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陰の支配者-私の保護者は猫と鳥-  作者: ミコト
フォレストロード
21/177

森の中の隠里

黒いもふもふの塊のラナちゃんが家族になって進むこと十数日か20日前後?

そのくらい経った頃、私たちはおっきなドーム状の結界があるところにたどり着きました。

その結界は、私が目に魔力を集中させて観察するとありとあらゆる生物に対して近寄らないように、感知しないように、目に入らないようする種類でした。

けど、私は見つけちゃいました・・なぜでしょう?

魔眼と賢者って職業のおかげかな?

後は偶然?


まぁ、気にしないで良いですね。





で、たどり着いた場所は木や藁などで作られた建物が並んでて、木の柵で囲まれた村っぽい感じのところでした。

で、そこをすっぽりと大きく余裕を持って囲っているドーム状の結界。

どうやら、この結界を私は見つけてたみたいですね。


「なぁ・・リア・・・そこに何かあるのか?結界らしきモノがあるのは感覚でなんとなく分かるが・・」

あれ?

もしかして見えてない?

「リア様は、その先にあるモノが見えるんですか?」

(コクリ)

ラウさんもカルナたちと同じ意見だったみたい。

翠ちゃんもシャスティも結界があるのは分かってもその先の村らしきモノは見えてないみたい。

と言うよりも、かなり集中してなんとなくある気がする・・?くらいにしか感じなんだって。


何でだろう?

やっぱり、私が英雄賢者さんって呼ばれてた今の神様の正統後継者だからですか?


そういえば、ラウさんが賢者って職業について教えてくれたっけ?

確か、その職業に成れる人は何十万人以上いる優秀な魔法使いさんたち(言ってしまえば魔法以外の戦いが出来ない人だけという条件)の内のたった1人いるかいないかというくらいとても少ないらしいです。

おまけにその賢者でもいくつかあるらしく一定数以上の種類の魔法を手足のように自由自在に扱える善人だったり、潜在能力がものすごく高く、善人で血筋が関係してたりと他にも様々な条件が多く一致した状態。

私の場合は、後者に当たるらしいけど、それらの条件がどれだけ含んでるとかそう言うのはよく分からないです。

まぁ、私のような場合はさっきの例題で言った人数の何百倍以上の人数の内の1人いるかいないかという更に希少らしいけど。

じゃないと、色々と問題もあるらしいし。

えと・・確かなりすましっていうのとか、傲慢な人だったりとよからぬ人も世の中にはたくさんいるらしいし。




「にゃう?(では、リア様には何が見えているのか教えて頂けませんか?)」

と言うわけで、私はそのまま伝えました。

「そうか・・やっぱ、リアと何か関係があるっぽいな」

「そうですね・・何か関係がありますね・・ペチュニア様か、神様か・・」

「ペチュニアさんか、賢者様かぁ・・・確かにどっちかだろうな・・それならリアだけが見えてるのも感知出来てるのも分かる。」


「貴様等、何しに来た」


突然ドスのきいた男の人の声が響いてきた。

その声には怒りの感情がこもっていた。

その声のする方へ目を向けるとそこには2メートルほどの大きさの黒と深緑色の虎柄模様という珍しい組み合わせの狼さんでした。

この狼さんはカルナと一緒でしゃべれるみたいです。


すごく怒ってるけど、心は白い。

多分、この村?を護ってる門番さんなのかな?

「俺たちは、ここに張られている結界を偶然見つけて気になって見に来ただけだ。」

ラウさんがしゃべろうとしたけど、しゃべれる動物同士の方が良いと考えたらしくカルナがそう言った。

「ほう?貴様もしゃべれるのか。この地以外でしゃべれる者は珍しい。」

「まぁな。それで、その結界とかその中とかどうなってるのか教えてくれないか?」

「よそ者に教えるわけがなかろう!!!それに、人間共と共にいる貴様等は信用ならん!!」

「前半は分かるし、後半も気持ちは分かる。だが、俺たちはただの興味本位だ!!そこまでキレる必要はないだろ!?」

ものすごい狼さんの怒りの感情がどんどんふくれあがってくる。

「そう言いながら人間共は我らを殺し、捕まえて行ったではないか!!」

「例えそうだとしても、俺等はそんなことをするつもりはない!!もしそうだとしても俺等が共にいるなんてあり得ない!!すぐに離れている!!それに、見てわかるだろ!?こんなにも心が清らかなんだ!!そんなことするはずがない!!」

「誰が人間共に買われている愚か者共の話しを信用するか!!例え心が清らかだとしてもそれは周囲がそう感じ、人間共に対しての白さだ!!我らにとっては関係ない!!」

・・うん。

{カルナ、落ち着いて・・行こう?}

「・・良いのか?」

{これ以上お話ししてもあの狼さんが私たちを中に入れてくれるなんて無理そうだよ?近くで見れただけで十分だから}

あれ以上話しが続いても狼さんを今以上に怒らせるだけですから。

「リアが言うなら・・・わかったよ、俺たちは立ち去る。それでいいだろ?」

そう言って、私たちはその場から離れて港町に向けて進もうとしたけど。

「ただで帰すわけがなかろう愚か者共!!」

「何でだよ!俺たちはここを言いふらすつもりは一切ない!!」

「口では何とでも言える。人間共と人間共に付き従う貴様等の言うことが信用なるわけがなかろう。1人や2人は始末しておかねばならん。」

「ふざけんのも大概にしろよ?獣風情が」

ラウさんがものすごい殺気を放ちながらそう言って、双剣を抜刀する。

「ふん!貴様程度の実力で我をどうにか出来るはずがなかろう。この地は我らの土地。人間共には障害物も足場も悪い。例え貴様が我より強かろうとこの地では半分も実力がでまい?」

「ちっ!」

ラウさんはすごく悔しそうだ。

シャスティや翠ちゃんたちも戦う気みたいだけど、カルナが止めてた。

多分、シャスティたちでも例え勝てたとしてもかなりの重症を負うことになるとわかったからだと思う。

「だが、我も鬼畜ではない。特別に条件を出そうではないか。」

「・・その条件って言うのは何だ?」

カルナが睨みながら聞く。

「そこの小娘を差し出せ。その人間1人と我と戦おうではないか。我は優しいからな、手加減してやろう。我の気が済めば全員生きて帰れるぞ?ただし、誰1人として乱入は許さぬぞ?その場合は直ちにその小娘を殺すからな。まぁ、腕の1本や2本は少なくとも食らってやるがな。」

「そんなの許す訳がないだろう!!!まだ子供なんだぞ!!!ふざけるな!!」

「ふざけてはおらん。貴様等にとってはその小娘が長であろう?であれば、その長と戦うのが当然であろう。」

「例えそうだとしても、俺やシャスティさん、翠さんでも良いだろう!!俺たちの方が実戦では強いんだぞ!!」

ラウさんがそう言って私をかばってくれる。

「ふん!その場合は、全員と殺し合いをするだけだ。その場合は、我を殺すまでは全員生きて帰すつもりはないがな。」

{ラウさん、良いよ}

「ですがリア様!!」

「そうだリア!!ムリする必要はない!!やり方は他にもあるはずだ!!」

{私1人の犠牲で済むなら良いことですよ。それに、死ぬわけじゃないもの。}

「だが!!」

{やろうと思えば、あの狼さんはとっくに私たちを殺してますよ。みんなで戦って勝てたとしてもそれはあの狼さん1匹の時の場合。あの村の中には他にも狼さんみたいに強い子たちがいると思います。そうなったら、絶対全員殺されてしまいますよ。}

「リア様・・・」

{ありがとうございますラウさん。私は精一杯頑張りますから。それに、死に別れじゃないですから大丈夫です。お母さんみたいに二度と会えないわけじゃないでしょう?}


そう言って、私は翠ちゃんとラナちゃんをラウさんに預け、狼さんの元に歩き数メートルほど距離を開けて立つ。

「覚悟は決まったか?」

-約束通り、私以外にはみんな無傷で見逃して下さい。-

しゃべれないし、念話の対象外だから使えないので触手を広げて出して、翠ちゃんのように文字をくぼませて映し出してお話しをする。

「約束は守る。貴様はしゃべれないのか?」

(コクリ)

-私はどうなっても良いですから。絶対にみんなを見逃して欲しい。元々ここは私が偶然見つけて気になったんです。カルナたちは私に付き合ってくれただけです。関係ありませんから。-

「まぁ、ごたくはどうでも良い。貴様は最も危険な存在だ。この結界を完璧に感知出来ているからこそな。まぁ、約束通り貴様も殺しはせぬ。故に、実力を削らせてもらおう。では、せいぜい抗え!!!」


そう言って、狼さんは私に合せてスピードを落として突っ込んできた。


そして私は、何の抵抗もしなかった。

すると、狼さんによって左腕が肩からきれいに食いちぎられた。


痛い

すごく痛い。


顔をしかめてしまうほど痛い。

本来なら泣き叫んだり泣き転げたりするらしいけど私は我慢する。

あの頃の絶望に比べたらまだ我慢出来るから。

私は耐える。


おびただしい量の血が左腕の合った場所から流れていく。


そして、私の左腕を飲み込んだ狼は叫んだ。

「なぜ抵抗しない!!なぜ抗わない!!!貴様の実力であれば少なくとも防御は出来たであろう!!なぜ!!なぜぇ!!!!」

おびただしい量の血が流れていく中、意識がもうろうとしながら私は答える。

-あなたは、すごく清らかで優しいから。-

「何を馬鹿なことを言っている!!我は、貴様等が本当に他言しないと分かっていながらこんなことをしているのだぞ!!」

-それは、仲間を護るためでしょう?私たちにこんな危ないことに何のためらいもなく首を突っ込まないように注意してくれたんでしょう?-

「・・・・」

-それに、本当に手加減してくれましたし杖さんを持ってない左腕を狙ってくれました。-

「だが!!我の能力で二度とその左腕が戻らないのだぞ!?なぜそうまでして怒りをぶつけない!!悲しみをぶつけない!!なぜ!貴様はそこまでして感情を押し込め、表に出さないのだ!!!なぜ!!・・・なぜなんだ・・・」

-あなたは、仲間のために、私たちの今後のために頑張ってくれました。私も、一番少ない被害で済ませることが出来ました。そんなあなたのように心が白くてまっすぐな狼さんに私が攻撃なんて出来るはずもありません・・もう、信用してくれているのでしょう?-

「あ・・あぁ・・・・」

-では、私たちはすぐにここから離れます。絶対に喋らないので・・・では、-

そう言って立ち去ろうしたけど、私の目に映る世界が全て歪んでいく。

足下がふらついて意識がもうろうとしてくる。

魔法で細かい操作をいっぱいしたからかな・・それとも、魔法とは言ってもいつもからは考えられないくらいいっぱいおしゃべりしたからかな・・。


「おい!娘!!しっかりしろ!!」

「リア様!!!」

「翠!!すぐに治療だ!!シャスティも調合薬を早く!!血が足りない!!」

そんな声を聞きながら私の意識は闇へと沈んでいった。



-ラウ-

「翠は止血しながらギリギリまで【回復強化】しろ!!今は体力なんて気にする必要はない!!命重視だ!!ラナは徹底的に異物排除!!シャスティ!!調合急げ!!」

カルナさんがいつもからは想像も出来ないほど追い詰められた表情と声音でシャスティさんたちに指示をする。

俺は、辺り一面に大量の血を流し肌が青白くなっているリア様を支えている。


・・俺は何も出来ない。

ただただ左腕を失い、大量出血で倒れているリア様を見ていることしか出来ない。


悔しい。

すごく悔しい。

俺は守ると決めたのに。

なのに俺は何も出来なかった。


頭では分かってる。

リア様があの狼は心が白いと言った。

俺もあの狼の立場であれば同じことをしたと思うし、リア様の立場になればそう決断したと思う。

けど、どうして左腕を失ってまで・・・何の抵抗もしないんだよ・・。

あのとき・・・あいつは抗えと・・戦えと言ってたんだ。

あのときリア様は全力で戦って物語のように分かち合えたかもしれないのに。

左腕を失わずに済んだかもしれないのに。


分かってる。

リア様はどこまでも優しい方だ。

相手は悪ではない。

そんな相手と争ってしまっては駄目だと瞬時に判断したんだ。

子供の意地だと一言言えばそれで終わりだ。

けどそれを実行するのは世界を知らない子供でも、自信過剰な大人でも決して簡単にはできないことだ。

それも、自身の腕を失うか・・もしくは死ぬ可能性だってあった。


そこをリア様は、自分自身を犠牲にして俺たちを守った。

結果だけを言うと、あっさりとあの狼は俺たちが敵ではないと分かってくれた。

その証拠に、ものすごくオロオロしながら俺たちの近くをウロウロしている。

初めて出会った時の厳つさはどこ行ったと正直言いたくなるほどだ。



「む、娘は大丈夫・・・か?」

ものすごくしゅんとした感じでそう俺たちに聞いてくる。

最初に出会った狼と同一人物(狼物?)とは思えないほどだ。

どことなく体のサイズが小さく感じる・・気のせいだと分かってるのに。


「カルナさん・・どうですか?」

「あぁ・・とりあえず応急処置は完了した。後はシャスティの調合薬と翠の【回復強化】を様子を見ながら使ってく感じだな・・とりあえずは問題ない。リアが回復関連の効果を普通より強く影響されることが幸いした・・。」

「よかったぁ・・・」

良かった。

本当に良かった。


「本当に良かった・・・それと・・本当に申し訳ない・・。わびとして我を煮るなり焼くなり好きにしてくれて構わない。この命を差し出そう。」

「結論から言うぞ・・俺たちはお前を許す気はない。」

カルナさんが真剣な表情でそう言う。

「・・」

静かに狼は話しを聞く。

「だが、命は奪う気はない。」

「いいのか・・?」

「その代わり、全力で生きて仲間を守り抜け。・・・死ぬって言うのは逃げだ。死んでもリアの腕は戻ってこない・・嫌な気持ちしか残らないんだよ」

その言葉にはすごく説得力があった。

おそらくペチュニア様のことを思い出してるんだと俺はすぐに分かった。

「わかった・・全力で生きよう。全力で仲間を守ろう・・・だが、何かわびをさせて欲しい。俺はその娘の未来を奪ってしまったのだから。」

すごくまじめでまっすぐな性格なんだと思う。

人であれば、騎士の鏡と言えるような存在だったのだろうなと内心で思う。

「その辺りはリア自身に聞いてくれ。・・俺たちとしては、リアを養生させる場所を貸して欲しい・・ムリならムリで出来そうな場所を案内して欲しい。」

「わかった。では-」

「では、儂が預かろう。」

「長!!」

やってきたのは、1メートルほどの大きさの梟だった。

色は、青みがかった白だ。

確か異世界人が言うところのシロフクロウと言う種類の姿だったはずだ。

色はともかく。

「時間がないようじゃからなサクッと説明する。ここは隠れ里。儂らにもこの隠れ里にも名はない。儂らのような世間的に珍しい善なる心を持った生き物たちが集まって出来た村だ。儂らはお主らを歓迎しよう。」

「お気持ちはありがたいですが、俺とリア様・・彼女は人間です・・よろしいのですか?人間は憎いのでしょう?」

「先ほどのやりとりは儂も一部の村の者たちも結界の中から見ておった。故に全員問題なしという結論が出た。彼女は儂らから見ても神聖なモノを感じる。かなりの善人であろう・・それと、先ほどのやりとりでその内面もその纏う雰囲気に相違はないと決断された。故に皆、問題ないと言っておる。」

「では俺は・・」

「お主は儂らからするととてもわかりやすい。確かに気配はかなり薄く感じるが、その気持ちはどこまでもその娘さんの為だ。そんなお主だからこそお主も含めて歓迎する。」

「ありがとうございます。」

「そして・・・」

「はい・・」

フクロウは狼に向かった。

「”あの方”より罰はなし。先ほどのその娘さんへの誓いを忘れるなとのことだ。」

「分かりました。・・本当に申し訳なかった。」

「・・言葉は代わりに受け取っておきます。」

「それにあともう1つ歓迎する理由があるのじゃ」

「もう1つとは?」

「その娘さんが持つ杖じゃよ。」

「杖ですか?」

リア様からは懐いてくれたとても頼りになる杖さんで、じいさま?という人からもらったと聞いていたが。

確かじいさまと言う存在は、あのリア様を苦しめた元奴隷のクズ領主の町で盛大にやりかえした人物の親だったな。

「リア様からは、仲良くなった杖さんと聞いておりますが。」

あまり多くを言わない方が良いだろうな。

「ふむ・・”あの方”であれば分かるであろうが・・儂としてはまだ確信が持てぬな。・・1つ聞いて良いかな?青年よ」

「はい」

何度か出ているあの方というのは、おそらくこの長であるフクロウよりも上の存在と言うことだろうな。

「どうやってこの場所を突き止めたのかな?純粋な興味じゃ。ここに張られている結界は、いわゆる人払いや隠密関係を強力にしたモノじゃ。」

正直に言って良いのか?

カルナさんが小さく頷いた。

「リア様にはここに張られている結界も、その中の光景もはっきりと見て感じることが出来ているようです。」

「!!・・では、やはりそうか。」

「あの・・余り長居するのは・・」

「おっと、そうじゃな。娘さんに負担をかけてしまうな。では、参ろうか。続きは後でな。」

「かしこまりました。」

「かしこまらんでよいよい。これは、わびでもある。好きなように過ごしてくれて構わぬ。さすがに他者にバラしたり儂らを売ったりするようなことは許さぬがな・・ないとは分かっておるがな。」

「承知しております。お世話になります。」

「ではこちらじゃ。」

そして俺たちは、ひょこひょこと歩くでかいフクロウの後に続いて歩いて行く。


・・リア様が持つ杖とは何なんだろうか?

カルナさんが言うには、大事なつながりの証ともリア様の職業と密接な関係があるとも聞いているが・・・まだその辺りは詳しく聞いていないんだよな。

と言うより、リア様は協奏師と魔法使いじゃなかったのか?


・・・聞ければ聞こう。



俺たちは結界を抜けると、リア様が言っていたとおりの光景が広がっていた。

様々な動物や自我がはっきりしている植物たちがそれぞれの生活をしていた。

種族によって家の形もサイズも異なりとても不思議な気持ちになる。


その道中、かなり注目されたがフクロウが言っていたとおり俺たちは嫌な視線で注目されることはなく、不思議そうに、そして好奇心を隠すような感じで見つめられた。


ちょっとだけムズかゆいな。

まぁ、悪くないだけ良いか。






そして、木で出来たテントっぽい形の建物(サイズは縦横高さ全て5メートルとかなりでかい)に案内された。

最低限の家具や寝具はあった。


そこでリア様を寝かせ、翠さんがリア様の体を包み込んだ。





「では、続きを話そう。結論から言うと、この里は世間で言うところの英雄賢者様が大昔儂らのような存在のために作ってくれた場所なんじゃ。」


英雄賢者様・・

今から100年か200年と俺たち人間からするとずいぶんと昔にいたとされる英雄のことだ。

確かに勇者は存在している。

だが、勇者と呼ばれる存在はこの世界とは異なる世界から転移してくる異世界人と呼ばれる存在の一部の人間がそう呼ばれる。

異世界人の中でも異常なほどの実力を持っているらしい。

そして、この世界から非常に優れた存在は英雄と呼ばれる。

逆に悪に染まれば邪のつく存在だったり魔王だのなんだとの言われるようになるが、一部の噂では魔王という存在が悪という存在とイコールではなく、そう言う種族の一部分なだけでそれはただの偏見だという話もある。


・・話を戻そう。

で、英雄はいくつか別れる。

回復に優れていれば聖女だったり聖人だったりと呼ばれるし、剣に優れていれば剣豪だの剣神だのと呼ばれる。

つまりは、それぞれの強みに偏った名称をつけることが多い。

その中でも魔法。

雷のみに特化すれば雷神だの、火特化であれば火神だのと言われるが、その中でありとあらゆる種類の魔法を手足のように操ったり、1つの魔法で異常なほどの手数と威力を兼ね備える魔法使いの中でも最も優れ、優秀だという存在は賢者と呼ばれる。

賢者と呼ばれる存在は、清らかな心を持ち続ける必要があることが1つと、常に魔法関連を鍛え、魔法のみに特化したスペシャリストがその職業になることが出来る。

王族のように血筋でそう言う職業になりやすいこともあるが、その場合は(仮)がついたり予備軍とついたり、それに近い別の職業になったりする。

つまりは、賢者という存在は先ほど例にあげた剣神や雷神よりもなることは非常に難しいんだ。


で、英雄賢者様が何をしたかと言われると簡単に言えば世界中を単独で一生涯をかけて旅をして立ち寄る場所や通りすがった状況で数多くの平和をもたらしたと言われている。

悪は捌き、弱者は助けた。

戦いでも、メンタル面でも、環境面でも。

とにかくありとあらゆる方面で助けたのだとか。

そのため、英雄賢者様は助けるという行動が人の形をしていると言われてたりするほどだったらしい。




「なんと・・では、ここら一帯に張られているあの結界は英雄賢者様が?」

「そういうことじゃ。そして、娘さんの杖が密接に関係しておる。」

「まさか・・」

話しの流れからすると・・まさか・・マジか・・・嘘だろ?

「あぁ、確信は持てぬがほぼ間違いなくその杖はその英雄賢者様が使っていた”賢者の杖”じゃ。そして、その娘さんが契約していると言うことは・・」

「リア様は、継承者・・」

「であろうな。」

「カルナさん・・・本当なのですか?」

「はぁ・・さすがに黙ってるわけにはいかないな。あぁそうだよ。リアは英雄賢者様の正統後継者であり、この杖はその英雄賢者様が使っていた本物の賢者の杖だ。そして、その杖の契約者がリアだ。その証拠に”英雄賢者の正統後継者”という称号を実際に持っている。」

「まさか本当に・・・」


リア様はそんな賢者だという。

・・・驚いたことが1つと、神様に愛されているということもあり、同時に納得した。

リア様ほど一生懸命であんなことがあったにもかかわらず清らかな心を持ち続けた人物はそうそういない。

納得だ。


「なるほどなぁ。それであればここを見つけられたというのも納得がいく。」

「リアは過去にかなりつらいことがあって自分自身の感情を表に出せないんだ。だから俺たちを優先してしまった結果、今回のように自分自身を犠牲にしてしまう・・・頼む、しばらくリアをここで休ませてくれ・・・リアはきっと目を覚ますとすぐにでもここを出て先に進もうとするだろうからな・・・・。元々そう言う約束であんなことをしたんだから。」

この左腕を失ったやりとりのことだ。

「なるほどなぁ・・承知した。どのみち2代目賢者様はこの里にとってはとても無下には出来ぬ存在であり、儂らにとってもとても大事なお方だ。そんな方と仲良くしたいと、そしてわびをしたいという理由でとどまらせてみよう。その間の食料なども遠慮しないでくれ。」

「世話になる・・」

「今回に関しては、色々と不遇が重なっただけじゃ。後は、本人たちに任せようではないか。」

そして俺たちは、この隠れ里にしばらくやっかいになることになった。



それからの俺たちはと言うと、この里に住んでる者たちが入れ替わり立ち替わり挨拶をしに俺たちの元に来た。

そして、手土産に彼らお手製だったり狩ってきたのをくれた。

歩き喋るキノコたちからは、食べて安心でおいしい(らしい)キノコ、

様々な種類の鳥たちからは無精卵(有精卵も産もうと思えば出来るらしい)。

そして、ここら一帯の森から木の実や薬草などをくれたり、狩ってきた魔物の中で食べれるものだったりと。

リア様のことを案じてくれているのは俺の目で見てもわかるほどだったのが、内心ではとてもうれしかった。

俺たちは、そんな彼らの相手をしつつも交代でリア様の看病をしながら里の中を周り手伝えることを積極的に手伝うようにした。

ちなみに、翠さんとラナさんはリア様につきっきりのため離れる気はないし、予定もない。

それに関しては出会った当初からずっとだから普通だ。


カルナさんたちはあっさりと馴染んだが、俺自身は人間。

リア様も人間だが、英雄賢者様の正統後継者であり、とても清らかな心の持ち主だからあっさりと受け入れられたが、俺自身はどうなることかと正直心配していたが、あのフクロウが言っていたとおり、俺は彼らからするとわかりやすいらしくリア様を心配する俺のことを見て意外とあっさりと受け入れてもらえた。

だが、それでも俺はカルナさんたち以上にそんな彼らの手伝いを積極的にするようにした。

正直言うとリア様が心配だからずっとそばにいてあげたいが、まずはこの里で人間である俺が彼らと仲良くなることが最初だと思いそうしたんだ。

後は、彼らの手伝いをしながら俺自身のレベルアップをする為に模索中というのも理由の1つだったりする。

俺自身が今以上に優秀にならないといけない。

どんな場所でも、どんな状況でも俺自身の力を100%以上出せるようになるために。

そのために、手数を増やすための何かを捜すために。


俺は、そのことを片手間に考えつつ、彼らのお願い事や手伝いに勤しむ。

そんなフォレストロードの隠れ里での生活が始まった。

次回は4月4日に投稿します

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