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とりあえずサクッとまわりましょう

--アルナ--

あのスタンピートから5日ほど経過しました。

で、カタクリの町から元ギルマスのマルスさんが昨日去った後、そのお見送りの後で私はリカルさんと恋人になりました。

で、あまりにも嬉しくてとっさにリカルさんに抱きついた私を周囲の皆は歓声を上げて喜んでくれた。

あ、どうして5日もここにいるのかというと、リア様がそんな状況なので様子見で少し長めに滞在していたんです。

もう数日経たないうちにこの町を出る予定ですけど。



特に喜んでいた内容は・・・

「アルナさん・・ついに対人恐怖症が治ったんですね!これも愛の力ですね!!」

「絆の強さって、ある意味最強の魔法なのかもしれないね、セイ。」

「だね!」


はい!

私がリカルさんに抱きついたことで対人恐怖症が治ったと認識されたようです。


で・・すごく言いにくいんだけど・・。

「あの・・大変申し訳ないんですけど、完治してないです・・その対人恐怖症・・。」

「え?」

「けど、抱きついてるよね?」

全員が未だにリカルさんにピッタリとくっついてる私をみて頷く。

そういえば、リカルさんに思い切り抱きついてるから私のおっぱい・・形が変わるくらいぐいっとリカルさんに押しつけた状態だけどリカルさん抱きついてきたことに驚いてはいても軽く照れてはいてもそれ以上のリアクションがない。

すごいなぁ・・セリカちゃんが言うには私に押しつけられたら押し倒されて食われるって言ってたけどそうでもないみたい。

後にリカルさんは、表情に出さずに凄い耐えていたことを知るのは大分後のこと。


「正しく言うと、大丈夫な人が増えただけです。他の人はさほど変わらないです。」

「あぁ・・なるほど。けど、男性で大丈夫な人が出来たってことで良かったよ。」



「あ!じゃあ、アルナさん!リカルさん!私たちと一緒にダブル結婚しましょう!!」

「セリカ!?いきなり何言ってんの!?俺初耳なんだけど!?」

セリカちゃんの爆弾発言に他でもない当事者(というより巻き込まれた?)シリル君が一番驚いてる。

私とリカルさんはというと、どこの教会で結婚の儀式をしようか?どのタイミングでしようか?と密かに同じことを考えており、そう考えていたと互いにアルナちゃんの台詞の後で対して驚かなかったことで気づいて小さく微笑んだ。

「そうですね。お嬢様ととても縁のあるこの地のここの神父様にして頂くことはこれも運命なんでしょうね。」

「はい。私もそう思いました。」

「せ、セリカ?俺もいつかは結婚するつもりだが急じゃないか?それに俺たちまだ学生なんだぞ?」

「良いじゃん。こっちだと15才以上は大人なんだし、収入は私と合わせても十分あるし、お金なくても互いにサバイバル出来るし、しっかり毎晩セックsんぐっ!」

「あぁ!分かった!分かったからそれは言うな。・・・既成事実が出来たのもセリカに襲われてることもバレてるっぽいけど。」

最後にぽつりと小さく呟いた台詞はかろうじて私だけが聞こえて苦笑いになる。


あぁ・・毎日楽しそうにセリカちゃん・・私にシリル君との猥談の日々・・というかプレイを事細かに話してしてくれるんだよね・・。

そのせいで私・・そっち系の体技をいくつか覚えちゃったんだよね・・この知識・・役に立つ日が来るのかな?

で、猥談の途中でシリル君がセリカちゃんを回収するのがいつもの流れ。



「あぁ。まぁ、これも縁なんだろうな。師匠にとって第二の故郷と言ってもおかしくないほどの思い出のあるこの地で式を挙げるのは確かに運命なんだろうな。」

「じゃ、じゃあ!」

「あぁ、今更感があるけど一応言う。俺と結婚しよう。」

「うん!」




で、結婚しました。

特に伝えようにも銀色のシンプルな指輪を握ってお祈りをするだけなのでどう表現したら良いのでしょう?という感じでしたからね・・あはは。


セリカちゃんとシリル君の指輪の宝石は真っ黒で、私とリカルさんの指輪の宝石は、ややくすんだ白色でした。

色には、何かしら意味があるらしいですがそれは当事者達が決めることなんだそうです。


私とリカルさんの石にはどんな意味があるかな。

色々と考えるだけでも楽しい。


「これからもリア様の従者同士頑張りましょうね。」

「そうですね。共に俺たちのペースで頑張りましょう。」

そして、私たちのステータスの装飾の項目に”誓いの指輪”が表示されるようになりました。

ちなみに、こんな感じで出てますよ。


誓いの指輪アルナ・リカル

誓いの指輪シリル・セリカ



このかっこの中には、それぞれ誰と誰が運命を共にすると誓ったかが分かるようになっているので、私ならリカルさんと、シリル君であればセリカちゃんとという感じです。


「長生きはするモノですね。まさか、フリージア様と縁のある方々の婚約の儀式をさせて頂けるとは。」

カタクリの町の神父さんに婚約の儀式をしてもらいました。

で、凄く嬉しそうに対応して下さって、周囲にはリア様の信ja・・コホン、崇拝sy・・ケホン、シスターさんたちがこの機会に巡り会えた運命に感謝しますとか呟きながら大感動という顔になってます。

けど、気のせいかな?

頭の端っこでペチュニア様がキャーキャー言ってはしゃいでる声と桜華様が苦笑しながら歓迎してくれてる声が聞こえる気がする。

これも、天界とのつながりが強くなったってことの影響なのかな?



「こちらこそ、ありがとうね。」

「いえ。こちらがお礼をしたいくらいですよ。」

イリスさんと神父さんがほのぼのとしつつお礼を言い合う。

「ですが、フリージア様はあのスタンピート以来、桁違いに神聖さが増しましたね。」

神聖さ・・あぁ、たしか天使の中でもトップに当たる始祖で、更に階級持ちである能天使に進化中なんでしたね。

さすが、神父さん。

よく分かりますね。

優秀だって言う噂は、真実だって分かっちゃいます。

一応桜華様を経由して教えてもらってるけど神父様にも診断してもらいました。

そうしたら、リア様から感じる神聖さ?が桁違いに大きくなっていると言ってたのでリア様が進化中なのは確かなようでした。


「うん。僕たちもそれが分かっただけ安心しているよ。いつまで眠り続けているのかわかるかい?」

「えぇ・・こちらからのありとあらゆるスキルは無効化されていますので、まさしく待つしかないのですよね。ですが・・色々と視てみたのですが、大まかに2年かもう少し長くか・・とにかく年単位は必要でしょうな。」

そんなにかかるなんて・・。

「それだけリアちゃんの体と精神には負荷がたまっているということなのかい?」

「それもありますが、聞くところによると天使族の中でも階級持ちにランクアップしたのに加えて、更にその中でも一握りどころか数万年の中でも誕生したことは天使族が産まれた以来あったかなかったかと伝えられているほど存在しない始祖へのランクアップをしております。それほどの上位者となるにはそれだけ時間がかかるのですよ。ただでさえ人から進化する際、最悪とされる魔族へ進化するときでも最短で半日はかかりますし、善人関連の何かに進化したとしても平均数十日。その中でも、天使族は人族の進化の中でも言うならば最上位といっても過言ではありません。上位へ至れば至るほどそれだけ時間がかかるのです。」

そうなんだ。

人が進化する例は、一番頻度が多い魔族への進化ですら数年に数回あれば良い方とか言われてるくらいだからあまり知られていないから凄く今回の説明はわかりやすい。


「とりあえず、心配はいらないんだよね?」

「えぇ。皆様がいらっしゃいますし、天使族の仲間入りをしたフリージア様には多くの加護による守り手がいらっしゃいますから。」

そういえば、世界の声を閲覧したときに神様達の加護とか天界の加護とか精霊さんたちの加護とかとにかく加護がたくさんあったっけ?

それだけ注目されてるし、大切にされてるってことだよね。


それが、私以外誰1人触れることが出来ずに弾かれる原因なんだろうし。


まぁ、私の場合はある意味例外というか特例なんだろうけど。

リア様の魔力を体内に宿してたり、天使(始祖)に仕えし者って称号を持ってたりするし。



「では、もう行かれるのですか?」

「うん。余り長居するのはね。それに、他にもお礼参りをしないとならないから。」

「そうでしたね。では、これからの旅路が良いモノであることをお祈り致します。」

「ありがとう。そちらこそ、無理はしたら駄目だよ。」

「お気遣い感謝致します。」


ホントに穏やかで優しいおじいちゃんって感じだったなぁ、神父さん。

イリスさんたちエトワールファミリー以外で凄く心の底から安心感が溢れてくるんだもん。

だから、またここに来てお話ししたいな。






「イリスさん、次の町へどうやって行きますか?やはり飛行船ですか?」

「ん?この島は春の大陸とかと比べたらたいして広くないし、ハディに頼んで連れて行ってもらった方が速いかなと思ってね。」

そういえば、ハディさんって進化してたね。

今は、私の首元に巻き付いてるけど。

「俺はかまわない。」

ハディさんの声ってすごく渋いけど良い声してるよね。

「じゃあ、お願いできるかい?」

「あぁ。町を出たらな。」

うん、だろうね。

じゃないと、結構な数の建物がつぶれちゃうもんね。

・・正直、あのとき(戦っていたとき)は目の前の敵をつぶすのに必死でそれどころじゃなかったし、気づけばこの小さい姿だったし、その後はただの一度たりともその大きな姿は見てないんだよね。


事実上、はっきりと見ているのは黄昏さんとシャスティさんだけなんだよね。


2人に聞いてもより頼もしくなったとしか言ってくれないし。




で、そこから食料を購入してから町を出ました。

・・出るのに3時間かかりましたよ。

主に、協会の人たちからおめでとうの声の雨あられで、町の住人からはお店を営む人たちから食べ物をほんとにたくさんもらったし、武具を売ってる人たちからはサバイバルナイフとか調理器具とかくれたからそのあたりの対応をしているうちにほんとに時間がかかった。




「・・うん。買い物というより貢ぎ物の受け取りだけになった気がするけど気にせずに行こうか。」

むしろお金を出そうとしたら出さないでください受け取ってくださいと深く深く頭を下げられました。


・・お店を営むものとしてそれでいいのだろうかと思いましたけど、そんなお願いごと生まれて初めて聞きましたよ。


「じゃあ、離れてくれ。」

そうハディさんに言われて離れたんですけど・・。

「足りない。もっと」

「え?」

5~6メートルは離れてるんですけど・・。

「潰されたかったらそれで構わないが?」

普通にさらっと言われたので全力で離れました。

・・・50メートルほど。


そして、ハディさんが本来の姿になったところで実感しました。


・・・うん。

数メートル程度離れてたら冗談抜きで潰されてましたね。


「でけぇ・・」

「視界の端でちらっと見た程度だったけどずいぶんと大きくなったね。さすがドラゴンってところかな。」

「進化前よりもものすごく強い力を感じる。さすがハディさんだ。」

そう驚きつつ感心しているメンバーと・・。

「うわぁ!わぁ!わぁ!竜だよ竜!!正真正銘の!!」

「セリカ落ち着け。気持ちはわかるが落ち着け。・・けど、確かに感動するな。一応ドラゴンとは戦ったけどあっちはおどろおどろしかったし。ハディさんの方はすごく落ち着くんだよな。それに、やっぱりかっこいいなぁ。」

テンションが爆上げされてるセリカちゃんとそんなセリカちゃんを落ち着かせつつも楽しそうにしているシリル君。


で、私はというとそんなすごい存在であるハディさんに心の底から感謝と感激をしていました。

だって、こんなにすごい存在なのに私のこと普段から守ってくれてるんだから。

リア様がお休み中で不安が多い中、いつも静かに見守ってくれてるし。

「いやぁ、すごく頼もしいですね。」

「ですよねぇ。」

やっぱりリカルさんも同じことを考えてたみたい。


「その大きさでどのくらい速く動けるんだい?」

「進化前と同じくらいだ。」

「その巨体を考えるとずいぶんと速いね。」

「とりあえず乗れ。道中の雑魚共は気にするな。」

うん、ほんとに頼もしい。



それから道中、交通事k・・コホン、襲ってくる魔物は速攻でつぶされました。

そりゃあもう、圧倒的でしたよ?

魔物だろうが盗賊だろうが指名手配犯だろうが何だろうがお構いなしで瞬殺でした。


で、港町のある場所までものすごいハイペースで進み、道中の街に寄ってはギルドや協会など必要な場所をピンポイントに通ってお礼の品を渡し、道中でせっせと売却用で作っていたものを卸してサクサクッと進みます。

だって、リア様がお休み中なので長居してもねぇ?

けど、軽く見て回ったんですよ?

ほんとに軽い観光です。

大まかに半日ほど観光してその後はその町に止まらずに移動っていう感じです。

ですので、そうなると自然に野営になるわけですが、飛行船をだして各部屋で休むことで野営が野営でなくなりました。

いやぁ、ほんとに便利ですよね。

お金はありますがお宿代が必要なくなるわけですし。

といっても、翠さんがいてくれるからできる技なんですけど。

あ、一応いうとこの飛行船を狙う輩はいなくはありません。

ですが、夜はハディさん以外の獣魔メンバーが対処してくれます。

ハディさんは日中移動しているのでその間ほかの獣魔メンバーは何もすることがないですから。

それに、今のハディさんはすごく大きいし、力持ちなので黄昏さんもたやすく背中に乗せて移動できます。



で、途中フォレストロードと呼ばれる大森林はさくっとスルーされました。

そこをスルーして海を泳いでまっすぐ港町に行きました。

海の中から襲ってくる魔物はずいぶんといましたが泳ぐのも得意なハディさんによって同じくサクッと処分されました。

その大森林から出てきてまで襲ってきた魔物はいましたが瞬殺され、海には大森林以上に大変生ものがいたらしいですが、同様に瞬殺でした。

全部ハディさんが交通事k・・移動中についでに瞬殺しただけなのでほんとに何もしてないです。

なのに、換金できそうなのはすごくたくさん集まりました。

前にリア様たちがここに来たときは移動中にいろんなのを殲滅してお船代を稼いでいたそうですが今回はその必要はないですからほんとに気楽な旅です。

そういえば、ハディさんとリア様が出会ったのはちょうどこの大森林付近だったらしいです。

当時、ハディさんは捕まって痛めつけられていたんだそうです。

ハディさんは強いから想像できないけど、部下を使い捨てるような屑に何日も何日も休みなしで襲われ続けて捕まり、その後もずっと痛めつけられていたからそうなるのもしょうがないと思う。

そこで、リア様がやってきて全員瞬殺したそうです。

確かにそんな出会い方をしたらついて行きたくなりますよね。

私だって同じ立場になったら・・・すでに同じ立場だった気もしなくはないけど、同じ気持ちになるもん。


ちなみに、そのたびにハディさんにはたいそう驚かれましたけど、その後のイリスさんの存在で納得されつつさらに驚かれるという流れはもはや恒例となりつつありました。



で、リアクションでいえばフォレストロードを抜けた先にある港町-ハーフェン-が一番面白かったです。

いつものように町の入り口の真ん前まで本来のサイズであるハディさんの背中に乗ってやってきた私たちを見て門番や、そこに入るために並んでる人たち、そして入り口付近にいた町内の人たちが全員口をぽかんと開けたままフリーズしていました。

けど、気にせずハディさんの背中から降りて、小さくなったハディさんを私の首に巻き付けて入り口に向かって進むとなぜか並んでいる人も全員避けるんです。

一応気にせず進むと、片方の門番さんは同じくフリーズしたままだったけど、もう1人の体がすごく大きな男性は目が見開いて驚いているっぽかったけど通常通りに対処してくれたようで、町の中に向かって指を指して首をかしげてる。

町の中・・いや、指は港に港にとまっている船をさしてる。


あぁ、船に乗りに来たのかってことですね。

しゃべらない人(文字通り寡黙)だけど、リア様と比べるとすごくわかりやすいですね。

で、視線はイリスさんでした。


おぉ、この人すごい。

一瞬でこのグループの誰が一番か瞬時に察しましたよ。

「あぁ、ちょっとこの町に用があってね。」

すると指で長四角を作った後、指をわっかにして首をかしげました。


もしかして、船に乗るためのチケットを買うお金がないのかって心配してるっぽいです。

なんか、心配そうな目になってますし。


「心配はいらないよ。移動手段はすでにあるんだ。ちょっと協会にね。」

ふんふんと首を縦に振って納得したらしいですが、ラウさんとカルナさんたちに目が合うと軽く目が見開いた後、手をパーにして首をかしげる。


アレは・・パーじゃなくて数字の5ですね。

もしかして、5年くらい前にこの港町に来たことがあるんじゃないかって聞いてるんですね。

・・よく覚えてますね。


「そうだよ。彼とこの子たちはちょうどそのくらい前にここに来たことがあるんだ。」

次に門番さんは自身の腰くらいの高さで手のひらを地面に向かって平行にして手を横に振りながら首をかしげる。


ん?

あぁ、もしかしてアレは身長のことでしょうか。

とすると、そのとき一緒にいたリア様は一緒じゃないのかって聞いてるんですね。

「ちょっと事情があってお休み中なんだ。大丈夫ちょっと疲れて休んでるだけだから。僕がその子の父親なんだ。」

目を見開いて驚きつつイリスさんの表情をじーっと見ると納得したらしく握手を求めてきた。

イリスさんは普通に握手に応じる。

「こちらこそ。これ、うちの娘の作品なんだ。受け取ってくれるかい?」

真っ黒な稲妻マークのマフラーです。

マフラーの色はリア様の趣味なので柄同様超ランダムなんですよね。

すると、おそるおそる受け取りつつ首をかしげる。


ほんとにもらっても良いのかって聞いてるようですね。

「かまわないよ。君だって大変そうだけど、うちの子に対しても僕たちに対してもそうして普通に対応してくれたことがすごくうれしいんだ。」

そういえば、驚きつつも普通に対応してましたね。

無口だけど、対応はすごく親切でした。


それに、大柄なのに私がそこまで怖いと感じないのもそうですし。


すると、うれしそうに頭を下げつつ早速首に巻いてました。

うん、似合う似合う。

いや、ほんとうれしそうですね。

獣人だったら間違いなくしっぽを振ってますってくらいご機嫌です。


そして、はっとした顔になると、首元をつんつんしてる。


ん?

あぁ、ギルドカードですね。

「どうぞ。」

全員分確認した後、問題なかったらしく指をひょいひょいと左右に振る。


あぁ、中に入って大丈夫なんですね。

「ありがとう。」

そして、全員ぞろぞろと中に入っていったのですが・・





全員「いやいやいやいや!待て待て待て待て!!!!」

「ん?どうしたんだい?」

「いやいやいや!どうしたんだい?じゃないよ!?」

一人がツッコミを入れると周囲の人たちがざわざわし出す。

「嘘だろ!?アレが通じてたのか!?」

「お前分かったか?」

「・・・いやむり。」

「だよな・・」

「ってか、門番のあんたも何かしゃべれよ!アレ、ホントに通じてたのか!?意見の相違が起きてないか!?」

すると、門番さんサムズアップ。

そして、それを見たセリカちゃんがその門番さんにサムズアップして握手してました。


どうやら、気に入ったようです。


そしてイリスさんは満足そうにうんうんと頷いてる。

「・・ばっちり通じてるっぽいな。」

「何で通じてるんだよ・・」



「アレ?何かデジャブ?」

「カルナさん、デジャブじゃないですよ。当時も全く同じやりとりをしましたよ。」

「あぁ、確かに。って、あのときの門番か。相変わらず物静かでも仕事だと優秀だな。」

どうやら、当時もこの人が対応したっぽいです。

リア様とも意気投合してたらしいです。


「アレ?君たちはわからなかったのかい?彼、すごくわかりやすいと思うけど。」

「え!?わかるんですか!?一切しゃべってないですよ!?」

「だって、船に用があるのか、チケットを買うお金がないのかとか5年前にここに来たことがないか?ってそのあたりの確認をしただけじゃないか。」

うん、ですよね。


「え、えぇ・・・」

「ってか、何年門番つとめてんだよ!いい加減しゃべれよ!!おい!」

すると門番さんは、どこか思い詰めた表情になってました。


ん?

何かお悩みですか?

「どうしたんだい?ここが気に入らないなら、僕の都か、僕の兄弟が納める国に来るかい?」







--ハーフェンの強面寡黙門番レティンス--

俺は、生まれつきしゃべるための器官が存在しないらしい。

そのせいで一切しゃべることができない。

それに、魔力もかなり少なかったから体を鍛えることにした。

不器用なりに頑張って剣と槍の両方を人並みに扱えるようになり、ハーフェンで門番を務めることになった。

普段は、筆談で語っているが、仕事中は手が埋まるといろいろと不都合がある故に使えない。

だから、一切しゃべる手段がない。

後、念話という手段もあるが、俺はそんな高等技術を扱えるような人間ではない。


だからしゃべれないなりに身振り手振りで一生懸命伝えて何年も頑張ってきた。

待機中は、事務仕事も頑張った。

できることは一生懸命頑張ったが、周囲からするとしゃべらない根暗なやつという扱いになっていた。

・・しゃべらないのではなく、しゃべれないんだと伝えようにも聞いてはくれない。


だが、俺はここ以外に勤めるコネも金もない。


それでも頑張ったが、身振り手振りで伝える暇があればしゃべれというクレームが増えたという声が上がり、門番を首になるカウントダウン状態だった。



はぁ・・。

俺は、門番は向いていないのだろうか・・というよりも、しゃべれないことがそんなに悪いのだろうか。


けれど、5年前に出会った幼い少女とは無口同士でもすごく楽しかった。

強面で大柄な俺相手にも普通に相手をしてくれたことがすごくうれしかった。


護衛らしき青年と獣魔と思われる魔物(と思う)たちを連れていた。

家族と思われる人物が誰もいない状態での旅だったので、色々と大変な目に遭っただろうにすごく良い子だった。

あの子はあれから大丈夫だろうか。

幸せに過ごしていることを祈って休みの日は欠かさず協会でお祈りをしている・・・俺ごときの祈りがその子のためになるはずがないと思いつつも何も行動せずにはいられなかった。


そんなある日、あのときの少女と一緒にいた青年と獣魔がいた。

そして、もう1人の白銀の髪の人物はあのこと血のつながりのある家族だった。

すごく優しそうで頼りがいのある感じの人ですごく安心した。


よかった。

あの子は、ちゃんと幸せなんだ。

あの子と会うことは出来なかったけど、元気でやっていることが聞けただけでも十分だ。

そしてもらったマフラーはすごく気持ちが良いし、心地が良い。

大切に使おう。



だが、ほんとにどうしようか。

チケットを買う金がない。

門番を首になっても冒険者として稼ごうにも俺とパーティを組んでくれるやつなんていないし、門番として勤めていたせいでランクは最下級だからたいした仕事は受けられない。

そうなると、チケットを買うなんて夢のまた夢だ。

いっそのこと、彼らの故郷で雇ってもらおうか?

いやだめだ。

そんな失礼で、ぶしつけなことが許されるはずがない。


この人たち・・・いや、お方は、俺の間違いじゃなければクラリティ王国の元第一王子であるイリス様のはずだ。

あの子・・・フリージアさんはその愛娘だったはず。

そんな大物人物相手に小心者の俺が失礼で、遠慮のないことなんていえるはずがない。


すると、イリス様は心配して声をかけてくれる。

まるで俺の考えていることが読めているようですごく驚く。

それに、ほかの連れの方々も俺の身振り手振りで考えていること・伝えたいことはしっかりと伝わっていたみたいだし・・クラリティ王国には察しの良い人たちが多いのだろうか?


だが、本とのことを言っても良いのだろうか?

あなた方の故郷で働きたいって。

俺みたいなしゃべれない欠陥品が、そんな超大国で働くなんて夢のまた夢だ。


とか思っていると、

「じゃあ、僕の都においでよ。」

・・この人はほんとに俺の考えていることが見抜けているみたいだ。

「考えていることくらいはわかるよ。・・こう言ったらなんだけど、うちの子よりもすごくわかりりやすいから。」

あぁ・・確かにフリージアさん・・いや、フリージア様は表情もすごく硬かったな。


というよりも、イリス様の都というと、元々流星の里と呼ばれていた場所を正式に都として動かすようになったっていうあそこか?

確か噂だと聖地になっているほどすごい場所だと聞いているが俺なんかが良いのだろうか。

「まだまだ、都としては出来て日が浅くてね。都として動かすには人が足りないんだ。だから、君のような優秀な人がほしいんだ。」

俺が優秀?

嘘だろう?

「確かに君はしゃべらない・・いや、しゃべれないんだろうけど、それがどうしたの?その程度のことを気にするような奴らは、僕の前には必要のない存在だ。」

すぱっと言い切った。

すごい。


「いやいや待ってくれよ!なんでそいつなんかが!そいつよりも俺の方が優秀ですよ!なら、俺がその都で喜んで働きますよ!」

さっきまで驚いて固まって仕事が出来なかったくせに今更動いたかと思いきやなんて失礼なことを言ってるんだこいつ(もう1人の門番)。

「・・・で?」

うわっ。

イリス様の目が絶対零度の目になった。

やばいぞ・・キレかけてる。

だが、気づいていないそいつは地雷を踏み抜いた。

「そいつはしゃべらない劣化品なんだ!そんなやつがあなた様の元で働くなんてあり得ないでしょう!そんなやつは、いっそのこt」

「ねぇ?君、何様のつもり?」

「っ!?」

ものすごい殺気がほとばしった。

「クラリティ王国にけんか売ってるの?良いよ?買ってあげるよ?君の故郷どこ?あらゆる手段を用いてこの世から消滅させてあげるからさ。」


あぁ・・・このアホ。

しゃべらないという部分を侮辱するからだ。

それ、クラリティ王国どころか、教会に関わる人たち全員にけんか売ってることに値するんだぞ?

なにせ、フリージア様はしゃべれない人物筆頭なんだから。


それは、つまり

クテン様と呼ばれ、クラリティ王国最強とも言われている人物を侮辱したことと同等なんだから。



「く、くらりてぃ・・」

「何だ?気づいてなかったんだ?一応名乗ってあげようか。僕はイリス・クラリティ・エトワール。クラリティ王国元第一王子、エトワール公爵家当主だ。冒険者ランクは、少し前にSSになったところだよ。」

「イリスさんが出る必要もないですよ。そいつ程度なら死神である俺が動きます。」

「じゃあ、音の支配者である俺も同行するぞ。」

「じゃあ、砕波の私も-!」

「では、リア様の代理として守護メイドの私が動きましょう。」

「アルナさんが動くのであれば、ビルドアーティストである俺も動きましょうか。」

「皆さんが動くのであれば、暗紅騎士の俺も動こうか。」


おぉ。

どれも有名な二つ名だ。

というよりも、獣魔メンバーからものすごい殺気がどっぱどっぱ出てる。





「何これ修羅場!?レティンス!何があったか教えてくれない!?はい、紙とペン」

あ、領主様だ。

彼は、今年で60になるが、健康のためと言いつつ町中を散歩ついでによく見回りをしているすごく気さくな人で、俺にもよくしてくれる。


で、イリス様たちのことや今現在の状況を伝えた。

すると、速攻でその暴言を吐いたそいつを目にも留まらぬ早さで地面に拳一つでたたきつぶして土下座した。


彼は、若い頃Sランク冒険者としてソロで活躍していた実力者なんだ。


「大変申し訳ありませんでした!私も何度も何度もそういうことを絶対に言うなと言っていたのにこのていたらく!!」

うん・・事実だ。

俺のことをいつもかばってくれたし、認めてくれた人だ。

彼はすごく誠実で人は見た目とちょっとしたことでは判断しないので、人を見る目はある。

そんな彼の誠実さにさすがはイリス様、気づいた。

「君がそう言うならこの矛を収めるけど・・わかってるよね?」

「はい!これまで何度注意してもやめなかった輩は全員ギルドカードにその旨を追記し、首にします。」

「領主様!?それはあんまりでは!?」

「貴様らは黙っていろ!!!貴様らのついでで全員故郷が地図から消滅しても良いのか!!彼らの実力は最低でもAランク冒険者だぞ!わかっているのか!大陸最強の実力国家の中でもダントツトップを誇る最強ファミリーなんだぞ!!実力・知名度・知識どれを比較しても史上最強のファミリー当主である予言者イリス様を怒らせるなんてその意味がわかっているのか!!」

「どうしてその方々を怒らせることになるんですか!俺はそこの役立たずに言ってるんですよ!」

は?

まだわかってなかったのか?

周囲の連中は、すでに顔を真っ青から真っ白にして膝から崩れ落ちてるけど。

「まだわからないか!イリス様の愛娘であり、クラリティ王国最強の魔法使い、そしてクテン様でもあるフリージア様はしゃべれないことで超有名な人物だろうが!!つまりは、貴様はクテン様を侮辱したことと等しいんだぞ!!!」

「っ!」

遅い。

遅すぎる。

「領主さん、ここからは俺に任せてくれ。」

「君は確か、正義の死神のグリム殿でしたな?」

「ま、まぁ・・」

「あなたであれば喜んで。そいつは首決定ですので好きにしてくだされ。ギルドカードにクテン様とクラリティ王国公爵家を侮辱し、怒らせたと記録しておくので。」

事実上の処刑宣言である。


それから、死神殿の技術は素晴らしかった。

あの圧倒的な威圧を出しながら淡々と良いこと、悪いことを言い続け、気絶さえないように威圧の強弱を調整していた。

そして、そいつは心が折れ、死神殿が言い尽くして満足したところで白目で泡を吹いた状態で気絶した。



「うん、さすがグリムだね。うちの宰相が褒める筆頭だし、彼は頼まれて近衛騎士になったんだし。」

おぉ。

クラリティ王国の宰相殿といえば、すごく厳しいことで有名だが、そんな方に褒めるとはほんとに優秀なのだろう。




それから後日談となるが、俺は巨大化したカルナ殿の背に乗って、癒やしの都”ルナール”で都の防衛と平行して門番として日々楽しく過ごすことになった。

俺がしゃべれなくとも全員俺の身振り手振りできちんとわかってくれるし、しゃべれないことを一切気にしないすごくいい人たちが集まっていた。

それに、カタクリの町の元ギルドマスターのマルス殿もこの都に住むらしく俺がこの都に勤めてしばらくしたところでやってきた。

それからは、マルス殿が都人たちを教育しつつ、都としての運営を肩代わりし、その補佐として俺は手伝いつつ、色々と教わっている。



で、首になった者たちだが、言わずともわかるだろう。

実家からは縁切りされ、最下級冒険者としてあらゆる人たちから雑に扱われながら日々ものすごく苦労しながら過ごしているらしい。




もし、あのときフリージア様と出会ったことが神様による運命ならば、神様に感謝します。

その思いに答えて彼女のためにもこの都をより一層良い場所にするため頑張ります。

主人公、フリージアの変身後の姿が拝みたい!っていう人は、みてみんより私のページを覗いてください

そちらに貼り付けてます。

こちら側に投稿するのは、ストーリーで主人公が復活してからですね。

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