オタクたち春の大陸に ※挿絵あり
--シリル--
タイラントアント
2メートルサイズのありで、非常にどう猛
獲得部位:魔石、甲殻、まれに蟻酸袋
マンイーター
直径3メートルの歩くラフレシアで、肉食で、大食い。
好物は人間だが、肉なら基本的に何でも好き。
それぞれの生き物が好むにおいを放ち、誘う。
獲得部位:魔石、花弁、花の種、匂い袋、まれに媚薬
こいつらが大量発生しているとかでその討伐依頼を受けることになった。
ついでに、その発生場所近くで賞金首の大型グループがたむろしており、その付近で襲われる商人や旅人、冒険者が非常に多く問題になっているとのことで、そっちの討伐も含む。
だから今回は2つの依頼だな。
近くの町や村からどうにかして欲しいという要望とともにクラリティ王国の現陛下であるイリスさんの弟さんのルイスさんからの依頼だから報酬金は結構高い。
予定では、その2種類の魔物討伐で金貨10枚、賞金首どもに関しては金貨20枚だ。
それと別で、魔物は換金すれば更にプラスされ、賞金首としてのそれぞれで更にプラスされる。
で、グリムとか他にも優秀な人がいるんじゃないかと思い、俺たちで良いのか聞いてみたんだ。
これ、俺とセリカに指名依頼だったんだよ。
そしたら、
「フリージアの弟子2人なんだ。優秀でないことはありえん。」
「そうよ?それに、個人としての知名度も依頼主からもすごく評価は高いから問題ないわ。」
「そうだぞ。それに、各町や村からの依頼にはおぬしらに対応して欲しいと言う声が一部上がっておる。」
という感じで、ルイスさんと妹さんで現王妃のアイリスさんからそう言われた。
2人は兄弟だが、互いに婚約者はいない。
だが、現状では2人でこの国のトップとして頑張ろうということで、2人が王と王妃になっているらしい。
一応兄妹婚はありえるのかそっとイリスさんに聞いてみたところ。
「別にだめという決まりはないよ?一夫多妻でもその逆でも特にだめという決まりは同じくないし。子供を作るのもだめとは言われないよ。まぁ、とはいえ1人2人までならともかく、4人5人と数が多いのは避けた方が良いね。」
とのこと。
だめではないが、限度はあるようだ。
どうやら、俺たちがいた日本よりもその辺りは緩いらしい。
俺の記憶が正しければ兄妹の間で生まれた子供とかは障害が残りやすいとか長生きしにくいとか聞いたが、こっちでは違うのだろうか?
と、医療関係に詳しいセイちゃんに聞いてみた。
「確かに、ないとは言えませんね。ですが、通常の出産した場合の障害の有無とどっこいどっこいですよ?大抵妊娠している段階で治癒と回復、浄化魔法をこまめにかけたりするのでそう言う障害はおなかの中に宿ってる段階で治してることが多いので、そこまで兄弟の間の子供が障害が多いという実例はあまりないですね。」
魔法の力は偉大なようだ。
「正直、兄妹同士から産まれた子供が存在する確率は1000人の内の数パーセントから1割いかないくらいらしいですよ。」
「そのくらいの確率なんだな?」
「えぇ。魔物とかが跋扈する世の中なので幼い内に亡くなる子も少なくないですし、血のつながりのない親子も珍しくないですからね。」
そうか。
場合によっては、孤児院出身で親が誰かすらもわからず、親のぬくもりを知らずに育つことだってあるんだ。
そう考えると、ありえなくはないか?
・・まぁ、師匠の過去のことを考えるとあまり人ごとじゃないが。
あまりにも師匠の過去は過酷だ。
で、現状は師匠ただ1人がルイスさんたちの後を継げる可能性がある1人のようだ。
基本的に本人の意思に任せるらしいけど、どうなることやら。
師匠自身は身分とかはものすごくどうでも良さそうだったけど。
それと、普段のルイスさんとアイリスさんを見ていると仲の良い兄妹よりも親密な感じがしてるし、2人とも結婚(血のつながりのない人とと言う意味)するつもりがみじんもなさそうなんだよなぁ。
で、イリスさん自身もそんな2人に対して、
「昔から仲が良かったからね。僕がニアさんと仲良くしている頃には今みたいに恋人みたいな感じだったよ。」
特に反対はなく、そっと応援しているようだ。
この国は、かなり独特だから政略結婚はかなり難しいらしい。
なにせ、他の国から色々と企んでやってくることが多いからそれらの対処などをしていると大抵はいなくなる。
だから、この国の貴族(王族含む)は、恋愛結婚がほとんどなので、相手は自分で探すのが普通。
なので、身分差の恋とかそういうのは全く問題なしだったりする。
その代表がグリムだしな。
「そういえばセリカ、今回の害虫は有名な奴なのか聞いてるか?」
賞金首を害虫呼びしているのはクラリティ王国だと良くあることだ。
隠語とかそういうわけじゃないが、国・・と言うか、善民視点での生活に影響があるという類いでは、魔物も賞金首も同じ扱いだ。
「詳しいことは覚えてないけど、元冒険者の連中で、最低Aランクで、Sランクオーバーがそれなりにいて、騎士崩れがぞろぞろしてる感じだって聞いたよ?」
「それなりに強そうなのが集まってるわけか。油断しないようにしないとな。」
「そうだね。師匠の弟子としてふさわしくあるために。」
「だな。胸を張って俺たちを弟子にして良かったと思ってもらえるように。」
アルナさんが一番弟子だから俺とセリカは2番弟子だがな。
防御方面ではあの国最強なんじゃないかと思うほど俺とセリカが同時にどんな種類の攻撃をしても全くかすりもしないからな・・。
まぁ、攻撃する方面ではたいしたことはないが、守ると言う方面では負けないが勝てない。
そして、逃がすこともあり得ない。
護衛という方面ではものすごく優秀だ。
なにせ、時間さえ稼げれば後は攻撃できる人が来て、戦えば良いんだから。
あの超大型スタンピートの時の師匠を見て改めて俺たちは決心した。
今以上にもっと強くならないとだめだと。
本気モードの師匠の力は予想以上だった。
あんなにすごい師匠がいるのにその弟子がたかだかAとかSランク程度の力を持ってるだけではだめだ。
もっと上を目指さないと。
ランクはどうでも良い。
あの人の隣に立つにふさわしい力を持つようにしたい。
ただそれだけのために。
そう考えると今回の依頼は経験を積むと言うことといざというときのことを考えて貯金するのにすごくちょうど良い。
「だからシリル。急ぐ気持ちもわかるけど、エッチしよ?」
「おい・・今昼休憩中なんだが。・・っていうか、ハルトがとばしてくれて数時間くらいでその本拠地なんだが。」
「だって、落ち着いて冷静にならないととかまじめにならないとだめなのはわかるんだけど、すごくムラムラしてそれどころじゃないんだもん。」
「・・何しても落ち着かないのか?」
こんな状況で言う台詞か?
「ナニする以外に落ち着く手段ないもん。」
うまいことを言ったつもりか・・・・とか、つっこみを入れてる間に襲われました。
てか、食われました。
出発が2時間ほど遅れたのはいう間でもない。
俺・・日本にいた頃よりセリカに勝てなくなってるんだけど。
確かに、ステータスでは、スピードアタッカーな俺と、攻撃防御に特化しているセリカでは、真正面から戦うとなると俺は勝てないさ。
勝つとすれば、スピードに乗ってヒットアンドアウェイでどうにか隙を作ってやるしかないからな。
はぁ・・。
日本でありとあらゆるセリカからの誘惑を甘やかして意識をそらしていたことの弊害か?
さっさと食われていれば、もう少しはおとなしかったか?
俺、間違ってた?
--巧美--
久しぶりです。
シリルさんの友人です。
・・って、誰に何言ってんだろう俺。
まぁ、いいや。
俺たちを異世界に誘拐した国から俺を含むクラスメンバーの半分は無事に脱出し、王子(笑)チームは見事にあの国の駒になった。
目指すは、クラリティ王国。
シリルさんたちと合流して、どうにか落ち着ける拠点を見つけて、元の世界に帰れる手段を探すこと。
そして、気に入らないけどあの王子(笑)チームを殺さない程度に仕留めてあの国の屑どもをどうにかする手段を考えないとなぁ。
噂だと、クラリティ王国最強のファミリーに弟子入りしたらしいし、どうにか交渉して俺たちに協力してもらえるようにしないと。
そのためにも、交渉材料と少しでも自分たちが強くならないといけないし。
と言うことで、クラリティ王国を目指して旅を続けながらいろんな魔物や賞金首と戦って経験を積み、休憩がてら寄った国で依頼を受ける。
そして、メンバー同士で情報交換や互いに模擬戦とかして鍛える。
あれから2年は経った。
最初の頃は、魔物を殺すことも苦労してたし、山賊というか賞金首・・つまりは、人間を殺すこともすごく大変だった。
・・当然吐いたよ。
けど、殺さないとこっちが殺されるし、場合によっては殺されるよりもひどいことになるって教わったから頑張って割り切るようにした。
それに慣れたのは、半年はかかったよ・・。
俺たちのチームは、良い感じに生産チームと戦闘チームに分かれることが出来た。
生産チームは、討伐して手に入れた魔物の革とか牙のアイテム類を加工して武具にしたり、野営するときの便利アイテムにしたり。
戦闘チームは、周囲の警戒から戦うこと、そして仲間を守ることをした。
料理に関しては、全員で交代制で行った。
野営も、最初の頃は慣れなかったけど最近はもうすっかりサバイバルな生活に慣れたもんだ。
ラノベだと、戦えない奴はハブられたりしたけど、俺たちはそんなことはあり得ない。
そんなことをしている場合じゃないって言うのもあるけど、基本的にいじめとかないし。
あるとすれば、シリルさんを王子(笑)が一方的に敵視してめんどくさいことになってたくらい。
まぁ、シリルさんはがんスルーしてたけど。
俺は、魔法で矢を作れるから遠距離攻撃メイン兼、周辺の警戒をしている。
錦さんは、ガンガン系の近接戦闘タイプで、硬くすることも出来るから護衛兼、戦闘。
美羽さんは、傷とかを癒やす力があるけど、槍を振るって戦えるから、メンバーのサポート兼、護衛という感じ。
他のメンバーも、そんな感じで戦ってる。
生産チームだと、
かなり高度な鑑定を扱える奴がいるから、毒の有無とか敵のステータスとか色々と調べることが出来るし
かなり大容量な収納能力を持ってるのもいるから荷物を運ぶ専用もいる
他にも、鍛冶とか錬金で魔物のアイテム類や鉱石を加工して武具を作る奴
生活魔法っていう火や水、風、雷など基本属性すべての魔法が扱えるけど威力はすごく弱い魔法を扱える奴がいる。
そういうのは、野営とか家事とかですごく助かってる。
場合によっては、戦闘チームのサポートとかな。
ちなみに、生活魔法が扱える奴は、同時に料理魔法っていうのを扱えたりする。
普通に料理するのと何か違うのか鑑定持ちに調べてもらったところ、普通に作るよりも料理魔法を持つ人が作った料理を食べると魔力とか肉体の回復速度を速める力があったんだ。
今は、作用されてるのかどうか微妙だけど慣れると言うか使いこなせればもっとはっきりわかるくらい作用されるらしいからすごく期待してる。
後は、職業では、薬師、魔法としては調合で毒とか薬とか作ったり
裁縫で、衣服を作成
感知系に特化してたりもする
一応生産チームもいざって時のために鍛えてはいるけど、自身の身を守れる程度だ。
俺とか錦さんがシリルさんから色々と身を守るすべを教わってたからそれを教えたり、偶然一緒に依頼を受けることになった他の冒険者とかに教わったりもした。
そのときに、俺たちは基礎が良く出来ていると褒めてもらった。
それで、シリルさんの偉大さに改めて感謝したのは言うまでもない。
「はぁ、冬の大陸と比べると春の大陸ってすっごい平和だよね。・・魔物はさておき」
「それは言える。温度はすごくちょうど良いし。」
今俺たちは、春の大陸にいる。
冬の大陸は、寒くて寒くて仕方がなかったけど、魔物も単純に強いというよりは、絡め手とか不意打ちとかでめんどくさい類いが多かった。
まぁ・・純粋に強いのもいたけど。
「けど、船はすごく運が良かったよね。」
「ねー」
数ヶ月かかるか、かからないかくらいで港町には着いてたけど、船に乗る金が足りなかった俺たちは、港町を仮拠点にして魔物を討伐して鍛えつつ金稼ぎをしてたんだ。
で、そのときに偶然人助けと余計な首を突っ込んだりした。
人助けは、魔物に数で圧倒されてやられそうなところを助けた。
余計な首を突っ込んだって言うのは、その助けた人の個人的な問題だった。
その人は、ちまたでは有名な漁師さんらしいんだが、大きな船を個人で持っているんだ。
で、その船が奪われた。
奪った奴らは賞金首でかなり強い連中で、その船を利用して悪さを色々とやらかして被害に遭っている人もすごく多かった。
で、討伐依頼も出てるような有様。
けど、そいつらは人質をとってるのに加えて、違法奴隷っていう、犯罪者じゃないのに奴隷にしてしまおうという裏に通じる奴らだった。
そのせいで、手を出そうにも下手すれば人質が危険でどうしようと言うところで俺たちの出番だった。
俺たちは、黒髪集団として目立ってはいたけどそいつらに顔は覚えられていなかった。
だから、俺たちは持てる知識と知恵をふるって頑張ったんだ。
色々と詳細は省くが、無事に賞金首どもは全員お縄につけて対処できたし、多少壊れていた船も材料集めを手伝って直したり、捕まってた人たちのアフターケアもした。
年齢的には、俺たちは一応大人(15歳以上だし)だったけど、世間的にはまだまだ若い方だったから話しかけやすかったっていうのもある。
まぁ、そんな感じですっごい感謝されたんだ。
で、お礼をしたいっていうから、素直にお金とか冒険者のランクはアップはいらないから春の大陸に連れて行って欲しいと頼んだ。
そして、無事に連れて行ってもらい、多少のお金ももらった。
せめて、賞金首の分だけでも持っていけと言われたからその分だぞ?
そんな感じでどうにか、春の大陸に到着したんだ。
で、冬の大陸と違って温度とかはすごく穏やかで過ごしやすいんだけど、魔物はでっかいし、冬の大陸と比べたら純粋に強いし、種類によっては多いしって感じで鍛えがいがあるとか稼げると言えば聞こえは良いけど、純粋に大変だった。
「そういえば、こっちの大陸に来てからその例のクテン様の噂、すっごい多いよね。」
「そりゃそうだよ。なにせ、この大陸のクラリティ王国のトップなんだから。」
「けど、どこまでがホントなんだろうね?」
「さぁ?嘘じゃないだろうけど、多少は違うところもあると思うよ?さすがに」
「だよねぇ。」
教会で神子様ということでクテン様と呼ばれる黒髪幼女の噂は、春の大陸に来てからすっごい増えた。
一応その子が、シリルさんたちの師匠だし、保護してくれてる人だからその人を目指して旅してるのも確か。
なんだけど、魔法反射を自在に操れるとか、影の中には神様が潜んでるとか、いくつものスタンピートを単独で撃破したとか・・どこまでが真実かわからないくらいチートじみてたし。
「けど、そっちもだけどシリル君たちの噂も増えたよね。」
「だよねー」
「兄貴が、日本にいた頃の何倍も強くなってるのは確かだよな。」
「うんうん。単独でスタンピート攻略したって噂あったし。」
そうなんだよね。
シリルさんとセリカさんが他数名の冒険者と協力してたった数名でスタンピートを攻略して村を1つ救ったって話があったんだよ。
その村では、すっかり英雄というか、天使の使い扱いになってたけど。
なんで、天使の使いなのかはよくわからないけど
どれだけ強くなったのか気になるけど、個人的にはあの国からハズレ扱いされてたのに、チートになってるシリルさんたちのステータスがすっごい知りたい。
たぶん、うまく使いこなせるようになったんだろうし、元々チートじみた身体能力を持ってたからそれらがうまく噛み合わさったんだろうけど、気になるよね?
「後、シリル君の親衛隊が出来てたよね?確か。」
「そうそう。シリル親衛隊って、さすがだよねー。」
「ねー。どれだけかっこよくなったのか気にならない?」
「なる!あれから2年でしょ?3日刮目しろとか言うし、すっごい会うの楽しみ。」
女性陣「きゃー!!」
まぁ、気持ちはわかる。
俺たちもこっちの世界でのサバイバル生活でたくましくなったと思うけど、シリルさんは更に頼もしくなっただろうし、もっと大人になってかっこよくなってるだろうなぁ。
それに、親衛隊が出来てるくらいだからかっこいいのは確定だし、たぶん”シスターズ”みたいなもの何だろうなぁと思う。
”シスターズ”っていうのは、日本にあったシリルさんのファンクラブで、確か1000人は軽く超える規模で、集まるメンバーには、警視庁のトップとか、他の企業のご令嬢とかも結構混ざってたりするからそんな彼女たちのネットワークを利用すれば大抵のことはどんなことでもわかるすっごくとんでもないチームなんだ。
シリルさんが頼めば、どんな内容の情報収集でも情報操作でもたやすくやっちゃうくらいある意味やばいチーム。
「ねえねえ。」
「どうしたの?」
「私たちが言うのも何だけど、男子たちさぁ・・ムラムラしないの?」
男性陣「は?」
いきなり女子たちからそんなことを言われた。
いきなり何言ってんの?
「え?え?」
「いやさ、私たちとずっと一緒に旅してるわけだけど、男って2日に1回は抜かないと暴発するって聞いたからさ。・・所謂色街とかにも、行ってないっぽいし。」
えぇっと、錦さんは嫁がいるから別として、所謂独り身である俺たち男子チームが、性欲が溜まりすぎて同じチームである女子チームを襲わないか心配してるってことだよな?
言いたいことはわかるけど、3日目にバーストするようなダイナマイト扱いするほどじゃないけど。
人によっては週一とかそれ以上の期間だったりもするし。
「心配しなくても、そんな欲望を出せる余裕もないし、襲わないようにするから安心して良いよ?」
と俺が言うと、他の男子チームもうんうんと頷く。
元々趣味には一直線だったけど、性欲は意外と自分自身で忘れがちだったし。
「あ、あぁ、うん。そう言う意味で私たちの心配をしてくれるのはうれしいし、いつも気を遣ってくれるのも感謝してるけどさ・・私たちに気を遣いすぎてつらい思いしてないか心配でさ。」
女子チームのリーダー格としてよくしてくれているのは、佳奈美さん。
結構さばさばした一見ギャルっぽい感じのモデル体型(胸C?)な美人筆頭だけど、さっきの台詞通り仲間思いで優しい人だ。
「それにいざとなれば、陰でするから心配しなくても大丈夫だよ?」
トイレ行くふりして解消するから。
相手がいる人もいる中、1人でするさみしさ以前の問題だし。
もう、欲望抜きにして作業みたいになってるから。
「え、遠慮・・しなくても・・良いんだ・・よ?」
ん?
カナミさん、どうしたんだ?
俺をすっごい見てる。
見てると言うより見つめてる?
なんだか顔が赤いし、目が潤んでる・・。
・・・気のせいだよね?
俺も思い違いだよね?
俺のうぬぼれだよね?
と、ちらっと視線で他の男子メンバーに聞くと、サムズアップしてきた。
・・当たって砕けろとのこと。
えぇ・・。
ま、まぁ、実は俺の好きな人だったりするんだけどさ。
で、カナミさんはと言うと、
「う、うぅ//」
「ほら、頑張って。」
「大丈夫だから。両思いだから。」
「だ、だってさぁ・・」
「だってもなにもないって。カナミは美人なんだからさ。自身持ちなって。」
なんか、アニメで良くあるラブコメのにおいがする。
お?
もしや、誰か好きな人がいるのか?
何だと!?
もしや、俺以外の誰かが!?
早速、俺ルートのフラグがへし折られる!?
フラグ立てて記憶もルートを確立させた記憶もないけどな!
さりげなく、手伝ったり会話するくらいのアプローチしか出来てないしな!
良くて友人として記憶してもらえる程度だろ。
「え、えぇっと・・ね、ねぇ。タクミ。」
「は、はい。」
俺相手に練習ですか?
で、なんで、俺、両手で手首を握られてるの?
逃げないよ?
と言うより手汗かいてるよ?
後、ちょっと痛いです。
そして、ちょっと近すぎてドキドキするし、良いにおいがして変な気持ちになりそうなんですけど。
「えと・・その・・・」
うむ。
変なことを言わないようにとりあえず無言で待つしかないな。
待つから、手を離して?
ちょっと痛いです。
どうせつかむなら手を握って欲しいです。
なんか、補導されてる気持ちになってむなしいから。
で、女子チームはなぜにガンバレーと聞こえるか聞こえないかの絶妙な声の高さで応援してるの?
それと、男子チームは火曜ドラマを楽しむ主婦みたいな顔になるな。
「あの・・ね?初めて会ったのはいつか覚えてる?」
いきなり振り返りですか?
「確か、中学1年生からだよね?」
初めて同じクラスになって、一目惚れしたんだよなぁ・・ちょっと会話して楽しそうに笑ってる笑顔に。
単純な俺。
「そう。・・実はさ、人見知りだったんだよね私。」
「え?そうだったの?」
それは初耳だ。
「タクミを話すようになってからちょっとずつ人見知りを治すことが出来たんだ。」
そういえば、最初の頃はよく話してたけど、他の友達が出来るにつれて話す回数が減ってた気がする。
「そうだったんだ・・。気付かなかった。」
「自分が人見知りだって気付いたのはかなり後だったけど、あはは。」
「あるよね。」
自分のことが自分が一番わからないってあるあるだ、うん。
と、微妙に棒読み口調で笑い合ってるとカナミさんはキリッとした何か覚悟を決めたような目になった。
あ、手首痛い。
力込めないで?
「タクミ!」
「はい!」
「初めて会ったあの頃からずっと好きでした!だから、あなたの子供を産ませて下さい!!」
全員「ぶふっ!」
なんか、予想外な告白が来たんだけど!?
付き合うとか結婚するとかすっ飛ばした台詞が飛んだんだけど!?
と、全員で、あまりにもいろんな意味でぶっ飛んでる台詞にフリーズしてるとカナミさんはさすがに何か気付いたらしく
「あ、アレ?私・・さっきなんて言った?好きだから付き合ってって言ったよね?ね?」
気のせいだって言ってとすがるような視線に理性が崩れそうになるのを抑えつつ現実を伝える。
「えぇっと・・言いたいことは通じたけど、カナミさんの口から漏れた台詞は、俺の子供を生ませて欲しいっていう台詞でした。」
ちょっと追い打ちになるかもしれないけど、素直に言っておこう。
ここで嘘を言ってもアレだし、周囲(移動中だから俺たち以外誰もいない)から素直に言えってボードに書いてあるし。
「う、うぅぅ//ち、違うの!いや、違わなくないけど!私エッチな子じゃないから!いや、タクミが好きなら一晩中でも外でもどんなプレイでも大好きになるけど!好きな相手が強姦しないように頑張ってる姿が申し訳ないって気持ちと、それなら私が童貞を奪っちゃう代わりに既成事実を作りたいとか思ってないから!いや、他の人に奪われるくらいなら私からむしろ襲った方が良いとは思ってるけど、アレ!?アレ!?私何言ってんの!?」
あぁ・・すっごい暴走してる。
「とりあえず落ち着こうよ。カナミさん。」
「・・呼び捨て」
「え?」
「だ、だから・・・呼び捨てで呼んでよ。タクミ」
良いのか?
ちらっと周りを見ると呼べと頷かれた。
じゃあ、・・・いや、呼ぶ前に返事しないと。
「わかった。俺も実は、カナミのこと一目惚れだったんだ。だから、どこか落ち着いたところで子作りしよう!」
全員「ぶふぉっ!」
ん?
なんか余計なことを言った気がする。
で、目の前には真っ赤な顔で口をぱくぱくさせてるカナミがいる。
「・・もしかして、カナミと似たようなこと俺・・ぽろっと言った?」
ちらっと周りを見るとうんうんと強く頷かれた。
「私たち、あっちで野営の準備してるから2人ともさっさとエッチしてきなよ」
なんか、ちょっと買い物行ってきてよみたいな軽いノリで言われた。
「そうそう。錦だって、さんざん嫁さんとしてるのは、みんな知ってるし、聞こえてるわけだし、気にせずシテきなよ。」
「気にしないなら、見学させて?」
「ちょ、あんたはなに言ってるの!?」
「だって!処女卒業プラスの童貞卒業プレイだよ!?ビデオとかではモザイクかかってるところが全部鮮明に見れるんだよ!?気にならない!?しかも、友人たちの!知り合いだよ!?それに、女の子同士でシテる子だっているのに何を今更。」
「確かに・・ねぇ、静かにしてるからさ、ここにテント立てるからその中でどうぞ。・・なんか最後にとんでもない台詞が聞こえたのは気のせい?」
「出来れば、四十八手を。」
「最初からそれはハードでしょ。」
「そうそう。最初は、互いのを手でシテあげて、次に口、そしてカナミが上でしょ。」
「そこ、正常じゃないの?」
「何言ってるのさ。女性優先にした方が自分のペースで出来るでしょう?男は突っ込むだけだろうけど、女性はあんなぶっといのが刺されるんだよ?痛いんだよ?どうせ痛い思いするなら最初くらいは自分のペースで楽なんだよ。」
「な、なるほど。」
「ねぇ、なんでヨシミはそんなところまで知ってるの?」
「あ・・あはは。実は、ラクと1年前からそう言う仲になってて・・」
「実はそうです。」
「えぇ!?」
ヨシミは、いつも笑顔でムードメーカーみたいな感じの子で、なにげに情報通。
で、ラクは、サッカーが得意なよくいるスポーツ大好き青年という感じ。
「っていうか!!するけど!シテ来るけど!!あんたたちの前でしないから!!!」
カナミがそう叫ぶ。
すごい堪能しました。
俺は、男子チームからなにも言われなかったけど、カナミはそれはもうどんなプレイだったかとか、俺のがどうだったとか何回したかとか事細かに女子チームにしゃべらされてました。
と言うより、こっちに来てからそういう猥談が、男女混じってオープンに普通にしゃべるようになったのは、いかがなものだろうか?
まぁ、好きな相手とつきあえることになってうれしいのに、なんでこう、複雑な気持ちになるだろう?
それは、カナミも同じ気持ちだったようだ。
とりあえず、春の大陸は広いし、慌ててもしょうがないから1つずつ確実にいきましょう。