カタクリの町での久しぶり~その3~
1/26(日)に、【閑話休憩】フリージア 画像-挿絵-で、画像を追加しました。
--カタクリの町のギルマス(マルス)--
大暴走している受付嬢に引きずられていくように連れられた先にいたのは聞いていた通り幼女だった。
だが、ワシの予想は正しかった。
あのときの幼女だ。
ずいぶんと健康そうで元気なようで何よりだ。
それと、纏う雰囲気もずいぶんと柔らかくなった。
良い家族に巡り会うことが出来たんだな。
そして、共にいる白銀の美人は、噂で聞いていた通りの天才王子であるイリス様で間違いなかった。
けど、確かに美形家族だな。
「やはりお嬢ちゃんか。久しぶりだな。元気そうで何よりだ。」
{お久しぶりです。あのときはホントにお世話になりました。これ、お礼の品です。こっちはギルドの皆さんに、ギルマスさんにはこっちをどうぞ。}
ほう。
念話か。
軽くみる限り、実力もずいぶんと伸ばしているようだ。
そして、もらったモノを見るからにハンカチとマフラーのようだ。
って、これ見間違いじゃなければ”清めのハンカチ”にあの魔道具化している最高級のマフラーじゃねぇか!
・・そういえば、クラリティ王国の公爵家が出してるんだっけか?
なるほどな。
それと数からしてハンカチは全員分に。
マフラーは俺にか。
と言うか、俺にはハンカチとマフラーダブルかよ。
それだけ感謝してるってことなんだろうな。
気持ちはありがたく受け取るが・・マフラーの柄が雪だるまなのはこの子の趣味だろうか?
あのときのお節介がこんな最高級品に化けるとは人生どうなるか分からないモノだ。
「良いのか?こんな良い物をもらって。」
「受け取ってくれないかな。僕からのお礼でもあるんだ。」
なるほど。
王族の血筋でもある公爵家の令嬢を助けた礼としてこれをもらったと考えればそんなモノか?
ワシの感覚では、通りすがりで腹を空かせた小猫に食い物を分けてあげた程度だったんだがなぁ。
まぁ、あれこれ言うと逆に失礼だ。
「ではありがたく使わせてもらうよ。で、ホントにこのタメだけにここに来たのか?」
(コクリ)
即答で頷かれた。
込められた魔法も後に調べてみると【浄化】【適温】【速乾】【防汚】の4つが込められていることが判明し、愛用するようになるのは至極当然のことだと思う。
えぇ・・。
と言うよりも、わざわざお返しするためだけに飛行艇を使ってここまでやってくるとはホントに律儀な子だ。
おまけにその家族や付き添い連中も嬉々として付き添ってるっぽいしな。
むしろ、自分でお礼をしたいから一緒に来るのは当然って感じだしな。
・・類友か。
「実は、仕事のしすぎだと言われて王権を使って丸々1ヶ月休めと命令されちゃってね。で、どうせだからリアちゃんがこれまでお世話になった場所を飛行艇を使って観光しながらまわろうと言うことになったんだ。」
あははと軽く笑いながらイリス様はそう言うが・・・王権を使って休めと言われるとはどれだけ働いていたのだろうか・・・考えるのはやめとこう。
と言うよりも、軽くイリス様と会話をすることで分かったが、お嬢ちゃんは内面や性格はホントにイリス様そっくりだ。
見た目は、母親似なのは見てわかったが、確かに親子だ。
たたずまいに性格、纏う覇気などはホントに父親似だ。
これで、親子なのはホントに納得するし、違うという反論の声が上がらなかった理由も判明した。
「おいおい。タダ身分が大層なだけで実力は大したことないんじゃないのか?」
誰だ・・実力を見てわからないバカは。
で、ワシを引きずって来た受付嬢1人に小声で聞いてみた。
「誰だ、あのバカ。」
「アレは、ここ最近ここに偶然立ち寄った通行人Aです。」
なるほどな。
と言うか、こいつも結構言うな。
ワシもワシだが。
で、言われた美形家族はと言うと。
「さて、リアちゃん。大まかなご挨拶は一通り済ませたわけだけどこれからどうしよっか。」
「イリスさん、せっかくですしあちこち見て回りましょうよ。そろそろお昼ですし。」
「それもそうだね。今日はどこか入って、明日は露店巡りしても良いね。」
きれいにスルーしていない扱いしていた。
お嬢ちゃんもお嬢ちゃんだが、家族もその連れも揃って同類か。
「っておい!しかとしてんじゃねぇぞ!!」
「あ"?」
「ひぃっ!」
「ちっ、たかだがこの程度でびびるのかよ。雑魚が。」
かなり濃密な威圧を纏った青年から放たれた威圧であっさりと腰を抜かすアホがいる。
だが、威圧の威力はすさまじな。
おまけで周囲の連中も軽く挙動不信になってるが。
「お、俺を誰だと思ってるんだ!ふ、不敬だぞ!」
「あ?知るかよそんなもん。」
そらそうだ。
大陸越えてここまで来てるんだ。
事細かい通りすがりの通行人Aの身分なんぞ知るはずがない。
ワシも知らんが。
目で、こいつのこと知ってるか周囲に聞いてみると全員が首を横に振る。
ふむ。
たかがしれてるみたいだな。
「お、俺は男爵家の次期当主でBランク冒険者だぞ!」
次期かい。
ってことは、お前はまだ当主じゃないんかい。
それよりも男爵なんぞ平民に毛が生えた程度で威張るほどのモノでもないだろうが。
後、冒険者ランクもBって中途半端だなぁ。
どっちもお嬢ちゃん達の方が核上じゃねぇかよ。
で、周囲の連中は少なからず驚いていたが、こっちはさすがとしか言えなかった。
「ふぅん。で?」
イリス様はそれがどうしたと言わんばかりに尋ねた。
まぁ、イリス様のことを知っているとそんな反応をするのが当たり前だ。
「でって・・不敬で捕まえても良いんだぞ!?」
不敬ねぇ・・・ワシはイリス様のことも、お嬢ちゃんのことも知ってるが、普通に考えてそっちが不敬だぞ。
面白くなりそうだし言わないけど。
「出来るモノならやってみればどう?僕はたかだか、クラリティ王国で元とはいえ第一王子で、今は公爵家当主なだけで、冒険者ランクはSランクで、予言者と呼ばれている”程度”だし。」
さらっとイリス様が暴露した。
しかも、程度の部分が凄くいやみったらしく言ってる辺りワザとのようだ。
まぁ、言っている当人は楽しそうだが。
で、周囲の連中はそのアホ以上に目を見開いてフリーズ。
ついでに言うと、そのアホは顔が軽く青くなってる。
で、巨乳メイドに抱っこされてる幼女から更なる追撃。
{私こそ対したことありませんよ。パパと血の繋がった娘なので、”たかだか”公爵家令嬢で、最高ランクの教会の腕輪を頂いていて、クテンと呼ばれている”程度”で、冒険者ランクSで、魔鏡姫と呼ばれていたり、クラリティ王国魔術師団長を務めている”程度”ですから。}
その言葉を聞いて全員が青ざめる。
アホは、青から白に変わっていく。
ほうほう。
ずいぶんと出世したようだ。
これは、噂以上に成長したようだ。
魔法の天才、ワザの申し子とはよく言ったモノだ。
で、付き添いメンバーはと言うとうんうんと納得顔で頷いている。
小声で、見た目詐欺筆頭と言ってる辺りよく周囲の状況を理解しているようだ。
で、今度はカルナから追撃があった。
「リア、ほどほどにしておけ。こいつらに事実を言っても理解する頭が足りないんだからさ。そもそも見た目で決めつけてる時点で冒険者としては早死にする筆頭だろうしな。」
うん、事実だ。
不意を突かれてあっさりと死にましたーは、よくある話だ。
その意見を聞いていた周囲のメンツもうんうんと頷く。
冒険者としてそれなりに数をこなして中級から上級へ上がったメンツなら知っていることが当たり前だ。
下級で知っていればそう言うやつは必ず中級から上級へ昇級出来ることから初心者教育の際には必ず教えることの1つとして有名だ。
そんな教えに背いた連中は中級にはいけても上級にはいけない。
中級から上級へ上がれるか否かの違いはここにあるからな。
「それに、カタクリの英雄と不本意ながら呼ばれている俺等が獣魔として傍にいる”程度”だしな。」
その一言で全員が完全にフリーズした。
おう。
見事なとどめだ。
そこでようやく気づいたらしい。
黒髪幼女
大人サイズの杖
尻尾の長いブルームーン色の猫
脚が3本ある言葉を話すカラス
この4つが完璧に揃っているんだ。
見間違うはずがあるまい。
で、ギギギと言う感じでワシの方へ視線を向ける野郎共。
「なんだ気づいてなかったのか。この子とその獣魔2体が6年前にこの町を襲ったエンシェントゴーレムのスタンピートから救ったカタクリの英雄だぞ?当時ワシは目の前でその活躍をみていたからな。見間違うはずがあるまい。と言うより、この3人の容姿をそっくりそのまま真似られるか?確実にバレるし、似せようにも全てまとめてはまず不可能だと思うぞ?と言うより・・・・こっちは、元とは言え王族の血が流れているのに加えてあの世界でもトップから数えた方が圧倒的に早いほどの大国の公爵家だぞ?どう考えてもそっちが不敬罪だろうが。」
やべぇ。
こいつらのリアクションがホントに面白ぇ。
で、なぜか全員が顔を青くして土下座して
全員「申し訳ございませんでしたぁぁぁぁ!!!」
そりゃそうだ。
で、幼女達はと言うとコクリと軽く頷いて全スルーしていた。
うん・・さすがのスルー力。
だが、そこで不意打ちよろしく幼女からすさまじい威圧が飛んできた。
ふむ。
なかなかの威力だな。
魔力操作もその威力も天才の名にふさわしいな。
と、しみじみと思いつつ周囲を見てみるが、気絶5割、腰砕け3割、残りがかろうじて耐えているが挙動不審と言う感じだ。
{この程度の威圧でその程度しか残らないのですね。これくらい軽く耐えられないと家のアルちゃんの玩具にすらなりませんよ。}
「あのリア様・・私、あんな人たちを玩具にしたくないんですけど・・。」
ふむ、アルちゃんとはあのメイドのことのようだ。
彼女もかなり鍛えているようだ。
ついでに言うと、そのメイドさんにあんな人呼ばわりされて意識のある野郎共にかなり良いダメージが入ったようだが面白いから気にしない。
「リアちゃんの言う通りだね。家の国だったら気絶者は少なくともいないね。腰砕けは3~4割はいると思うけど。まぁ、それでもほとんどが挙動不審になってるけどね。」
ほうほう。
クラリティ王国は実力主義だと聞いたことはあったが事実のようだ。
それほど国民の質も高いようだ。
後に、不意打ちで威圧を放つやりとりはクラリティ王国では恒例行事であり、それに耐えられればランクアップする評価点の1つとしてカウントされていることを知り、この町でも導入することになるのはここだけの話だ。
「ついでに言うと俺のさっき放った威圧はかなり控え目だからな。それと、さっきのリアの威圧は本気の半分ちょっと程度だ。」
これは予想以上に強くなってるようだ。
面白い。
{では、おじいちゃんまたです。}
「うむ。元気な顔を見れて良かった。こちらこそ色々とありがとうな。楽しかった。それと、大事に使わせてもらうよ。」
(コクリ)
うむ。
あんなかわいい子におじいちゃん呼びしてもらっただけで十分幸せだ。
ついでに言うと、受付嬢率いるギルド側のメンバーはと言うとあの威圧を受けて気絶者はゼロだが、ほとんどが腰砕けになり椅子から立ち上がれなくなっていることに気づくのは休憩のために席を立とうとした頃だと判明し、ワシは大爆笑したのは余談。
やはりあの幼女は面白いな!
ここを引退したら、あの幼女の元に引っ越すのが良さそうだ。
面白い隠居生活が送れそうだ。
良いな。
そうしよう。
ついでに、教会の神父様も誘っておこうと思ったが、多分拒否するだろうなぁ。
確か、昇格するのを全て拒否してこの町にいるらしいし。
その中には、クラリティ王国に行くことも含んだのにもだ。
おまけに、その話しはあのお嬢ちゃんがクラリティ王国の人間だと知った後でも頑としてその意見を変えなかったんだからな。
まぁ、あるとすればいつか遊びに行こうぜって言うくらいか?
そのくらいならついてくるだろう。
と言うより、まだ体が動くうちにギルドマスターを引退したいと思っていた・・と言うより、もう引退も次のギルドマスターも決まってたりするんだな。
余所の大陸のどこぞの町でギルドマスターになるに値するのが1人いたらしく、丁度交代したいと次期ギルマスを募集していたら丁度いたというわけだ。
ふむ・・どうせならお嬢ちゃん達がこの街を出るときについでに連れて行ってもらおうか?
いや、あの町まで一人旅するのも面白そうだ。
で、幼女達は去って行ったが、しばらくすると1人の黒髪の青年が戻ってきた。
「どうした?何か忘れ物か?シルちゃん」
お嬢ちゃんがシルちゃんと呼んでいたから同じように呼んでみたが本人はどこか嫌そうな顔をしている。
「・・・えぇっと、シリルと呼んで下さい。」
「そうか。シルちゃんは駄目か?」
幼女が呼んでいたから同じように呼んだがと伝えてみると苦笑しながら答えた。
「師匠の場合は・・そう言うモノだと思ってるので・・。まぁ、絶対に駄目とは言いませんが、師匠以外に呼ばれると・・まぁ・・。」
つまりはあきらめたと。
あの子はあの子でノラネコのような性格をしているようだしな。
風の吹くまま気の向くままにってな。
だが、特定の人に呼ばれるあだ名が、他のやつに呼ばれると妙な感じがするという感覚も分かる。
「それで?」
「あぁ、そうでした。師匠とカルナさんから伝言を預かりましたので。」
「何だ?」
「では、そのまま伝えますね。」
で、コホンと言った後、俺は予想外な体験をする。
「『ご飯を食べた後、訓練場をお借りします。』『見学するのは構わないが全部自己責任だからな。巻き込まれても自業自得だ。一応うちには癒しの魔法を使えるのがいるがタダで使うつもりはない。お前らがデバガメで勝手に巻き込まれたんだからな。文句があるなら俺たち全員が納得する意見を持ってこい。力ずくがお望みなら全力で相手してやるよ。死にたくなければ賢明な判断をしろ。』だそうです。」
おいおい・・・。
何をどうすればそんな声が出るんだよ。
確かにその声はあのお嬢ちゃんとカルナそのものの声だった。
と言うか、もろ本人の言葉だった。
「それは分かったが・・お前さん、それどうやってるんだ?」
それもあのお嬢ちゃんの影響か?と聞くと首を横に振りながらこう答えた。
「これは、師匠と出会う前から俺個人が幼い頃から出来る得意技です。一応俺は、吟遊詩人なんですよ。」
ほう。
本職は非戦闘員だったか。
だが、感じる力はかなりのモノなのはさすがの一言だろうな。
非戦闘員でも強いのはあの子の周りでは当たり前なんだろう。
それでこそ、クラリティ王国の人間だ。
あの国は実力主義で、身分が高くなればそれだけあらゆる意味で強くなる。
だからこそ、そんな彼らに集う者たちが優秀でないことが”あり得ない”。
そう言う特色が世界中で有名な国だ。
まぁ、あの国の初代陛下が国を立ち上げる頃から続いているモノだから不思議なモノだ。
そんな考え方を1人として子孫へ伝えようとしていないのにもかかわらず全員が同じ思考回路の持ち主となり、類は友を呼び今に至る。
故に、あの国に敵認定されれば人生終了とも呼ばれてるが、そんなことも知らずにあの国に戦争を仕掛けようとしているという噂を冬の大陸から流れてきたが、どこの国だ?
まぁ、良いか。
ん?
女の声もどんな性格の声でも巧みに操る黒髪の青年の吟遊詩人って言えば・・?
「お前さんもしや、音の支配者か?」
「えぇ、一応・・。こんなところにまで既に伝わってたんですね。」
苦笑しながら肯定した。
こやつがそうだったか。
噂は確かだったか。
ホントにあの子は面白いな!
「面白いワザだな。伝言は承知した。全員自業自得で見学したければ命がけで見学しろ。命の保証はないってことだな。」
「そういうことです。」
そう言って青年は立ち去ったかと思いきや入口付近で振り返り一言告げてから去って行った。
「あぁ、そうだ。改めて師匠がお世話になったことを感謝致します。俺と、許嫁のセリカは師匠に命を救ってもらったんです。」
「そうだったか。」
ホントに優しい子だ。
彼もその許嫁と思われる黒髪の女性もまっすぐな目をしていた。
「俺たちが今こうしているのもあなたが師匠を導いてくれたからです。」
「ワシ自身は、ノラネコに餌を与えた程度の気まぐれったんだがな。」
「それでいいんだと思います。」
「ほう?」
予想とは違う返事が来たな。
「俺たちの故郷には情けは人のためならずと言う言葉があります。」
「なんとなく意味は分かるような気はするがどんな意味なんだ?」
「どんな些細なことでも巡り巡って自分自身にその行いの結果は返って来ると言うことです。」
なるほど、良い言葉だ。
どんなに些細なお節介でもいつかその良い行いが自分にも戻ってくるか。
逆に嫌なことを他人にすればいつか自分にしっぺ返しが来ると言うことでもあると。
「だから改めてお礼をさせて下さい。ありがとうございました。」
「あぁ、気持ちは受け取った。お前さんも頑張れよ。許嫁のお嬢ちゃんと仲良くな。」
「はい。彼女の笑顔を守るためだけの英雄になることが俺の幼い頃からの信念ですから。」
そう言って彼は去って行く前に止める。
「あぁ、ちょっと待て」
「どうしましたか?」
「お嬢ちゃん宛にソーサルって人から伝言だ。」
「・・伺います。」
一瞬悩んだそぶりをした後に頷いた。
名前に聞き覚えがないって感じだったな。
まぁ、お嬢ちゃんに言えば分かると判断したんだろうな。
「そのまま夏休みに突入するからあと1ヶ月は延期じゃ。だそうだ。」
「あぁ・・分かりました。・・あのおじいさん、そんな名前だったのか。」
納得した顔で頷いた。
誰か分かったのだろう。
「なんだ、名前を知らない顔見知りだったか?」
「えぇ。自身のことを役職でしか呼びませんし、師匠は普通におじいちゃんとしか呼びませんから。」
聞こえた単語は、夏休みにおじいちゃん、それと役職・・そして、クラリティ王国でお嬢ちゃんと懇意となると考えられるのは1つ。
「もしや、あの国の学園長か?」
「よく分かりましたね。・・・あのおじいさん有名なんですか?」
「もちろんだ。あのじいさんはワシよりもずっと年上だし、賢者に近い者と呼ばれるほど優秀な人だ。」
マジであのじいさん何歳だって言いたくなるんだよ。
ワシは、今年で60になるが、ワシがガキの頃には既にいい年だったんだぞ?
噂だと人から進化してるから寿命がかなり長くなってるって話しだが、実際何に進化してるのかは分からん。
直接会ったことがないから聞こうにも聞けないし、そう言う話しまでこっちまで流れてこないしな。
「それほど凄い人だったんですね。分かりました。伝えておきます。」
「あぁ、また後でな。」
「はい」
そして、改めて彼は去って行った。
自分の大事な人のために一生懸命になれるやつはいつの時代も強くなれる。
彼の最後の台詞はホントに幼い頃からずっとその思いを叶えるためだけに今もずっと努力し続けているのだろう。
実際、見た目は細めの体格に見えたが、軽く握手をしたときにすぐに分かった。
体全体の隅の隅まで無駄のない鍛え方をしていた。
目にも強いまっすぐな意思を感じた。
幼い頃からずっと鍛え続けてきたのだろう。
あいつはどこまでも強くなれる。
そう言うやつのためならワシは喜んで協力しよう。
ならそうか・・。
そういえば、領主様は確か今日町中を見回りに来るから付き添いをして欲しいと約束してたな。
それに、次のギルマスも昨日か一昨日辺りにたどり着いたと言う話しだったな。
この町は、ギルマスと領主様の関係は常に良好でなければならないちょっと特殊な町だからな。
町の反映とギルドの経営は常に連携し、共に良い町にしていくことがこの町では大事だからな。
故に、この町でギルマスになるにはギルドを経営することと冒険者を正しく導くこと、そしてそれにプラスして町の経営についてもある程度知っておく必要があるからな。
タダのギルマスになるよりも難しいんだ。
ついでに言うと、この町の神父様とも面接をしてOKをもらって初めて合格だったりするんだ。
時間は早いが、誘いに行こう。
彼は、あのお嬢ちゃんの大ファンだからな。
おまけに、あのシリルも2番目のファンになっていた記憶がある。
しかも、領主としての憧れで目標である天才王子イリス様もいるという最高の組み合わせだ。
呼ばないという選択があるはずがない。
と言うか、呼ばなければおそらく・・いや、間違いなく落ち込むだろう。
ずっと直接お礼が言いたい、直接歌が聞きたいと強く願っていたからなぁ。
この町はあの子に救ってもらったと言う恩もあるが、あの子がこの町で努力していた経緯も含めて今の領主様は良い意味で一回りも二回りも成長した。
そんな感謝の気持ちもあるからこそこの町は今も昔も変わらず穏やかなんだ。
やはり、あの子は面白いな。
早くあの子が納めているらしい領地へ引っ越しをしよう。
きっと面白いことがたくさんあるに違いない。
--フリージア--
物語のお約束?というモノを体験しつつ(速攻で終わったので確信はない)、最後に実力検査を不意打ちで試してみたらほとんどが不合格でした。
ちなみにそれ、我が国では時折しているので、恒例行事です。
ギルド側からも良い訓練になるだろうし是非と言われてますし、それに耐えられたらランクアップすることもあったりします。
それで実力が結構分かったりしますし、その時の対応でどんな人かある程度分かりますからね。
それと、下手すれば冒険者ランクが低い人たちよりもあの国に長年住んでいるお店を営むおじさんやおばさん達の方が強かったりするのはよくある光景です。(クラリティ王国限定)
で、私たちの人数も人数なのでシルちゃんにギルマスのおじいちゃんに伝言をお願いしました。
まぁ、一言二言程度なのでそれほど時間もかからずにシルちゃんは私たちに追いつきました。
本人も脚が結構速いですからね。
「師匠、ギルマスより伝言を預かりました。」
(?)
「ソーサルさんからそのまま夏休みに突入するからプラス一ヶ月だそうです。」
あぁ、学園長のおじいちゃんからですね。
と言うことは、この長期のお休みは合計丸々2ヶ月ってことになるんですね。
(コクリ)
そういえば領主さんってどんな人なんでしょうね?
{パパ}
「どうしたの?リアちゃん」
{パパは、この町の領主さんはどんな人だと思います?}
「町を軽く見聞きした限りだととても気さくで他人思いな人だと思うよ。」
「イリスさんはどうしてそう思ったんですか?」
「元とはいえ王子としての立場故に、色んな人たちを見たからね。その経営の仕方で大体のことは想定出来るんだ。」
「なるほど。お店の中を見ればそのお店の偉い人がどんな人か分かるのと同じような感じですか?」
「そんな感じだね。それがお店1つから町全体に範囲が広がったくらいの違いかな。」
「へぇ~。あ、ご飯ここにしませんか?」
「お鍋かぁ。そうだね」
そして、お店に入り人数が人数なので一角を多めのお金を払って間借りして数種類のお鍋を注文しました。
で、届いたモノを順番に食べているとそれを見ていたお店の人がポカンと口を開けたままフリーズしているけどスルー。
眼福とばかりに私とパパをみていたけど、多分私の食べる量がびっくりしたんでしょう。
いつものことです。
{相変わらずここのお鍋はおいしいです。}
「前にも来たことがあるのかい?」
(コクリ)
「ギルマスに初めてリアが訓練をしてくれた時に連れてきてもらったんだ。」
「なるほどね。ギルマスおすすめのお店ってわけだね。」
大変おいしく頂きましたよ。
パパもみんな高評価でパパや私のことに気づいたお店の人がお金を払ったときにホントに嬉しそうにご来店ありがとうございましたって言ってましたし。
さて。
シルちゃんに伝言を頼んでた通り軽く運動でもしましょうか。