異世界交流
--タクミ--
セリカさんのお父さんと無事に話ができたと言う喜びと、その娘であるセリカさんがまさかの悩みの元凶だったことで、すっごい意気消沈しているという有様をつい目撃してしまった俺たちです。
それを見て思ったのは、
やっぱり、セリカさんとシリルさんって、両親逆じゃね?
そう思っている理由のもう1つは・・・
「きゃー♪シリルかっこいいー!」
「良いぞ!さすが、前世が主人公!」
「ねっ!?義父様義母様、シリルって、そっちにいた頃の何倍もかっこよくなってるでしょ!?それに、今集まってる子たちは全員シリルのファンクラブで、親衛隊でもあるんですよ?」
「えぇ!さすがね!なんか、空を飛んでる?って言いたくなるくらい軽やかね!」
「あぁ、家にいた頃よりもずっと輝いている!やはり、家の息子、天草社長には悪いが、芸能界に推薦しておくべきだったか?」
「あー、やっぱりあのときのスカウトにOKさせとくべきでしたかね?」
「えぇ、私も今更ながらに思うわ。・・けど、こっちに帰ってきたら、シリルにはアイドルになってもらいましょうか。あっちがスカウトして断ったと言っても、あっちは嬉々として受けてくれるでしょうし。実際、あっちからも心変わりがあれば是非連絡を!って、会社の連絡先とあっちのトップの人の個人携帯の番号も教えてもらってるし。」
え、普通に番号交換してたの?
「ですよね!父様も笑顔で送り出してくれると思いますし、私も父様の後を継げるようにシリルと一緒くらい頑張ってますから。」
「そうね!じゃあ、そういう風に話を通しておくわ!当然、”シスターズ”も巻き込んでね!あの子たちなら良い反応してくれるはずよ!」
「ですよね!!」
実は、”シスターズ”が、シリルさんをガチのアイドルにしようと色々と裏で動いてたりするのはここだけの話。
・・・・えぇっと、今セリカさんが勝手に異世界電話を使用して、通信しているところです。
で、出てきた相手はシリルさんのご両親でした。
テンションとノリが俺らとほぼ同じで、友人の両親と話しているような気には全く思えず、むしろ、同級生と話しているような感覚にすらなる有様です。
どうやら、セリカさんのお父さんから話を来て、たまりまくっていた有給休暇をまとめて使って、あの部屋に張り込みしていた模様。
そして、その話のメインは、今絶賛ライブ中で盛り上がってるシリルさんを異世界電話に見せながら嬉々としてセリカさんが話してます。
「それにしても、家の息子、予想以上にイケメンになったわねぇ。」
「俺も同感だ。元々整った顔立ちなのは知っていたが、学校の規則とかもあるのと、目立つのがめんどくさいとかでワザと地味系に変装してたしなぁ。おまけに、体のラインを見せないように1年中長袖長ズボンだったし、夏でも暑苦しいと思わせない地味な気遣いをしてたから周囲のメンツは誰も気にしてなかったし。」
「それよそれ!あの子、きちんと磨けばテレビに出ても全く違和感なんてないくらいイケメンなのに、もったいないと思ってたのよ。それで、うちの子をあそこまで磨き上げたのは誰?是非お礼を言いたいわ。さりげなく、シリルに似合いそうな服と地味な私服とすり替えたけど、あの地味系の変装術の完成度が微妙に下がる程度しか効果がなかったのよねぇ・・ちっ」
なんかすごい台詞が聞こえた気がしたんだけど・・。
「あ、リーリスさんっていう、オカマさんなんだけど、すっごい優秀な人ですよ。何せ、一目でシリルのかっこよさを見抜いて、言葉巧みに誘導して今の姿に常にキープさせるようにした人ですから。」
「それはすごいわね!是非、私たちの分もお礼を言っておいて!」
「任せて下さい!」
「それと、シリルの口から複数人の声が聞こえる気がするんだが気のせいか?元々性別無視していろんな声を出せるのは知ってたが。」
「あぁ、それ、シリルのワザの一つです。」
シリルさんは、今1人二役でも1人三役でも性別・性格完全無視して同時に声が出せるようになってるんだ。
それが、これ
【多重奏】
1人で同時に複数人の声を発することができるようになる。
滑舌が上達しやすくなり、魔法を同時に複数発動させることも可能
音に関するワザに補正がかかるため、消費魔力がささやかながらに減り、【並列思考】発動時の肉体にかかる負荷が減る
言ってしまえば1人で複数の声を同時に出せるようになったってこと。
後、【並列思考】も覚えたらしく、より1対多での戦いの時の無駄が減ってるんだ。
おまけで言うと、そのワザのおかげであぁして歌って踊ったりしながらファンの人たちに時折ファンサービスをする余裕もあったりする。
ファンサービスって何かって?
ファンの人たちを子猫ちゃん呼びしたり、ウインクしたりとか。
「だが、ホントにそっちはファンタジーな世界なんだな。家の息子がなんか物理的に光ってるんだが。」
「アレはシリルの技で、あの赤く光ってるのが熱で、青く光ってるのが冷気なんですよ。シリルが狙った場所はあっという間に灼熱地獄でも絶対零度でも思うがままなんですよ。」
「やっぱり家の息子は、生まれてくる世界がそっちだったのが正しいんじゃないか?むしろ、こっちにいたことの方がおかしいと前々から思ってたんだよ。」
「あ、やっぱりそう思います?」
「あぁ、だって俺、幼稚園に入るかどうかって頃に本人に聞いたしな。前世の記憶があったりしない?って」
え・・シリルさんのお父さん、本人に聞いちゃったの!?
しかも幼児相手に・・
「それで、シリルはなんて言ったんですか?」
「あぁ、そんな非現実的なことを信じる暇があったら勉強した方がましですと真顔で言われて、胃薬をもらったよ。」
シリルさんらしい気がする。
「うわぁ・・幼児の頃でも今のシリルだ。」
「そして今じゃあ、この町の英雄だし、シリルを知らない女性と子供はいないくらいだしな。おまけに、柄の悪い連中もうちの子が手綱を握ってるから、全員シリルがいなくても率先して治安維持活動をしてくれてるし、事故とか事件があったら率先して助けたり、救助を呼んだりしてくれるからな。ついこの間も、どこぞのお偉いさんが、感謝状を贈ってたぞ。まぁ、彼らは、家の子のおかげで、シリルがいなかったらそんなことはしなかったって言うから、家にその感謝状が届いたけど。」
「さすがシリル!」
「まぁ、ふと気付いたら拳銃持ってる強盗とか、ナイフ持ってる強盗とかめざし帽かぶってる強盗とか全員たたきつぶしてたし、危険な運転でひかれそうになってる人すらも助けてたし。おまけに本人は、それを周囲に見せつけたりなんて卑しいことはしないから余計に、英雄扱いだし」
「すごいのよ?シリルがいなくなってから、シリル宛の感謝状と表彰状がばんばん家に届くの。私たちが知ってるのがその半分だったのよねぇ。」
シリルさんどれだけ関わってたのさ・・。
「危ないことはやめなさいって親なら言うべき何だろうけど、うちの子、そんじょそこらの武術の玄人相手でも圧勝しちゃうくらい強いし、障害を打ち破る英雄”ウルスラグナ”って呼ばれてる有様だし?」
「それマジですか!?」
「まじまじ。シリルを勧誘する企業の大半は、その呼び名を経由してうちの子探しに来てるくらいだし、最近じゃあ、俺と家内は、ウルスラグナの父、母って呼ばれてるし、会社でも俺と家内が営業に行くと、そっちの噂を知って、対したこと話さずにあっさり商談が決まったりする有様だし。」
すげぇ・・。
シリルさん、とっくに英雄だった。
てか、普通にチートだ。
「それって、こっちで言うところの師匠みたいな感じってことですか?」
「その通り!いろいろ聞いたけど、扱いとしてはまさしくフリージアちゃんそっくりだ。」
「それにしても、まさかフリージアちゃんと家が親戚だったなんて驚いたわ。」
「私も驚きましたよ。すごく遠くてもシリルと師匠が血のつながりがあったなんて。」
「けど、納得もしたわよ?同じ血を持っているからこそ英雄になってもおかしくないって。」
「あぁ・・」
確かに。
「あはは、シリルのご両親は楽しい方だね。」
「でしょ?すごく楽しいです。」
「イリスさんにもホントにお世話になってるようでありがとうございます。」
「気にしないで良いよ。こっちも楽しいから。」
「それと、改めてフリージアちゃんへお礼を言いたいんですが、どちらに?」
「あぁ・・今は学園で授業中だね。もう、卒業資格はあるから行っても行かなくてもどっちでも良いんだけどあの子はまじめだから。」
「あぁ、そう言えば学園に通う年でしたね。どうしても見た目が幼女なんで、まだ学園に通うのは早いと思ってしまって。」
「だろうね。あの子はそっちで言うところの合法ロリだからね。」
「えぇ!まさしく。」
なんか、普通にイリスさんと仲良くなってるし。
「それと、フリージアちゃんは、どうして仮面をつけてたんです?」
「あぁ、趣味だよ。」
趣味って・・本人も確かにそう言ってるけど説明適当すぎません?
「あぁ、なるほど。それに、フリージアちゃんの場合は超絶的に可愛いからナンパ防止にもなるなら一石二鳥ですね。」
「そういうこと。それにあの仮面は、あの子の部下からの好意による贈り物なんだよ。」
「ほほう。それは、うれしいでしょうな。デザインもシンプルですが、良いと思いますよ。」
「アレは、あの子をイメージしたモノらしいからね。」
「なるほど。」
なんか普通に納得された・・さすがシリルさんのご両親。
「あ!そうだ!1つ頼みたいことがあったんですよ。」
「ん?僕で答えられることなら何でも良いよ?」
「フリージアちゃんが活躍したことをこちらで本にしたいんです。」
「・・・どうしてそう思ったのか聞いても良いかな?」
「えぇ。ここからはまじめな話で、うちの子や、クラスメイトのみんなはフリージアちゃんがいなければ生き残ることができなかったと聞いてます。だから、どのような形でも構わないからこっちの世界でも記録を残し、みんなに知ってて欲しいんです。」
すごく真剣な表情で語るシリルさんのお父さんの表情を見ているとホントに心の底からそう考えてるってわかる。
「それは、誰のために?」
「当然、恩義を感じているフリージアちゃんのために。」
「うん、良いよ。」
「っ!!よろしいのですか!?」
「あぁ。こっちだと色々と支障があるし、すでに有名人だけど、君たちの言いたいことは十分理解できるんだ。同じ立場だったら本にしてもしなくても、同じようなことはしたと思う。・・自分の子供を助けてくれた人物がどれだけすごかったのかどんな形でも多くの人に知っていて欲しいって、僕も思うから。」
「ありがとうございます!」
「実は、これまでのリアちゃんの活躍とその過去、そしてあの子の前世、職業、祖先の活躍を大まかだけど記録したモノがあるから、後でそっちで見れるようにしておくよ。」
「ありがとうございます!そっくりそのままにはできませんが、多少の脚色をしますが・・」
「それは構わないよ。そのままにするには難しいところもあるだろうしね。けど、ホントの話と全く違うくらいに脚色したらダメだよ?」
「それはもちろんですよ。・・ですが、どうやって送るのですか?確か、こうして話ができるようになったのもかなり大変だったと聞いてますが。」
「それの応用で、新しく作った魔法の指向性を変えてあげれば、そっちの画面に文字だらけだけど見えるようにしておくから。・・まぁ、自動で文字が流れていくからたとえゆっくりでも見逃しができない大変な感じだけど。」
「あ、それは大丈夫です。こっちでも録画しておきますので。」
「それなら良いけど、確か電気とお金がかかる道具だと聞いてるけどそれは大丈夫なのかい?」
「それが不思議なことに今映ってるこれなんですが、今、電源のケーブルは抜けてるのに映ってるんですよ。なので心配は無用ですよ。」
なんか不思議なテレビになってるらしいけどまぁ、深く追求するのはやめておこう。
「じゃあ、後は頼むね。一応状況報告は後々欲しいかな。」
「それは当然ですよ。あ、あまり長話しても何ですので、そろそろ」
「そうだね。じゃあ、またね。数秒後に流すから。今後も、進捗があればちょくちょく流すから。」
「よろしくお願いします。あ!今度、フリージアちゃんとかシリルがバトってる姿が見たいな♪」
そして、切断され、イリスさんがなんかでっかい録画用の魔道具を接続したり、またものすごく大量に魔力がこもったバッテリーっぽい奴を繋いだりしてた。
って言うかさ・・・最後の最後にすっごいきゃぴきゃぴしたとんでもない台詞が聞こえたんだけど。
言いたいことはわかるけど、俺らからしたら命がいくつあっても足りない提案なんだけど。
なにせ、見た目は美幼女との戯れだけど、実際は空腹状態の猛獣と武具なしで挑もうとしているような感覚だし。
「これでよしと。」
「この四角い箱に、魔力がこもってるんですか?」
「そうだよ。この四角い箱に込めた魔力がそのまま君たちが言う電池になるんだ。かなりの量を込めてるからまるまる3日間でも平気だよ。まぁ、再度ため込むにはえげつない量がいるけど。で、こっちの録画用の魔道具にこれまでのリアちゃんのことや、過去とかまぁ、関わること全部が記録されてるんだ。ゆっくりとスクロールされるようになってるし、ちょいちょいリアちゃんのステータスも過去から今まで全部残ってるからすごく良い情報だと思うよ。まぁ、僕たち家族以外は絶対に見せられない情報だけどね。」
そりゃそうだ。
お師匠様のことが、祖先から今まで全部残ってるなんてとんでもない情報だし。
ちなみに、師匠がバトってるときと、シリルさんとかセリカさんとかがバトってる姿を数日後に見せたとき、それを目撃したメンツ(シリルさんご両親とセリカさんご両親は少なくとも揃ってた)は、予想以上だったらしく興奮と絶句が混ざったようなすごい表情になってた。
「ねぇ、セリカさん」
「タクミ君どうしたの?」
「シリルさんのご両親って、なんて言うか、距離感が近いよね?」
「距離感?あぁ、年齢差がまさしく親子なのに話してる感じだと先輩後輩か、同級生くらいに感じるよね。」
「そうそれ。なんか、すっごい話しやすいんだよね。」
「そういうところが、父様の会社で人気者になってる由縁だよ?」
「あぁ、なるほど。確かに、話しかけやすいし、会話もしやすい。しかも、真剣なときはマジでかっこいいし、頼りになる。・・そりゃあ、人気にもなるよね。」
「そうそう。だから、見た目は別としてシリルの性格はご両親譲りなんだよ。」
「わかる。あぁして、話をしてやっと理解できたよ。確かにシリルさんはあの人たちの息子だよ。ちゃんと血のつながりを感じた。」
「けど、まじめじゃないときの部分のギャップが強すぎてわかりにくくなってるのも確かなんだよね。」
「あぁ・・・。」
そうして、話はシリルさんのご両親に流され、本は着々と作成されていったのだと。
ちなみに、シリルさんのライブはbrave heartとto LABYRINTHを最後に歌って盛大な拍手と黄色い声とともに終了しました。
ついでに言うと、シリルさんはサインを何百枚と書く羽目になってたけど。
それと、おまけ情報ね。
この国、クラリティ王国なんだけど、おおざっぱに5割お師匠様、4割シリルさん、1割その他の割合で大ファンだったりします。
ついでに、お師匠様とシリルさんの両方のファンだったりする人だと、全体で7割になったりします。
それもあるのか、最近はシリルさんとお師匠様はサインを書いてることがすんごい増えてます。
何というか、この国全員分書いてるんじゃね?って言いたくなるくらい。
ついこの間なんて、他国からわざわざやってきた偉い人(王族っぽかった)が嬉々として、お師匠様とシリルさんのサインをもらって大はしゃぎしてたけど(おじさんと娘さん揃ってはしゃいでた)
で、現在は
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
・・・えぇっと、何が起きてるかというと、三者面談?お見合い?みたいな状態。
と言うのも、世界各地を跳び回っている超絶的に忙しいニシキのお父さんが俺らと連絡が取れるようになったと聞いて、数年ぶりに有給休暇を使って、やってきました。
そして、運命のイタズラなのかなんなのか偶然ニシキが異世界電話を起動させたところで親子ご対面です。
ついでに、隣でニシキの嫁であるリーベさんも瞬時にニシキの父親だと察して、どうすれば良いのかおどおどしてあたふたしてるところ。
で、ニシキさんはと言うと、すっごいどうしようという顔をして周囲を見渡してる。
まぁ、言わずもがな育て親ポジションのシリルさんを探してるんだろうけど、今はファンに囲まれて抜け出せません。
「ひ、久しぶりだな。」
「お!おぅ。」
「・・・」
「・・・」
うっわぁ・・・すっごい居心地が悪い。
ニシキのお父さん(名前はアキラ)って、ホントに忙しい人だから世界中を跳び回っていて、ろくに家に帰ることすらもできない人なんだよね。
おまけに母親はいないからシングルファーザーだし。
で、ニシキはと言うと1人である程度のことができるようになる頃まではアキラさんは頑張って有給休暇というか、産休を使って休んでたんだけど、1人でニシキがどうにかなる頃には仕事に復帰せざるを得ずに、仕事に明け暮れてた。
そして、ニシキの前から姿を現すことがほぼ皆無になったのは小学校の頃で、結果としてニシキはグレた。
お金は、忙しい分、困らない家庭らしいから引き出せば大抵のことはどうにかなるほどだったからそっちは困らなかったらしいけど、親の愛情とかが与えられずに続いた強制的な一人暮らしはかなりニシキの性格に影響されちゃったんだよ。
そして、中学校の頃にシリルさんと遭遇して、現在の形で落ち着いたんだ。
そんなドタバタに関しては、実はシリルさんのお父さんを経由してひっそりとメールでアキラさんに伝えられてるらしく、その後からは数ヶ月に1回程度でも手紙がニシキ宛に届くようになった。
一応、ニシキも返事を文章は短くてもメールでやりとりしているから仲が悪いわけじゃないんだけど、お互い気まずくて今みたいな距離感なんだよね。
ニシキの場合は、シリルさんから色々教わったから自分が悪いことをしていたと言うことに対する罪悪感と、アキラさんは自分の子供をほったらかしにしてしまい、グレたことを後悔して・・って感じ。
「げ、元気にやってるか?」
「お、おう。兄貴とお師匠様のおかげでな。」
「そ、そうか・・」
「お、おぅ。」
うわぁ・・うわぁ・・マジで誰か助けてって感じ・・この空気重い!
すると、エクレがパタパタとシリルさんの元からニシキの元にやってきた。
ちょうどニシキの視線から微妙に見上げるくらいのところ
「ん?エクレ?どうした?」
「ライチョウ?」
2人揃って首をかしげてたんだけど、突如としてエクレが全身をビリビリと電撃に纏わせ、ジリジリとニシキに近づいてきた。
それに、ニシキが引きつった顔になる。
「お、おぃ・・なんで近づいてくるんだよ!なんで、ビリビリしてるの!?」
ニヤリ
なんとなく、エクレの表情がニヤッと笑った気がした。
それを見て、ニシキが何かを察したらしく、更に顔が引きつってる。
「ま、まさか・・しびれを切らした!?さっさと言いたいこと言わないと、俺、エクレの餌食になるの!?」
「にゅい」
「っ!?」
エクレが当然だと返事をしたけど、ジリジリと近づいてくる。
どうやら、脅迫しにシリルさんの元からやってきたらしい。
さすがに、エクレの本気度に気付いたニシキが顔が青くなっていく。
「わ!わかった!話す!話すからそれやめてくれ!」
ニシキが必死で説得?すると、ピタリと止まった。
けど、距離感はそのままで頭の真上に移動した。
ちなみに電撃は纏ったまま。
どうやら、しゃべり終わるまでその脅迫モードは続くらしい。
「お、親父!!」
「な、何だ!」
「俺、親父のこと、嫌いじゃないから!尊敬してるから!」
「っ!」
「確かに、いつも家にいないし、構ってもらえなくていらつくこともあったけどさ、それでも、働いているのは俺が不自由なく過ごせるようにするためだからさ・・感謝してるんだ。」
ニシキなりの本音。
それを聞いて、アキラさんは何もしゃべらないけど涙を流しながらうれしそうに頷いている。
隣には、現在有給休暇を継続してとってるシリルさんパパがハンカチを渡したり、良かったなと声をかけてる。
そう言うフォローがうまいんだよね。
「あ、そうだ。紹介するよ。」
「・・何だ?」
微妙に鼻声になってるけど、きちんとこちらを目にすると目を見開いてフリーズした。
視線の先にはニシキとリーベ。
しかも、2人の左手薬指にはおそろいの指輪がきらりと光っている。
「紹介するよ。俺の嫁のリーベだ。」
「初めまして、お父様。私はリーベと申します。家事くらいしかできませんが、ニシキとともに幸せな日を過ごせるように頑張っています。それと、お礼が言いたかったんです。」
「わ、私にか?シリル君に言うべきだろう?」
「シリルさんには言いました。ですが、私はあなたにも言いたいのです。」
「なぜ・・・私は親らしいことは全くできなかったろくでなしだ。」
「いいえ。ニシキの正義感と諦めないところは、日々仕事を頑張り続けるアキラさん、あなた譲りだからです。ニシキは確かにシリルさんを目標にしてますが、根本的な部分では、あなたの背中を追いかけているのです。・・あなたが日々ニシキのために頑張っていたからこそその正義感に私は救われたんです。」
「そうか・・私は、少しは役に立っていたのだな。」
「少しなんかじゃねぇよ!」
「ニシキ・・」
涙を流してホッとしていたアキラさんにニシキが怒鳴る。
「俺は確かに兄貴のようになりたくて頑張ってる。けど、小さい頃からずっとあんたの背中を見て育ったんだ。いつも一生懸命で正義感が強いあんたにあこがれてたんだ。俺のあこがれをこれ以上貶さないでくれ!!」
「っ!あぁ、あぁ!ありがとう、ありがとう・・時間は余りとれないかもしれないが、今度からは仕事量をどうにかしてニシキとの時間を増やせるようにするよ。だから、俺をそういう風に思ってくれてありがとう。」
「あぁ、俺を育ててくれてありがとう。」
アキラさんすっごい泣いてるけど、すごくうれしそうだ。
「良かったじゃないですか。アキラさん。オタクの息子さんはうちの子に影響されたのは本当ですが、今の彼の姿はまさしくいつも頑張っているアキラさんそっくりですよ。」
「ありがとう・・ありがとう。」
シリルさんパパがフォローを入れたりして、その後は他愛ないことを話したりしてました。
良かったね、ニシキ。
ちなみに、きちんと伝えたことを確認したエクレは電撃を霧散させて何事もなかったかのようにシリルさんの元に戻っていきました。
「・・・さっきの電撃を纏った鳥はいったい・・」
「・・・兄貴のペットみたいなやつ」
「そ、そうか・・見た目よりもずいぶんとセ、積極的な性格のようだな」
「あ、あぁ・・普段は、おとなしいんだ・・きっと俺がいつまでももたもたしてたから活を入れに来たんだと思う・・・たぶん。」
「そ、そうか」
最近スマホで、気づいたこと
電話中にカメラ機能は、使えませんが、
LINE内にあるカメラ機能なら、電話しながらでも写メが、撮れる