拉致魔法の反対は返品魔法
--フリージア--
アルバトロスの国を滅ぼすことが完了し、その後片付けも終わった後は、私は回収した資料の確認とシルちゃんたち異世界組を故郷に帰すための魔法の構築を考えているところです。
一方、シルちゃんはライブをしつつ、いつか故郷に帰るかもしれないと都度告げつつ、シルちゃんが歌って踊ってる姿を登録した魔道具をサインとともに販売してる。
他のメンバーは、鍛錬をしつつも、楽しそうにクラリティ王国で過ごしてる。
あの張りぼてイケメンとか言われていた人は何度かボコってるうちに、あの鬱陶しかった性格はさわやかな普通の人になったのでとりあえず放置。
後は、シルちゃんたちでどうにかなるでしょうし。
そして、異世界組総勢で時折スタンピートの対策や賞金首の巣穴をつぶしに行かせたりしてます。
魔物寄せの魔道具を作成し、それを使ってスタンピートなりかけの魔物の群れにワザと魔物を引き寄せてしっかりと殲滅させています。
まぁ、その魔道具自体は使用するには王様の許可が必要なモノですけどね。
けれど、中途半端に対処して残った魔物によって再度スタンピートが起きる可能性もあるので、ワザと魔物を引き寄せているんです。
そのせいでこの間数が1万前後だったりしましたけど、強くなったシルちゃんセリちゃんペアはしっかりと対処出来ていたので問題なし。
おまけに、元敵対組の教育にもちょうど良かったですからね。
そんな感じで、魔物の数に困っている依頼があれば同様のやり方でつぶしに行かせ、賞金首の情報が噂程度でもあればその調査と見つけ次第殲滅をさせています。
他にも、大掃除の手伝いという依頼もあります。
これは定期的に発生します。
貴族であれば自身が管理している建物や土地全域で、ギルドや教会のような公共の施設内です。
で、言葉通り普通にほこりを払ったり雑巾でお掃除したり浄化魔法できれいにしたりという普通のことでもありますが、設置型のトラップの確認や、毒や呪いなどがないか、あれば解除したり、よそからのスパイとか勝手に潜んでいる悪い人がいたらその人やその関係しているグループの殲滅なども含みます。
トラップに関しては、防衛としてわざと設置していることはよくありますが、たまにそれに紛れさせて勝手に設置して陥れようとすることもあります。
なので、自分の意志で設置したトラップに不備がないか、あれば修復か再度設置をして、勝手に設置されてるのがあれば解除するか、それもそのまま利用するためにそのままにしてたりします。
何もなければそれでよし。
何かあれば徹底的にいろんな意味できれいにしましょうということです。
これは元々クラリティ王国では結構普通の依頼なので、他の冒険者さんたちも積極的に協力してくれます。
クラリティ王国あるあるですね。
あぁ、そう言えば我が都ルナールですが、簡易的でもギルドの支部を作らないかと質問が来てました。
簡易的というのは、ギルドカードの更新や、他拠点のギルドとの連絡などの最低限必要なことだけ扱うと言うことです。
つまりは、依頼を受けたり魔物とかの換金などは出来ないと言うことになります。
元々ルナールでは、換金関係は、貿易もかねて運搬専用のパーティが複数グループいて、彼らが換金しにクラリティ王国へ運んでくれます。
定期依頼として、常時あるモノですし、報酬としても換金した分の一部を渡すという契約です。
元々ルナールの各国との貿易に関しては、クラリティ王国を経由して行っているのでうちとしては、クラリティ王国に全部売るモノを丸投げしている状態です。
そこから、クラリティ王国内で販売するか、他の国や町へ売るかはクラリティ王国側にお任せです。
売るモノは、薬草から薬品、裁縫系に防具ですね。
後は、都内に住んでいる動物さんたちからとれるモノです。
そうでした、私が刺繍で愛用している透明な糸を生産しているクリアスパイダーという蜘蛛さんですが、ついこの間、数匹ほどうちの都内に生えている精霊樹に巣を作ってました。
どこからどうやって来たのかは謎ですが、彼らから糸を貰う代わりに外敵から守る約束をしたので、定期的に糸が手に入ります。
どうやってやりとりをしたかと言いますと、私は動物さんたちとなんとなく意思疎通がとれるのでそれで、同じくうちに住み着いているセキュリティバードの数羽が代わりにお話ししてくれた感じです。
蜘蛛さん自体もすごくちっちゃいのに作り出す糸は膨大だったので、場所には困らないみたい。
今は、2桁いませんが近いうちに数も増えるでしょうしそうすれば自分で使う用以外でも売る側に回せるでしょう。
元々蜘蛛さんの糸はお月様に照らされていることが条件です。
で、うちの周りには何にもないですし、最も高い位置にあるのが、精霊樹なので、条件としてはばっちりなんですよ。
さて、話を戻しましょうか。
あのアホの国から没収した資料とこの国の教会にある資料に一通り目を通しはしたので、後は異世界電話を作成したときと同じような感じで魔法を作るだけなんです。
とりあえず、アホみたいな量の魔力が必要っぽいので特訓もかねて魔物を倒しまくっては魔石を集めて貰っています。
それと同時に彼ら自身の保有魔力もですね。
おそらく今回作成する魔法は、異世界電話を核として、天界にいる桜華さんを経由して、地球側の神様を更に経由して日本と繋ぐという感じになると思います。
なので、その道筋をしっかりさせる必要があるのと、天界へ繋ぐための方法も確約しないとなりません。
まぁ・・その辺りはなんとなく目処はつけてるんですけどね。
とりあえず、異世界電話は言葉と映像のみなのでそれを生物を送り出すという形に仕様を変更させる必要があるのでその辺りの対処のために資料に目を通しているんです。
そうでした。
シルちゃんですが、称号にこんなのが増えたそうです。
称号
ウルスラグナ
正式名称は、障害を打ち破る英雄”ウルスラグナ”
数多の悪を滅ぼし、弱きを助けた英雄に与えらえる名であり、強者の証。
仲間を認識した相手限定で精神的負荷を軽減させ、敵と認識した相手限定で威圧の威力が1.5倍となる。
更に、自身が使用するすべてのワザの消費魔力と脳へかかる負荷が半減する。
元々故郷でもそう呼ばれていたらしく、こちらでも嬉々としてシルちゃんのご両親とかセリちゃんが言いふらしていたので結果として称号として顕現したっぽいですね。
シルちゃんは荷が重いとか言いながら頭を抱えてましたけどシルちゃんのファンクラブはさすがお兄様って喜んでましたよ?
まぁ、いろんなことがありましたがとりあえずシンプルに言っちゃうと現在私は自室に引きこもってる状態です。
早一月
書類確認は1週間とちょっとで完了してるんですけどね。
だってしょうがないじゃないですか。
影さんたちを総動員させて情報収集と魔法作成のために同時並行で複数のパターンを試したり記録したりしてるんだから。
そうなるとぶっちゃけると誰だろうと邪魔の一言に限る。
何せ今は部屋中に資料とか書いたメモとかが広がった状態だし、それら1つ1つの置き場所自体も実はかなり重要だったりするし。
1つ試してもう1つ試して試したモノ同士で合成して再度試してって感じでエグい数の試運転と実験、記録をとってるんですよ。
それが出来るのも、影さんを両手ぎりぎりサイズで5000体呼び出して同時並行で試してるから出来るんですけどね。
まぁ、手のひらサイズにすれば10000は出せるけどそうなると1体1体のサイズが小さすぎるから、ぎりぎり対応可能なサイズが両手サイズだったわけです。
とはいえ、そんな数を広げて対応するには私の部屋は狭すぎるので、最重要な部分を私の部屋で十数体の影さんと並行で対応して、その他をクラリティ王国の地下にある空間で対処中です。
ここは、元々我が家で使用している飛行艇を作成したり、緊急時のシェルター代わりに使用される空間を現在は使用してないからと言うことでお兄ちゃん(現王様)に許可を貰ってまるまる借りている状態です。
本当はここで私も対応したいけどそこに引きこもりっぱなしは嫌だダメだとアルちゃんが嘆いたので結果として一部(私本体含む)が自室にいるわけです。
そんなわけでアルちゃんも手伝ってくれてます。
主に、私に食事を食べさせたり、お風呂とかその他諸々の対応とかですね。
まさしく、身の回りの世話をしているわけです。
メイドらしいことですねーとか思いましたけど、アルちゃんってメイドでしたね。
とはいえ、頭を使うとお腹がすくのでアルちゃんの行動の大半は常に私に何か食べさせてることがほとんどですけど。
だって、どれだけ食べてもお腹すくし。
だから、食べながら作業をしている状態ですよ?丸1日。
で、ぶっちゃけちゃうと私が複数パターンで試して、その結果をメモっている内容も部外秘になるようなものなんですけどね。
なので、閲覧レベルを最高値にして教会で保管されることになります。
あ、私たちが開発した異世界電話も実は作成方法もきちんと記録を残してますよ。
それと、これから作成しようとしている異世界へ帰ってもらう魔法・・拉致魔法の反対なので返品魔法も記録する予定です。
いつどんな時に異世界から迷い込んだ人が帰れるように。
とまぁ、そんなこんなで頑張りましたよ?
すっごい頑張りましたよ?
完成したときなんて、すっごい珍しいことに一目があるのもお構いなしにリムさんが私にチューするくらいなんですから。
しかも口にです。
いつもは、誰もいないときにほほにするのがいっぱいいっぱいなリムさんがです。
その光景に全員がなぜかリムさんによく頑張ったと拍手する有様。
・・リムさん、どれだけ乙女思考だと思われてるんです?
{というわけで、返品魔法が完成したのでお兄ちゃんの元にやってきました。}
そして現在は、異世界メンバーを全員引きずって謁見の間にやってきました。
「師匠・・返品魔法って・・」
「ふむ。異世界から拉致してくる拉致魔法であれば確かに返品魔法だな。」
シルちゃんが微妙な表情になっている中、お兄ちゃんは納得してる感じです。
「フリージア、よく頑張ってくれた。作成途中に試験的に編み出されたあれこれに関しても今回作成した返品魔法を含め、閲覧レベルを最大値にして異世界電話共々きちんと保管しておこう。」
(コクリ)
「アレ?陛下、質問をよろしいですか?」
「ふむ、どうした?」
「てっきり、異世界に関する情報なので記録を残さないようにするのかと思っていたのでつい。」
「今回のように異世界から迷い込むか拉致された際に少しでも手助けになる情報は残しておいた方が良いだろうという意見になったのだ。とはいえ、ちょっとやそっとの権限では絶対に閲覧できないように保管する予定だ。当然、あの国から回収してきた資料を含めてな。」
「そういうことでしたか。異世界人の代表として感謝いたします。」
「気にすることではない。むしろその手順がこれまでなかったことがおかしいのだ。では、フリージアよ。早速だが開始してもらってもよいか?異世界の者たちもよいな?」
全員「はい」
ここに来る前にすでに返品魔法をお兄ちゃんの元で開始することは伝えているのでそのままこちらの世界からバイバイすることも理解してます。
なので、全員準備は万端。
{では、異世界電話をその魔法陣を描いた紙の中央に置き、これまで集めさせていた魔石を全て載せてください。}
魔術師団のメンバー総出で作成した魔法陣には、異世界電話を核として異世界とつなぎ、生きた者たちつまりは、シルちゃんたちを安全に転送させるための陣が組み込まれています。
そして、消費する魔力も膨大であればあるほど安定するという感じになっているので彼らが内包する魔力以外にも魔石を使用しています。
「師匠。設置完了しました。」
{では、私とせりちゃんが演奏を始めますので、皆さんは魔力をその陣へ込めながら自身の故郷のことを強く願い、祈ってください。}
全員「はい!」
「ふむ。ならば、部外者ではあるが我らも彼らが無事に異世界へ帰れるよう祈ろう。魔力は込めると我らも巻き込まれるやもしれぬゆえに出来ぬが。」
「えぇ、そうですわね。」
そして、私がオカリナを、セリちゃんがバイオリンを弾き、全員が強く願う。
ふと気づくと、真っ白で何もない空間にいました。
そこにいるのは、私とリムさん、アルちゃん。
それと、獣魔メンバー
そして、異世界メンバー全員
--シリル--
師匠のネーミングセンスにはあえてノーコメントさせて貰いつつ、ついに故郷へ帰るための魔法が発動した。
様々な色の光の粒子が部屋中を包み込み、師匠のオカリナとセリカのバイオリンが響き渡る。
俺もそうだが、その場にいる全員が見惚れ、聞き惚れそうになりながらも祈った。
そうするといつの間にか何もない真っ白な空間に俺たちはたたずんでいた。
師匠も含めて全員が周囲をキョロキョロと見渡しているところを見ると予想とは少し異なった状態なのだろう。
けど、俺はなんとなくこの状況で問題ないと思っていた。
で、
「リアちゃんはっけぇぇぇぇぇん!」
と高らかに響き渡る女性の声がしたと思ったらその場から師匠が消えた。
「はぁぁぁぁ//リアちゃんだわ。生リアちゃんだわぁ//超絶的に可愛いわぁ。ちっちゃいおててとあんよも可愛いって言うのにこのぷにぷにすべすべほっぺも最高だわぁ//それでいて、無表情で淡々とした感じなんてまさしくクーデレ幼女じゃないの!もう最高!きゃー♪」
全員「・・・・」
いきなり現れたその人は、師匠の髪を黒くしてそのまま大人の姿にしたらこんな感じというそのまま師匠の大人バージョンだった。
だと言うのに、師匠からは全く想像も出来ないほど満面の笑みで師匠の全身を抱きしめ撫で回し、顔のあちこちにキスをしまくっている姿に動揺してしまう。
それなのにさすがは師匠、一切反応せずにされたい放題されてるのにスルーしてる。
一方、アルナさんはなぜか引きつった表情のまま腰が引けており、少しずつその人から距離をとっていた。
だが、魔王からは逃げられないと言う言葉がなぜか頭の中に響く。
その女性がぎゅりん!という感じで目をぎらぎらに光らせてアルナさんにロックオンした。
「ひぃっ!」
「アルちゃん久しぶり♪久しぶりの再会に免じてそのおっぱい堪能させてぇ!!」
「いやぁぁぁぁぁ!!!!」
そして、悲鳴を上げながら全力疾走で逃げるアルナさんと不敵の笑みとともに高らかに笑いを上げながら追いかける女性。
「あはははははは!!追いかけっこね!?それはつまり、捕まえたらナニをしても良いってことね!?むしろして下さいって意味ね!?」
「違います!また食べられたくないから逃げてるんです!と言うか、一部ニュアンスが違いましたよね!?」
「ふはははは!私の故郷に伝わる良い言葉を教えてあげましょう!魔王からは逃げられない!」
「あなたは魔王じゃないでしょう!むしろ魔王よりもたちが悪いじゃないですかぁ!!」
「ふははは!そんなのは言われ慣れてるわ!さぁ!おとなしく私に食べられなさい!」
「それではいそうですかって納得して食べられるような性癖じゃないもん!」
「というか、私から逃げられると本気で思ってないくせに。」
「うぐっ・・けど、無抵抗のまま食べられたくないんですぅ!!」
「いやよいやよも好きのうちってね!」
「そんなんじゃないもん!」
「良いじゃないの。減るもんじゃあるまいし」
「減りますよ!尊厳とか貞操とかぁ!」
「えぇ・・何を今更。はぁ・・じゃあ、食べないからおっぱい堪能させなさいよ。リアちゃんが堪能する範囲にとどめてあげるから。」
「うぅぅ・・・そのくらいなら・・・絶対ですよ?」
「それはやれって前ぶり?」
「ち・が・い・ま・す!」
「冗談冗談♪」
と満面の笑みで師匠を抱えたままアルナさんの胸に顔を埋めて揉み始めた。
「やっぱりアルちゃんのおっぱいは最高だわぁ。」
そして遠い目をしてされるがままになってるアルナさん。
「・・すごく褒められた気がしませんけど一応お礼を言っておきます。」
「そのお礼代わりに気持ちよくしてあげよっか♪」
「結構です♪」
全員「え、えぇっと・・」
事情を・・・と言うか、誰か説明して?
この状況とかあなたは誰?とか、まぁ・・誰かはなんとなく想像ついてるけど。
「あぁ・・・やっぱりこうなった・・アルナさんごめん。私には彼女の制御は無理だ。出来るのはイリスさんとフリージアさんだけだ。」
次にやってきたのは、俺たちと同じ黒髪黒目の青年だった。
優しそうな雰囲気と見た目で、日本人風の王子様はまさしくこんな感じというイメージだ。
ちなみに、彼は隣で大暴走している女性を見て頭を抱え苦笑している。
と言うより、その声はまさか・・・
「あなたが、桜華さんですか?」
俺がそう尋ねるとうれしそうにほほえみながら頷いた。
「そうだよ。こうして直接会うのは初めてだね。一応会話っぽいのはちょっと前にしたけど。」
「やはり、あのときの声はそうだったんですね。」
やっぱり、あのときアルバトロスの国で俺が進化するときに聞こえた声はこの人だったんだ。
「手伝えるのがそのくらいだったからね。じゃあ、なんとなく誰かはわかってると思うけど自己紹介しておこうか。・・・その前に、ペチュニアさん、生贄は、そのまま好きにしてて良いですから話を続けても?」
「良いわよぉ!」
「なんか私のことを気になる言い方しませんでしたか!?」
そんなアルナさんは彼女の生贄としてそのままスルーされることになりました。
ちなみに師匠はと言うと、その女性の胸に埋もれて堪能しつつアルナさんの頭を撫でてる。
相変わらず師匠はいろんな意味ですごい。
「じゃあ、一部はなんとなく察してると思うけど一応自己紹介しておこうか。私の名前は桜華。月神桜華。君たちの先輩に当たるけど今は賢神だね。一番わかりやすいところで言うと、フリージアさんの先代であり、初代英雄賢者を務めていたよ。」
全員「じゃあ、心技体のリーダー!?」
「そうなるね。」
半分くらいは師匠のことを目を見開いた状態で見ながらフリーズしている。
そう言えば、元敵対組は師匠の職業のことを知らなかったからしょうがないか。
けど、話の流れからなんとなく察していたがやはり、先代の賢者だったか。
「そして、あっちで暴走している女性はフリージアさんの母親で、名前はペチュニア。君たちで言うところの流星姫と呼ばれていた人だよ。」
「はぁい♪リアちゃんがあまりにも可愛いし心配だから桜華を脅迫してリアちゃんを見守りながらついでにそいつの仕事の補佐をしているわ。」
「私の仕事がついでですか・・わかってたけど。」
満面の笑みでヤッホーと気楽にそう自己紹介する彼女は師匠そっくりだから察してたがやはりそうだったか。
にしても、喜怒哀楽がはっきりしているせいなのか、見た目は瓜二つなのに印象が違いすぎる。
と言うか、神様相手にそいつ呼ばわりに加えて、脅迫までしてしまうこと自体がいろんな意味で驚愕だ。
ちなみに、師匠はそんなペチュニアさんのひざに乗り、彼女の胸に顔を埋めて堪能中で、
アルナさんはペチュニアさんに胸を堪能さながら口から魂が抜けかけてぐったりしてる。
「えぇっと・・その・・何というか・・」
「言いにくそうねグリちゃん。」
「グリちゃん!?」
グリムがまさかの初対面でグリちゃん呼び・・やはり師匠の母親だ。
「言いたいことはわかるわよ?性格がざっくりしすぎてるって。」
「え、えぇっと・・。」
「気にしないで良いわよ?自分でも思ってるし、結構な頻度でイリスと性別を入れ替えたら見た目と中身は釣り合うんじゃないかって。」
口にはしなかったが全員すごくしっくりした。
「だってさ、人生一度きりよ?まぁ、私はすでに人生終わってるけど、やりたいときにやりたいことをして、我慢せずにいつでも全力疾走!何もせずに後悔するんじゃなくて、何かアクションを起こして後悔するの。問題があればそのときに考えれば良いのよ。あんたたちはまだまだがきんちょでしょ?なら、使えるモノは何でも使わないと。それが親だろうが教師だろうがね♪」
全員「おぉう・・はい。」
何というか、良い言い方をすれば竹を割ったようなすごくすっきりとした性格だ。
言い方を悪くすれば、怖いものなし。
まぁ、気持ちはわかるが。
「で、アルナさんは大丈夫ですか?」
「ん?大丈夫大丈夫。ぎりぎりをキープしてるから。」
「・・そうですか。」
ぎりぎりをキープしていると言うことは生き地獄がずっと続くと言うことでは?
言わないけど。
餌食になりたくないし。
何されるかわからん。
「あ、そうだ。グリちゃんちょっとこっちおいで」
「え?う、うっす・・」
おいでおいでされ、おそるおそるグリムはペチュニアさんの元に呼ばれた。
そして、いきなりグリムの手首を握り・・・
むにゅん
そのままペチュニアさんの胸に思い切り押しつけた。
「!?いきなり何させるんすか!?何で自分自身のこと大事にしましょうよ!!」
そして、グリムは指1本動かさずに速攻で手を離し、バックステップをして距離をとりツッコミを入れる。
ちなみに彼の顔は、真っ赤だ。
・・まぁ、当然か。
彼女のスタイルはホントに抜群だ。
でるところはすごくはっきりと出てるし腰のくびれもしっかりとある。
アルナさんと良い勝負してるほどだ。
「うん合格!」
「何が!?」
いきなり胸を揉ませて、ツッコミを聞いたところで合格宣言。
確かにワケわからん。
「え?わかんない?」
「わからないっすよ!?いきなり揉ませてくるなんて何考えてるんです!?」
「え?浮気調査よ浮気調査。」
「あぁ、なるほど。」
ペチュニアさんのその台詞で俺は彼女の考えていることが理解出来た。
「あら、さすがシーちゃんね。」
俺は、シーちゃんかぁ・・。
「じゃあ、答え合わせに言ってちょうだい。」
「わかりました。つまりは、他の女性に誘惑されたりしないか。どんな状況でも師匠一筋かを確認したんですよね?」
「その通り!自分でも言うけど私スタイル良いし、顔も良いじゃない?」
「そうですね。」
誰もが見返るスタイル抜群の美女ですね。
「で、リアちゃんとそっくりでしょ?むしろ姉妹コーデしても十分いけるでしょ?」
確かに、親子と言わなければ姉妹と言っても誰も不思議には思わないだろうし、2人揃ってゴスロリでも甘ロリの格好でも十分いけると思う。
「ですね。」
「そんな私に誘惑されてグリちゃんは指一本動かさずに速攻で距離をとったでしょ?しかも、私の身を案じてくれた。それだけで、彼がリアちゃんにふさわしいって私は安心したのよ?」
「はぁ・・それならそうと言って下さいよ。」
グリムはすごくぐったりしてる。
「それだと、抜き打ち検査にならないじゃないの。それとも、私のおっぱい揉む?って聞かれた方が良かった?」
「・・・それはどっちもどっちのような・・。」
「それに、目を見ればどんな子なのかはわかったから念のための確認よ。娘はやらん!って言われて全面戦争仕掛けられるよりマシでしょ?」
「そりゃあ、まぁ。」
師匠の保護者たちは冗談抜きで規格外だからなぁ。
「だから、家の子をよろしくね?」
「はい」
「ご褒美に私のおっぱい好きに揉んで良いわよ?」
「遠慮します。」
さすがグリム。
速攻で拒否した。
人によっては、たとえ断ったとしても少しは考えたりするからリアクションが遅れたりするんだけどな。
「遠慮しないで良いわよ?むしろ、寝技の特訓をシテあげましょうか?」
「その寝技って、武術じゃなくて夜の怪しい方だよね!?もっとダメだからね!?それにしてってさっきニュアンスがおかしかったよね!?」
「ちっ、ばれたか。」
「・・マジでやべぇ人だ。」
ケラケラと笑う彼女にグリムはがっくりと肩を落としている。
「あぁ、それにしても可愛いわねぇもう♪」
そう言って師匠を抱きしめ、ほほをすりすりさせながら抱きしめてる。
ホントにやべぇ人だ。
いつどんな形で仕掛けてくるかわからんし、マイペースだ。
しかも、師匠のマイペースとはワケが違う。
師匠とはとにかくスルーするが、彼女の場合はとにかく周りを問答無用で振り回す。
野良猫のような性格とかマイペースだと言ってしまえば2人とも同じなのに具体的なところを言うと全くの真逆な性格というのも珍しいというか面白い。
「さて、そろそろ具体的な話をしようか。一応ここでの時間は長居しても基本的には問題ないけど気分的にも早めに終わらせた方が良いだろうしね。」
そうして、桜華さんの言葉により俺たちは本題に入るのだった。
ちなみに余談だが、俺たちはクラスメイト全員で、ペチュニアさんと模擬戦を彼女の遊び相手的な感じの提案で行った。
当然俺たちは本気モードの師匠相手にするくらい全力で戦ったが、冗談抜きで手も足も出なかった。
正しく言うと、俺の種族特性で炎と水の魔法はどうにか対処できたがそれ以外をセリカの物理特化の攻撃で対処して拮抗はしていたが、魔法を対処するだけで一切近づけなかった。
マジで彼女は強すぎた。
単独で4種類の魔法を片手間に自由自在に操ってるのに加えて、魔法1つ1つのサイズが片手サイズなのにそれが直撃すれば軽く数メートルのクレーターは作り出すほどの威力だ。
そんな魔法が3桁4桁規模で同時に発動させて操るんだ。
・・・改めて、師匠の母親だと認識させられたよ。
あ、グリムも戦ったぞ?
一騎打ちだったけど彼女の評価としてはなかなか楽しかったと言っていたのでそれなりに善戦したのだろう。
それと、師匠とペチュニアさんも1対1で戦ったが、結果だけ言うと勝負がつかなかった。
本気モードの師匠相手に普通に戦えていたが、互いに致命傷を与えきれずに時間だけが過ぎる感じだったため途中できりがないと言って終わった感じだった。
その戦いの最中俺たちは全力で流れ弾から逃げたりするので必死だった。
・・そっちの対処だけでも冗談抜きで命がけだったんだよ!
進化して色々強化した俺でも、普通にヤバかったんだよ!
マジでペチュニアさんは最強だ。
母は強しと言う言葉が浮かび上がったが絶対この場合は意味が違うと思う。