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親方!空から幼女が!

--フリージア--

飛行艇をもらい、お仕事をパパと一緒に強制的に丸々1ヶ月休めと王権を使って命令されたので、これまで立ち寄った場所を巡ることにしました。

広々としたお船の上で景色を眺めながらぼんやりするだけでも凄く楽しい。


お空の旅も海の旅もどっちも凄く楽しい。

雲海をくぐったり、海の中を覗いたり、空を飛ぶ鳥さんを眺めたり海を泳ぐイルカさんたちに手を振ったりして。


そんな私たちが最初に目指すのはカタクリの町。

全てはこの町から始まった。

私の人生も、この町から始まったと思ってる。

物語で言うところのあの5年間はプロローグなんだから。



「それにしても・・リカルさんは楽しそうですね。」

苦笑いしながらそう言うアルちゃんの視線の先ではリカルさんが楽しそうに絵を描いてます。

ずっとふはははは!って笑ってます。

実はこのお船がお披露目されてからずっとです。

お船を外から内側から、あちこちのお部屋と絵を描きまくった後、今度はそこから見える景色を描いてます。

特に雲海は非常にお気に召したようです。

ちなみに、リカルさんの画材を入れている専用の鞄は、ウエストポーチみたいなモノです。

もちろんマジックバッグなのでたくさん入ります。

けれど、画材用になっているらしく木製の四角いタイプになってるのでそこそこ珍しい。

画材用となると、用紙は未使用と使用済みと細かく分別出来るらしく、しかも使用済みでもリカルさんが決めたジャンルごとに区分けすることも可能なんだとか。

更に、用紙以外の道具類も種類ごとに分別出来るようになっており、消耗品の類いは一定数を下回ると分かるように知らせてくれるんだとか。

一定数は予め決めておくらしいですが、知らせてくれるというのはなんとなく違和感を所持者限定で感じるような独特の魔力を発するんだとか。



そして、アルちゃんの視線はなぜか異性の中ではリカルさんへの視線が一番優しい気がする。

{アルちゃんは、男性の中ではリカルさんが一番仲良しさんですか?}

「え!?え・えと・・はい//」

照れてるアルちゃんはかわいいです。

「私と同じリア様専属の侍従と言う立場と言うこともあって一緒にいる機会が多いのもそうなんですけど、リカルさんは何と言いますか一緒にいると安心するんです。それと、私リカルさんの笑顔が凄く好きで」

あぁ、分かります。

{リカルさんのような笑顔は凄くうらやましくなりますよね。}

「そうなんです。私もあんな笑顔を出せるくらい楽しくありたいって。」

アルちゃんが言うには、これが好きという気持ちなのか憧れなのかはまだはっきりとは断言出来ないそうです。

けど、

「・・きっと好きなんだと思います。けれど、今は私自身に自信が持てないのでこの気持ちを伝えるのはもう少し自分に自信を持てるようになってからにします。」

{それで後悔はしないんですね?}

「はい。」

それから他愛ない話をしながらお外の景色を楽しみました。



「そういえばリア様、この船は誰が操縦しているんですか?」

{今はセリちゃんですね。後は、男性陣が順番にしているようですよ。}

基本的にこのお船の操縦は操縦席に座り、どっちに進みたいか念じるだけです。

その操縦席に座るという点が重要で、その席に座ることでその人の意志をくみ取るように作られている特別な席なんです。

まぁ、所謂魔道具なんですけどね。

とはいえ、くみ取る情報は動くか止まるか、上下前後左右どの方向にどれほどの速度で進むかという動くことに関することだけです。

「男性の皆さんがですか?」

{乗り物を動かすのは男のロマンだそうです。}

ちなみにリムさんとパパも当然混ざってます。

と言うより、ここにいる男性陣は1人残らず混ざってます。

それと、黄昏も運転しようと思えば出来ます。

まぁ、黄昏の場合、体が大きいので尻尾を席に乗っければ良いんですけど。

「あの・・そこにセリカさんが混ざってるのは・・」

{ファンタジーなロマンに性別の差はない!と即答してました。}

「あぁ・・なるほど。リア様としては動かしたいと思いますか?私はどちらでも良いのですけど。」

ちなみに、リリさんも混ざってます。

{私もどちらでも良いですね。しいて言うならやりたい人にやってもらった方がお互い楽でしょうと言うことなんですけどね。}

「それもそうですね。」


「だとしても、カタクリの町楽しみです。」

{穏やかで優しい人たちが集まった町ですよ。}

「そうなんですね。リア様にとって凄く思い入れの多い場所らしいですから余計にどんなところか気になるんです。後は、カルナさんたちがカタクリの英雄と呼ばれることになった場所をみてみたくて。」

{それならたどり着くまでは余計なことは言わない方が楽しみを奪わずに済みますね。}

「教えてもらえるとそれはそれで楽しいですけど、楽しみはとっておきますね♪」






それから、海を渡っている途中で1泊し、その翌日の夕方頃にカタクリの町が目視して見えるほどのところまで進みました。

「アレがカタクリの町なんですね。」

「町としてはごく一般的な広さですね。とても穏やかそうに感じますね。」

アルちゃんとリカルさんがそう言い合っていると黄昏がつぶやく。

「ふむ。あの町はとても良い気を感じるな。良い者たちが集っているのだろう。」

{分かるのですか?}

「うむ。我は、神獣故、善悪の気を感じることはたやすいのです。」

{気とは、雰囲気や魔力のようなモノととらえても?}

「その認識で構いません。」


「あの頃と全く変わってないわね。」

「だなぁ。てっきりフリージアの一件で町自体が発展って言うかデカくなってるかと思った。」

リリさんとゼルさんがそう語る。

つまりは、私をきっかけにこの町は有名になったのであの頃よりもずっとおっきくなっているのではないかと思っていたようです。

「多分この町の領主が頑張ってるんだろうね。この雰囲気をこわしたくなかったんじゃないかな。」

パパがそう語る。

なるほど。

おっきくなるのは良いことだけどあまり大きくなると町の雰囲気も変わっちゃうからあの頃のままなんですね。

町を発展させることよりも町の雰囲気を維持し続けることの方がずっと難しいんだそうです。

人も町も変わっていくモノ。

だからこそ変わらない努力はずっと大変で出来る人は凄いんだそうです。

そういえば、強さを求め、変わろうと努力するのは良いことだけど変わってはいけないモノもあるんだよとパパが言ってましたね。

なるほど。

このことでしたか。

あの頃はよく分かりませんでしたけど今しっかりと理解しました。


「うん、良い町だね。」

パパが凄く感心したように笑顔で頷く。

元とは言え、国を維持する王子様がそう答えると言うことは本当に良い町なんでしょうね。

「イリスさんがそうおっしゃると言うことはホントに良い町なんですね。」

「まぁそうだね。国を支える立場である元でも王族だったわけだし、軽く全体を見ればその町の雰囲気程度はすぐにでも分かるよ。高いところからその土地全体を眺めれば大体のことは分かるよ。」

「さすがイリスさん」

全体を見渡せば色んな人たちの行動が見えるので、それでスラムのようなよろしくない場所や人たちのたまり場はないか、商売を営む様子やお客さんの様子、公共の建物の破損具合などそう言う点を確認するだけでどんな人立場集う場なのか分かるんだそうです。

言われてみれば分かる気がします。

そう言う点での人間観察も覚えなきゃいけませんね。

{パパ、今度そう言う部分を教えて下さい。}

「良いよ。人の上に立つ立場として必須のスキルだと僕は思っているし、そんな立場にならなくてもその町で気をつけないと行けない場所を把握したりする時にも凄く便利だからね。」

なるほど。

初めての町だと行ってはいけない場所とかの確認でも使えるんですね。

これは是非覚えなきゃなりませんね。


「・・って、イリスさんもリア様も職業病が抜けてませんよ。」

「おっといけないいけない。けど、課外学習は大事だし、学ぶことは楽しいからセーフだよセーフ。」

「ま、まぁそうですけど。ほどほどにして下さいよ?」

「大丈夫。どんなに頑張っても余所の町で出来ることなんて冒険者として依頼をこなすか通りすがりに手助けする程度だからたかがしれているさ。」

「言われてみればそうですね。」



「で、イリスさん。この船、どこにおろしますか?町の真ん前だとさすがに邪魔になっちゃいますよね?」

シルちゃんが現在操縦しているのでそのままシルちゃんがパパに聞く。

「ん~そうだね。町の門前にもそこそこ人が集まってるし、注目はとっくにされてるっぽいけどおろすときに巻き込みたくないしね。」

ですよね。

お船でプチっ!は嫌ですね。


{では、私とアルちゃんで先に言ってきましょうか。}

「うん。そうだね。頼んで良いかい?」

(コクリ)

「はい。お任せ下さい。」

私とアルちゃんは普通に空が飛べるので町の上で浮いてるお船の上から飛び降りても全く問題ないですからね。


「では、行って参ります!」

{お先です。}

そう言って翼を生やした私とアルちゃんはひょいとお船から飛び降りました。

「あ、俺も行く。」

そう言ってカルナもついてきました。








--カタクリの町の門番--

この町で門番として努めて2~3年。

この町で凄く有名な噂を正直信じ切れていなかった。

獣魔が保護者?

才能溢れた美幼女?

神に選ばれし神子様?

あり得ないだろ。

まず子育て出来るほどの知能を持つ魔物が獣魔に成り下がるわけない。

と言うか、その獣魔も獣魔で人間の言葉を話せるらしい。

おまけに、下手な人間よりも頭が良いんだとか。

しかも、主として存在するのはその幼女だけ。

つまりは幼女の獣魔だ。

魔物が幼女の軍門に降る?

おまけにスタンピート対策で指揮官としていたのが獣魔の1体で、もう1体は半分以上を壊滅?

おまけにそのスタンピートのボスを1体1で討伐?

何を馬鹿なことを言ってるんだと思う。

この町の領主がそう言ってるので真実なんだろうがタダの子供好きなだけだろ?

それと、その時に共に戦った冒険者どもが話しを無駄に盛ってるだけだろ?



全員が全部真実だと言ってるが俺は自分の目で見なければ絶対に信じない。

とか思っていたある日、上空に巨大な飛行艇が現れた。

こんな辺鄙なところにどこの金持ちなんだとか相当な物好きだなとか思っていると

「なぁ、飛行艇って俺初めて見たけど凄いな。」

「だなぁ。こんなところに何しに来たんだか。」

「おい!間違いなく相手は貴族様だぞ!?下手なことを言って不敬罪でとっ捕まってもかばわないからな!?」

「はいはい。」

「って言うか、この町に来たってことはクテン様のことで様子を見に来たんだろ?」

「だろうなぁ。ってか、アレホントなのか?半分以上盛ってあるだけだろ?」

「お前まだ言ってるのかよ。この町の領主様に神父様もギルマスも真実だって断言してただろ。いい加減信じろよ。」

「やなこった。俺は自分の目で見なければ信じないし、こんなところで終わる俺じゃないし。」

「・・お前絶対に早死にするぞ。」

「ふんっ。」

どうとでも言え。

俺は、もっとデカい町、いや国で成り上がるんだからな。



「って、ん?」

「どうした?飛行艇が降りてきたか?」

「いや・・・ん!?」

飛行艇をみながらなぜか驚いた顔をしているが何なんだ?

「親方!空から幼女が!それとメイドさん!」

「誰が親方だ。親方言うな。って、は?何言ってんだお前。あんな高いところから降ってきたらタダじゃ済まないからあり得ねぇだろ。」

「ならお前も見ろ!」

並んでいる奴らも全員空を見て絶句してるが、なわけないだろ?


とか思って空を見れば確かに黒い翼を生やした幼女と巨乳メイドが降ってきた。

後カラス。



「は?」

「って惚けている場合じゃねぇ!誰か風魔法使えるやついるか!?衝撃を和らげるんだ!後、クッションになるのを早く!!このままじゃぶつかる!!」

そう叫び、全員がそんな準備をしていると空中で突如振ってくる速度が落ちた。


全員「は?」

明らかに降ってくる速度が落ちている。

どう見ても空飛べるよね?と言いたくなる速度でゆっくりと落ちて・・いや降りてきた。



そして、俺たちの目の前まで降りてきた幼女は翼をどこかにしまう。

それから同時に降りてきた巨乳メイドが嬉々として幼女を抱っこする。

「あぁ、驚かせたようで悪い。」

「喋った・・」

脚3本のカラスが普通に喋ってる。

「今空にある飛行艇は俺等の連れのものだ。騒がせると思って先にその説明に来たが・・余計驚かせたみたいだな。すまない。」

「あ、あぁ・・いや。」

凄く礼儀正しいカラスだな。

そこらの冒険者連中よりもずっと大人だ・・。


「とりあえず、その辺りの空間を使わせてもらうから。」

「あぁ、その辺りなら邪魔にならないから好きにしてくれ。」

「リア、頼む。」

(コクリ)

リアと呼ばれた幼女にカラスが何か頼むと幼女はその飛行艇に向かって手をひょいひょいと振った。

何かの合図か?


しばらくすると飛行艇は着陸し、そこからぞろぞろと降りてきた。

って言うか、どいつもこいつも美形ばっかだな!!


それから、驚くことに飛行艇が消えた。

正しく言うと緑色の何かが包み込んだと思ったところで消えたが正しいが・・・収納系の魔法か?

まぁ、そういうのを尋ねるのはタブーだから聞けないから聞かないが。




そして、その美形軍団は何事もなかったかのようにこの町にはいるための列に並んだ。

うん・・まぁ、正しいんだけどさ・・・。

その近くで共に並んでた連中からすると落ち着かない。

何せ美形ばかりが普通に並んでいるのだ。

近くにいるだけで色々と落ち着かない。



で、見惚れてるだけで眼福と思うだけに留まるほどのメンタルの持ち主がこの場にはいなかったらしく

「え、えと・・お先どうぞ。」

列を譲った。

それを見た他の連中もその手があった!と言う感じで嬉々として譲りだした。


結果として、次の順番はその美形軍団になった。


「え、えぇっと・・良いのかい?」

「は、はい!」

白銀の髪の美女が申し訳なさそうにそう尋ねるとその軍団の一番近くにいた20過ぎくらいの女性が顔を赤くして頷いた。

・・おい。

同性だぞ。

見惚れてるがそっちの趣味があるのか?

気持ちは分からなくはないが。


「申し訳ないね。じゃあ、ありがたくお先に。じゃあ、そのお礼代わりにこれをあげるよ。」

「え!?で、ですが・・私なんかが・・」

身ぎれいな身なりに柔らかい物腰、そしてあの飛行艇所持者と来れば考えずとも貴族だと察して申し訳ない!と言うのと不敬罪が!っていう重いがごちゃ混ぜ状態で軽くパニックになってる。

そりゃそうだ。

貴族様から謝られたのに加えてモノをぽいっともらうんだからパニックにならないわけがない。


で、その白銀美女は刺繍されたハンカチをプレゼントしていた。

・・その人だけではなく並んでいる人全員に。

遠目でなんとなくだが、刺繍の柄はそれぞれ違うようだ。

・・って言うか、生地も高そうなんだが・・どこの貴族だ!?


「気にしないで。タダ譲られるだけだとこっちが落ち着かないんだ。それにこれは僕の娘の作品でね。通りすがりに何かあったら出来る範囲で手助けして欲しいって先行投資だよ。なければラッキー程度に思ってて。」

「は、はい!娘さんの未来は私が守ります!」

受け取りやすいように言った台詞はおそらく適当に言ったことだから当てにはしないだろう。

だが、全員が騎士みたいな感じで全力で守りますという感じになってる。


・・おいおい。

いきなり従順になったぞ。

大丈夫か?ホントに。


で、話しの流れから察するにあの幼女の母親が白銀美女のようだ。

美女の娘は美女なんだな。

けど髪色は違う・・あぁ、父親似か。

「じゃあ、ホントにありがとうね。」

「いえ!」

白銀美女を筆頭にぞろぞろとありがとうございますとか言いながらこっちに来た。

・・って言うか、スルーしてたが獣魔多いな。

尻尾の長い蒼い猫にでっかいワニ、それと猫系統の大型獣。


それと、スルーしていたがこの連中、どいつもこいつもとんでもない実力者だな。

神は才能を1つも2つも授けてる代表格って感じだ。

ちっ!

これだから金持ちは!!





おっと、いけないいけない。

「身分証をお願いします。それと、大変申し訳ございませんが、ギルドカード以外に身分を証明するモノはございますか?先ほどの飛行艇に関しては間違いなく騒ぎになり、その確認のためにどうしても必要でして。」

ギルドカード以外に貴族なら何かしら証を持っているはずだ。

その確認がなければそれでいいし。

むしろこいつらの身分を確認しないと俺の気が済まない。

で、もう1人の門番であるやつが俺の考えを察して止めようとするが俺が視線で黙らせる。


で、軽く獣魔連中から殺気を感じたがスルーする。

この状態で襲ってくることはない。

なにせ、これで襲えば悪いのはあっちなんだからな。


「良いよ。これで良いかな?」

で、白銀美女が出したモノは儀礼剣だった。

・・・・・・・




・・・・・


全員「・・・」


貴族は大まかに下位貴族と上位貴族が存在する。

で、下位だとその証としてコインを持ち、上位だと刃を潰したお飾りのナイフを授かるのだという。


・・・刃は潰してある。

・・・どうみても実戦向けじゃない。




って、上位貴族かよ!?

いや、確かに飛行艇を下位貴族が持ってるわけないとは思ったけどさ!



「た、確かに。」

「で、ギルドカードね。こっちも確認する必要があるんでしょう?」

「あ、あぁ・・どう・・・も・・・」




・・・・あぁ、神よ。

俺はなんて人たちに喧嘩を売るような真似をしたのでしょうか。

そして、今日ほど過去の自分を殴ってやりたいと思ったことはなかった。



ギルドランクがSランクにAランクって上位ランクがぞろぞろ揃ってやがる。

と言うか、幼女もSランクかよ!?

どんだけこの幼女凄いんだよ!

・・・巨乳メイドさんに抱っこされて別の美女に撫で回されてるけど。

「確認だけで良いのかい?」




・・はっ!

門番としての仕事すらも放置しかけていた。

「し、失礼致しました!そちらにはどのようなご用件で?」

「うん、端的に言えば観光なんだけど、娘が6年くらい前にこの町でお世話になったからねそのお礼巡りかな。その1箇所目がこの町だったんだよ。」

なるほど。

って、ん?

幼女がお世話になった町を順番に回るのか?

わざわざ飛行艇を使って!?


しかもその言い方だとまだ数カ所は回るってことだよな!?


なんて金と時間の無駄遣い!

と言うか、律儀だな!!



「さ、左様でしたか。」

「ならもう通って良いかい?」

「は、はい。問題ありません。ようこそカタクリの町へ」

「ありがとう。それと、騒がせたお詫びに2人にはこれをあげよう。こっちも娘の作品なんだ。我が家で最近販売してるんだ。」

「わざわざ、ありがとうございます。そこまでして下さらずとも・・・」

「ちょっとした営業販売でそれの宣伝みたいなモノだよ。使い心地を今度会ったときにでも教えてくれればそれで十分だよ。」

「あ、ありがとうございます。」

で、俺たち門番がもらったのはハンカチではなくマフラーだった。

・・・季節外れなアイテムだが、触り心地は凄く良いし、勿体ないのでとりあえず首に巻く。


アレ?

暑いかと思ったがなぜかひんやりとして丁度良い。


そして、白銀美女達は去って行く前に一言とんでもない置き土産を置いてから足取り軽く去って行った。

「ちなみに僕は、母親じゃなくて父親だから。じゃあね。」





・・・・は?



え?



全員「えぇぇぇぇ!?!?」


「嘘だろ!?あんだけの超絶美形で男性!?」

「私たちよりもずっと美女なんだけど!?」

「男性に負けたって言うの!?けど、それはそれで良いかも」

俺たち門番と並んでる連中で一緒に騒いでしまうのはどうしようもない。

「と言うよりも、凄く気さくでお優しい方だったわぁ。」

「貴族って傲慢な奴らばかりと思ってたけど、あんな素晴らしいお方もいるんだな。」

「あんな人がいる場所だったら凄くいい町になりそう。」

「それにしても、このハンカチ・・凄く触り心地良いんだけど・・どうしよう、使いたいけど勿体なくて使えない!」

「分かる!」

「・・ん?」

「どうしたの?」

その中で、1人ふと何か思い出したようだ。

「いや・・・このハンカチと言い、あの人達でなんか引っかかることがあって・・何だっけなぁ・・。」

「メンツは知らないが、ハンカチならアレじゃないか?クラリティ王国で最近噂になってる”清めのハンカチ”」

「あぁ、それだ。それそっくりじゃないか?」

確か、浄化の魔法が込められたハンカチがクラリティ王国を中心に噂になってるやつだな。

噂だと刺繍された柄は作った人の趣味だからどの柄になるかは全く不明だから手にしたときの柄はおみくじ扱いされてるという話しだ。

後、人によってはコレクションしたいという人もいるんだとか。


「後、門番さんのマフラーも確かクラリティ王国から魔道具のマフラーが出なかったっけ?」

「あぁ、あったあった!あのいつどこで着けても快適マフラー!」

暑い場所でも寒い場所でも居心地の良い空間を保ってくれて、いつでも浄化できれいに出来るという憧れのアイテムだったか?

・・言われてみれば着けた瞬間凄く丁度良い温度になったな。


「って待って待って待って!?」

「おいおい落ち着けって。どうしたよ一体」

「どうしたもこうしたも!!あんたらの話で分かっちまったじゃないかぁ!!」

「何を騒いでるんだよ!」

「あの幼女だよ!!」

「あぁ、凄いかわいい子だったよな。それにおとなしくて良い子だったな。」

「そうだけど!そうだけどそうじゃないんだよ!!あの獣魔だよ!!」

「獣魔?やけに多かったが。」

「まだ分からないのかよ!!」

「落ち着け!とりあえず教えてくれよ!」

「んぐぁぁああ!!・・・・・・大人サイズの杖を持った黒髪幼女」

「ん?」

いきなりどうした?

「言葉を話す脚3本のカラス」

「・・・・ん?」

「ブルームーン色の尻尾の長い猫」

え?

え!?

ちょ、ちょっと待て!!

「い、いやいやいや!ま、まっさかぁ~」

軽く現実逃避するがそいつはそれを許さなかった。

「・・確か、クラリティ王国の元第一王子様が離れ離れだった娘と再会して、その娘さんの為だけに王位を破棄したんだよなぁ。」

やめてくれ

「で、その娘さんは魔法を使うのが非常に上手く、現状唯一魔法反射が扱える天才で~」

やめてくれ

「その父親は、白銀のきれいな髪で黒神の娘さんを溺愛しているとか?」

これ以上俺に現実をたたきつけないでくれ!

「そして、その父親は公爵を授かり、刺繍されたハンカチやマフラーを中心に販売しているとか?おまけにそれらは、揃って魔法が込められてるんだそうだ。」


ここまで言ったところで周囲のメンツもさすがに気づいた。

「ま、まさか・・・」

「け、けどさ・・俺、見えちまったんだよ・・」

「な、何をだよ。」

「あの幼女の腕に教会の腕輪がついてたのを・・」


「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」



・・・現実は残酷だ。

噂は真実だったんだな。



「あのお方が、クテン様だったんだな。」

「ってことは、あの美人・・・ゴホン。あの白銀の男性は・・」

「元第一王子、天才王子と名高い、予言者イリス様だったんだな。」


・・それから先のことは正直あまり覚えていない。

そして、俺は気づいた。

現実は場合によっては、知らない方が幸せだと。

噂は噂のままにして追求するのは今後はやめておこうと。


噂は真実だった。

全部本当だったんだ。

実力は見ていないが、傍にいるだけで嫌でも分かった。

アレだけ濃密な魔力を纏っているなら強くないわけがない。


そして、噂以上にどっちも美人だった!



ちなみに、頂いたマフラーにはなぜか招き猫の刺繍がされており、後にギルドで調べてもらうと【適温】と【浄化】が込められていることが判明した。

それと、もう1人の門番のには蔦とバラの花の刺繍で、【適温】【速乾】【防汚】が込められていた。

あいつのが3つもついていることにちょっぴり嫉妬したが、込められてる魔法から考えると俺のとあまり変わらないんじゃないかと素人ながらに納得させた。

浄化は魔力を込めなければ発動しないが逆を言えば発動させればいつでもきれいになれるんだからな。




・・・よし。

俺、もっと真面目に頑張ろう。

そして、いつかクラリティ王国に行く。

そこに勤めることが出来なくても良いから遊びでも良いからクラリティ王国に行ってみたい。

これまでの俺自身は黒歴史認定してこのマフラーをもらった時から新しい俺として世のため人のために頑張ろう。




そして、あわよくばクラリティ王国で過ごしたい。

あんな素晴らしいお方が治める国なんだ。

良い国に決まってる!



それから、俺はよく俺を知ってる人たちに良い意味で変わったなと言われるようになった。

当然だ。

過去の俺と今の俺は自分で別人扱いしてるんだからな!


俺は、変わるんだ。

あの人のように金持ちになろうが身分が高くなろうが傲慢に、自分勝手にならないんだと。

それは、まさしく過去の俺がその駄目な例の代表作だった。


よし、もっと頑張ろう。

俺が変われるきっかけを下さってイリス様、そしてその運命を授けて下さった神に感謝致します。

こうして、イリスは無自覚に自身の国の信者・・もとい、クラリティ王国移住希望者を増やしているのでした。

そして、フリージアも同じように無自覚に様々な人が心を入れ替えて真面目に生きようとさせる人たちを増やしてます。

・・そう言う部分をみていると親子だなぁとしみじみと思います。

親子揃って同じようなことをしでかしてる・・。

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