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陰の支配者-私の保護者は猫と鳥-  作者: ミコト
最終章-異世界組攻略編-
165/177

5年生

--フリージア--

私が学園に通っている間に、異世界組はちょいちょい異世界電話を使って、交流をしつつ互いに情報交換をしているようです。

その中でも最も色々と影響が大きかったのは、ニッシーが実の父親と改めて仲を深めることができたことのようです。

どうやら、親子仲は悪くはないものの、色々と思うところが互いにあったらしく、申し訳ないという気持ちとかが邪魔をしてぎこちない距離感だったらしい。


それはさておき、あれから更に時が経ち、私とセイちゃん、ユウちゃんは5年生になりました。

ジャンさんも無事に卒業して、あのマフラーをプレゼントしました。

それだけで良いのか聞いたら、それがあるだけで十分と言ってたので、かつての先輩たちと同様に、そこらに売られているような4種を込めたモノではなく、特別製の6種を込めたマフラーにしています。


そして、私との模擬戦を日々行っていたことも影響してずいぶんと強くなりました。

そのおかげなのか何なのか、卒業式で華やかに卒業した直後、在学生の女性陣から熱烈な求愛が飛び交っていて、ジャンさんはうれしくはありつつもどうしたモノかとあたふたしてました。



学園では、お勉強の時間は、影さんを通じてリムさんを始め、様々な人たちとコンタクトを取り、色々とアドバイスをしています。

相手は、ほとんど魔術師団長としてだったり、クテンとしてだったり、公爵家令嬢としてだったりと端的に言ってしまえば私の様々な身分の関係者です。

ほとんどのトップでもあるので、私自身が対応することはほとんどないのですが、どうしようもない状況だったり、アドバイスが欲しいとかあれば私が対応する感じなんです。

これは、私がちょっと前(冬眠する以前のこと)まで超絶的に忙しかったことがクラリティ王国にいる人たち全員が罪悪感を持ったらしく、皆が色々と相談して、頑張った結果身分として一切仕事はなし!にはできないけれど、緊急時のみ動くと言うポジションにすることになったようです。

知識や実力は申し分ないと言われているので、基本的な仕事は他のメンバーが対応する代わりにそういう風にした方が効率も良いし、体への負担も減るから一石二鳥だと言うことになったんです。


まぁ、端的に言っちゃうとこれまでお仕事してたところ全体の補助と相談窓口になったようなもの。

なので、やることはと言うと卒業後はメインは各地に配置する影さんを経由して相談窓口だったり、事務処理だったりをする感じです。


リムさんもお仕事を覚える速度はすごく速いようで、最近では公爵家次期当主としてお仕事をして、その合間に冒険者だったり、近衛騎士としてこの国の現王様と王妃様になっているお兄ちゃんとお姉ちゃんの護衛兼話相手をしていたりと忙しくしていますが、本人はやりがいがあって楽しそうです。


それと、リムさんが個人経営していたパン屋さんですが、無事にこの国にいる食堂の皆さんにパンを焼くノウハウを伝えきれたらしく、公爵家次期当主になることをきっかけに、パン屋さんを辞めたようです。


趣味だったのに良いの?と聞いたけど、元々そのつもりだったから気にしないで良いらしい。

そして、パンを焼くのを辞めたわけじゃないから問題ないとのこと。



けど、私は知ってるんですよ?


ちょこちょこ、リムさんが焼いたパンが食べたいという声がちらほら上がっていてそれに応えては焼いていたりするのを。

その筆頭が王様おにいちゃん王妃様おねえちゃんです。



なので、今は、私と同じお家で過ごしています。

その方が効率的だし、1年も経たないうちに結婚するんですからね。


まぁ、リムさん本人が一番うろたえてたけど。

理由は教えてくれなかったけど、寝るときの姿でうろついてたらなぜか肩から羽織るモノをかぶせられるけど。

それを見てる他メンバーが呆れた顔でリムさんを見てたのはすごく気になるけど教えてくれない。


それで、セリちゃんが言っていたお背中を流すというのをリムさんがお風呂に入ってるときにやってみようと突撃してみた(アルちゃんからなぜか水着を着せられた)んですけど、なぜかきゃーとお股を隠した状態で逃げられたんですよね。

それ以来、私がお風呂に突撃する隙を与えてくれないんですよ。


ひどくないですか?

って、いろんな人に愚痴ってみたら、リムさんって乙女だよねって全員が口を揃えて言います。


むぅ?

なぜにみんなリムさんをかわいそうな子を見るような目で言うんです?


そして、リムさんは威圧的な見た目にそぐわず料理上手です。

特に得意なのは、リムさんが扱う属性が火だからなのか、火力を必要とするような類いの料理が最もおいしいです。

中華料理とかそんなのですね。


それもあって、魔術師団のみんなから、以下のモノがプレゼントされました。





過剰防衛のフライパン

深めのやや大きめの真っ黒なフライパン。

様々な鉱石を合成して作られており、どんな素材もくっつきにくく、全体的にまんべんなく火を通すことができる。

魔力を込めて振り回すと、魔力量に比例した威力の衝撃波が発動する。

ちなみに、どんな仕組みか謎だが、ありとあらゆる防御・防具を無視したクリティカルダメージを百発百中で命中させる。

ついでにお手入れ簡単



聖者の仮面

顔全体を覆い隠す純白の仮面

口元は開閉可能となっており、目元は透明な金属を使用している。

中央には、白銀で猫の顔の中央に肉球が描かれ、その両側には翼が描かれているが、光に照らされないと非常に見えにくくなっている。

効果

装着者の魔力制御の補助を行い、体質の弱体化に対しての補助をしてくれる。

空気清浄の魔法が込められているため、息苦しくなることはなく常に清潔な空気が与えられる

仮面全体に魔力を込めると硬化することが可能

目元の透明な金属へ魔力を込めると広角と望遠が可能

汚れても水で簡単に洗い流せる





どんなお料理にも使いやすくて、ついでに気に入らない相手をぶっ飛ばすことのできるフライパンと、私とおそろいの仮面です。

元々この仮面は、私への贈り物として色々と作っていたときにできた1つらしく、リムさんのことを知り、試作品として転がしていたそれを見つけ、リムさんにちょうど良いんじゃないかと言うことで贈呈されたっぽいです。

まぁ、次期公爵家当主だし、私と生涯のパートナーになるわけですからおそろいの仮面で良いじゃないと言うことのようです。


リムさんが言うには、恋人とはペアルックというおそろいのモノを身につける習性があるらしいと聞いて、私ともしたいけど同じ服とかは・・・となり、結果として仮面、ちょうどよくね?ってことでこうなったとか。


それにこれ、体質のコントロールを助けてくれるのに合わせて、魔力制御も補助してくれるので、リムさんの威圧体質を完全にOFFにすることが出来ると言うことなんです。

これに関しては、普段から完全にOFFにできるのはすごくありがたいらしく、私同様お外に出るときは常につけてます。

まぁ、これを外した瞬間威圧体質が本来の威力を発揮するので、リムさんからすると仮面を外したときは本気モードって感じになります。

ちなみに、この仮面は先ほど私が今つけている黒い仮面の試作品の一つと言いましたが、その後、リムさん用に調整しているので、私の仮面と対の存在という感じで作り直したんだとか。



「そう言えばグリム。ちょっと気になったんだが良いか?」

「あ?なんだよシリル」

「いや、お前、定期的に手紙は送ってるけど、ご両親に師匠とのことは言ったのか?」

「ん?・・あぁ、言ったぞ?その後の返事がなぜか来ないけど。」

「それ、大丈夫なのか?お前、故郷を家出当然で抜けてここまで来たんだろ?まぁ、手紙でやりとりするくらいだしその辺りの話し合いは決着はついているんだろうけどさ。」

「まぁな。けどなぁ・・俺の両親って、ホント一般的な村人だし、ただ驚いてるだけだとは思うんだよ。・・・俺の性格は、両親には似ずに、血のつながりもなかったけど親切なじいさんがいてさ、その人によく似ていると言われたよ。」

「村長とかか?」

「いや、ホントにただの村人さ。ただ、昔あちこちを旅してたらしくて、その影響で実戦経験が豊富で、すごく厳しい人だったよ。けど、その人のおかげで俺はこの国まで1人でたどり着くことができたんだ。」

「へぇ、じゃあ、言ってしまえばグリムの師匠になるわけだ。」

「そうなるな。すごく厳しい人だったけど、すごく俺のことを思ってくれてたし、病気とかしたら俺の両親よりも親身になってたしなぁ。ある程度の知識もその人が持ってた本を読んだり、話を聞かせてくれたりして学んだし、実践形式で鍛えてくれたし、1人で鍛えるメニューも一緒になって考えてくれた。」

「その人にとっては、可愛い孫だったんだろうよ。自分の経験を注ぎ込むことができて、自分を頼りにしてくれるグリムが好きだったんだろうな。」

「そうだな・・血のつながりがなくても俺にとってはあこがれで、大好きなじいちゃんだったよ。まぁ・・・俺があの村を飛び出す数日前に寿命で亡くなっちまったんだけどな。」

「そうだったのか・・」

「けど、じいちゃんは十分生きた、悪くない人生だったって満足げな顔をしていったよ。・・すごく悲しかったけどさ、じいちゃんみたいな後悔のない人生を送りたいってそのときに思ったよ。」

「もし生きていたら話をしてみたかったな。」

「たぶん喜んで話してくれたと思うぞ。厳しかったし、口数はそんなに多くない人だったけど、すごく思いやりがある人だったし、俺の話を聞くときはすごく楽しそうにしてたしな。」


「なるほどなぁ。そういえば、グリムの故郷ってどこなんだ?」

「俺は、夏の大陸の真ん中辺りだな。」

「夏の大陸だったのか。・・俺も師匠もまだ夏の大陸には行ったことがないな。」

「そうだなぁ。知ってるとは思うが、夏の大陸は火山が活発的ということもあってすっごい暑いところだ。その分温泉とか有名だけどな。」

「あぁ、地面深くを流れてるマグマに熱せられてるから温泉があちこちで湧くのか。」

「よく知ってるな。そういうことだ。けど、そんな大陸だからなのか、水を扱う魔法使いはすごく重宝されるぞ。」

「あぁ、そんなに暑いところだったら確かに、水の確保は他の大陸よりも重要になるだろうな。」

「そのせいなのか、水の魔法使いが発見されたら、貴族とか国とかが嬉々としてスカウトしにやってくるのも夏の大陸じゃ良くあることだ。その逆に、火の魔法使いは、差別とかはないが、ある程度成長したらよその大陸に移ることが多いな。俺の場合は、クラリティ王国を目指してたからホントにただの偶然だが。」

「グリムも、火の属性だったな。正しくは微妙に違うんだろうが。」

「まぁな。そんな感じだから、金に困る水の魔法使いがわざわざよその大陸から夏の大陸にやってくることもあったりする。」

「言われてみれば、それも納得するな。・・なら、逆に冬の大陸だと火の魔法使いが重宝されるのか?」

「確かそうだって、聞いてるぞ?」

「そうか・・けど、例の国の影響で冬の大陸はきな臭いんだよなぁ。」

「それなんだが、依頼を受けながら噂とかさりげなく情報収集してみたんだが、怪しいのはその国だけっぽいぞ?」

「・・どういうことだ?」

「どうも、他の冬の大陸の国側からすれば、冬の大陸全土に実力者を異常なほど集めてるのがかなり怪しいらしくてな、下手に敵対されない程度に接触はできるだけ控えたりしてるらしい。」

「そうなのか?」

「あぁ。実力のみを考慮しているせいなのか、それもあって柄の悪い連中もその国に集まってることもあって、他の国からすればわざわざ面倒ごとを起こすアホドモを集めてるから、ロクなことを企んでると気付いて、秘密裏にこの国とコンタクトを取ってるんだとか。」

「情報共有ってことか?」

「らしい。まぁ、あっちからすれば情報は渡すし、協力するから敵認定しないで!ってことなんだろうけど。」

「あぁ・・・師匠の影響でこの国の物騒さは更に跳ね上がってるし、そうもなるな。」

「そういうことだ。」

「人ごとみたいに言ってるが、グリムもその噂の筆頭だからな。なぁ?正義の死神」

「うっせぇ、わかってらぁ。黒夜叉。」


リムさんもシルちゃんも仲良しさんですね。

武術を元にした体の効率的な動かし方をシルちゃんから学びつつ、さっきのやりとりです。



「で、話は変わるが、シリル。お前の両親ってさ・・その・・」

「濁さずに言って良いぞ。」

「そうか?じゃあ。シリルの両親って精神年齢がすっごい若いよな。」

「あぁ・・・場の空気を良くしたり、フォローをしたりするのがうまいからさ、ムードメーカーだし、頼りになる存在として人気なんだが、タクミたちと普通に会話ができるくらい精神的な距離感は近いな。・・たぶん俺とは、親子というよりは先輩後輩とか姉弟くらいの距離感でずっとやってきたと言った方が正しい気がしてるし。」

「あの会話を聞いててすっごい納得する。」

「あが、真剣なときはホントにかっこいいんだ・・あの状態だとわかりにくいが・・・で、仕事先で周りの人たちになんて言われてると思う?」

「ん?そのムードメーカーとか盛り上げ隊長とかそう言うのじゃないのか?」

「・・・真剣なときとそうでないときのギャップがひどすぎて二重人格扱いされてるんだぞ?」

「・・・マジか。」

「あぁ・・新人はほぼ必ず治療に行った方が良いと周りに言ってしまうのが恒例行事になるくらい。」

「うわぁ・・確かにそれだと、あこがれて良いのか呆れて良いのか反応に困るな・・。」

「実際そうなんだよ・・過去にあったのは、中身が俺と親子逆じゃないかとか言われる有様だし。」

「そこまで言われるか。」

「まぁなぁ・・けど、ホントに出来る人だから人気者なんだ。」

「話していて面白いし、頼りになるならそうなるだろうな。」

「ちなみに、ついこの間知ったことだが、俺とセリカの両親が、実は逆だと勘違いされてた。」

「・・は?」

「なんていうかさ・・見た目がとかじゃなくて、中身が俺はセリカの両親に。セリカは俺の両親にすっごい似てるからなぁ。」

「あぁ・・思い返せば確かに。セリカの両親はあのときのを見聞きしてる限りだとまじめとかそういうのが最初に出るような雰囲気の人だったしな。」

「それと、家の両親はノリが良いから、セリカが冗談で家の両親をパパママと呼んでも普通に自分の娘扱いして返すからな。」

「で、そのままどっちがどっちの両親か更に勘違いが加速すると。」

「そういうことだ。」

「それは何というか、良いんだか悪いんだか・・。」

「まぁ、今は開き直ってるがな。そう言うモノだと思ってるし。」


「そう言えば、お前故郷に帰れたらアイドルになるんだろ?」

「・・・は?何でそう言う話が出る?俺は、義父さんの会社を継ぐつもりだったんだが。」

「それが、お前の両親が帰ってきたらアイドル兼声優として過去にお前をスカウトしてきた中で一番トップのところに是非よろしくみたいなことを嬉々として言うつもり満々だったぞ?」

「何でそうなるんだ・・で、義父さんは何か言ってたか?」

「それが、そっちの方がシリルの場合は人生を楽しめそうとか言ってOK出してたぞ?まぁ、テレビ化?っていうをしたときは是非シリルが担当してくれとかなんとか言ってたし、セリカが代わりに会社を継ぐんだってやる気満々だったぞ?なんか、そのための準備とか勉学はやってたから問題ないとかなんとか。」

「はぁ・・・そう来たか。」

「実際のところ、シリルはどうしたいんだ?その本を出す会社のトップになるのは、夢と言うより義務みたいに思ってるんだろ?お前の本音を言ってくれよ。親友なんだからさ、俺はお前が一切我慢せずに人生を楽しんで欲しいんだよ。」

「・・・小さい頃から俺は、何かを演じたり歌ったりすることが好きだったよ。特に、声優にすごくあこがれてたんだ。」

「声優って言うのは確か、仮想の物語のキャラになりきって代わりにしゃべるんだろ?」

「そうだ。自分でないキャラクターになりきって、命を吹き込むんだ。映像を作る人から、声を吹き込む人、それらをうまく組み合わせるために指揮をする人・・ものすごい数の人たちが協力して作り上げ、完成するんだが、その完成品でどれも大事だけど俺は、声を吹き込んでいる人たちにより一層あこがれたんだ。」

「どうしてだ?」

「同じ台詞だけでも、思い方、考え方、なりきり方で、全く違う風になれるんだ。そして、絵がなくても声だけで夢を届ける。変身したいみたいでかっこいいと思うし、そのなりきったキャラのようになりたいとそれを見て感動した人が笑顔になってくれる。それがすごく・・な。」

「実際俺から言わせてもらうと、お前はさ、歌うときもそうだけど、何かになりきっているときが一番きらきらしてるんだよ。」

「きらきら?」

「あぁ。その姿は同性の俺でもかっこいいと思うし、それを見てお前のファンになった連中がほとんどだ。だからさ、お前声優になれよ。周りが我慢するなって言ってるんだ。なら、当の本人が我慢したら周りに逆に迷惑だろ?」

「あぁ・・・そうだな。そうするよ。俺は、声優になろうと思う。せっかくここで、いろんなことを実践して学んでるんだ。それなら、思い切りなりきってその技術を高めてやるよ。」

「その意気だ。」


「でも、シリルの場合はひっくるめたら俳優だよね。」

セリちゃんが乱入してきた。

「あぁ、言われてみれば確かにそうだな。」

「シリル、俳優って何だ?」

「さっき言ったみたいに、物語のキャラの代わりに声を吹き込むのが声優なんだが、俳優は見た目や仕草までその人そのものになりきることだ。」

「それ、自分の見た目すらもそのキャラに似せるってことか?」

「そういうときもあるが、大抵はその物語のキャラに似ている人が、そのキャラになりきるのが基本だな。」

「なるほど。だがそれは、下手すれば体格とかも必要に応じて変える必要があるってことだろ?」

「限度はあるがそうなるな。」

「すげぇな。戦いのない世界で平和そうだが、別の意味で大変なんだな。」

「楽しい人生と言うか趣味のためには努力を惜しまない・・・って感じかな。」

「すげぇわかる。それに、俺はお前が書く絵本、結構好きだぞ?色々と考えさせるモノもあるし、物語自体も普通に楽しめた。」

「そう言ってもらえてうれしいよ。・・けど、帰れたら一度そういうところを、きちんと話してみるよ。」

「それが良いよ、シリル。私もシリルが声優とか俳優になるのは賛成だから。」

「ありがとうな。」


「で、セリカはどこに行ってたんだ?」

「ん?シュバルツのみんなとシリル親衛隊のメンバーの特訓のアドバイスとか模擬戦とかしてたよ。」

「あぁ、あの子たちにも教えてたのか。」

「うん。お兄様のために!って、全員が定期的に口ずさみながら頑張ってるよ?」

「シリル・・お前相変わらず、自称妹を量産してるんだな。弟も混ざってるっぽいが」

「グリム・・それを言うな。俺はそんなつもりはないんだが勝手に増えるんだ。」

「だって、シリルはみんなのお兄ちゃんだもん。シリルよりも年上でも問答無用でお兄ちゃんと呼ぶようになっちゃうから。」

「これが、天賦の才能って奴か。」

「素直に喜べない才能だなぁおい。」


シュバルツのメンバーとシリル親衛隊のメンバーは一緒になって鍛えたり情報交換をしたりすることは結構多いです。

まぁ、情報交換のほとんどがこの世界でシルちゃんがやってきたことを教えてもらったり、故郷にほんで、どのくらい活躍してたか教えたりという、ほぼ全部がシルちゃんのことですけど。







で、現在ですがそんなリムさんのお顔がものすごいことになってます。

そして、周囲のみんな(私を含む)はどうリアクションしたら良いか戸惑ってる状態。


それと、ちょうど全員帰ってきていたシュバルツのメンバーはというと、今回の元凶の2名とリムさんを交互に眺めてます。



「大っっ変、申し訳ございませんでしたぁぁ!!」

「このお詫びは、我が家に長年眠り続けていたこちらを献上することでお許し下さいぃ!!」

「な、なぁお袋に親父も落ち着けって。」

「グリム!何を悠長なことを言っているんだ!」

「そうよ!あなたはとんでもないことをしているのよ!?」

「いや、だからその部分をあんたらが勘違いしてるんだって」

「何を言うか!こんな・・こんな・・こんな美幼女が婚約者なんて、あり得ないだろう!どう考えても、自分を怖がらないからと言う理由だけで、あることないこと吹き込んで婚約者になっただけだろう!」

「あぁ・・私がもっとしっかりしていれば、グリムが真性のロリコンになんてならなかったわ!」

「お前のせいじゃない。ギランのじいさんに任せっきりにしていた俺の責任でもある。」


現在、リムさんの両親がやってきてます。

で、全力で土下座してるところです。

ちなみに、ギランのじいさんというのは、幼少期にリムさんに色々と教えていたというあのおじいさんのことのようです。


この2人の言い分を聞いていると、どうやら、私と婚約者になるという部分が相思相愛とかではなく、言ってしまえば洗脳とかとにかくよろしくない理由でその立場にいるんだと思い込んでいる模様。

そして、親として自分の息子をまともに戻すためというのと、相手は貴族(私たちだけど)にそのお詫びの品として謎の黒い箱を献上されてるところです。



それと、リムさんは説明しようと何度も試みてるのですが、思い切りこの2人は暴走しているせいで言おうにも言えない状態です。





ちなみにこれ、すでに1時間は経過してる状態です。

で、いい加減飽きたのとイラッとしたので、威圧を結構遠慮なしでまき散らし、【氷結地獄フリージングヘル】を発動させて、強制的に、そして物理的に冷やします。

全員「っ!?」

おや、ちょっと力加減をミスしたらしくついでに周囲の人たちも巻き添えにしたようですが気にしない。


で、顔を真っ青にしてフリーズしてる2人を放置して、リムさんの背中に抱きついておんぶ状態になる。

それで、リムさんはわかってくれるので苦笑しながら私の頭を撫でます。

「リア、ありがたいがちょっと力加減をミスったな?」

{いい加減同じやりとりを繰り返されてイラッとしました。}

「まぁ、いいか。とりあえず、サンキュー・・親父、お袋、いい加減人の話を聞けよ。ここにいる人は貴族は貴族でも元とはいえ王族だぞ?そんな人相手に話を一切聞かずに謝罪とは言え、言いたい放題って言うのは、逆に失礼だと思うぞ。」

リムさん両親「・・・」

「はぁ、やっと落ち着いたのかよ。」

そして、リムさんは懇切丁寧に説明しました。



「・・・え?じゃあ、俺たちの勘違い?」

「当たり前だ。そもそも、この国最強と謳われる魔境姫がたかだか青年1人の戯れ言で婚約者になるほど柔なわけないだろうが。」

リムさん・・合ってますけど、自分で自分のことを青年とか戯れ言って・・。

説明するにはわかりやすいですが。



「で、わざわざ勘違いしといてここまで土下座しに来たのかよ?」

「あ、あぁ・・。」

戸惑いつつもリムさんの背中にくっつく私と私のことを気にせずに好きなようにさせつつ頭を撫でてるリムさんを見てようやく納得したらしい。

「・・・とりあえず、色々と申し訳ございませんでした。」

「どちらにしてもお詫びの品としてこちらをお納め下さい。」

「ってそれ、結構昔から家にあった開けられない謎の箱じゃねぇか。確か、先祖代々受け継いでたとか言ってなかったか?」

「そうなんだが、正しくは先祖代々誰も開けることが出来ず、強制的に受け継がれたってだけだ。」

「で、なんでそれを渡そうとしてるんだよ。」

「一応ご先祖様からは、必要なときに献上しろと言われてたから一応。」

「はぁ・・・。リア、申し訳ないがこの騒動のわびとして受け取ってくれないか?」

(コクリ)

「スマン助かる。」



「これなんだろうね?」

隣でわくわくしてるセリちゃんとともにその箱をとりあえず開けてみると普通に開きました。


「ってこれ、バイオリンとオカリナだ。」

セリちゃんがそう言う品が入ってました。


なんか、ひょうたんみたいな形に棒がついてて、糸が数本張り詰めてある木の奴と、

木で出来た、吹き出しマークみたいな形で穴が開いてる奴です。


「って、セリカ、このバイオリン、すっごい良い奴だぞ。」

「やっぱりそう?」




魔のストラディバリウス

超高級なごく普通のバイオリン

使用する前に魔力をまんべんなく込めるだけでチューニングが可能で、弦などの摩耗も修復できる。

演奏すると心をささやかながら癒やしてくれる。




オカリナ(木製)

木で出来たごく普通のオカリナ

演奏するとすごくささやかに幸せな気分になれる




楽器だったようです。

で、そのバイオリンというのは、直感でセリちゃんが扱うべきのような気がしたので渡して、オカリナというのは私が持ってみる。

特に魔法的な何かがこもっているわけでもなくホントにごく普通のただの楽器ですが、不思議と扱い方がわかる。


試しに、吹いてみる。




~♪




何だろう、すごく楽しい。


「さすがリア。うまいな。」

「うん、良い音色だね。」


「で、師匠は何でセリカにバイオリンを渡したんだ?」

「なんとなくじゃない?けど、すごく久しぶりに弾くなぁ。」

「セリカは、それが扱えるのか?」

「うん。故郷で小さい頃から習ってたからね。」

「グリム、セリカはあまり知られてないが故郷の国でもトップ5に納まるバイオリニストだぞ?」

「バイオリニスト?」

「この、楽器を扱う人のことだ。」

「ほう?じゃあ、なんか聞かせてくれよ。」

「うん、ちょっと馴らしでいくつか弾くね。どうせだし師匠が弾いてるのと合わせるよ。」




~♪




「いつ聞いてもうまいな。」

「良い音色だな。と言うか、セリカかっこいいな。」

「だろ?バイオリニストの間ではかなり有名人だぞ?過去に何度か国外からスカウトがあったし」

「マジで!?」




「気に入ってもらえて良かった。」

「とりあえず、色々と安心したから私たちは帰るわね。」

「なんだ、いきなりだな?」

「畑が心配だし、あまり長居はな。お土産も買って行かないとならないからな。」

「まぁ、なんだかんだで元気そうで良かったよ。」

「それはこっちの台詞よ。元気でやっているようでこっちも安心したわ。」

「そっちも体には気をつけろよ?」

「あぁ。」




そうして、ちょっとドタバタしましたがリムさんご両親は安心してお土産(私お手製のハンカチを大量に渡した)を持って、故郷に帰っていきました。

そして、私とセリちゃんは定期的に今回いただいた楽器を使って演奏する習慣が生まれました。

懐かしきアニメ”小公女セーラ”って、今思えば、1世代前のざまぁアニメですよね。

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