閑話-一方異世界では- ※挿絵有
--セリカ父母--
「・・そうか。まだ見つからないか」
「えぇ。國崎ご夫妻が、様々な伝手を使って下さってますが・・」
國崎ご夫妻は、今はただの優秀な部下だが、将来的には親戚同士になる。
あぁ、自己紹介がまだだったな。
俺は、天草剛。
天草芹華の父親であり、大手の書籍を扱う企業の社長だ。
そして、知っているとは思うが我が娘セリカの許嫁であり、我が社の次期社長なのが、國崎シリルだ。
そんな彼の両親でもある我が社の優秀な部下は、ほんとに頼りになる。
普段は、皆を明るくさせるようにユーモアあふれるが、仕事の最中は二重人格じゃないかと思うほどその差は激しい。
だが、そんな姿が男の俺でもかっこいいと思うほどであり、そんなご夫妻にあこがれる社員は実は少なくない。
とりあえず、俺の娘について話しておこう。
俺の娘は、親ばかと言われてもおかしくないが非常に美人でかわいい。
そして、成績優秀だ。
小学校の頃から高校までどの成績もトップレベルだし、運動も出来る。
護身術代わりに合気道と剣術を覚えてもらったは、良いが・・・本人が頑張りすぎたせいで護身術に収まらないレベルになったと通わせている道場の師範から言われたのは聞かなかったことにしている。
そんな彼女の趣味は、端的に言うとオタクだ。
おそらくは俺のせいだ・・私の会社の書籍の7割はライトノベルだからな。
それを幼い頃から眺めていたせいかすっかりドはまりしてしまい、すっかり見た目と中身のギャップがすごすぎる美少女になってしまった。
で、そんな我が娘が幼稚園の頃、突然とんでもない爆弾を放った。
「お父様!私、國崎シリル君をお婿さんにします!」
お嫁さんになりたいじゃないのか
とか
しますって希望ではなく決定事項かい
とか
色々とツッコミどころ満載で、当時は大騒ぎだった。
なにせ、その頃にはアニメにはまりまくってて現実の異性には一切興味ゼロだった娘がそんなことを言い出すんだ。
とりあえず、大きくなっても同じ気持ちだったらねとなだめつつ、密かにそのシリル君という人物を調べることにした。
で、結果として思ったこと
生まれた世界間違えてない?
前世は物語の主人公だったりしない?
とか思った。
幼稚園児のはずが、礼儀正しく、おとなしくまじめで一生懸命だった。
ぱっと見は容姿がそこそこ整ってる子供だなぁだったが、お迎えに来た両親を見た瞬間驚いたのは、自分の会社の部下だった。
しかも、ユーモアあふれる夫婦で仕事時のギャップがひどすぎる夫婦でいろんな意味で有名な2人のだ。
あまりにも出来すぎる息子さんにえ?マジで?親子の中身逆じゃない?と本気で思ったが、事実だった。
で、仕事のある日、偶然昼食を一緒することが出来たので話をちらっとしてみたところ
「あぁ、社長もそう思いますよね。俺たちも前世の記憶あったりしない?って本人に何度か聞きましたから。」
幼児に聞いたんかいと内心でつっこみを入れつつ続きを聞いてみた
「それで、なんとその子は答えたんだい?」
「それが、そんな非現実的なことを信じる暇があったら勉強した方がましですと真顔で言われました。」
ついでに、胃薬をもらったらしい。
・・・幼児に心配かけさせるなよ。
どう考えてもそれ、精神科に行こうか?とか頭大丈夫?って台詞をうまい感じに濁してるだろとか思ったけど、頑張って言わなかった。
「それで、うちの息子がどうかしたんですか?」
「うちの娘がシリル君を婿にすると断言されてしまったんだ・・」
娘はやらんという定番の台詞を吐く余裕もなく内心大パニックになったよ。
「あぁ・・そういえば、初見でなついた美幼女が日に日になつき具合がすさまじくなったとか、大好きアピールがものすごい子がいるとうちの子が言ってましたなぁ。」
正直頭を抱えたくなった。
うちの娘・・・なんで、幼女のくせにそんなに熱血的なんだ!
しかも、そこで一目惚れはわかると言っても、それは熱中しすぎだろう!
「それで、シリル君はなんと?」
「なんか、放っておけないので、俺が守りますと言い出して、体を鍛え始めました。」
そっちはそっちで、なんでそこでそっちを頑張っちゃうの!?
「いやぁ、驚きましたよ。なんか良い感じに武術をばらけた数種類を習いたいと的確なのか適当なのか判断がつきにくいお願いをされましたよ。しかも、生まれて初めてのお願いがそれですからね。」
あははと笑いながら言ってるところはさすが國崎さんとは思うが、確かに幼児が言う台詞じゃない。
「それでどうしたんだい?」
「えぇ。初めてのお願いに家内が大興奮して空手、柔道、サバット、ボクシング、剣道、少林拳、殺陣、擬闘を教えてくれる場所を手配してました。」
國崎夫人!
喜ぶ前に色々とやることあるでしょう!!
で、なんでそこを笑って済ませるの!?
とまぁ、そんなこんなで幼稚園から小学校、中学とすくすくと2人は育っていったのだが・・
ふと気づけば、2人とも成績優秀なのはそうでも、中身は色々とツッコミどころ満載なことになってた。
うちの娘は、オタクになったまま、立派な淑女になるという意味不明な両立を隠しもせずにいるし、
シリル君は、そのまじめさと一生懸命さに拍車がかかってがちもののSSみたいなことになってるし
うん・・特にシリル君の化け方がすごかった。
いくつもの道場を転々としながら國崎夫人が幼稚園児に教えた6つの武術と2つの技?技術?は、すっかりものにし、すべてを良い感じに混ぜ合わせた独特な完璧超人になっていた。
おまけに、趣味で絵を描いたりは、良いとして面白い特技をいつの間にか身につけていた。
それに気づいたのは、小学校の頃、シリル君がうちの娘に引きずられるようにして我が家にさらw・・連れてこられたとき、俺は珍しくその日は休みだったので2人がどういう遊びをしているのか気になり様子を見ていたときだった。
「シリル!シリル!またジュリエットやって!」
ジュリエット?
ロミオではなく?
何という無茶ぶりと思いつつ、どうするのか気になりそのまま様子を見ていると・・
「ったく・・私を殺して。あなたのキスで。あなたの唇、あたたかい」
ものすごく切なくて、相手をいとおしく思うまさしく少女の声だった。
「は?」
今、シリル君がしゃべったんだよね?
思いっきり女の子の声だったよ?
で、俺のは?という台詞は思い切りスルーされ、次々とセリカから無茶ぶりな言葉が飛び交う
「さすがシリル!じゃあ、もみの木!」
なんってマニアックなチョイスをしてるんだ
「”あなたの若さを喜びなさい”、”これからの成長と若々しさを喜びなさい”、と太陽は言いました。」
おぉ。
抑揚のない淡々としたナレーションっぽい感じと優しさを含んだ男性とも女性とも言いにくい感じの声だ。
ほんとに器用だな。
それから、いばら姫だのラプンツェルだの幸福の王子様とほんとにいろんなのの無茶無理が我が娘から飛びまくる。
しかも、その台詞言ってた?と言いたくなるようなマニアックなもののチョイスが多い。
というのに、さすがシリル君はすべて的確に演じて見せた。
しかも、それに併せて性別や年齢、性格などをすべて完璧に。
で、うちの娘は普通に喜ぶだけで、すごいとは思ってないらしい。
いや、すごいとは思っているだろうけど、シリル君以外にそんな無茶ぶりに答えられる人間って世界中に一握りくらいしかいないと思うということをわかってない模様。
・・うん。
そこで、実感したよ。
うちの娘の旦那になれるのはシリル君ただ1人だと。
あんな無茶ぶりをかます妻がいる時点でたいていの人は挫折すると思う。
おまけに、シリル君は非常に面倒見が良いし、何より強い。
面倒見の良さが発揮され、年下からはものすごく慕われ、子守に忙しい保護者からは絶大な評価はある。
さらに、シリル君・・拳銃持った銀行強盗とかナイフを持ったコンビニ強盗とか十数人規模の不良軍団とか全部1人でたたきつぶしてたりする。
・・何やってんの?と素直に思った。
そんな感じで、シリル君の将来はどんなことになるのか正直謎に包まれている。
なにせ、あの子、中学に入学したあたりからあちこちの企業からの勧誘がすさまじいのだ。
芸能界だと声優に俳優
もっと驚いたのは、警察・・しかも警視庁のトップからの勧誘。
ほかにも、色々あったが、警視庁に似たような護衛関連の企業というか組織が多かった。
ほんとに思ったね。
生まれた世界間違えてない?って。
一応、俺の後を継いでくれると本人が言ってるのでその関連を教えてるし、それを理由に全部断ってるっぽいけど、警察側からは民間協力者でも良いからとか嘱託でも良いからとアルバイトポジションOKで、頑張ってたけど。
結果として、そっちは民間協力者として名前を出さなければOKということになってた。
で、俺の妻から言われた台詞はというと
「この間、保護者会で小耳に挟んだのだけれど・・うちの娘とシリル君、両親が逆に思われてたみたいなの」
どうやら、うちの娘のギャップのすさまじさが國崎夫妻の遺伝だと思われ、
シリル君の優秀さというかまじめさというか、そういう部分は家の遺伝だと思われていた模様。
・・自分でも思わずうんと言いたくなってしまった。
そんな感じで色々とやらかしてくれる2人だが、家の娘のシリルラブは日を増すごとに増していった。
今では、そんな完璧超人なシリル君はモテモテになるのは当然だが、そんなシリル君目当てに寄ってくる女性全員からシリル君を守ってるらしい。
・・なんか、白昼堂々とひざに乗ったりあ~んしたり、抱きついたり人気がない場所(一応)でキスしてそれをさりげなく目撃させたりとほんとに色々とやらかしてるらしい。
家の娘・・どこに羞恥心を忘れてきたのだろうか。
そんな有様なのに、家の娘は立派な淑女扱いされてるし、シリル君は自分がモテてるということを全く自覚してないという状況。
正直訳がわからない状態だった。
そのせいだろうか?
シリル君がいれば家の娘はどこにいても大丈夫な気がする。
なんか、象サイズのオオカミとか数匹くらいけり殺してそうじゃない?
それもあって、ある日突然あの子たちを含む1つのクラスメイト全員が行方不明になってもある程度心に余裕が持てた。
とはいえ、何もせずにはいられないので、持てるすべすべてを使って探しているが全く手がかりがない。
最も・・
「だめですね・・”シスターズ”に頼んでますが、全く情報がないみたいですね。」
と國崎夫人が言う。
「・・シスターズとは?」
謎の台詞が飛び交う。
どこの集団なの?
「家の息子のファンクラブのメンバーですよ?息子より年上も混ざってたり、警視庁のトップのお嬢さんとかが混ざってるみたいですけど。」
なんか、とんでもない集団がいた。
なんで、シリル君そんなとんでもない集団を率いてるの?
聞くと、人数は今のなお増えてるらしいが、現状3桁を軽く超えたと言われ、聞かなかったことにした。
「今のところ、突然謎の光があの部屋から迸ったという情報くらいなんですよねぇ。」
そう。
今のところまとも?な情報は、突然ものすごい光が事件のあった部屋から迸ったかと思いきや、その部屋には誰もいなかったということだけだったんだ。
「じゃあ・・アホなことを言いますが、異世界に飛ばされたと考えた方が一番しっくりくるんですよね。」
滑稽無比だとかなにを馬鹿なことをと言いたくなるが、そうとしか言い様がない。
今のご時世に、ものすごいフラッシュの後で集団をまとめて誘拐出来る技術はない。
「國崎夫妻は大丈夫ですか?」
シリル君がいなくなって一番落ち込みつつ、捜索に積極的なのはこの2人だった。
「・・あの子がいなくなって改めてわかったんです。あの子には、ほんとにお世話になってたんだと・・」
あの子は、何をしてたんだ?
と、やんわりと聞いたところ
「あの子がいたときは・・ふと気づくとやるべき家事がなくなってるんです。それに、ちょっと油断すると食事が出来てるんです。で、ちょっとよそ見をしてると掃除が終わってるんです。」
なんで、優秀な主夫になってるの?
まぁ、家事も万能なのは知ってるけど。
「私は、怠けてないんですよ!?シリルに任せっきりじゃないんですよ!?むしろ、私がやると言ってるのに仕事が大変だろうからこのくらいさせてと言ってやらせてくれないんですよ!?それに、それに!!あの子のご飯が食べられないのがつらいのぉ!」
「お、おぅ。」
「あぁ・・そうなんだよなぁ。」
國崎夫人が嘆く中、わかるわかるとうんうんと頷いてる。
「俺たちの弁当・・家の息子が毎回作ってくれてたんですよ・・。頼んでないのにふと気づくと弁当が出来てるんですよ。」
で、とんでもないことを言い出した。
「いつも弁当がテーブルにあるから何も考えずに持って行ってたら・・ある日、その弁当は妻が作ったものじゃないって判明したんです。」
は?
「俺も一応家事が出来るんで、俺か家内のどちらかが作ったんだろうと互いに思って何も考えてなかったんですけど、ある日、何気なく毎日弁当ありがとうと言ったら、互いに何それ?ってなったんです。」
「それ、不審じゃないんですか?」
誰が作ったかわからない弁当を食ってたって、普通に恐怖じゃない?
「それで、真相はわかったんですか?」
「えぇ・・驚くことに犯人は、家の息子でした。・・・・・それ気づいたのは、あの子が小学3年生の頃でした。」
おい幼児!
「え?小学3年生で?え?」
「やっぱりそうなりますよね・・うんうん。私たちも驚きました。」
気づいたのが3年生で、聞いていると始めたのは2年生の中盤あたりだと判明したらしい。
「作り始めたと思われる当初は何も思わなかったんですか?」
さすがに最初あたりは失敗したものや形がぎこちないものもあっただろうさすがに。
「それが、妙な知恵を持ってたらしくそれが失敗品だとわかりづらいように飾り付けしてたんですよ家の息子。だから、味付けも慌ててたのかなぁ程度の誤差だったんですよ。」
あの子、ほんとに何でも出来るな。
「で、それに気づいた後、家中に監視カメラを設置してみたんですよ。」
おい。
「・・7割は息子にばれて外されたんですけど、残った分で無事に撮れて判明したことがほんとに多くて。」
というか、7割は気付いたんかい。
「当時はまだ料理は火を扱う部分は危ないのでさすがにしないようにきつく言ってたので、料理の下ごしらえやサラダのような火を使わずに済む部類はすべて終わらせたり、茹でる類いはすべてしてたのもあの子でした。」
「え?茹でるものは出来てたんですか?火は危ないので近づかないように言ってたんですよね?」
「それが・・電子ポットに放り込むという知恵をつけてたらしく。」
おぉ。
なるほど、賢い。
「ほかにも、掃除をしたり洗濯したり・・私たちが日頃使うような消耗品や調味料の買い出しまでしてたのは息子だったんです。」
両手で顔を覆ってる婦人。
ほんとにさりげないところだけしれっとしていたらしい。
で、よくよく考えないと気付かない部類ばかり。
・・ほんと賢いなシリル君。
で、ちなみにその最中、家の娘はというと
「家の息子の貞操を狙い続け、隙あるごとに最低でもキス魔でした。」
頭を抱えたくなった。
俺たちに既成事実を作りたいとストレートに数日前に言ってたのは知っていたし、ついアドバイスをしてしまったが、その頃からすでに肉食系だったのか!
「・・ん?最低でも?」
しかも、キスじゃなくてキス魔?
魔がつくほどキスしまくってたの?
「えぇっと・・。」
家の娘何をやらかした!?
「家の娘は、どんな粗相を!?」
セリカ!
何をした!
おまえ、シリル君に見捨てられたら冗談抜きで嫁のもらい手がいなくなるんだぞ!?
しかも國崎さんは、気まずそうに首を背け、俺は軽く聞いただけなので詳細は知りませんと言ってるし、國崎夫人は顔を赤くしてる有様。
「えぇっと・・家の息子の下着を新品と取り替えて懐にしまったり、家の息子が昼寝している隙を見て服を脱がして息子の息子をにぎにぎしたりほおずりしたり、シリルがお風呂に入っているときに全く隠さずにお風呂に突撃して全身を使って体を洗ってあげたり自分を素手で洗わせたり・・」
「申し訳ない!」
ほんとに家の娘がごめんなさい!
しかも、聞いてるだけで十分痴女だった。
家の娘とんでもないことになってた!
ほんとシリル君ごめん!
しかも、幼い頃からずっと一緒だったことと、シリル君自身が同学年はセリカ以外と関わったことがなかったせいで一緒にお風呂とか体を洗うときはスポンジを使うとかそういうところをよくわかってなかったらしい。
しかも、セリカがうまい感じで言いくるめてそういうものだと思い込ませていたことも判明。
はっ!
まさか、あのときのアドバイスを真に受けてやらかしてないよね!?
本気でノーブラで出かけてないよね!?
マジで、シリル君の童貞を奪い取りに行ってないよね!?
で、バッっと俺の妻を見ると頭を抱えてる。
まさかと思い、視線でまさか!?嘘でしょ!?と告げると、すでに手遅れだったことがわかった。
・・家の娘、本気でノーブラで出かけちゃったらしい。
しかも、さらに聞いていると、家の娘、処女は捧げてないものの、シリル君の貞操はしっかり奪ってた模様。
何というか、シリル君の息子をにぎにぎで済ませていたのは幼稚園、小学校の頃にはすでにそれ以上のことをしていたらしい。(一応処女を捧げる類いはぎりぎりしてなかったらしい)
というより、シリル君の精通を自主的に勝手に手伝ってたのは家の娘だった。(シリル君は寝てるので気付いてない)
「それ・・本人は?」
「・・気付いてません。」
「しかも、調べてると夜、そっとシリルの部屋に忍び込んでたことも10回や20回で済まないみたいなんです。」
すでに夜這いは、しちゃったらしい。
家隣同士なんだよなぁ・・。
あぁぁぁぁ!!
なんで、家の娘は相手がシリル君限定とはいえ、そんなとんでもない変態さんになってしまったんだ!
道理で、セリカはシリル君がうとうとしてると嬉々として眠らせてたわけだよ!
しかも、その技は日々向上し、巧みに2人きりになるようにしてたっぽいし。
家の娘の発育が良いのは、シリル君を自分の魅力でメロメロにさせるためというただそれだけだったことも判明。
なので、幼稚園のあたりから美に関しての追求とか胸を大きくするアレコレをものすごくしつこく調べ、実施しまくってたらしい。
おまけに、日々、成長するのに合わせてスタイルが良くなるごとにシリル君を相手に様々な性技を実践して身につけていたようだ。
どうしよう・・シリル君に合わせる顔がない!
本気でシリル君家の娘に人生を翻弄されまくってる!
あの子と出会わなければもう少し・・いや、もっとまともな人生を遅れたはずだ!
少なくとも、寝てるときに絞られることはない人生だったはずだ!
と、大混乱しているとどこからともなく歌が響く。
しかも、幼い女の子の声だ。
静かなのにすっごいよく通る不思議な声。
「誰か音楽でも流しているのかい?」
ちなみに今は、國崎夫妻と俺と家内の4人が俺の家にいる状態だ。
おかしいな。
テレビはつけた記憶がないのだが。
で、聞くと全員首を横に振る。
おかしいと思い、声のする方向を見てみるとテレビには白い髪の女の子が女の子座りでぽや~っとした感じで空を見上げつつ歌を歌っていた。
幼い少女・・というより幼女で、スタイル良いな。
背中に生えてる黒い天使っぽい翼は本物?
で、なんでその子は虹色の小鳥に埋もれてるのだろうか?
ひざの上やら肩の上やら頭の上やらとにかく留まれそうなところは隙間なくいる。
「誰かテレビつけたか?」
「いえ?」
「つけてませんよ」
「同じく」
全員つけていないと?
試しにリモコンで消してみたが、なぜか消せなかった。
なんだこれ?
テレビ壊れたか?
そろそろ買い換えようかと思っていたが早速バグったか?
で・・
「気のせいだろうか?」
「いえ・・私も同じ意見ですわ。」
國崎夫妻も同じように頷く。
いやぁ・・何というか、テレビに映っている白髪の幼女と目が合ってるんだよ。
軽~く動いてみたが視線がそれに合わせて動いてるんだよ。
怖っ!
呪いの映像とか俺流したこと1回もないぞ!?
何これ!?
と内心でパニックになってた俺だが、ほか3人はというと
「かわいいわね。」
「かわいいな。」
「えぇ、直接触れることが出来れば愛で倒してあげるのに」
となぜかほっこりとした表情になってその子を凝視していた。
いやいや、君たち?
そんなことを言ってる場合じゃないと思うぞ?
気持ちはわかるよ?
確かにかわいいよ?
すっごい美少女・・いや、美幼女なのは同感するけどさ。
家の娘の上を軽く行くレベルだと断言できるレベルでかわいいのはわかるよ?
で、じーっとすっごい無言で無表情で見られてる俺は、視線を外すことも出来ずにいた。
「・・・」
「・・・」
いや、マジでどうしよう。
試しに手を振ってみるか?
とか思ってると國崎夫妻がすっごい笑顔で手を振ってた。
すると美幼女は、素直に手を振った。
きちんとその2人に視線を向けて。
「見えてますね」
「だな。」
で、固まっている俺をスルーして國崎夫妻はすっごい普通に話を始めていた。
「やぁ、かわいいお嬢さん。俺は國崎悟!こっちは妻の菫だ。君はなんて名前か教えてくれるかな?」
優しい笑みを浮かべて話す彼の姿を見ると改めて実感する。
あぁ、シリル君の面倒見の良さやあの物腰の柔らかさは彼譲りかと。
「初めまして、クラリティ王国元第一王子の娘、エトワール公爵家令嬢であり、癒やしの都”ルナール”領主のフリージア・クラリティ・エトワールと申します」
外国人だったようだ。
ミドルネームは初めて聞いたな。
というより、ガチもののご令嬢じゃないか!
しかも血筋は王族。
なんてとんでもない血筋の子がそんな人っ子1人いないところでぽやんとしてんの!?
「そうか。フリージアちゃんっていうのか。早速で申し訳ないんだけど、そこはどこなのかな?俺たちは、こっちで固まってる人の家にいるんだ。」
で、國崎さんは華麗にスルーしていた。
え?
そこスルーなの?
「どこなんでしょうね?」
「え?」
(?)
逆に聞かれてしまった。
しかも、きょとんと首をかしげてる。
本気でわかってないようだ。
え?
何?
この子迷子?
こんなご令嬢が迷子って周りは大パニックになってるんじゃないの?
だってこの子、すごい素直でかわいいし、簡単にさらえそうなんだもの。
「え、えぇっと・・・地図か看板みたいなのは近くにないのかな?」
そう訪ねると素直にこくりと頷いて周囲をキョロキョロと見回している。
うん・・素直な子だな。
で、何か見つけたらしくとてとてとどこかに行き(テレビから見えなくなった)、しばらくすると戻ってきた。
「何かあったかい?」
(コクリ)
「なんて書いてあったか教えてくれるかな?」
「スピリット・レスティングというところだそうです。」
ん?
全く聞き覚えがないところだ。
「説明書きみたいなのはあったかい?」
「魂の憩いの場だそうです。」
おっとぉ?
余計にわからないぞぉ?
「えぇっと?軽くそこにやってきた経緯を教えてくれると助かるなぁ。」
で、聞くと箇条書きで言うと以下の通りだったらしい
・モンスターの群れと戦った
・その後、疲れ果てたところで何かしらの条件が整ったと声がした
・回復させるために長期間の休みが必要だと聞こえ、気付くとここにいた
これは・・もしや
「おかしなことを聞くが、フリージアさんがいる場所・・いや、世界は魔法があったりドラゴンのような怪物がありふれた世界なのかな?」
おかしなことを聞いている自覚はあるが、訪ねずにはいられなかった。
すると、
(コクリ)
あっさりと肯定した。
「え?・・ほ、本当に?そこは異世界なのかい?」
「そちらからするとそうなのでしょうね。」
あぁ、言われてみればあっちからすればこっちが異世界だ。
で、魔法が扱えるのか聞いたが、普段は使えるが今は使おうにも発動しないのだとか。
少々残念だが、強制的に休憩中だと聞いているのでその治療というか療養の影響で使えないようになってるのだろうと判断する。
そこで、彼女からとんでもない台詞が飛ぶ。
「そういえば、皆さんはシルちゃんとセリちゃんにそっくりですね。」
「え?」
「え?」
「シルちゃん?」
「セリちゃん?」
そんな呼ばれ方をする人とそっくりと言われて一瞬悩んだが、その単語が含む人物は心当たりがあった。
「まさか!シリル!國崎シリルと天草セリカを知っているのかい!?」
(コクリ)
「私の弟子です。」
いた!
見つけた!
幼女の弟子になってるといういろんな意味で情けないことになってるとか妙なあだ名で呼ばれてたりするのはどうでも良い!
2人を見つけた!
「2人をご存じでしたか?」
「あ、あぁ・・俺たちは2人の両親なんだ。2人は・・2人は無事なんだよね?」
「無事ですよ。立派に育ってます。恥ずかしながら2人の師匠ですが、そんな私にはもったいないくらい優秀ですよ。」
良かった。
無事だった。
そして、私たちはそのやりとりを複数のビデオカメラやスマホで録音しながら今の状況とそこがどこなのかを改めてやりとりをすることになった。
だが、まずはあの子たちが無事で本当に良かった!