと休ませるほかないので、静かに見守っている状態だ。
まぁ、手伝っている範囲はこの里に住んでる彼ら全員で一見大変そうだが実はそうでもない。
やることはさっきも言ったように結構シンプルなことが多いし、例え難しくても少し考えるか頑張れば出来る範囲なんだ。
それに、毎日やってるわけでもないし数もその時次第。
言ってしまえば、ムリしてしなくても良いし、やる時はなんとなくやりたいからやるだけというまさしく風の吹くまま気の向くままと言う奴だ。
だから俺も切羽詰まって誠心誠意込めて!
とするわけでもないから、世間話をするついでにくらいでやっている。
様々なことをするからどんなことでもためになるし、この里に住む彼らは皆ゆったりとしていることが多い。
だから、俺もおかげで焦らず慌てることもなく落ち着ける。
色んな意味で助かっている。
だから、今の俺はこういうゆっくりした時間の大事さも学んでいるようなモノだ。
と言うよりも、通りすがったり手伝ったりするたびにありとあらゆるメンツが慰めてくれてる状態だ。
そんなにわかりやすいか?
んー分からん。
なにせ、存在感が薄すぎて目の前にいたり握手とか手を握った状態とか模擬戦してたりとかしても普通に存在すら忘れられてることがほとんどだったしな。
けど、カルナさんたちが言うには俺は普通の奴らと比べたらそういうのを隠すのは上手い方だとは聞いてたんだが・・。
やっぱり、人間相手だとと言うことだろうな。
大雑把に言うと人間以外である彼らからすると表情とかではなく気配や雰囲気などで分かるんだろう。
で、そんなある日
「ちょっと失礼するよ」
「こんな時間に珍しいですね。いかが致しましたか?」
ちょうど昼食をリア様が眠る木製テントでカルナさんたちととっているとフクロウさんがやってきた。
彼は、元々は夜行性だったらしいが今はそうではないと言いつつも起きているのは大体昼を過ぎるくらいから朝方までだったりが多い。
だから、彼からすると起きてすぐにやってきたか早起きという感覚だ。
「今日は眠りが浅くてなぁ。まず、ここでの生活はどうかな?」
「これまでの生活と比べるととてもゆったりとした時間を過ごしております。それと、とてもあまり経験出来ないことを体験させて頂いております。」
「そうかいそうかい。皆の言うとおりとても勉強熱心のようじゃな。っと、そうじゃったそうじゃった。お主らに会って欲しいお方がおるのじゃ。」
「そのお方というのは、皆さんが”あの方”と呼ぶお方のことでしょうか?」
「そういうことじゃ。あのお方については直接聞いてもらった方が良いだろうから儂らからは何も言えぬ。食べ終わったらで構わないと伺っている故、急がずとも良い。」
「分かりました。少々お待ち下さい。」
いくら時間掛かっても構わないと言われてもハイそうですかでのんびりするような精神は持ち合わせていない。
元々、騎士として国に勤めているわけだし、いつどんなときにでも駆けつけなければならないという状況の中で育ったからな、時間は掛からない。
と言うより、食ってたのはほとんど俺だけだ。
カルナさんたちは元々朝晩の2回で良いらしい。
と言うよりも、そこまで大量に食べる必要はないんだとか。
理由を聞くと、基本的に魔力を自然回復させるか食べることによって魔力を回復させるという行為のために食べてるだけらしいからだ。
そうなると食べないと駄目なのでは?と思ったが、リア様との契約の影響なのか、その契約というつながりを介してリア様の魔力をゆっくりとだが受け取っているらしい。
その流れる量を調整出来るのは主であるリア様だけらしいが。
と、話が逸れた。
で、サクッと食事を終わらせた。
「お待たせ致しました」
「もう良いのかい?」
「えぇ、ほとんど食べ終えていたので」
「そうか、では・・こちらじゃ」
早食いして早く終わらせただけで、実は食べ終えかけていたのではなく半分くらい残っていたりしたのだが、まぁ良いだろう。
気にしない気にしない。
「と、そうじゃ。あの方よりリア様も連れてきて欲しいそうじゃ。」
申し訳なさそうじゃったがなと言いながらそう言うフクロウさん
・・仕方ないだろうな。
当事者だし、英雄賢者様の正統後継者だしな。
俺は、リア様をそっと抱きかかえ、フクロウさんの後に続いた。
「あ、ラウ。」
「お疲れ様です」
通りすがりにりすたちとすれ違う。
「賢者様とお出かけ?」
「えぇ、あの方という方と少々お話しを」
「そっか。すごーくきれいなんだよ?」
「そうでしたか。」
優しく微笑みながらそう言うと
「あ、あまり長居させたら悪いね。じゃあねー」
うん。
そこらの人間よりも彼らの方が圧倒的に礼儀正しい。
うんうん。
で、やってきたのはものすごくでかい木のところ。
高さは、30メートルはあるだろう。
幅は、50メートルはありそう・・・てかでかいな。
確か、昔イリス様からモンキーポッドとかアメリカネムノキとか呼ばれる種類だった気がする。
えぇっと・・・ペチュニア様が言うところの「この木何の木」の歌?しーえむ?の木だとか言ってたな。
にしてもでかい。
けど、聞いてたより幹が倍以上でかい。
「驚いたじゃろう?」
「えぇ、とても立派で。」
そういえば、こんなにでかいと結界の外からでも普通に見えるんじゃないのか?
と疑問に思っているとフクロウさんは察してくれて教えてくれた。
「この木は特別なんじゃ。」
「特別・・とは?」
「精霊樹と言って分かるかな?」
「えぇ、木の精霊であるドリアードとは異なり、生物の姿をとれず木の姿だけという方でしょう?確か、単純に実力云々で言うと、会話がほとんど出来ない代わりにドリアードよりも強いと聞いておりますが。」
「大体はあっておる。大雑把に言うと精霊樹とは聖なる木なんじゃ。」
やけに大雑把すぎないか?
「元々精霊とは動物などの生き物の魂の位が上がり妖精から精霊へと進化した結果ということが最も多い。それと同じでこの木も魂の位が上がった結果、精霊になったのじゃよ。この木があるからこそここに張られている結界も英雄賢者様がかけた時の威力のまま保つことが出来る。」
「なるほど・・ですが、この精霊樹に万が一のことがあれば、危険なのでは?」
「それらをサポートするのが我らであり、精霊樹と同じ役目を果たす存在がこれからお主らが会うあのお方の仕事じゃ。」
「なるほど。この精霊樹とその方のお二人で支えているのですね。そして、皆さんはそんなお二人を支える。」
「そういうことじゃ。さて、待ちわびていらっしゃるようじゃ。こっちじゃ。」
近くに行くとぽっかりとその木には穴が空いていた。
穴と言うより洞と言った方が良いだろうな。
その入口を抜けた直後、一気に空気が変わった。
この木に近づくにつれてものすごく神聖な魔力というか雰囲気が強まっていたが、中に入ると強まる度合いも半端じゃない。
で、中は空間が歪んでいるのではないかと思うほど広かった。
上空は光の粒子がなぜか飛び交っており、青空が広がる中でとてもキラキラとしてすごく美しい。
そして目の前にはなぜか壁のない扉があった。
その扉は両開きの引き戸だった。
遠回りしようと思えばその扉を開けずとも通れるがアホみたいにでかいのでおとなしく開いた方が楽だろうな・・・けど、でかいし・・重そうだな。
とか思っていると
「ご苦労。後は下がって良いぞ」
扉の奥から女性の声が聞こえてきた。
「かしこまりました。では、儂はここまで」
「案内ありがとうございました」
軽くほほえんだフクロウさんはそのまま帰っていった。
そして、彼が去った直後にゆっくりと扉は勝手に開いていく。
「どうぞ」
どことなく心がフワフワとした夢心地な不思議な感じのまま中に入っていった。
「ようこそ。英雄賢者の正統後継者殿。」
そこにいたのは、全長5メートルとものすごく大きな狐だった。
尻尾は平均の長さの2倍はある。
金の瞳に白金色の毛並み
ただただ、美しいと感じた。
人の美しいとか美人とは異なった美しさ。
言葉に例えることが非常にもどかしいが、美しい以外の言葉が浮かび上がらず、それ以外の言葉は逆にその美しさを濁してしまうと思った。
「ふむ。英雄賢者の正統後継者と呼ぶには長いな。名は何と言う?」
「ふ、フリージア様です。」
おっと。
ちょっと考え込んでしまったせいで微妙にどもってしまった。
リア様という超絶かわいい生き物を毎日拝んでたおかげでそれだけで済んだ。
「そうかそうか。フリージアというのか。良い名だ。まぁ、ゆるりとなされよ。」
いつの間にか座布団が並んでいたのでそこに座る。
カルナさんやシャスティさんたちもだ。
「とりあえず、本題から入ろう。家の者が大変失礼した。申し訳ない。」
「いえ・・確かに怒りは感じておりますが、この幼い身で一生懸命考え、俺たち全員を無事でいさせるためだったので・・・・自分自身をおろそかにするのはすごくもどかしいですが・・それに、本人からはきちんと謝罪は受け取っておりますし、その分、俺等から出した条件はきちんと守ってくれるようですし。」
「確か全力で仲間を守れということだったかな?」
「えぇ。命を差し出されてもリア様が望みません。殺したかったわけではありませんから。」
「本当にお主はフリージアが大事なのだな。」
「・・そんなにわかりやすいですか?」
「あぁ。人間同士ではわかりにくいだろうが我々からすると纏う雰囲気でバレバレだ。」
「そ、そうですか・・」
すごく恥ずかしい・・。
「ん?そういえば、自己紹介がまだだったな。私は、この地・・と言うよりもこの隠れ家の結界の護り主のリフだ。一応説明しておくと私は上位精霊だ。」
「!?お、俺はラウと申します。こちらから順にカルナさん、シャスティさん、翠さん、ラナさん、そして、フリージア様です。」
驚いた。
かなり神聖なモノを感じていたからただ者じゃないと思ってたが、まさか上位精霊とは・・・。
「自己紹介も済んだところで、やらかした本人ではなく、代わりに私からフリージアへお詫びをしたい。・・本人からはものすごく本人からしたいという雰囲気がダダ漏れだったな。」
「ちなみに、どうしてリフ様が代わりに?」
「私がした方がより良いモノを渡すことが出来る。それに、この里の代表としてわびがしたいのだ。」
「かしこまりました。・・ですが、リア様は見ての通り・・・」
いまだに抱っこする俺の腕の中で眠り続けているリア様をちらりと見ながらそう言うと。
「今回、フリージアをここに連れてきてもらったのには、1つ理由があるのだ。」
「理由とは?」
「私自身が直接フリージアが英雄賢者の正統後継者だと確認しておきたくてな。後は、私が渡すためにどういうモノが良いか確認したいという気持ちもある。」
「・・・分かりました。」
「ありがとう。では・・・・と、この姿では抱っこも出来ぬな。」
ぽつりとそうつぶやくと彼女はふわりと全身が光り、するすると縮んでいき、1人の人間の女性の姿になった。
人間と言っても耳は狐耳、狐の尻尾が生えているが。
狐族の姿に近いな。
その毛の色も、髪の色もあの狐のときのままの色だ。
当然瞳も。
髪の長さは、背中の真ん中に届くくらいだ。
すごくさらさらストレート。
あの美しさの通り、人の姿の彼女も非常に美しかった。
大和撫子とか傾国の美女とはこのことを言うのだろうかと思った。
美人と言っても、雰囲気は清楚や気品がある感じでありながら非常に柔らかい表情なのに妖艶だ・・うん・・すっごい妖艶だ。
なにせ、スタイルは抜群。
身長は170とちょっとと女性にしてはやや高めだが、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。
その出るとこがすっごい。
胸だ。
おっぱいだぁ!
・・コホン。
軽くみても、EやFくらいはあると思う。
形もおわん型と素晴らしく、その大きさなのに下に垂れ下がらないというまさしく史上最高の胸と言えるだろう。
その先の部分もピンク色で、肌も真っ白だ。
なぜそこまで分かるかというと、彼女は全裸だったからだ。
しかも本人は恥ずかしがるという動作が皆無で、むしろ堂々としている。
なのに、1つ1つの何気ない動作は清楚な女性そのモノの動作で普通に考えればそんな雰囲気の女性であればぱんちら1つで顔を真っ赤にする姿が最も似合うのだが・・・・堂々としている。
「さて・・・・どうかしたか?」
普通に俺の元にハイハイをしながらリア様を受け取りに来た清楚な見た目のスタイル抜群の狐耳の美人さん(ただし全裸)
ハイハイで来たのは、普通に座っていたから立ち上がるのが面倒だっただろうと思う。
こっちに来るたびにその大きな胸がふるりフルリと揺れる。
・・・非常にヤバイです。
最近処理することがなかったしなぁ・・・と言うより、リア様があまりにもかわいくてそう言う気持ちがすっぽりとなくなってむしろ忘れてたくらいだ。
やっべぇ・・・
目の前には、男なら飛びつかない男はいないだろうと断言出来る超絶美人と素晴らしいおっぱい。
だが上位精霊だ。
相手がヤバイ。
例えるなら、美人でスタイルの良い女性が実は王族のお姫様ですとか言われるのと一緒。
そんな相手にホイホイ性的にゴチになるわけにはいかないだろ?
盗賊とかそういうアホどもは別として。
ちなみにカルナさんたちは絶句してる。
俺は、色んな意味でフリーズしてる。
だが、その全裸の狐さんはというと不思議そうに首をかしげている。
そんな姿もかわいいなぁ!畜生!とか内心で思いながら
「あ・・あの・・・羞恥心はお、お持ちですか?」
口からこぼれたその台詞はあまりにもストレートだった。
ヤベぇとか思う前に彼女はと言うと
「羞恥心?・・あぁ、これか。」
俺の目の前で女の子座りしながら両手で自分の胸を揉んでみせる。
俺は、こみ上げてくる男としての部分を内心で必死に抑えていると
「・・・ふむ?」
首をかしげる上位精霊さんに必死に説得し一応どうにかなった。
服を着せることが出来た。
と言うより自身の毛皮を服に変換させることが出来たらしい。
なぜ最初からしないと思ったが、人の形になるのは久しぶりらしく忘れてたんだと・・・俺はなぜ絞られた・・確かに、色々と良かったと言えば良かったんだが・・色んな意味で疲れた。
ただし、服装がボーイレッグとか言われるビキニの水着の下半身部分がショートパンツの形の奴だ。
見た目とスタイルがアレなので全裸とは別の意味でヤバイが・・とりあえず、服?をきてるから・・・・まぁ、いいだろう・・後は直視しないようにしないと・・アレはアレでくるものがある。
リア様の寝顔を見てすっごい癒されたのはある意味当然だった。
「では、失礼するぞ?」
いや・・うん・・すっげぇ遠回りしたな・・色んな意味で疲れた。
リア様を受け取ったリフ様は抱っこしてそのまま額と額をくっつけて瞳を閉じて集中しだした。
で、集中してるんだがすっごい表情になってる。
何と言うか頭痛を我慢してる感じ?
で、さっきから
「フリージアのためにやってるだけでやましい気持ちはない!」
とか
「この子の今後のためには必要なことなんだ!」
とか言ってる。
てか、誰と喋ってんだ?
リア様に守護霊がいるわけじゃあるまいし。
・・あぁ・・・・似たようなのはあるか・・・ペチュニア様とか加護とか。
ってことは・・・流れ的にはリフ様がリア様のことを知るために内心を探ろうとしたところでリア様の加護によって拒絶された。
そして、それを管理などをしているのはたしかペチュニア様だとカルナさんから聞いている。
で、それを無視して探ってるリフ様にはおそらくとんでもない威力の頭痛が襲ってるんだと思う。
それでも調べることが出来るのは上位精霊だからこその力業だと思う。
実際、力業でどうにかなるのならそう言う自身のステータスを見られないようにする類いの技などは無効以外は誰もが見ることが出来てしまうからだ。
ってことは、今はその頭痛攻撃に加えてペチュニア様が直接口撃しに来たと言うことか・・。
普通ならあり得ないことだが、ペチュニア様のことを知ってる俺からすれば・・・あり得るとしか言えないんだよなぁ・・。
あの人ならやらかす。
実際、あの人は病弱だったし、体もかなり弱かった。
それでも、いつも明るく破天荒な方だったからみんながみんな病弱と言いつつも長生きしそうだと思っていたんだ。
・・あの領主とのあれこれで行方知らずとなったがまさか死んでしまうなんて予想も出来なかった。
とりあえず、話を戻そう。
で、リフ様はどうやらペチュニア様と交渉しているようだ。
ペチュニア様は最初は妨害一本だったが、今は出来る限りでお詫びの品?とかを搾り取れるだけ絞ってやれと言う感じでやってるようだ。
「ふぅ・・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・・・・疲れた」
ものすごくげっそりした顔のリフ様。
とりあえず、ペチュニア様と思われる謎人物との1人おしゃべり(にしか見えない)は追求せずにスルーしておこう。
「えと・・・大丈夫ですか?」
「あ、あぁ・・大丈夫だ・・予想外な守護霊みたいなのがいた故・・疲れた・・。」
やはり守護霊様がいたようだ。
「リア様はそう言う類いの加護をお持ちなのでその辺りが関係しているかと。」
「で、あろうな・・どうにか知ることが出来た。にしても・・・・嘆かわしいな」
怒り一色の感情を瞳に宿しながらトーンの落ちた声でぽつりとつぶやく。
「リア様の過去が見えたのですか?」
「あぁ・・・あれほどのことを・・・普通ならば心が壊れているか死んでいる・・フリージアはとんでもなく心が強いのだな。それが影響して闇属性の魔法は進化し、陰魔法に昇華したのだろう。」
「えぇ。こう言ってはなんですが、不幸中の幸いだったと思います。ペチュニア様の忘れ形見なのですから。」
「ペチュニア・・・先ほどの守護霊は彼女であったか・・声を聞いてすぐに察したが。そうか・・彼女の娘か・・・」
「ペチュニア様をご存じで?」
「あぁ。流星姫であろう?爆笑しながら吐血して、キレると魔法の雨あられをまき散らす黒っぽい紫色の髪の私くらいの胸の異世界人の。」
あぁ・・確かにペチュニア様もこのくらいでかかったな・・コホン。
流星姫
ペチュニア様は一度キレると自身が持つ4種類の魔法を雨あられと空からかなりの広範囲で感情にまかせてまき散らしていたことからそう呼ばれるようになった。
美人だったことに加えて、逆鱗に触れるとその相手と関係がなくともお構いなしで周囲の人たちも建物も全て巻き込んで大暴走していたからと言うのもある。
「えぇ・・・ちなみになぜご存じで?」
「そりゃあ知ってるさ。彼女は、英雄賢者の子孫なのだから。」
「はぁっ!?ちょ!ちょっと待って下さい!!ペチュニア様は異世界人なんですよ!?しかも、英雄賢者様の子供がいたという話しは聞いたことがありません!!それに英雄賢者様はこの世界の人間だったのでしょう!?」
「お?知らなかったのかい?ただ、心が清らかで強い心の持ち主と言うだけで英雄賢者の正統後継者になれるわけがないだろう?」
「た・・確かに・・・」
「リフ様・・教えてもらえませんか?ペチュニアさんからはそう言う話しは全く聞いてませんでしたから。」
「彼女本人は分かってなかったからね。良いよ。サクッと説明すると英雄賢者と呼ばれる青年も異世界人だった。この世界にやってきたのは勇者召喚の儀式で向こうの世界から拉致されたのだよ。」
「拉致・・」
言いたいことは分かるし、勇者からすれば確かにそうだが・・。
「で、彼が来たのはちょうど20歳の頃だった。」
「・・まさか」
「あぁ。彼は既に結婚していたんだよ。その異世界で。そしてちょうど彼の嫁に子種をこさえて妊娠したと分かった辺りでこちらに飛ばされたらしい。」
「こ、こしらえた・・・」
この人・・・言い方がストレートだな・・話す内容がアレなんだからちょっとは恥じらってはどうだろうか・・。
ムリか・・・全裸で堂々としてる時点で。
「そして、彼は二度と異世界に帰ることが出来ないと分かるとその苛立ちなどを戦いに身を投じた。片っ端から魔物に戦いを挑み、盗賊や指名手配犯など敵と言う敵全てを倒していった。彼はめきめきと実力を伸ばしていった。そんな中、彼を召喚した国は既に腐っていた。それを知った彼はその地に住む国民たちと協力し、国を堕とした。政治的にも物理的にも。」
わお。
英雄賢者様結構アグレッシブだな。
「それから、国民をまとめていたとある夫婦にその国を任せ、死ぬまで世界中を巡り悪という悪全てをなぎ倒し、違法奴隷は片っ端から解放しまくり、種族による差別もなかなかに強引に止めさせたらしい。ときに子供から大人にまで教育を行ない、倒した時に手に入った魔物のアイテム類も全てその地の人たちへ無償で渡した。」
「すごい・・・」
「あぁ、すごかったよ。この森が迷いやすいのも私たちのことを案じて彼がこの結界を含めて作ってくれたシステムだ。どういう仕組みかは知らないがな。」
「それで、彼は最後は・・?」
「確か280歳を超えた辺りまで生きて、普段のように眠り、そのまま起きなかったようだよ。老衰だな。」
「人間にしては長生きでは?」
「あぁ、彼は半分精霊みたいなものだったからね。」
「え?じゃあ、ペチュニア様やリア様も?」
「いや。その辺りは受け継いでおらん。せいぜい血に聖属性が籠もっているだけだ。魔法で顕現するかはその人たち次第だが。」
「なるほど・・・異世界人だったのにどうして半分精霊に?」
「私のせいだ」
「は?」
「いやぁ。ついムラッとして彼を私が食ってしまったのだ。年単位でな。その分、彼は、この地で強くなった。後悔はない!だが、ヤリすぎて少々変わってしまったのが」
「半精霊だと・・・」
この人・・精霊じゃなくてサキュバスじゃねぇのか?
「だ!だが!!そのおかげで寿命も延びた!彼はそれを望んでいたのだ!出来るだけ長く悪を倒すんだと。」
軽く呆れた表情で眺めていると慌てた表情でそう言ってた。
後ほど、俺はリフ様に性的に食われた。
だが、英雄賢者様のように半分精霊になるほど食われてはいない。
そんなことになるのは、何百日という間、毎日何度も何度もヤらないとムリらしい。
・・色々と良さそうだが、俺は遠慮願う。
まぁ・・強制的に食われたけど・・。
忘れよう、うん。
「でなんの話しだったかな・・あぁそうそう。そんな彼の行なった行動は彼が死を迎えた際、この世界を管理する神様と異世界を管理する神様とその他の神様方に評価された。そして、ペチュニアもまた、この世界に迷い込んだ。彼女の場合は3歳児にまで若返った状態でこっちの世界に転移してきたのだがな。」
「その育ての親が、エトワール家でしたか・・」
「らしいな。だが、彼女は成人するのと同時に独り立ちしているし、エトワール家は元々他者との関わりが皆無らしいからな。会いたくて捜してもそうそう見つからないだろう。」
「なぜ?」
「全員が放浪癖があるのに、拠点と言える場所がないからだ。それに、どこにどう行ってるのかも不明だ。」
「あぁ・・なるほど・・」
「で、彼女が若返った・・と言うより幼女化したのにあわせてその先祖である英雄賢者の行動を評価した神々が彼女の魔法の才能を開花させた。その結果、表世界ではあまり目立っていないらしいが戦い以外の部分を中心に世界を明るく照らした。そして、そんな2人の行動とフリージアの過酷な環境にいるのにもかかわらず悪に染まらず、心を壊さずにいたことが評価され英雄賢者の正統後継者となったのだよ。」
リア様がチートと言うよりも、英雄賢者様は人助けが癖になってる戦闘狂で、ペチュニア様はペチュニア様で英雄賢者様ほどではなくとも十分やらかしてた。
・・・ある意味2人のやらかしによって今のリア様がある訳か・・。
まぁ、良い方向に向いてるからまぁ良い・・・か・・うん。
次回投稿はいつも通り日曜日です