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強制休暇ともらった乗り物

明けましておめでとうございます。

これからも、「陰の支配者」をよろしくお願い致します。

--フリージア--

適温や浄化などの魔法を組み込んだマフラーが予想以上に好評でその報酬として地下空間に連れてこられました。

まぁ、それ以外にも色々と報酬があったらしくそれを一緒くたにまとめた結果渡すことにしたらしいですけど。



「この空間は、元々は非常事態の時にこの国の民全員を匿うために存在していたモノでな。今は、こうした巨大な道具の作成などに使っている。」

ぽつりぽつりとすごくぶっとい柱があるだけでその他は何もありません。

翠ちゃんが言うには、超巨大な防空壕・・というかシェルターのようなモノらしいです。



そして目の前にあったのは、お船でした。

そのお船は所謂木造の帆船という風を受けて進むタイプのお船らしい。

帆柱というその帆を支える柱が3本あり、それぞれに大きな帆がある。

そして、そのお船の両側にはドラゴンのような翼がありました。

その翼1つでお船の3分の2くらいの大きさはあると思う。



これ・・中で普通に生活出来るくらい広いですよね?

しかも豪華なお屋敷レベルで我がファミリー全員が1人1部屋あってもまだまだ余るレベルで。


「これこそが、飛行艇”フルール号”だ!」




飛行艇”フルール号”

海上でも空でもどこでも移動可能な飛行艇

帆柱3本あるレベルの木造の帆船だが、両側には船の全長3分の2の大きさを誇るドラゴンを彷彿とさせる翼がある。

その翼により方向転換を行ない、帆により前進することが可能。

翼は折りたたみ可能

ぱっと見は、木造だが、骨組み部分には様々な鉱石が使用され、魔方陣によりとにかく頑丈に設計されている。

あちこちにある豪華な装飾は、頑丈にし、速く動かすようにするための魔道具である。

特定の部屋で魔力を注ぐことで動かすことが可能。

魔力を予めため込むことも可能






「素材もとにかく頑丈なモノを選別し、あちこちに頑丈になるように魔方陣を刻印している。更に、あの豪華な装飾も全て頑丈にし、速く動かすための魔道具だからな。1つたりとも無駄なモノはない!」

「ふふふ♪ノクスの全力の一撃でも傷1つつきませんわ。」

何と言う超高価で硬化なお船なんでしょう。


「けど、こんな凄いモノを良いのかい?」

「是非使って下さい兄上。」

「そうですわお兄様。これは、これまで私たちがお兄様やフリージアちゃん達にお世話になったお礼なのですから。それに、我が国の貴族も皆お兄様やフリージアちゃんを酷使しすぎていることを重々承知しているのですわ。」

「そうですよ兄上。今は俺とアイリスがこの国を支えなければならない。いつまでも兄上におんぶに抱っこでは示しがつかないのです。その意思表示でもあるのです。兄上なしでもこの素晴らしい国を支えていけると!」

軽くみるだけでも装飾の1つ1つにはものすごく強力な魔法が込められてますし、その魔道具の1つ1つのパーツからお船の部品1個1個全てが凄く貴重で凄いモノだと分かります。

魔物のモノだったり、自然で取れたモノだったりとあらゆる素材の中でも特に優れているであろうモノの中でも厳選に厳選を重ねて選ばれたモノですね。

それにこれ・・よくよくみたらこの国全体を守護しているこの国の中でも最高峰の防御の魔法が使われています。

・・この国の最高機密の塊ですね。

あ、他の国からもお船のパーツの組み立てや形等々の技術も含んでいるのでこの国だけではないですね。




「ありがとう。ありがたく使わせてもらうよ。」

「けれどこれ・・どうやって外に?」

「私が使うまで仕舞っておくね。それなら安心でしょ?」

「そっか!翠さんさすが!」

こうして空を飛ぶこと”も”出来るお船をもらいました。


後に、クラリティ王国公爵家と言えば飛行艇!と呼ばれるほど有名なモノとなるのは後の話。



とはいえ、急ぐとき以外は使うことは少ないような気もします。

後は大陸同士の移動時ですね。

と言うより、あんなにおっきいのを余裕で収納ないない出来る翠ちゃんは凄いですね。





「それで、お兄様にフリージアちゃん?お二人には王権を使用して1ヶ月間のお休みを命令します♪」

「あ、アイリス?」

お姉ちゃんが満面の笑みで凄くしょうもないことに王権を使いました。

王権とはまぁ、名前の通りなんですけど王様命令。

つまりは断れない命令です。

まぁ、断っても良いけど後が色んな意味で怖いことになるので断る人はある意味、勇者ムボウと呼ばれますけど。

「ちなみにこれ、学園長からも笑顔でOKもらっているので。兄上とフリージアがいない間は、この国のメンバー総出で対応しますからご安心を。」

「お兄様なしでも頑張れると証明する良い機会なのですわ。」

「はぁ・・・わかったよ。」

結果、パパが折れました。

「後ついでに、ユウにセイもな。」

「え!?」

「私たちも!?なぜですか!?リアちゃんとイリスさんと違ってお仕事してませんよ!?」

「ユウは近衛騎士のような扱いで、セイはその付き添いで毎日かなりの人数の治療を行なっているだろう?実際、常にフリージアを護衛し、健康管理を行なっているのだ。共にいなければ意味がないだろう?」

いつの間にか、ユウちゃんは私の護衛、セイちゃんは私専属のお医者さんという扱いになっていたようです。

「・・そういえば、数ヶ月くらい前からよく分からない報酬金をもらえると思ったらそれだったんだ。」

「治療費にしては高いのにそれでも最低額だって言っていたのはこのことだったのね・・。」

2人ともなぜか頭を抱えてます。


ちなみに言うと、アルちゃんもユウちゃん達同様にお休み扱いです。

私専属のメイドさんだから付き添っているのが当たり前ですからね。

それと、私たちは学園内でも成績優秀だと有名ですし、免除されているのも当然みたいな扱いですから。












「とはいえ・・丸1ヶ月も仕事がないなんて何をすれば良いんだろうね。」

(コクリ)

お家の縁側でパパのお膝の上でひなたぼっこしながらぼんやりとそんな話しをする私たち。

「イリスさん・・リア様・・定年退職したばかりの人みたいなことを言うには若いと思うのですが・・。」

「お嬢様の場合若いどころか幼いですね。」

アルちゃんとリカルさんがなにやら言ってるけど、スルー。

それにしても、久しぶりに影さんたちを2~3人だけにしているので凄く体が軽いです。

いつも何十人と出してましたからね。

で、その数人は刺繍してます。

こっちは趣味です。



「リアちゃんはどこか行きたいとことかあるかい?」

ん~

{いっそのこと私がこれまで通ったことのある町巡りはいかがでしょうか。}

「あぁ、それは面白そうだね。全部は難しくても印象的なところを選んでいけば良いね。」

{お船の試運転にもなりますし、お世話になりましたからご挨拶もしたいですし。}

「そうだね。特にリアちゃんの場合は一番大変だった頃だったから余計に無事な姿を見せてあげたいね。」

特にカタクリの町

あの町から私の人生は始まったと言っても過言ではありませんからね。






と言うわけで、出発するメンバーは

私と獣魔メンバー、パパ、ラウ兄さん、アリス姉さん、リカルさん、アルちゃん、シルちゃん、セリちゃん、サソリのハルトさん、ユウちゃん、セイちゃん、リムさん、リリさん、ゼルさんです。


旅先ではしっかり護衛として守るから!とか言ってたので応援と感謝の気持ちを込めて抱きついてほっぺにチューしてあげたところ、お顔が蕩けて腰砕けになってました。

・・むぅ?

前より笑顔を作るのがちょっぴり上手になったのでそのお披露目でもあったのですが・・。

それをわきで見えていた人たち曰く、破壊力がエグいとのこと。

ふむ?



「師団長、こちらのことはお任せ下さい。」

「元々師団長なしで頑張ってたから問題ないよ師団長!」

「イリス様も家族旅行、行ってらっしゃいませ。」

「あぁ、行ってくるよ。」



そして、出発しました。

魔力は作成時にかなりの量を込めていたらしく、丸2日程度であればぶっつけで飛んでいても問題ないくらいのようです。

そのため、適当なタイミングで各々が魔力をまとめてため込んでおけばかなり余裕があります。

特に私なんてSSS+ですからね!









「凄いね、この船。」

「うん。中の設備も施設もどれも凄いとしか言い様がないよ。」

軽く体を動かすためのお部屋にキッチン、お風呂、寝室、リビング、書斎、図書室、広間にその他個室とホントにたくさんの種類のお部屋があります。

ハディちゃんに黄昏がゆったり出来るくらい凄く広々してます。

それと、このお船の部屋には全て窓があちこちにあります。

そして、一番底に行くと、全面が透明な壁の状態になっているので凄く見晴らしは良いですよ。

ちなみに、魔力を込める特定の部屋というのは、全部で10箇所存在しており、それぞれ訓練代わりに発動したどのような種類の魔法でも強制的に吸収して貯蓄させるお部屋と、魔力操作を行なうことで貯蓄させるお部屋、そしてそのお部屋にいるだけで勝手に魔力を吸収する部屋の3種類が存在します。

一応魔力が枯渇する寸前で吸収は止まります。

所謂安全機能ですね。

魔力をため込むためのお部屋がこの3種類存在するのは魔力を鍛えることも考慮されているからです。

ただ駄目込むだけではなく、訓練しながらため込むことが出来るので一石二鳥です。

そのため、魔力を勝手に吸収する部屋に魔石を放り込むとそこから勝手に吸収するので場合によってはその手もありです。

まぁ、その場合魔石にため込んである魔力を全て搾り取るのでなくなった瞬間霧散して消えますけど。


ちなみに、防音完備のベッドとお風呂がついているお部屋がいくつかあったのですがどうしてそこは使ったら駄目なのでしょうか?

それと、どうして皆さんお顔が赤くなるんです?

後、何で私は使うのは早いというのですか?お部屋に使用制限があるんですか?



「それに凄く速いね。」

「ですね。この速度だと全力のシャスティレベルかそれを越えるほどだね。」


で、その中で最もテンションが高いのはセリちゃん

「わぁ!わぁわぁ!!飛行艇飛行艇!飛行艇に乗れるなんて!師匠最高!」

「わかったから。気持ちは分かるから落ち着け!」

「だってシリル!ファンタジーの代表格だよ!?」

どうやら、飛行艇に乗ることが夢だったようです。

{そちらの世界にはこのような乗り物はないのですか?}

「一応空飛ぶ乗り物はあるんですけど、空飛ぶ帆船となるとないですね。」

なるほど。





それにしても、このお船空を飛んでますけど揺れませんね。

それに凄く快適です。

ゴロゴロするためのお部屋に敷かれているカーペットはもっふもふですし、ベッドやソファーなどがあるそれぞれのお部屋のも凄く座り心地も寝心地も最高です。


「この飛行艇って、ホントに凄いね。外にいても居心地良い程度の風しか来ないんだよ。」

「多分ある程度の風とかを避けるか防ぐ結界が張ってあるんだと思う。」

「けど凄く良い景色だね。」

「ねー。ねぇ、リアちゃん、今はどこに向かっているの?」

{カタクリという町ですよ。}

「へぇー。そこって確かアリスさんと出会ったり、リリさんたちや翠さんと出会ったんだよね?」

(コクリ)

「後は、シャスティさんとカルナさんが初めて活躍した場所でもあるんだね。」

「はぁ・・未だに何でそこまで話しが広まったのか不思議でならないんだ・・。おそらくは影の親衛隊が産まれたきっかけなんだろうし、その連中が嬉々として広めたんだって言うのは分かるんだが・・はぁ・・。」

ため息の多いカルナです。

「けど、そのおかげで味方は増えたんでしょ?なら良いじゃないですか。」

「そうだな・・。不幸中の幸いと言うことにするよ。」


「ねぇ、リアちゃん。このままぶっつけで飛び続けるの?」

{急ぐ旅ではありませんし、夜はどこかに着陸させますよ。それと海の上では空ではなく海を泳ぎます。}

「良いね。それも旅の醍醐味だよね。」

「それにしても・・入れ食い状態だね。」

{お空には好奇心が旺盛な魔物さんが多いみたいですね。海ではあるかないか極端でしたが。}

まぁ、海だとお魚がたくさん捕れたので、アレはある意味で今と変わらない気もします。

違いがあるとすれば、襲ってくるののレベルの違い程度でしょうか。


で、何を言っているかというと鳥形の色んな魔物さんを始め、ワイバーンが襲ってくるからです。

鳥さんの魔物の種類は多すぎて1つ1つ確認する暇はありませんでしたけどね。




ワイバーン

ドラゴンの劣化版とか呼ばれている空飛ぶトカゲ

とはいえ、劣化版とはいえ、れっきとしたドラゴンのため火を噴き、爪や牙は鋭く、鱗はそれなりの強度はある。

世間的には、Aランクとか言われるためそこそこ強いが、非常に喧嘩早いため、自身より強かろうが弱かろうが関係なく襲ってくるのでかなり面倒くさい。

獲得部位:魔石、牙、爪、鱗、皮膜、骨、稀に火炎袋、稀に眼球



火炎袋

胃袋の一種だが、内部には火の魔法を貯蓄させることが出来る。

これがある故に火を吐くことが出来るとも言われている。


ワイバーンの眼球・・つまりはおめめですが、お薬の調合に使うらしいです。

確か火に関わる関係の怪我や病気を治すことに特化しているけれど、基本的に万能薬とも呼ばれるほどどのような病気にも効果のある凄い代物なんだそうです。


で、そのワイバーンを筆頭に色んな鳥の魔物が襲ってきます。

なので、みんなして退治してるわけです。

まぁ、遠距離系の攻撃が出来る人たちがメインで行ない、後は地上にそれらのアイテム類を落とさないようにする程度ですけど。

それと、火炎袋ですがワイバーンだけが所持している部位なんです。

理由としては、ドラゴン自体はそれがなくとも火を吐くことは出来ますが、ワイバーンの場合、自身の炎でダメージを自負してしまうんです。

そうしないように存在するのがこの火炎袋

他の例えだと、毒を持つお魚が自分の毒にやられないようにするために毒を毒袋にため込んでいるのと同じ感じだそうです。






「で、シリル。こんな感じか?」

「そうそう。そこでここをこう。」

「あぁ、なるほど。確かにこれならさっき言ってた意味が理解出来る。」

「分かっただろう?自分の力をきちんとコントロールしきれてないってさ。」

「あぁ理解出来た。俺、今までこんなに無駄遣いしてたんだな。」

「これが、武術と喧嘩殺法の違いだ。喧嘩殺法でも良い点はあるんだが、どうしても我流だと無駄が出るんだよ。」

「なら俺が学ぶべきことは、武術の型じゃなくて体の効率的な動かし方、扱い方なんだな?」

「そういうこと。」

「前々からちょいちょい習ってたけどしばらくこうして本格的に教えてもらっても良いか?報酬ももちろん渡すからさ。」

「それなら、焼きたてパンをただで食わせてくれよ。」

「いつも食ってるだろうが。そんなんじゃあ、報酬にならねぇだろ。」

「ちっ、バレたか。」

「ったく・・なんで自分が損する方で騙すかなお前は・・。」

「なこと言われたってさ、何も欲しいものがねぇんだよ仕方ないだろ?」

「はぁ・・ホントに何もないのかよ。モノじゃなくても何かに協力するとかでも良いんだぞ?」

「協力ねぇ・・。じゃあ、教科書をくれ。」

「は?教科書?」

「あぁ。師匠から聞いたけど、グリムはあの学園の卒業生なんだろ?」

「まぁな。って、俺が使ってた5年間分の教科書ってことか?」

「あぁ。この世界のことを翠さんから習ってるけど一般的な学園での知識も知っておきたいんだ。本から学べるけど、教科書はあの国の教会にないだろ?」

「なるほどな。構わないぞ。どうせもう使わないから全部タダでくれてやるよ。」

「サンキュー。って言うか、5年分の全教科の教科書って俺が教えるだけじゃ俺が得して、お前損するだろ?もらいすぎなんだが。」

「ならさ・・シリルが知ってることを教えてくれよ。」

「俺の世界でのってことか?」

「あぁ。全部じゃなくて良い。俺が関わりそうな範囲とか限定的でも良いからさ。」

「それなら構わないぞ。グリムだと武術以外となると料理に火についてとかか?」

「それでいい。って言うか、火って何を教えてくれるんだ?」

「俺達の世界には魔法が存在しないって話しただろ?」

「あぁ。その分科学っていうあらゆる事象の仕組みをとことん研究しているんだろ?」

「そう。だから火の仕組みについてもある程度解明されてるんだよ。その部分を知ってると多分グリムが扱う火の魔法の威力とか脳への負担とか大分変わるんじゃないかってさ。」

「それは助かる。是非頼むぜ。」

「あいよ。」

リムさんとシルちゃんはどうやら互いに教え合うことで鍛えているようです。

リムさんは剣以外では、一応戦えますが所謂喧嘩殺法なので我流です。

それを見てシルちゃんは、体の動かし方に無駄が多いとのことで効率的な動かし方を教えることにしたようです。

で、その報酬として先ほど言ってたように教科書を渡したりってことのようですね。



それにしても、あれから5年・・いや6年経ったんですね。

お兄様達フォルシェンファミリーに救ってもらい、リリさんたちに拾ってもらって私の人生は始まった。

あれからずいぶんと色んなことがありました。

あの頃は、何も出来なかったけれど、カルナたちが色んなことを教えてくれたから今こうしてたくさんの大切な人たちに囲まれて楽しく過ごせている。

そして、あの頃よりもずっと強くなった。


当時の頃は、ホントに今すぐに死んでも構わないと思ってた。

私なんかは、生きる価値はないと。

今も正直言うと構わないと思っているけれど、みんなが悲しむから長生きして欲しいとお願いされた。

それで、私の考え方は少し変わった。

人のために、大切な人たちのために生きるっていう考え方を覚えた。


そして、桜華さんである初代賢者を継いで2代目賢者になった。

だから私は、この力を世界のためにとは言わないけれど、大切な人たちが楽しく過ごせるようにするために戦うことに決めた。


「リア様、どうしましたか?」

ぼんやりと黄昏れつつお外を眺めていたら後ろからアルちゃんが私を抱き締めながら訪ねてくる。

私もアルちゃんに抱っこされてるのが常ではありつつも私から抱きつくのも珍しくない。

けれど、数だけで言うとアルちゃんから抱き締めてくることの方が圧倒的に多いです。

アルちゃんは何気に私を抱き締めるのが好きなんですよね-。

まぁ、好きにして下さい。

とされるがままになりつつあるのをスルーしてお話しを続ける。

{これまで色んなことがあったなと思い出していただけですよ。}

「そうですねぇ・・。ふんわりとしか聞いてませんけど、リア様ってクラリティ王国にたどり着くまでホントに色んなことに巻き込まれてたそうですしね。」

{ところで、アルちゃんは人間相手はあれからいかがですか?}

「おかげさまで、半径1~2メートルくらいならある程度普通に話すことは出来るようになりました。けど、まだ異性に触れられるのは怖いです。」

{基本的に触れられることを怖がるのは生物の普通の感情らしいですよ?}

「そうなんですか?」

{翠ちゃんが言うには、人間は遙か昔は動物だったそうです。それから生きるすべと知識を学び、今のように言葉を交わし、モノを扱うようになったんだそうです。}

「へぇ~。それじゃあ、その頃からあった野生の勘みたいなモノが残ってるって感じなんですか?」

{らしいですよ。野生動物は自分を危機にさらさないように触れるどころか近づくことすらも許さないでしょう?アレと同じらしいです。}

「あぁ、危機管理能力と言いますか、パーソナルスペースみたいな感じなんですね。」

{そうです。アルちゃんはそのスペースが人よりも広く、危機管理能力が強いんだと思いますよ。なのでそこまで出来れば気にしなくても良いと思いますよ。}

「はい。けど、一応いざって時のためにせめて家族だけは触れるようになるためにリカルさんに協力してもらってるんです。」

{リカルさんにですか?}

「はい。・・と言っても、じっとして下さってるリカルさんの手に触れるだけなんですけど。」

なるほど。

リカルさんは我がファミリーの中で一番無害ですからね。

・・テンションが上がっていなければ。

{それで、結果はどうですか?}

「あ、あはは・・指先にちょんと数回つつけるようになった程度です。リカルさんにはホントにご迷惑をおかけしてるんです。」

{リカルさんはその程度のことは気にしませんよ。アルちゃんが気にするようでしたら、どこかでお返しするかプレゼントでもしてあげればどうですか?今はあちこちの町に出掛けているのですから何か良いものがあるかもしれませんよ。}

「そうですね!そうします。」

よくよく思えば、アルちゃんは異性相手だとリカルさんには一番良い笑顔なんですよね。

基本的に穏やかで優しいですからねリカルさんは。

二人の未来がどういう物になるかは気になりますが、優しく見守りましょう。

世間的にも二人は私の直属の侍従コンビとして有名ですからすっかりワンセット扱いですし、リカルさんもまんざらでもなさそうですからね。




{アルちゃん、突拍子もないことを聞いても良いですか?}

「はい。私で答えられることなら。」

{私の心は生まれて5年間の影響で壊れています。そんな私は、アルちゃんから見てどう感じましたか?}

「え?・・えと、前に聞いたことがありましたけど、感情が自然に沸いてこないって話しでしたよね?」

(コクリ)

{普通の人なら自然に笑ったり怒ったりすることも私には出来ませんし理解することも出来ません。それに、どんなに痛いことをされても一切自分を失うことはありません。・・そんな私を怖く感じますか?}

「・・私個人の意見ですけど、リア様の場合は個性で収まると思います。」

{個性ですか?}

自分でもわけの分からない質問をしたと思ったのですがアルちゃんからは予想外な回答が飛んできましたね。

「はい。本音ではどうでもいいと思っているのに凄い感情を現す人もいますし、本音は感情豊かなのに自分の意思でその気持ちを押し込めて冷静さを装う人もいます。リアクションがオーバーすぎる人だっています。確かにリア様のような感じだと子供だという点で考えるとさみしいと感じます。けれど、私はそれも個性なんだと思っています。みんなと違うと言うだけでそれを無理矢理なくして周囲とあわせることは悪いとは言いませんけど、本当の自分を殺しているようで私はいやです。恋愛だって同性が良いと言う人も稀にいますし、年の差が親子ほど離れていてもきちんと恋人同士で、夫婦としている人もいます。世間では稀有でも全くいないわけではないんです。だから、リア様の場合は感情豊かになればまたそれはそれでかわいいと思いますけど、ムリしてそうならないでも良いんです。リア様のペースでリア様がなりたい自分になれればそれが一番だと思います。どんなリア様でも私は大好きですから。」

世界にはたくさんの人がいる。

十人十色と言う言葉もあるように全員が全員同じ人はいない。

だからこそ人生は楽しいんだとアルちゃんは言いたいようです。



アルちゃんの言葉は、これまでではあまり聞かない言葉で凄く新鮮。

それが私の心をほんのりと癒してくれた気がしました。

{ありがとうございます。私の傍にいることを選んでくれて凄く嬉しいです。}

自然に笑顔がこぼれた。

それを見たアルちゃんは目を見開いて驚きつつも凄く優しい笑顔で

「はい。私こそリア様に救ってもらったこの人生をリア様と天界にいらっしゃるペチュニア様と神様に感謝します。」

アルちゃん。

その言葉は私にとっても凄く嬉しい言葉ですよ。











--アルナ--

初めての飛行艇での旅

そして、大好きな主とのお出かけ。

そんな中、リア様から尋ねられたことはかなり重いものだった。

リア様の過去は、リカルさん作のあの絵本と共に教えてもらっているから聞いている。

だから、リア様の心が壊れていると自負していることも理解出来る。

私自身もそこそこ大変な過去を送っているけどリア様はそれを優に超える。

そんな人生を歩んできたんだからそうならない方がおかしいし、今こうして楽しく過ごせていることこそが奇跡だと思う。

けれど、リア様が心配することも私は理解出来る。

みんなと同じにならないといけないのかという心配

私もかつて同じだったから。

魔法が使えない。

みんなは使えるのに私だけが使えない。

結果として使えるようになったけれど、魔法がもしも使えなかったとしてもリア様はきっと捨てずにそばに置いてくれた。

なぜなら、私が魔法が使えないことを知っても全く変わらなかったから。

それはリア様の周囲の人たちもそうだった。

そして、私はリア様に救われた。


だから私は、あぁ答えた。

ちょっと感情が表に出にくいだけなんだから。

リア様は、ちゃんとやりたいことはやりたいと言ってるし、我慢してないんだから良いじゃないか。

そこから、もっと感情豊かになりたいとリア様が願うのなら協力するし、今のままでも構わないと思うのなら私はリア様の意思を尊重する。

感情豊かなリア様は年相応にかわいいだろうし、今のままのリア様でもクールでかわいい。

どっちのリア様も私は絶対に大好きになるし、大好きで居続ける。


そう答えたら、リア様の心を少しは癒やせたようで超絶レアな極上スマイルを頂きました。

私はこの笑顔を一生忘れない。

だから私は、こんな優しくてかわいい主様と少しでも長く一緒にいるために探し続ける。

リア様が長生きする方法を。

リア様はもっと幸せな人生を歩んで欲しいから。

私を救ってくれたからそのお返しに少しでも幸せな人生をたくさん歩んで欲しい。


だから私は、グリムさんとの恋を応援します。

グリムさんだってリア様のために凄く色んなことを頑張ってるのを知ってるし、セイちゃんがそんなリア様の状況を打破するために2代目聖女としての実力を高めているのを知っている。




リア様。

みんな口にはしないけれど、リア様が30才手前で死んじゃう未来を許してませんから。

絶対に救って見せますからね。


まずは、楽しい思い出をいっぱい作りましょうね。






そんな感じでちょっぴり暗い話をしてたけど結果としてリア様の笑顔を見ることが出来たから凄く良い思い出になりました。

そうしている間に、船旅は続きます。

おまけ

カルナ「よし、勉強の基礎の確認だ。かけ算で2の段を順番に言ってくれ」

フリージア「にいちがに、ににんがし、兄さん寄ってらっしゃい」

カルナ「ちょっと待った!」

フリージア(?)

カルナ「一部妙なのが混ざってなかったか!?」

フリージア「気のせいでは?」

カルナ「そ、そうか?じゃあ、気を取り直して、9の段だ。」

フリージア「くいちがく、国へ帰らせていただきます」

カルナ「やっぱり妙な覚え方してるよな!?」

フリージア「まともな方もきちんと覚えてますよ?」

カルナ「誰だ!妙なことを教えたのは!」


セリカ「師匠~♪今日は、6の段を教えるよ!」

フリージア(コクリ)

セリカ「ろくいちがろく、ロクに仕事もしてません」

カルナ「お前の仕業かぁ!!!」

セリカ「ひぇ!?何!?何!?」

シリル「家の嫁がホントごめんなさーい!!」




元ネタが、どこか知っている人は知っているとあるサイト。

・・・名前は作者自身が忘れました。

確か・・・なんとか倉庫?

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