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陰の支配者-私の保護者は猫と鳥-  作者: ミコト
最終章-異世界組攻略編-
173/177

異世界組故郷へ帰る ※本編とは関係のない挿絵

--シリル--

師匠のおかげで無事に異世界へ帰るための帰還魔法(師匠命名:返品魔法)が発動し、初代賢者であり、現在の神様の桜華さんと師匠の母親であるペチュニアさんと俺たちは真っ白な空間で遭遇した。

どうやら、この空間は、天界ではあるが言ってしまうと会議室とかレクレーションルームみたいな扱いの空間なんだとか。



「だとしても、ペチュニアさんの魔法って一撃一撃の威力がエグすぎませんか?」

ペチュニアさんと模擬戦をしてぼろ負けして思ったことを言ってみるとそりゃそうだろという感じでうんと頷かれた。

1つ1つの魔法に込められた魔力量や魔力密度が、師匠が放つ魔法よりもずっと少なかったし低かった。

それで、師匠以上に魔力を込めてたとか、魔力密度が高かったと言うなら威力が高いのはわかるが、それが低いのに師匠のよりも威力が高いのは不思議でならない。

「でしょうね。リアちゃんも魔法戦特化だけどどっちかというとオールマイティ且つ技巧派でしょ?」

「ですね。」

扱う武器の種類の多さから魔法反射という技術面に特化してるからな。

師匠の十八番の【影爆弾シャドーボム】も威力が高い理由は師匠が持つ複数のワザを組み合わせたことで1+1+1+・・・と続き、それぞれのワザの組み合わせの相性が良かったことで途中で偶にプラスされる数字が3だったり4だったりに変化したような感じであのようなすごい威力になるんだ。

「けどね?私の場合は、技術とかそういうのを全部捨ててとにかくパワー戦オンリーなのよ。物理系は病弱キャラだったから一切無理だったし。言ってしまうと補助系魔法も防御系魔法も一切無理な攻撃魔法特化。」

「と言うと?」

なんとなくわかるが一応詳細を聞いてみる。

「例えばグリちゃんの場合は複数のスキルを同時に使うと1+1は2とかじゃなくてそれぞれのスキル同士で言ってしまうと4とか5とかになるでしょ?」

「ですね。だからグリムは火力面ではトップレベルを誇りますから」

「私の場合は、軽く言うとグリちゃんの上位版って感じなのよ。グリちゃんの場合は、技術と火力で3対7くらいの感じでしょ?」

「そうっすね。」

「私の場合は10割火力なのよ。加護も称号もとにかく威力増加ばかりで、スキルも威力を上げるモノが多いし、重ね掛けしたら化学反応でも起こるかのように威力が2倍どころか3倍4倍に軽く跳ね上げちゃうような感じね。その代わり、身体能力はリアちゃん以上に紙装甲だし、魔法面での防御も素人に毛が生えたような感じだから魔法は魔法でも攻撃魔法特化って感じね。リアちゃんの場合は万能型の魔法特化だから。」

すごく納得した気がする。

だからこそ、やられる前にやってしまえと言うことで、先手必勝でガンガン系の攻撃だったのだろう。

それにしても、俺たちと同じ異世界人だというのも理由の1つかもしれないがすごく教え方が上手くて、わかりやすい。

師匠は基礎に忠実な努力家だとたとえるなら、ペチュニアさんは感覚派。

だが、モノのたとえ方が上手いから感覚でなんとなく行っていたとしてもその辺りがより鮮明に理解出来る。

言葉にするのは難しいが、師匠とは違う感じでわかりやすいと言うことだ。


「さて、楽しい時間もそろそろ切り上げて、本題に入るよ。」

桜華さんのかけ声で全員が素直に従う。


ちなみに余談だが、師匠はそんなペチュニアさんのひざの上で愛でられつつも甘えており、アルナさんはペチュニアさんにもてあs・・・楽しまされ、現在はペチュニアさんの腕の中で口から魂が抜けかけた状態で意識が飛んでる。

「はぁ・・ペチュニアさん。アルナさんで遊びすぎです。意識が飛んでるではないですか。」

「あらま。あまりにも良い感じだったから手加減をミスったわ。えい。」

「っ!?・・はっ!」

「これでいいでしょ?」

「はぁ・・アルナさん。とりあえず話を進めますね。」

「は、はい」

あまりにも手が早すぎてよくわからなかったがアルナさんの胸に何かしたのはわかるが・・深く追求はしないでおこう。

そして、アルナさんは微妙にペチュニアさんから距離をとっているが、足腰ががくがくしているせいなのかろくに動けないようだ。

で、それを面白そうな顔をしているペチュニアさんはニヤニヤしながら手をわきわきさせてアルナさんを眺めてる。

これは思い切りおもちゃ認定されたな・・ご愁傷様。

え?

助けないのかって?

いやぁ・・これ、間違いなくそんなことすれば間違いなくペチュニアさんのおもちゃに自ら志願したことになり、遠慮なし問答無用で弄ばれるでしょう。

だから、アルナさんは百合街道まっしぐらに連行されるだけだから、命に支障はないから見なかったことにするんです。

決して生贄じゃないです・・たぶんと言い聞かせてる。

他の連中も似たようなモノだ。

一部はアルナさんに合唱して無言で謝ってるし。

人によっては、ご褒美になるかもしれんが。

美人だしスタイル良いし。




「とりあえず、フリージアさんたちが開発してくれた返品魔法は簡単に言えばその場にいた多くの人の強い善なる思いに答えて僕たちがいるここ天界に一旦転移させる魔法になるね。」

一応儀式魔法になるからものすごく膨大な魔力が必要だけどねと桜華さんは告げる。


どうやら、あの魔方陣に多くの魔石と該当者による魔力を注ぐことと、故郷のことを強く全員が願うこと、

そして、全員が善人であることが条件だったようだ。

「どうして天界を経由するんですか?」

イメージとしては遠回りをしているような感じだし、逆に面倒にならないか?

「んー、そうしないと地球は地球でも時間軸が違ったり並行世界で似ているようで違うところに飛ばされたりと逆に面倒なことになりかねないんだよ。」

あぁ、なるほど。

俺たちが願う故郷と該当するキーワードが多い世界が絶対に1つだけとは正直に言えない。

それなら確かに違う場所へ飛ばされることになる可能性は高い。

「だから、一旦僕の元に飛ぶようにしたんだ。後は、僕が君たちの故郷である地球を管理している神様に交渉してきちんと元の時間軸に帰れるように頼むんだ。結果として相手側も喜んで協力してくれたよ。」

そうか。

師匠が教会で毎日念入りに祈れといった理由がわかった。

言い方を悪くすれば、神様というものすごい協力者に対する印象を良くするためでもあったのか。

「それで1つ注意事項があるんだけど、元の世界に帰れはするけど以前と全く同じではないから注意してね?」

「それはどういう?」

「桜華、あなた説明が下手ね。」

「うぐ・・そういうのは苦手で・・」

全くと良いながらペチュニアさんが答えてくれる。

「知っての通り地球には魔力も魔法も存在しないでしょ?」

「ですね。」

誰もが知っていることだ。

だからこそ中二病が産まれるし、ファンタジーな創作物が好まれるわけだし。

「けどあなたたちは魔力を内包している。これは、地球から召喚された段階で転移したんじゃなくて全く見た目は同じでも中身が違う別物に作り替えられているのよ。言ってしまえば生まれ変わった、または転生したようなモノね。ただ見た目が全く同じせいでその変化がわからないだけで。」

なるほど。

そう言われると魔力なんて内包していないのが普通なのに俺たちは持っている。

その時点ですでに以前の俺たちとは違う生き物になっていたワケか。

「だから、力加減とか魔法とかの使用に気をつけなさいよ?じゃないと、あっという間に珍獣よ?」

全員「はぁい・・。」

珍獣扱いも研究所へ連行されるのも嫌だ。

「それと、着の身着のままであっちに行くわけだけど武器とか防具とか持っていく気?」

全員「あ」

あっという間に全員銃刀法違反で逮捕だ。

「ここで武器は没収しておくわ。防具もついでに没収しておくわね。元々着てた服は今のサイズに修整してあるからそっちに着替えなさい。」

言われて俺たちは身につけていた武具をすべて外し久しぶりに制服に着替えた。

うん、ぴったりだ。

なにげに気付かなかったが、俺を含む全員が常に体を動かし続け、頭を使い続けていたこともあり、体も顔つきも全体的に成長していた。

元々170ちょっとだったが、なにげに俺も身長が180を余裕で超えてるな。

「うん、それで2人の武器に関してなんだけどね?」

俺とセリカにそう訪ねられる。

「はい?」

「どうしました?」

「まず、セリカさんの武器に関してはフリージアさんが改造したからそのまま持っていっても問題ないみたいだし、その魔剣が君を気に入ってるから離れたくないみたいだ。」

「了解で~す」

うれしそうに真っ黒な警棒を撫でているセリカは、そう言う。

「それと、シリル君のは、鉄くずになっても離れたくないとセリカさんの以上に離ればなれになるのを断固拒否しているんだよねぇ。」

ものすごく懐かれたようだ。

まぁ、この武器の癖は、歌と演技を好むのに加えて、使ってくれることを強く望むから俺以外のそう言う存在に巡り会うのはないとは言わないがすごく確率は低いだろう。

確かに、俺が扱うこの2振りの剣には、すごく助けられたから願いは叶えてやりがいが・・銃刀法違反がなぁ。

いっそのこと、刀とかを持てるようにそう言う資格とかを取るべきか?


「じゃあ、ちょっと弄るね。・・本当に武器じゃなくなるけど良いんだね?・・うん、わかった。」

俺の武器に話しかけているらしく数言話したと思うと、ふわりと光り、気付くと2振りの剣は2つのバングルになっていた。

色合いはあの刃の色そのままだが、透明感が増しており、見た目は何かの鉱石か宝石の亜種かと思うような感じだ。

だが、そのバングルは俺の両腕に身についているがつなぎ目が全くないから、外せない。

「あの・・つなぎ目がないんですけど・・。」

「あぁ、一度でも外されてそのままタンスの肥やしになるのがいやなんだって。その代わり、それをつけていたら君の髪や目の色を気にされることがほとんどなくなるよ。まぁ、通りすがりに振り向く人数が半分以下になる程度だけど。」

それはありがたい。

軽く腕を動かしてみたが、締め付ける感じもなく、手首を動かしにくかったりと動きに支障もないし、その部分が蒸れることもなさそうだ。

「わかりました。・・・これからもよろしくな。」

優しくバングルを撫でるとキラリとこちらこそを言われた気がした。


「それと、今回の異世界召喚に関して対処してくれた君たちには報酬を上げたいと思っているんだけどどうしようか?」

「それに関してなんですけど、どんな形でも構いませんので師匠の様子がわかるようにしてもらえませんか?」

これは、あらかじめ全員と相談していたことだ。

まぁ、桜華さんに提案されなければどうしようもなかったからこれ幸いと言ってみただけだが。

「じゃあ、寝ているときに夢としてフリージアさんの様子を見れるようにしておくよ。これでいい?」

「はい、十分です。ありがとうございます。」

「あ、私からはあんたたちの所持金を全部日本円に変更しておくわね。ついでにここに置いていく武具の値段分も足しておくから。」

「あ、ありがとうございます。」

全員口にしなかったけど、やべぇ・・どうしよう。

確か銅貨1枚で100円くらいだと聞いてたけど、武具代だけでも普通に何十万とか余裕な金額なんだけど。

しかも、師匠がしれっと白金貨数枚ほど俺たちの懐に押し込んでたからあっという間に大金持ちだ・・。


「それと、この子たちなんだけどね?力を失ってもついて行くって言ってたから。」

ハルトとエクレだった。

「エクレールの場合は、異空間収納はそのまま扱えるけどそれ以外の能力はすべてなくなるから。空も滑空は出来ても飛行は出来なくなるからね。」

エクレもそれで構わないと強く返事をしている。

「後、ハルトの場合は普通の昆虫サイズに小さくなって、力もその分激減するよ。」

ハルトも構わないと返事をしている。

「そっか。ハルトもこれからよろしくね。」

早速片手サイズの通常サイズになったハルトを手にのせて挨拶しているセリカを見ながらぴょんとジャンプして俺の肩に飛び乗ってきたエクレを撫でてやると気持ちよさそうにしている。

まぁ、こいつは賢いし大事な家族だからな。

「後、リーベさんもそっちに行くことになるね。」

「神様。本当によろしいのでしょうか?」

「構わないよ。国籍とかそういうのは気にしないで良いよ。」

「はい、ありがとうございます。」

「桜華さん、ありがとうございます。」

リーベさんはニシキの嫁だからな。




「さて、準備はこのくらいかな?一応これで最後になるんだけど言い残すこととかない?」

一応師匠やアルナさんたちへの別れの言葉はあのじゃれ付きの時に言っている。

当然泣いたよ。

帰れることへのうれし涙と感謝感激と、別れることのさみしさもさ。


「図々しくて申し訳ないのですがここにいるメンバーを代表して桜華さんにお願いがあるんです。」

「大体のことは叶えてあげられるけどなにかな?」

「これまでたくさん・・本当にたくさんお世話になった師匠へお礼の品をあげたいんです。」

「ふむ。君がそう言うと言うことはちょっとやそっとでは用意出来ないモノなんだね?」

「お察しの通りです。・・ピアノをお願いしたいんです。」

桜華さん、ペチュニアさん、師匠とあちらメンバー全員が目を見開いている。

「どうしてピアノを?」

「あの世界ではピアノは非常に珍しいモノだと聞きました。ですが師匠はピアノを弾くことが好きなのにあの城に1つあるあそこに行かなければ弾くことが出来ない。・・なのでせっかくならいつでも好きなときに弾ければ良いなと思いました。師匠がピアノを弾いているときはすごく楽しそうでしたので。」

「良いよ。・・・はい。どうぞ」




そして、目の前に現れたのは銀色で縁取りされたピアノだった。

「わぁ、これベヒシュタインピアノだ!」

「セリカわかるのか?」

高そうな奴なのはわかるが・・・さすがヴァイオリンだが楽器にそれなりに精通しているだけはある。

「うん!ピアノのストラディバリウスって言われる世界三大ピアノの1つだよ!すっごい透明感のある音が出るんだぁ。」

うっとりとした表情でそのピアノを眺めているセリカがそう言う。

「さすが、ヴァイオリニストの世界でヴァイオリンを趣味の範疇にとどめていることを非常に惜しまれていることだけはあるね。」

桜華さんの台詞を聞いてセリカがぎょっとした表情になった。

「ちょっ!?なんで知ってるんですか!?」

「確か、幻想の音姫だっけ?」

再度セリカがぎょっとした表情になるが今度はほほを赤く染めていた。

「ちょっ!?そっちも知ってるんですか!?」

「神だからだよ。」

誰もが反論出来ない台詞が飛んできた。

「・・・・」

そう。

セリカのヴァイオリンの腕前は、世界ではわからないが日本国内にいるヴァイオリニストであれば結構な人数が知っているほどの有名人で、ヴァイオリニストとして有名な人たちやその業界に関わる人たちからはただの趣味で終わらせているセリカをもったいないと惜しんでいるのも有名だ。

そうして、密かに幻想の音姫と呼ばれるようになったんだ。

由来としては、趣味の範疇にとどめているため、セリカがいつどこでどんな演奏をするか全く想像がつかないことと、曲をリクエストすればどんな曲でも演奏することが出来る。

しかも、セリカは絶対音感持ちだ。

そんな彼女が奏でるヴァイオリンは彼女の感情豊かな気持ちに影響されてそのときそのときで全く同じ曲でも全く違う風に聞こえること、そして彼女の美貌からつけられた通り名だ。

「セリカさんそんなにすごかったんだ・・。」

そんな予想以上にすごかったセリカに対してクラスメイトたちは俺の相方だからそんなモノかと納得していたが・・・・はぁ、まぁ良い。

ちなみにセリカ自身は、その呼び名はむずかゆく思っているらしく、顔を赤くしながら俺に抱きついてぐりぐりと俺の胸に顔を押しつけている。

まだ呼ばれ慣れていないようで、恥ずかしいらしく照れ隠ししているらしい。

まぁ、俺が俺だしそのうち慣れるだろう。

後、言わないけど滅多に照れないセリカを拝めて全員ほっこりしている。

「ま、まぁねぇ・・・ただ、私はヴァイオリンは好きだけどお父様のお仕事を大事にしたいから。」

「俺は、芸能界に行くことになるし、副業としてヴァイオリニストとしてやっていけばどうだ?その合間くらいはあの会社の人たちだったら喜んで仕事の肩代わりはしてくれるだろ。」

うん、間違いなくセリカのことを応援するだろう。

密かにセリカの演奏を聴くのを楽しみにしている人たちはあの会社内には多いし。

「うん。ちょっと考えてみる。」

「さて、これでいいかな?」

「はい。後、出来れば俺たちに協力して下さったクラリティ王国の皆さんにも何かお礼がしたかったのですが・・。」

「あぁ・・それなら教会を通じて神が感謝していたと言って貰うことにしたよ。後は、あの国の住人にほんのちょっとした加護を与えることにしたよ。まぁ、病気になりにくくしたり、ほんのりと鍛錬したときに成長しやすくなる程度だけどね。」

「ありがとうございます。」

あの国柄を考えるとそれが一番喜ばれると思う。

あの国はとにかく実力主義だし努力は裏切らないとたましいの奥底まで刻んでるし。



「じゃあ、そろそろ送るね。場所は君たちの学校のグラウンドだから。」

全員「はい」

ふわりと全身が光り輝きながら少しずつ透明になっていき、足下から徐々に消えていく。

「なんだかんだあったけれど、君たちの活躍はこちらから見ていてすごく楽しかったよ。」

「あっちでも頑張りなさいよ?アホに成り下がったら天罰を与えちゃうから♪」

「すごく楽しかったですし、お世話になりました。あちらでは、お幸せに。」

{様々な経験をさせて貰いましたし、あなた方と過ごした日々はとても刺激的で楽しかったですよ。}

全員「ありがとうございました」

「こちらこそ、ありがとう。」

ふわりと師匠がほほえみながら肉声でそう言ってくれた。

小さな声だったけれどそれでもしっかりと俺たちの耳に届いた。





師匠。

出会ったときはただ可愛くて怖いもの知らずな子だと思ってたけど、すごく優しくて頼もしい存在だった。

俺が、今のように以前よりも何倍も成長出来たのは師匠との出会いがなければ絶対になかった。



「師匠・・フリージアさん!本当にありがとう!グリムとお幸せに!」

完全に姿が消える寸前で俺はそう叫ぶ。

師匠は涙をこぼしながらも笑顔で手を振ってくれた。


師匠。

グリムと幸せになって下さい。


本当にありがとう。













--フリージア--

「行っちゃったな」

{そうですね。あちらの世界はこちらよりも安全らしいですしシルちゃんたちは強いですからきっと大丈夫ですよ。}

「だな。桜華様。ペチュニア様。本当にご協力ありがとうございました。」

「良いよ。どっちかというとお礼を言うのはこっちなんだから。」

「そうよ?異世界召喚なんて禁忌を犯した連中の対処とその後片付けをリアちゃんたちは私たちの代理として頑張ってくれたんだから。」

「さて、名残惜しいけれど君たちを元の場所へ返すね。」

「はい。」

「私たちは、いつでも見守っているからね?」

(コクリ)

そうして、私たちは元の場所に帰りました。



シルちゃん、セリちゃん。

そして異世界人の皆さん。

ホントに皆さんと過ごした日々は楽しかったですよ。

だから、故郷でもお幸せに。

ここで頑張ったことは絶対にあなた方の力になりますし、裏切りませんから。













--シリル--

光に包まれ、ふと気付くと俺たちは学校のグラウンドのど真ん中にいた。

俺たちが飛ばされる前と全く変わらない風景が周囲に広がる。

「ホントに帰れたんだな。」

「だね・・。」

「やったぁぁ!!!!」

「バンザーイ!!!」

みんなで抱き合ったり手をたたいたりして喜び合いながらふと思う。

全員がハイタッチしたり抱きしめ合ったりうれし涙を流したりと大はしゃぎした。



「そう言えば、学校に誰もいないが今日は土日か祝日なのか?」

「校舎には人の気配はないからそうなんじゃないかな?」

「確かに気配はそっちにはないな。」

「とりあえずどうする?」

「とりあえずは、それぞれ家に帰ろう。で、明日またどこかに集まって改めて状況を報告し合おう。」

「だね。」

「だな。」



そして、当たり前だが門は閉まっているのだが・・・

「よっと・・・改めて思ったが身体能力がエグいな。」

軽く飛び越えた。

俺たち全員。

「あっちでは戦いは苦手だったのに・・私ですら軽く飛び越えちゃったよ・・。」

「兄貴だったら屋根伝いに車並みのスピードでいけるんじゃね?」

「・・・確かにいけるな。実際そこらを走ってる車がなぜか遅く感じるし、壁走りも普通にいけるな。」

「あぁ・・・車にはぎりぎり負けるけど似たような速度は確かにいけそう。」

「今なら大型トラックが突っ込んできても受け止められそう。・・たぶんいける。」

「俺はさすがに避けるなぁ。」

「今なら高速道路で車と併走出来そう。」

「軽く対処してる時点で相当だな・・あっちでは全く気にしてなかったし弱者ポジションだったし。」

「冗談抜きでアニメのキャラみたいなエグい動きが自力で軽く再現出来そう。」

「はっ!今なら自力でクオリティの高いコスプレ衣装を作れる!」

「確かに!なら、材料集めとデザイン案を考えなきゃね!」

改めて思う。

俺たちは思った以上に強化されていたようだ。

ちなみにエクレはのほほんとした感じで俺の肩の上でのんびりしている。

こいつはある意味大物だな。

まぁ良いか。


「とりあえず帰ろう。」

「だね。」

「今は無理だけど落ち着いてからクラス全員で情報交換用のアプリのアド交換しようよ。」

「確かにそれが良いかも。・・携帯あるけど電池がからっからだし・・そもそも充電して使えるかな?」

「だよねぇ・・今なら手持ちがエグいから軽く買い直せるけど。」

「それに今回みたいなことを考えたら情報交換する手段は多いに越したことないしね。」

「ホントにねぇ。」



そして、俺たちはそれぞれの家に帰った。

ちなみに、軽く壁ジャンプして屋根の上まで飛び乗り、そのまま屋根伝いに家までセリカと走ってみたが、これまでは歩いて30分ほどの距離だったのが5分とかからずに着いてしまった。

後に聞くとみんな似たような感じで自分自身に絶句したとか。




「とりあえず、無事に家に着いたな」

「だね。屋根の上と屋上を飛び移りながら周囲の視線を集めないように気配を消して視界の死角を通るようにする・・すっかり忍者だけどねー。」

「あっちだと普通だと思ってたがこっちだと改めて自分たちが規格外に脚を突っ込んでたことを驚いたよ。」

「それで思ったんだけど、あっちの世界の人たちって普通に底辺がオリンピック選手並みだよね?」

「極端に言えばそうだな。とりあえず、」

「うん。」

俺とセリカの家は隣同士。

そして、それぞれ3人暮らしには少し広く感じてしまうほどの一軒家だ。

ちなみに、この町に引っ越した当初は賃貸とかアパートでも良いのではないかと思ったそうだが、趣味に没頭するなら隣の部屋に気を遣うなんて面倒だし・・・それに、お金はあるしと言うことでそうなったそうな。

で、それから数年経たずに隣にやってきたのはセリカのご両親・・つまりは俺の両親の勤める会社の社長。

引っ越したのは高校を卒業してしばらく経ってからだったそうな。

元々会社で優秀な俺の両親だがそんなこともあり、社長である義父さんとは、たまに飲みに行ったり出張先のお土産を交換したりするくらいには仲が良かったのだとか。






そして、俺はインターホンを鳴らした。

家の鍵はあるが、しばらく行方不明になっていたんだ。

勝手に入ると色々と驚かれるだろう。


「はいはぁい・・・・・・・・・・。」

インターホンを押してから休みとは言え、家にいない可能性があったことをドキドキしながら考えていたら母さんが出てきた。

軽く寝ぼけた顔をしているので夜更かしをしてさっきまで寝ていたという感じだろうか。

そして、俺と目が合うとフリーズしていた。


「どうしたぁ?またどっかの下僕か・・・ぁ・・・」

父さんも出てきて、同じように固まった。


だとしても、下僕が訪れるとはそれを平然と受け入れるのはいかがなモノだろうか?

まぁ、元凶は俺だろうけどそれを平然と受け止める我が両親は別の意味ですごいと改めて実感する。



「シリル・・だよな?そっくりさんとかじゃなくて」

「あぁ。一応異世界電話で連絡は取り合ってたけど俺はシリルだよ。父さん、母さん。」

両親「シリル!!」

俺の名を呼びながら2人揃って強く抱きしめてくれる。

「かえって来れたんだな!」

「あぁ。師匠とみんなのおかげで。」

「電話越しでいろいろ聞いてたから心配はしていなかったけれど、やっぱり、帰ってきてくれてうれしいわ。」

「色々と心配かけたみたいでごめん。」

「気にしないで良い。そもそもシリルたちは被害者だろ?」

「そうよ。まぁ、盛大に仕返しはしたみたいだけれど。」

「まぁな。」

「とりあえず・・お帰り」

「お帰りなさい」

「あぁ、ただいま。」

抱き合って改めて自分が成長したことを実感した。

大きな背中だと思っていた父さんと同じくらいか以前よりも小さく感じ、

細身で華奢な母さんが更に小さく感じた。



それから、ホントに久しぶりに両親の手料理を食べながらここまで戻ってきた経緯を伝える。

「そうか・・フリージアちゃんだけではなく神様にもお世話になったのか。」

「どこかに教会とかあったかしら?」

「あぁ・・それに関しては、これでいい?」


「シリル。それはどうしたんだ?」

エクレを餌付けしている父さんが訪ねる。

俺がエクレに出して貰ったのは、高さが30センチほどの石像。

「これ、師匠から。」

実は、俺たち異世界組に全員にプレゼントされた一品だ。

「その男性が?」

「あぁ。あっちの世界で師匠のご先祖様で今は神様の桜華さんだ。」

唯一桜華さんの容姿を知っていた師匠が拝む対象が欲しいとぶつくさ言っていたセリカの言葉を聞いて全員分作ってくれたんだ。

「そうか、この方が。」

「じゃあ、きれいに飾らないとね。それにしても、王子様って感じね。」

エクレをモフってる母さんがそう言う。

後に、俺がこれまで表彰されて送られたメダルだのトロフィーだのが飾られている中に神棚っぽいモノが作られ、そこに安置されることになる。

「性格もそんな感じだったよ。すごく優しくて思いやりのある人だった。」

何というか、そばにいるとホッとする感じの人かな。

「それにしても、まさかこっちに帰ってきても魔法がそのまま使えるなんてな。」

「俺も予想外だったよ。」

「けれど、ペチュニアさんの説明ですごくわかるわ。」

手っ取り早く、コップに入った水を冷やしたり温めたりしてみたら、さすがは我が両親。

驚くよりも喜んだ。

「シリルがいれば、外で冷凍食品が食えるな。」

「夏の炎天下にアイスを買ってきても溶けないわね。」

相変わらずぶれない二人だ。

そして、第一声が俺がいれば電気代と光熱費の消費が抑えられるだったな。

「それに、エクレちゃんもマジックバッグみたいにモノを収納出来るなんてすごいわね。」

「それにすごく賢いな。」

すっかり二人はエクレを気に入ったようだ。

エクレも俺同様気に入ってるらしくされるがままだ。

エクレを紹介した直後も普通に可愛いと愛でるだけだった。


「そう言えば、学校はどうなってるの?」

「事情が事情だからな。通信教育という形で課題をクリアすれば卒業って扱いになるみたいだ。」

「下手に学校に通っても無駄に注目を浴びるからってそう言う措置みたいよ?」

「なるほどな。・・あ、そうだ。俺・・・卒業したら芸能界に行くよ。」

あっちで、ずっと考えていたことをついに言った。

「そうか。で、声優と俳優どっちにするんだ?シリルならどっちもいけるだろう?」

「むしろ、アイドルでもいけるでしょう!見た目も極上だもの。」

「正直声優も俳優もどちらも兼用して行こうと考えてるけど、基本は声優かな。」

「良いぞ!むしろ応援するぞ!」

「はい。ずっと前に貰った名刺!選び放題よ?」

「おすすめはここだな。」

「確かに大手だけどアレとかそれもあるのにどうしてそれなんだ?」

なぜか、迷わずに一つの名刺を指さす父さんに聞く。

「シスターズに相談してみたら、そこが一番だって言ってたのよ?」

俺のファンクラブがどうやって大手の事務所に探りを入れたのか気になるがスルーしよう。


「にしても、生で見るとシリル・・お前ホントにイケメンなんだなぁ。」

「ホントそれよねぇ。しかも、髪色も目の色もむしろ今の方がすごくしっくりくるわね。」

「そうなんだよ。何というか前の黒髪黒目も良かったが何というか、変装しているアイドルみたいな違和感があったんだよなぁ。」

「そうそう。」

そうして、他愛ないことを話しながらとりあえずその日は休んだ。



だが、俺の両親が懐の広い人たちですごくうれしかったのはここだけの話だ。

色々と変わってしまったのに何も言わずにただ受け入れてくれる。

ただそれだけのことがホントにすごく幸せだ。



師匠が、どんなモノよりも優しく受け入れてくれる存在がそばにいてくれるだけでその他は何もなくても幸せだと言っていたことがすごくわかる。





本編とは関係ありませんが、休日にいつも身に着けている首飾りです。

挿絵(By みてみん)

長さ調整が可能で、作成手順的に言えばミサンガ(リリヤンとも言う)と言った方が正しく、全長数メートル単位のものを編み込んでるので意外と頑丈。


身内がデザインして素材を集め、どこぞのお店で作成を依頼した完全フルオーダーメイドです。




っていう、余談でした。

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