初めての人
「はぁ・・・気持ちは分かるが、ムリはしないでくれよ・・・ホントに気持ちは分かるけどさ・・・俺たちが無茶して倒れたらマスターだって心配するだろう?な?俺たちだって心配なんだ・・俺たちのためを思ってくれるならムリしないでくれ」
(・・コクリ)
ムリしていっぱい歩いて転んで気絶した後、目を覚ましたら猫さんに介抱されつつ、鳥さんから注意されました。
うん、言われて見ると逆に鳥さんたちが私のためにいっぱい頑張って倒れたら私泣いちゃう・・うん・・気をつける。
「よし、気持ちが分かってくれれば良いんだ。とりあえず、あそこで野営しよう。幸いなことにほとんど何もせずに雨風がしのげる感じになってるからな。」
嘴で指す方を見たらそこには不思議な形のおっきな木がありました。
根っこって言う木の下のところで土の中にあるのが土の上にあって、そこが洞窟になってるんだけど、その先は私が横になって脚をいっぱい伸ばせるくらい広いところになってた。
だから、ありがたく夜は、ここで休ませてもらうことになったの。
鳥さんが言うには、こういう形の木は滅多にないから休もうとしたときに見つかったのはすごく運が良いんだって。
運が良いってすごいって言われてもお外が初めてだからどう反応すればいいかわかんないよ?
まぁいいか。
入り口は、子供である私だと余裕だけど大人の人だと難しそうなくらいの太さだから、そこを鳥さんと猫さんが交代で見ててくれるんだって。
私も一緒に夜の番をした方が良いんじゃないかって思ってたら、休んでもらった方がありがたいっていわれたので素直にお休みなさい。
眠ったときはお空はオレンジ色ですごくきれいなときで、鳥さんが言うには普通寝るにはかなり早い時間らしいけど、すごく疲れていたらしい私は目を覚ますと太陽さんがお空のてっぺん近くまで登ってた。
すごくいっぱい寝てたみたい。
ご飯は、猫さんが薬草と木の実を細かくしたり一つにこねたりして作ったお団子もどき?って言うのを食べた。
猫さんは器用で上手だからすごくおいしいと思う。
木の実の味と薬草の組み合わせも私が食べやすいと思えるようにしっかり考えてくれてたらしいし、栄養バランス?も考えてたんだって。
すごくうれしいし幸せです。
それから、私たちは再び歩きます。
草原の時と違って森の中は木の根っことかがあったりしてすごく歩きにくいから転びやすいんだって。
・・実際、転んじゃったし。
だから、いつもよりもゆっくり歩きながら足下をしっかり確認して歩けって鳥さんに言われた。
私は歩くのに精一杯で気づかなかったけど、鳥さんと猫さんは常に周囲を警戒しながら魔物と遭遇しないように道をさりげなく誘導してたんだって。
だから、魔物と全く遭遇せずにすんだんだって気づいたのはずいぶん後・・・と言うより、普通に歩く体力がついて周囲の警戒を歩きながら出来るようになった頃の話し。
そんな感じで、よたよたと一歩、また一歩とゆっくりと進みながら休憩をしながら進みます。
どこまで進んでも木がいっぱいだからいっぱい進んだのかどうか分かんないけど、鳥さんたちが道を教えてくれるから迷子にはならない。
・・1人だと多分迷子になる。
鳥さんが言うには、森の中は迷子になりやすいんだって言ってた。
で、脚が痛くなってきてそろそろ休憩をしようって言ってた時に鳥さんがすごく慌てた感じで私に叫ぶ。
「マスター!ストップだ!」
どうしたんだろう?
と首をかしげると。
「・・・悪いマスター・・魔物共を避けながら進んでたんだが、無駄に頭が良い奴らだったみたいでな・・囲まれた。落ち着いてくれ、まずはそこにある大きな木のところへ行こう。背中をとられないようにしないといけないからな」
鳥さんはいつも正しいから言うことを聞いてなけなしの体力を使っておっきな木のとこに行って立ったまま背中を木によりかける。
背中をとられちゃ駄目って言うのは、魔物にぐるっと囲まれないようにする為の基本の1つなんだって。
確かに言われて見ればそうだよね。
ぐるっと囲まれていたいことされるよりは、見えてる範囲だけの方が囲まれてるときより襲ってくるのは少ないもんね。
で、猫さんが威嚇しながら周囲を警戒して、鳥さんが冷静に周囲を私の頭の上辺りで浮かんだまま観察してる。
「チッ!トゥルマドッグかよ・・面倒なのが・・」
トゥルマドッグ
狼ではなく犬の魔物
サイズ的には中型犬
速度や実力は中型の犬の平均よりやや上くらいで、火を吐いたりと言った遠距離攻撃は一切できない代わりに群れで行動する。
1体見つければ50体にすでに囲まれていると思えと言われ、1体は問題なくとも群れをまとめて相手にするのは非常に厄介と有名。
獲得部位:魔石、牙か毛皮のどちらか
「マスター!絶対にそこから動くなよ!!」
言われた通りおっきな木に背中をくっつけた状態で立ったまま動かないようにします。
魔法も使えないし、戦うなんてできないからどのみち無理です。
でも、なけなしの体力を使っていざってときはこの杖さんでたたくんです。
だから、両手で持って構えておく。
その犬たちはいっせいに襲い掛かるってことはないから数匹ずつで襲ってきたけど、猫さんが尻尾を振るって
-ボグッ!-
って音を立てて犬の首にあてて吹き飛ばす。
そして、ザクっと爪を10センチくらい伸ばして次の犬の目のあたりを切り裂くを繰り返してる。
鳥さんは、犬の目をつついたり、3本ある足の爪で、目とか顔をガリガリって詰めかけてた。
猫さんに比べたら血がぶわってならなくてじわってくる程度だったけど、鳥さんが攻撃した後は犬の動きがおかしくなってから魔石とかだけになった。
後で教えてもらったんだけど、鳥さんの足の爪には毒があるんだって。
鳥さんが言うには、遅効性?っていうタイプなんだって。
でも、私を守りながらだったから鳥さんが言うところの後手に回ってた。
「マスターあぶねぇ!!」
鳥さんが叫ぶのとほぼ同時に私に向かって犬の群れの中で一際大きい(大型犬くらいの)1匹がとびかかってきた。
私は無意識に構えていた杖をまっすぐ犬に向かって突くように伸ばしていた。
運が良かったことに私の力はたいしたことがなくても犬の方から突っ込んできたから自分で勝手に刺さった。
そして、石と牙だけになった。
「よし!マスターナイス!だがごめん!」
鳥さんのごめんは私のところに犬が襲い掛かってきたことに対してだって後で教えてもらった。
謝ることなんて全くないのにね?
今もいっぱい守ってくれてるのに十分だよ。
けど、そんな偶然は、2度も通じなかった。
元々体力がゼロに近い状態で足ががくがくしててボロボロだったのにさっき犬を一匹倒したのは最後のなけなしの体力だった。
つまり、2匹目を同じことするには無理があった。
それにあっちはいっぱいいるのに私たちは3人だけ。
しかも、私っていう足手まといがいる。
私はもうだめなのかなぁ・・
まだまだいっぱい初めてがあったかもしれないのに・・
でも、あの時死ぬはずだった私が今日まで生きただけでも十分幸せだったよね。
私の中には、あきらめでいっぱいのはずだったのに、目からいっぱい涙が出てきた。
あれ?
どうして涙が出るんだろう・・・
私を襲ってくる2匹目の犬は中型サイズだったけど私が振るう杖を軽くかわして私に向かってかみつこうとしてくる。
私程度だったら簡単に食べちゃうんだろうなぁ
って、
「マスター!!!くそ!!間に合わねぇ!!!」
鳥さんの慌てる声と、猫さんの怒号のこもった鳴き声が聞こえる。
あれは、猫さんの邪魔をする犬たちにどけぇ!!って言ってたんだとか。
私は最後くらいは痛くないようにしてほしいなぁって思いながらぎゅっと杖を抱きしめたまま目を閉じてると
「ぎゃん!」
「水よ!!切り裂け!!」
「おぉりやぁぁ!!!」
「どけどけどけどけ~!!!!!」
「どきなさい!!!」
いつまでたっても痛くない。
ホントに痛くないように死んじゃった?
って思ったけど、前に鳥さんが言ってたみたいな疲れとかそういうのを何も感じなくなるってのはなかった。
だって、足が相変わらずがくがくするしいっぱい疲れてるし。
で、そぉっと目をあけると目の前は真っ青だった。
後にその真っ青はローブっていうお洋服だったと気づきました。
「大丈夫!?すぐに手当てしてあげるから!その前に!いたいけな幼女相手に犬ども!!何してるのよ!!!」
「うわぁ!気持ちはわかるが落ち着け!!」
「そうだよ!落ち着いて!!」
「俺らを巻き込むつもりか!?げぇ!!まじでやる気だ!!」
「水よ!わが想いに応え、わが敵全てを貫きなさい!!!!」
「しゃがめぇ!!!巻き込まれるぞぉ!!!」
「ひぃっ!」
きれいなお姉さんの声がするなぁって思ったら、お姉さんの声はあっという間に怖い声になった。
それから、そのほかに聞こえるお兄さんたちと他のお姉さんの声はすっごい慌ててる。
それから先は、あっちこっちで犬の悲鳴といろんなのが切れて倒れたり貫かれるような音がしばらく続いた。
「ふぅ!!すっきりしたわ!」
「だろうな?森をあっという間に更地にしちまって・・ったく・・お前は短気すぎるんだよ・・」
「全くだ・・いつか俺・・魔物じゃなくてこいつに殺される未来しか感じない。」
「それは・・・否定できないけど、言わない約束だよ・・仲間なんだから。」
「アンちゃん?後で一緒に二人っきりでお話しよっか?」
「ひぃっ!ごめんなさ~い!!ご飯当番1回代わりにするから許してぇ!!」
「まぁ、良いでしょう。」
「ふぅ・・」
なんか、すごいことになってた気がする。
鳥さんが言うところのカオスってやつ・・すごく大変なことってらしいけどよくわかんないから、まぁいいや。
「マスター無事か!?けがは!?」
鳥さんがすっごい慌ててやってきた。
ぺたんと女の子座りしてる私だけど犬からはなにも攻撃されてないから大丈夫だよって同じく心配してくれる猫さんと一緒になでなでする。
「ごめん・・敵を倒すことにとらわれて、マスターと距離を取らされた・・気づけば遅かった・・ほんとにごめん。」
「にゃう・・」
いっぱい頑張ったんだから二人は悪くないよって気持ちを込めてなでなでを続ける。
抱きしめてあげたいけどその体力も厳しいから後でね?
「お嬢ちゃんたちは大丈夫か?」
大人の男の人だ。
真っ赤な髪ですごく体は大きくて強そうだけど、優しい顔をしてる人だ。
(コクリ)
「そうか・・・間に合ったみたいでよかった・・」
「今回は、ホント偶然だったんだよ?私が偶然察知したんだから。」
鳥さんと猫さんが戦ってるのを偶然見つけた後に私を見つけて慌てて助けに来たんだって、青い髪を肩くらいまで伸ばしてるお姉さんが教えてくれた。
明るい人だ。
「ほんと大丈夫か?怖くて声も出なかったのか?」
茶髪の髪をツンツンさせてるお兄さん。
「こんなに幼いんだから当然だよ。あれだけの数のドッグどもに囲まれたら下手すれば下位の冒険者でもやばいレベルだよ?あれ普通に1パーティだけで対処するのは中位レベルだし。」
「私たちはぎりぎりって感じだからね~」
私のことを一番心配してるのは、クリーム色の髪を背中の真ん中くらいまで伸ばしてるお姉さん。
「ところで・・今更だけどそっちのカラスさんはしゃべった?」
「しゃべれるぞ?」
「ほんとにしゃべってた!気のせいじゃなかった!」
「んで・・助けてくれてホントに助かった。おかげでマスターを殺されずに済んだ。」
「にゃう」
「マスターってことは、君たちはその子の獣魔?」
「獣魔ってなんだ?」
「え?獣魔っていうのは主と僕・・っていうか、主に従うっていう契約を結んでる魔物のことよ?」
「へぇ~で、その契約ってどうやったらできるんだ?俺らは、マスターのためにそばにいるだけでそういう契約とかは何もしてないぞ?」
「にゃうにゃう」
そうそうとうなづく猫さん。
「え!?自主的!?」
「ま~そうだな。ってか、この幼女に契約とか出来るように見えるか?幼女だぞ?」
「あ、あぁ・・・・うん。じゃあ、自己紹介しとくね?私がリリ、あっちから順にダン、ゼル、アンね」
青い髪で水で周囲の犬を倒したのがリリさん
赤い髪のお兄さんがダンさん
茶髪のお兄さんがゼルさん
クリーム色の髪のお姉さんがアンさん。
「で、君たちは?」
(?)
「ん?」
(??)
「ん~?」
何を言えばいいの?
って首をかしげてたら一緒に首をかしげるリリさん
しばらくにらめっこしながら首をかしげてたら
「あぁんもう!!この子かわいい!!」
いきなりぎゅっと抱きしめられた。
ついでにそれなりに大きいらしいおっぱいに顔が埋もれて息が大変です。
男の人はこれが好きらしいけど、命がけになりながら楽しむ?なんて男の人ってすごいなぁ。
「っておい!!!強く抱きしめるな!!マスターは弱りすぎてんだ!!骨が折れる!ってか死ぬ!!!」
鳥さんがすっごい慌てながらキレた。
「ごめんごめん・・・って、確かにほっそいわねぇ・・・てか細すぎない?」
「だから言ってんだよ・・・」
「それで、君たちの名前は?」
(フルフル)
「え?」
「ねぇよ?」
全員「え?」
「俺とそっちの尻尾の長い猫は名前なんてないし、マスターにも名前はない。」
「え!?おかしいよね!?」
「おかしくねぇよ。何せ実の親が名付けをしなかったんだからよ。」
鳥さんから怖いオーラ(殺気というらしい)が漏れる。
「・・誰にも言わないから・・・君たちの事情を教えてくれる?この子、細すぎるし、このけがの量・・・・これ、虐待の跡よね?それにこの服・・・スラムとかの子とかそういうんじゃないんでしょ?君たちがしっかりしすぎてるもの」
「あぁ、俺たちも他言しないと誓おう。」
「当然だ。」
「はい。」
「マスターどうする?」
鳥さんが質問してきたので、鳥さんにお任せって頭を撫でる。
「あいよ」
それから、鳥さんは語った。
町の名前とか父親の名前とかは一切知らないけど、領主の娘だったことからこれまでの私の日々の生活について、そして大脱走したときのことを事細かに。
猫さんも尻尾で色々と補足説明してた。
「んだよそれ・・・おかしいだろ・・」
「あぁ、普通はありえない。」
「難産で、体が余り強くなかったんでしょ?そのお母様は」
「あぁ」
「それが産まれた子供のせいなんてありえないでしょ!!それに、冤罪をこの子に押し付けて、なおかつ自分の私利私欲のためなんて許せない!!!」
「とりあえずは大丈夫だと思うぞ?」
「鳥さんは何か知ってるの?」
「俺らがあの町から脱走するときに助けてくれた強面の兄ちゃんが言うには、そいつらの横領とかあれこれの証拠をガッツリ集めまくってたから俺らを逃がした後に思いっきり暴露して社会的に死んでもらうんだって張り切ってたから。」
「町の名前もわかんない。家族の名前もわからない。しかも、ランダム転移の魔法で移動してきた・・・おまけに証拠らしい証拠は何もなし・・・私たちじゃどうしようもないっていうのもほんとだしね・・・その人に任せるわ。気持ちを込めるしかできないけど」
「マスターの母親は言ってたぜ?思いが強ければ言葉は力を得るんだって。」
「へ~素敵なお母さまね」
「その言葉は言霊っていうらしいけどな。」
「特殊な魔法の一種かしら?」
「あの方は色々と不思議な人だったからなぁ。その方が生きてる間は俺やそっちの猫にも優しくしてくれたし飯もくれたししょっちゅう本を読んでくれたしな。」
「・・もしも可能だったら一度会って話をしてみたかったわ。」
「全くだ・・あの方が生きていればマスターは幸せな日を過ごせたはずだ。よし!この話は終わりだ!!マスター、とりあえずもう休もうぜ?もう限界だろう?」
さすが鳥さん、わかってますね。
実は疲れすぎて眠気マックスです。
「にしても鳥さんはよくこの子の状況がわかるわね・・何もしゃべらないし、無表情なのに」
「無表情なのは幸せを一切知らないが故に感情が育たず、中に押し込めちまったからだ。それと、しゃべらないじゃない、しゃべれないんだ。」
「・・・どういうことだ?」
「あのくそ領主は!!!夜泣きがうるさいってそれだけの理由でマスターののどを潰したんだよ!!!!!」
全員「っ!?」
「それひどすぎない!?」
「だから、あいつはマスターの父親なんかじゃない!!屑だ!!ホントは可能なら俺が殺してやりたいくらいなんだ!!!だから俺と猫は2人でマスターを守り抜くって決めたんだ。」
「そっか・・3人の仲の良さとその以心伝心がわかった気がするわ。」
「君たちがこの子の親代わりなのね。」
「まぁな。食事もあいつが持ってくるのは1杯の水と硬すぎて小さいパン1個だけで絶食とほぼ一緒だったから俺らが木の実と山菜、薬草とかを持ってきてマスターに食わせてたんだからな。あいつに見つからないようにしながら忍び込んでたんだよ。マスターが監禁されてる部屋に」
「・・・・あなたたちの立場じゃなくても鳥さんと同じ気持ちになるわそれ・・・」
「で、どこに向かってたんだ?」
「俺らは、向こうに町っぽいのが見えたからこまめに休ませながらそっちに向かってたんだ。」
「あぁ、たしかにそっちの街が一番近いな。ってか、俺らはその街に向かって移動してる途中だったしな。」
「・・・ダメだわ。」
「リリは何やってたんだ?」
「私、水魔法が使えるのはさっきの戦いで知ってるでしょ?」
「あぁ」
「私の水ってちょっと特殊で私の感情にすごく過剰に反応するのよ。だから、倒したいと思えば攻撃力が増すし、治したいって思えば治癒系の力が現れるの。不思議でしょ?」
「珍しいな。・・もしかしてマスターのそのけがを?」
「古傷が多すぎるわ・・顔にけがが少ないのが不幸中の幸いでそれ以外には隙間なんてないレベルで怪我だらけ・・・・なんとなく薄くなったくらいでそれ以上は無理・・それと、のどは無理だったわ・・ウンともスンともしないわ・・・ごめんなさい。」
「気にしないでくれ。あのくそ領主が屑なのが理由だ。」
「そうね・・よかったら一緒に行かない?」
「なぜ?ありがたいが、そっちにメリットはあるのか?」
「助けた縁よ。それに、ある意味では君たちのおかげでこんなに換金するのがあるんだもの。しかも、トゥルマウルフも交じってるし。」
トゥルマウルフっていうのは、あのドッグの1周り大きい大型犬サイズのことです。
体が大きい分強いです。
「君たちじゃこれ全部持っていくのは大変だろうし、お金もあった方がいいでしょ?その子の治療とか服とかね?」
「だが、それらは全部あんたたちのだから俺らがもらうわけにはいかないだろ?」
「何言ってんだ?」
「え?違うのか?」
「違うだろ。あの中で4割はあんたたちが倒してたのは傷跡から判断できる。それに、ウルフの方は3体いるうちの1体は嬢ちゃんがやってるっぽいしな・・偶然とはいえ、ウルフを倒すなんてすげぇじゃん。」
「だから、その分の金の分割なども必要だからな一緒に行った方がこっちとしてもありがたい。それに、君たちが倒した分まで俺らがもらっては気持ちの整理がつかんからな。」
「だが、俺らはあんたたちに何もしてやれないんだぞ?」
「じゃあ、この子がある程度落ち着くまでお世話したいから一緒に来てくれるわよね?じゃないとこの子、私の子にするわよ?」
「誰が渡すか!!」
「なら一緒に来るわよね?」
「・・・世話になる。」
そんなわけで冒険者?っていう戦ったりお手伝いしたりしてお金を集めるお仕事をしてる人たちと一緒に町ってとこに行くことになりました。
そして、私は歩いて体力つけなきゃダメとか、自分で歩かないと迷惑になると思って頑張って歩こうとしたんだけど、ひょいとリリさんに抱っこされてます。
そして、ダンさんの頭の上に猫さんが、アンさんはなぜか鳥さんを肩に乗せて撫でまわしてる。
ゼルさんは猫さんの尻尾と軽く戦いながら進んでる。
なぜに私は抱っこされてる?
と首をかしげてたら
「こんなかわいい子をネグレクトとか屑でしょまじで・・ありえない・・・こんなにかわいいのに・・かわいい//」
すごく幸せそうに私を抱っこしながら撫でまわしてた。
幸せそうなのでとりあえずじっとしておきましょう。
それに、全員から無理して歩くなおとなしくしてろと言われちゃったし。
「悪いな・・馬車とかあればもっと早く着いたし、嬢ちゃんを楽させられたんだが・・」
「こうやって連れてったもらうだけでありがてぇよ。」
「それと、家のリリがすまん・・」
「あぁ・・気にしないでくれ。マスターも頭の上にはてなを飛ばしまくってるけど、楽しそうだしな。甘えさせてあげてくれ」
「・・そうだな。負担にならない程度にほどほどにしろと念押ししておくよ」
「あぁ、そっちは頼んだ。」
「ところでさ、町に入った後に証明書としてギルドカードを作ることになるでしょ?」
「そういや人間って、そういうのが必要なんだっけな。」
「まぁね。で、その時に名前はどうするの?さすがに適当にってわけにはいかないでしょ?人生があるんだから。それに、君たちのも」
「俺たちもか?」
「にゃう?」
「あぁ、獣魔としてのくくりで君たちは登録しとかないと君たちは町で出入りとかできないだろうからな・・」
「その時に俺らにも名前がないと登録ができないと?」
「そういうことだ。種族と名前は最低限必要なものだからな。」
「そうか・・・俺らとしてはマスターに決めてほしかったから気長に待ってたんだけどなぁ・・」
「なんかいろいろとすまないな。」
「良いよ。」
「で、どうやって決めるの?この子もだけど君たちはこの子に決めてほしいんでしょ?しゃべれないんでしょ?」
「簡単なひらがな程度だったら書けないが読めるから、それらを一通り書いてくれればそれで大丈夫だ。」
「その文字を教えたのも鳥さん?」
「いや、そういうのは猫の方だ」
「猫さんが?」
「俺は、知識専門って感じなんだよ。けど、猫の場合は尻尾で文字が書けるし、大抵の家事とか調合とかできるから、そういうのは猫の専門なんだ。」
「ほんとに保護者してるのね・・」
「俺らが育てたと言っても過言ではないからな!」
「確かに・・すっごい説得力ある。じゃあ、あそこにちょうどいいタイミングで洞窟っぽいのがあるからそこで早いけど野営しましょ?そこで決めましょうよ。」
「そうするか・・」
お姉さんたちとお兄さんたちはすごく歩くのが早いから私の何倍もいっぱい進んだ。
私の何日分を一日の半分くらいで進んじゃうんだもん。
で、タイミングよく鳥さんが言うところの洞穴っぽいところがあったからそこで夜を過ごすみたい。
そして、そこで私の名前を決めた後に私が鳥さんと猫さんの名前を決めるみたい。
・・ん~
自分の名前もないのに私なんかが鳥さんと猫さんの名前を付けていいのかな?
鳥さんたちはそれが一番うれしいからって言ってたからいっぱい頑張って考えなきゃ。
「んじゃいただきます!」
「ほれ!嬢ちゃんは一杯食わなきゃだめだぞ?ほれ食え食え」
「こら!!そんなのを食わせたらだめだ!!」
「んでだよ・・肉が一番体力つくんだよ」
「そういう問題じゃねぇよ!マスターは生まれてこの方、木の実と薬草、山菜系をほんのわずかにしか食べ続けてないから、そんな胃にガッツリ来るものを食べたら絶対に吐く!!それはダメだ!!マスター、まだマスターの体じゃああぁいうのを食べたら体がびっくりして気持ち悪くなるんだ・・だから徐々にならしてからな?」
あのお肉は私が食べたら気持ち悪くなる危ないものなんだって。
とりあえず食べちゃダメ・・私覚えた。
お肉アブナイ。
それと、
「はぁ//かわいい//」
移動中はリリさんに抱っこされて抱きしめられてたけど、今はアンさんの膝に乗せられて撫でまわされてます。
アンさんの方がおっぱいが1周りくらいおっきいです。
鳥さんが言うところの着やせ?っていうのをしてるらしい。
それから、猫さんが特製のお団子を作ってくれたのでそれを食べます。
いつものように木の実と薬草、山菜を良い感じに組み合わせた猫さんオリジナルです。
私は数口食べたらお腹いっぱいになっちゃうから猫さんはすごく小さく作ってくれる。
私の年からすると半分も食べてないんだって鳥さんが言ってた。
食が弱って細くなりすぎてるんだって。
で、普通の私と同じ年の子が食べてる量を食べれるようになるのが今の食事の目標らしい。
「ほんと器用だよなぁ・・それどんな味だ?」
「にゃう?」
食べる?って感じで首をかしげて1個作ってて余ったのを尻尾でつかんで渡してた。
「良いのか?じゃあありがたく・・・」
「どう?」
「すげぇ不思議な味。」
「どんな感じよそれ・・」
「野菜ジュースと果物ジュースを良い感じに飲みやすくブレンドしたのを草団子に作り替えた感じ。・・ってかそれ以上の言いようがねぇ。」
「あぁ・・・言いたいことはなんとなくわかった気がする。それが、この子の今のところの栄養剤なのね?」
「食が細すぎるから少しでも栄養をつけてもらわなきゃだめだからな。これはオリジナルだ。」
「へぇ~」
そんな感じで食事は終了した。
「さて、これから名前を決めるための会議を行う・・・・と言いたいが、1つ聞きたいことがあったんだ。」
(?)
ダンさんが聞きたいことがあるらしい。
「嬢ちゃんがずっと持っているその杖はどうしたんだ?」
え?
杖さんですか?
「それは、昔よく聞いたあれと全く同じ見た目だったからすごく不思議でな・・」
「あぁ、それ思った。」
「こもってる魔法とかは今のこの子にすごく重要なサポート系特化って感じでなくはないレベルだから、あの噂の分と考えると補助魔法系もそんなに強いものじゃなくてすごく控えめだし、徐々にその魔法の威力が強化されるようなレベルでもないし・・・」
「なぁ・・その杖が何なんだ?」
「鳥さん知らないの?」
「あぁ、じいさまって人からの選別だって強面兄ちゃんから投げ渡されただけだからな。」
「なるほどな・・・その杖は”賢者の杖”にすごく似てるんだよ」
へ~
って
・・・・・けんじゃさんって誰ですか?
日曜投稿も致しますが、次回は11日に投稿致します。