フリージアとシリルの繋がり
--フリージア--
2年生になってからと言うモノ、1年生の頃が嘘のようにすっごい平和です。
面倒ごとも何もないので、お仕事に専念出来ます。
で、シルちゃん達がミートマンたちスタンピートを解決し、リクトさんが卒業してこの国を旅立ってから更に数ヶ月経過しました。
それからは、ホントに平和です。
お仕事が忙しいのは別として、それ以外に騒動とかはなくホントにのほほんと過ごしています。
ちなみにシルちゃんことシリルさんは、あれからこんなワザを覚えました。
【熱源感知】
所謂サーモグラフィーのように周囲の温度を頼りに察知することが可能
探索範囲は、魔力量と魔力制御次第
蛇さんは、周囲を熱を経由してみているらしいですがそれが出来るようになったらしいです。
これがあれば、どんなところに隠れていても生き物が隠れていたらすぐに分かるそうです。
生き物は生きているから温かいですからね。
どうやら、シルちゃんは熱と冷気を操ることが出来るようになりその訓練の末に覚えたようです。
セリちゃんは、ワザを新しく覚えてはいないようですが自身が扱えるワザをより上手に扱えるようになり、ステータスは全体的に更に伸びています。
そうそう。
アルちゃんがとうとうAランクにランクアップしました。
それと、アルちゃんも二つ名が出来ました。
守護メイドです。
私直属のメイドさんなのはもう超有名ですが、アルちゃん自身のワザが主に守ることに長けていることに合わさってそんな呼び方になったようです。
で、アルちゃんのご感想としては、大層な呼び方にならずにホッとしてますとのこと。
私とかシルちゃんみたいな呼ばれ方は名前負けするから恐縮しちゃうらしいですが、守護メイドだとまぁ普通の範疇に収まるとのこと。
よく分かりませんがまぁ、本人が気に入ってるなら良いですね。
そして、リクトさんへプレゼントしたマフラーの劣化版の発売ですが、数週間前に行ないました。
細かい部分は我がファミリーが行ないますが大抵のことはこの国の他メンバーが請負という形で作ってくれるらしいです。
主に刺繍を私が行ない、私たちが編み出した強力ワザの魔法を込めることが出来る魔道具を貸し出し、それを使って魔法を込めると言う部分を依頼する感じです。
ぱっと見ただのペンの形をした魔道具ですが、特定の魔法を封じ込めることが可能で、そのペンで対象物をなぞることで封じ込めた魔法を付与することが出来るんです。
まぁ、どれに込めると言う部分も特定しないといけないので用途はごい狭いです。
今回だとマフラー(私が刺繍したモノ)限定です。
私以外が刺繍しても付与出来ないという不思議。
おまけで言うと、そのペンを借りパクしようとしたら爆発します。
軽く手がずったずたになって、骨も粉砕骨折する程度ですよ。
・・って、説明したら全員がなぜか絶句してたのは何ででしょうね。
悪いことをしなければ問題ないと言うのにね?
で、のんびりとしている中でパパに特許について改めて教えてもらいました。
「まぁ、ザックリと説明すると真似したいなら金寄こせ☆ってことなんだけどね。異世界人が昔提案したことらしいんだ。」
{私自身真似ても特にどうでもいいのですが。}
「まぁねぇ。元々は周囲のメンツが勝手にそう言いだしただけで特許自体はとってないんだけどね。」
{そうなんですか?}
「うん。たかだか浄化を込めるだけで特許は取れるようなモノじゃないしね。けど、リアちゃんのワザはそう易々と真似出来るモノでは決してないよ。正直魔力を感じ取ってそこから何の魔法か解析出来ないとぱっと見では絶対に分からないよ。それだけリアちゃんのあの技術はすさまじいんだ。」
まぁ、私が施している刺繍に使ってる糸は超特殊素材ですしね。
世間的にはやや透明度のある黒い糸と思われてますが正しくは無色透明な糸に私の魔力が籠もったことで黒く染まっただけなんだもの。
月光糸
月の光に長期間照らされて育ったクリアスパイダーの糸を更に加工し、月の光に照らして作られた無色透明な糸
魔力を込めるとその属性の色に染まる
クリアスパイダー
透き通った色をしたクモ
大変おとなしく攻撃力は皆無だが、非常に臆病な性格をしている
月の光に照らされ、穏やかな土地を好む
お月様の光にいっぱい当たって出来た糸は、クモさんから出した段階ではくすんだ程度らしいですがそこから更に月光を浴びせることで無色透明になるんだそうです。
そして、魔力に影響されやすいので私の魔力に反応して黒くなるんです。
その糸を私は扱っているわけですが、世間ではほとんど知られていないらしいです。
それと面白いことにこの糸は、同じ属性の魔法使いが糸に魔力を込めても全く同じ色にならないんです。
そのことから、その色はその人の魔力色だという声も上がっています。
で、話を戻しますが、
魔力に影響されやすいのは見た目だけではなく、込める魔法にも影響されやすいんです。
要するにこの糸は、他の素材に魔法を付与するよりも馴染みやすいんです。
馴染みやすいというのは、例えば馴染みにくかった場合、ぱっと見で何かしらの魔法が込められているとわかりやすいんです。
つまりは、その付与された魔法を解除、または破壊もたやすくなると言うこと。
そして、馴染みやすくなるとその込めたモノ全てを木っ端みじんにでもしないと効果は切れない。
それほどまでに馴染ませることは大事なんです。
で、私はと言うと、まず刺繍で浄化の魔方を付与し、その上からきれいにかぶせるように柄を刺繍します。
魔法付与用の魔道具で糸に浄化の魔法を込めて、その糸でまず最初に浄化の魔方陣を描きます
そして、その上から裏表のどちらからでも一切見えなくなるように何かしらの柄を刺繍します。
軽く言ってますが、たかだか刺繍で裏表のどちらからでもきれいにかぶせて隠すのは至難の業なんだとか。
魔方陣は人によっては見た瞬間に何の魔法か分かりますし、一部でも斬れればそれで効果は消えます。
それをきれいにかぶせてしまうと言うことは魔法が込められているかどうかもぱっと見では分からないと言うこと。
まぁ、刺繍の柄ごとばっさりやっちゃうと話は別ですがちょっとしたことで気づかれることはあまりないんです。
ちなみに、浄化以外の魔法を今回マフラーに込めたわけですが、アレは魔方陣を使わずに込めてます。
魔方陣を使った方が安定しますがぱっと見でバレやすい。
なので、魔法自体をお水のようにしみこませる感じで付与します。
こっちのワザはかなりの上位者でなければ難しい技術です。
そんな感じで色んな大変がいっぱいのため、真似しようにも知ろうとでも分かるほどの贋作になっちゃうので、唯一我がファミリーだけが出来るワザと認識され、特許扱いになってるようです。
まぁ、わざわざ説明する気もないのでスルーしますが。
で、贋作を作った人と造ろうとした人たちに関しては、クテンの信者さんたちが嬉々としてその企みを殲滅するための見せしめとばかりに搾り取ったようです。
なんか、あの人達言うには
我らがクテン様に何と言う不敬だ!!
って感じで、見つければ全員見せしめにしてるらしいです。
装備品から所持金までぜ~んぶ搾り取るらしいですよ?
ちょっとやりすぎなので軽くなだめたら、お金だけ搾り取って醜態言いふらして回るという報復に変わりましたけど。
それと、そのついでとばかりに贋作を不法に売りさばいたりする人たちの撤廃も進んだらしく時折芋ずる式に捕まえているようです。
悪心殲滅良きかな良きかな-。
って、言ったらかわいいけど物騒と言われました。
なぜに?
で、そんなある日学園のお昼時間にご飯を食べてる中、突如として現れた謎集団(5~10人)
何か無駄に身ぎれい・・と言うよりぴっちりしすぎてる感じ?
で、なんか私を先導しよう!って雰囲気がぷんぷんします。
無駄に。
「あなた様のようなお方こそ我らが生徒会で真の輝きを放つのです!」
とかぬかしてるらしいです。
で、面倒なので聞こえなかったのでスルーしてもぐもぐ。
なんでらしいなのかって?
だって、何か面倒くさそうな人たちがいるなーって思ったら速攻でセイちゃんが私の両耳を塞いでるから聞こえないんだもの。
そして追撃とばかりにさりげなく私をそいつらの視界から外すようにユウちゃんが動き、幸せそうに私を膝にのせながらあ~んして最初からいなかったことにしてスルーしてるアルちゃんって感じです。
ってアホなこと言ってるらしいとしか言えないんですけどね。
最初の数文字までしか聞こえなかったので口の動きから読み取れた単語から推測した感じですし。
ちなみにこんなのをここ最近覚えました。
【読唇】
相手の口の動きを見るだけで話している内容を理解出来る
【速読】
物事を把握する速度が上昇する
代表的なモノは読書
熟読すればするほど速度は上昇し、脳にかかる負担も軽減されるようになる
【思考負荷軽減】
思考する際にかかる負荷を軽くする
【考察緩和】
考察する際にかかる負荷を和らげる
【視力適用】
遠くのモノを見ようとしたり、暗闇の中や、霧の中や森の中など、様々な状況や環境に合わせた視界を確保することが出来る
名前:フリージア・クラリティ・エトワール
ランク:S(二つ名=魔鏡姫/夜叉姫)
パーティ:ハリーファ(リーダー)
属性:陰
体力:C+
魔力:SSS+
攻撃:D+
防御:E
俊敏:D
練度:SSS+
主に考えることに対する補助するようなモノの類いが増えてます。
似たようなのが2つあるけど、論理的か抽象的かの違いで微妙に内容が違うっぽいです。
後、魔力と練度が上がってます。
お仕事するために影さんたちを呼びっぱなしで動かしまくってるからでしょうね。
ついでに言うと、影さんたちを作り出す限界数ですが、
最大サイズである私の半分の大きさで、50体まで増えました。
そして、その1体を手のひらサイズにまで小さくすると数は100まで数が増えます。
なので、手のひらサイズだと最大数は5000体です。
「って、どうして君たちは邪魔をするのだ!」
「決まっているではありませんか。ただでさえリア様はお忙しいと言うのにこれ以上働けとおっしゃるのですか?」
「うぐっ。」
軽く殺気を放ちながら笑顔でそう言い放つアルちゃんに黙る謎集団。
アルちゃん自身も冒険者ランクが上がっていくのに合わせて世間では結構有名人になりつつあります。
過去に魔法が使えなかったことなんておまけ程度の扱いになるほどの評価ですよ?
私専属のメイドというのと、不意打ちが絶対に効かないことで最強の守護者という認識です。
そして、そのサポートによく回っているリカルさんとワンセットで最強の侍従コンビと思われてます。
まぁ、リカルさんはリカルさんであらゆる鉱石や液体関係を液状化から硬質化まで自由に変化させ操ることが出来るので不意打ちよろしく遠距離で飛ばしてくる(ぱっと見は指弾っぽい)ので避けるのがやっとで防御するのは結構大変だと評判です。
なんか、防御しようにも飛ばしてくるのが小さいから見にくいし、分かりづらいから何だそうです。
リカルさん自身もそこまで魔力量が多いわけではないので結果として消費魔力を抑える為に飛ばす物を小さくしているだけなんですけどね。
「リアちゃんがすっっっっっっっっっっごい忙しいのはここの国民なら誰もが知っていることだと思ってますけど、それを重々承知の上でそんな戯れ言をほざいているのですか?」
無表情な顔ですっごいタメながら言い放つセイちゃん。
「ホントはその仕事もあまりにも多いから減らしたいんだけどね。だから、こうして減らせる負担は減らそうと頑張ってるのにそれを無駄にするんですか?そうやってリアに色々押しつけて先輩方はリアを過労で倒れさせたいのですか?」
笑顔だけど目が完璧にキレてるユウちゃん。
{生徒会とはなんですか?}
アルちゃんに聞く。
「端的に言うと職員からすると都合の良い駒で、生徒代表のぱしりです。」
「せめて学園全体のサポート役または雑用係と言って欲しいのだが!?」
「あぁ・・アルナさんの言いたいことは分かるけれど一応改めて説明するわね。」
苦笑いしてるシスカさんに改めて説明してもらいました。
先生代理で、生徒代表のポジションのグループで何かの催し物があった際、生徒をまとめたり、先生がいない状況でも生徒全体をサポートする組織のことなんだとか。
後は、普段の生活でも清く正しく過ごすために学園のルールを元に取り締まるんだそうです。
ふむ?
確かにアルちゃんの言う通りですね。
「コホン!それで、フリージアさん?是非我が生徒会へいらしては頂けないでしょうか。この学園で生徒会として働いたという事実は、将来において高く評価されるので非常に素晴らしいことなのです!」
生徒の代表らしいですし、世界的にもこの学園は有名らしいのでそれは良い意味で注目するでしょうね。
「素晴らしい成績を残し、更に生徒会でも活躍したとなるとあなた様のお父上もさぞ鼻が高いでしょう!」
ん~
確かに凄いとパパは喜んでくれるでしょうけど・・・お母さんの性格を考えて、それに慣れてるパパだし、なるかどうかの相談をしたと推測すると・・。
-ただでさえ忙しいのにまだ働かないといけないの!?めんどくさっ!そんなに素晴らしいんならあんたたちだけでやれば良いじゃない。評価されるんでしょ?ならわざわざ私を巻き込む必要なんてないじゃない。やりたいやつにやらせれば。私は周囲の有象無象なんてどうだっていいのよ。-
とか言いそうですね。
ちなみに、その台詞をアルちゃんにひっそりと言ってみると
「あぁ・・すごく言いそうです。イリスさんに聞いているイメージだと簡単に想像出来ます。」
って苦笑いして言ってましたし。
けど、私もお母さんとは同じ気持ちなんですよね。
{いやです。忙しいのでそちらに手を回す余裕はありません。それと周囲の評価はこれ以上は必要ありません。}
「なっ!?」
と私が言うと、みんな納得したという顔になる。
「だよねー。クテン様として、公爵家令嬢として、魔術師団長として、刺繍屋さんとして、そして魔鏡姫としてどれも馬鹿にならないもんね。」
「うんうん。これ以上忙しくしたらリアが過労で倒れるのが冗談じゃなくなるし、今だって魔力量と練度の高さでどうにかなってるだけだし、イリスさんたちがリアの負担を軽くしようと頑張ってるところで生徒会の仕事なんて増やしたら全部無駄になるじゃん。」
セイちゃんとユウちゃんがうんうんと頷きながらそう言う。
「口ではどうとでも言える!本当に忙しいのか証拠を出してもらえないだろうか!」
何か自棄にやってません?
「は?学園内だから何も言わねぇが、お前それ思いっきり不敬だからな?狂信者がいたら速攻で始末されてるぜ?」
「この学園内にもファンクラブに自称親衛隊がいるから闇討ちには気をつけなさいよ?それに、加入は本人の意思に任せるモノであって強制じゃないはずよね?それでどうしてこちらが悪いのかしら?」
軽くいらついてるジャンさんとシスカさん
{なら目の前で見せて上げましょうか。それをみてから私と全く同じ仕事をあなた1人で対応出来るなら考えても構いませんよ。}
「本当ですね!?良いでしょう!是非見せて頂こうではありませんか!」
すっごいノリノリで自信満々みたいですね。
本人は、子供1人が対応する仕事なんて高が知れていると思っていたようですが・・・
1時間後
「大変申し訳ございませんでした。今後一切こちらからそのような類いの干渉は決してしないように致します。その他のクラブ勧誘に関してもこちらからさせないように徹底致します。」
全員が顔を真っ青にして土下座してました。
冷や汗がいっぱいです。
何でこうなったかって?
我がファミリーで作成した魔道具を使ってガチモードのお仕事を行なっただけですよ?
どんな魔道具かというと、簡単に言うとテレビ映像と同じです。
各地に配置している影さん1人に対して1つ空中に透明なディスプレイを表示させるモノです。
影さんが見聞きしたモノ全てをそこに映し出す代物です。
影さんのサイズ関係なく1人に付き1つなのでホントにたくさんあります。
まぁ、その魔道具1つに付き100個までディスプレイを出すことが出来るわけですがそれを多めに10個持っています。
見た目は、ストラップタイプのミサンガです。
凄く小さいのでお洋服とかにくくりつけてたら全く邪魔になりません。
まぁ、私の場合はローブの内側に縫い付けてる感じですけど。
で、各地で模擬戦をしてたり相談事を受けて対応してたり、事務仕事をしてたり
他にも刺繍に魔道具の検査、修理、強化
この国全体を守護する結界の監視、補強など
後、習い事に情報収集に周囲の監視
ちなみに、その相談事というのは1人の影さんに付き10人が同時に色んなことを喋り、それを同時に受け答えしている状況です。
それを各地の影さんが全員行なっています。
後、事務仕事に関しても資料を確認して対応するわけですが速読術と並列思考を利用して同時にまとめて対応してたりします。
まぁ、それをしながら複数人からの受け答えを行なっている状況ですが。
で、私本体はというと、お勉強と訓練の合間に縫い物をしているのが普通です。
お仕事はほぼ全て影さんを経由してしか行なっていません。
ちなみにパパからは、1人で50人分以上のお仕事をこなしてるねって褒めてもらいました。
影さんの数だけで言うと確かにそうですが、相談事を1人1つという扱いにすると倍以上数が増えたりするので最低でもという単語が頭にくっつきます。
それと、パパの場合、1人で10人前のお仕事を軽く片手間にこなします。
そのお仕事ぶりを生徒会メンツは真っ青になって土下座してましたけどクラスの皆さんは顔が引きつってました。
どうやら予想以上だったようです。
で、生徒会の人たちが去って行った後、アルちゃんがぽつりと。
「・・だから言ったじゃないですか。私たちが出来ることを増やし、仕事を奪えるだけ奪いたくなると。」
「そりゃそうだよね・・アレを知ってたら確かに奪ってでも仕事を肩代わりしたくもなる。」
全員がうんうんと頷いてました。
まぁ、最近は慣れてきたので大分楽ですよ?
それに影さんたちを操ることもより慣れてきましたし。
で、そんなある学園がお休みの日
シルちゃんとセリちゃんとの模擬戦を済ませ、おやつを食べていた頃にふと思いついた。
{お二人はこれからお暇ですか?}
「ちょっと教会へ読書しに行こうと思っていた程度なので空いてますよ?」
「師匠、何か手伝いごと?」
{いえ、私と言いますか我が国の王族しか扱うことの出来ないモノがあるので、お二人が扱えるかちょっと調べてみたかっただけです。}
「師匠の血族だけしかムリなら私たちもむりなんじゃ?」
「あぁ・・つまり師匠はこの世界の住人ではない俺たちにもそれは該当するのか確認したいってことですね?」
(コクリ)
「そっか。けど、そうホイホイ行っても大丈夫なの?私とシリルは部外者なんだけど。」
{私の弟子なので問題ありません。}
「さすが師匠」
「俺も興味あるので行きます。」
「なるほどな。確かに気になるな。良いぞ」
早速二人を連れてお兄ちゃんである国王の元までやってきて事情を説明したらサクッとOKが出ました。
「で、師匠。これがそうなんですか?」
(コクリ)
{ピアノと呼ばれている魔道具です。}
「俺たちの世界だとかなり有名な楽器ですが、こちらの世界だと珍しいモノなんですね。」
「らしいな。」
シルちゃんとお兄ちゃんがそう語り合う。
で、私が軽く鍵盤を触るとポロンときれいな音が響くが、アルちゃんが触ると・・
「ホントだ鳴らない。」
他にリカルさんが触っても同じ。
「じゃあ、まず私!」
セリちゃんが触ると鳴らなかった。
「鳴らないね。じゃあ次シリルだね。」
「あぁ、鳴らないと思うがな。」
となぜかワクワクした表情になってるセリちゃんにせかされ苦笑いしてるシルちゃんが触ると
~♪
全員「っ!?」
「鳴った!鳴ったよ!?」
「き、気のせいだ。気のせい・・・もう1回・・・」
~♪
「・・・鳴ってるな。」
「異世界人だと鳴るのか?」
「ですが、兄様セリカさんは鳴りませんでしたよ。」
「確かに、アイリスの言う通りだな。・・・となると、シリル、1つ訪尋ねたいことがある。」
「は、はい。」
「お主の一族の中で行方不明になったか、原因不明な理由で亡くなった人物はいるか?」
「え?えぇっと・・・」
お兄ちゃんは、私たちとの血のつながりを確認したいようですね。
しばらく考えたところで思い出したらしい。
「あ!ありました!確か祖父の祖父の祖父の姉妹の息子さんが社会人・・えぇっと、成人してから数年目の頃に事故に遭って亡くなっています。」
凄い前のことをよくシルちゃんは知ってましたね。
「ほう」
「それだけだとそんなに珍しくないのですが、その事故を起こした方が言うには突然乗り物の操作が出来なくなったんだそうです。意識もはっきりしていてとても慎重な性格をしていたそうですから。・・とはいえ、その方は死ぬまでその子のお墓へ謝りに毎日お参りに来て、謝罪金として振り込みも欠かさず行なっていたそうですが・・。」
「ふむ、そうか。」
「その方について何か他に知っていることは分かるかしら?」
「確か、成績などは見本のように平均的で男性でも物腰の柔らかさや容姿に趣味が料理や家事洗濯だったこともあり女性にしか見えなかったそうです。」
{シルちゃん、その方の名前って分かります?}
「たしか月神朔さんだったはずです。」
っ!?
その名前って、私のステータスに乗っている人と同じです・・。
{その方について何か他に分かることはありませんか?}
「確か、ルナールというニックネームで呼ばれていたそうです。」
ルナール・・。
なんとなく都の名前にしましたが確かに私の頭の中で突然浮かんできた単語でした。
それも、初めて聞く単語のはずなのに聞き慣れた単語のようにも感じました・・。
私が目を見開いてフリーズしていることと私がぴくりと体を動かしたことですかさず察知したアルちゃんが心配してくれる。
「リア様大丈夫ですか?」
「・・・・」
様子がおかしいことにさすがに全員が気づき、心配してくれる。
「お嬢様・・体調が優れないようですのでもう休みましょう?」
リカルさんがそっとそう促す。
どう考えても他人のそら似のはずがありません。
ただ名前が同じでなんとなく思いついた単語と強い結びつきがあったこと。
それと、シルちゃんだけが私たち王族しか弾けないピアノが弾けた。
・・・よし
(フルフル)
{お兄ちゃん。私たちの祖先に先ほどの名前のどちらかで呼ばれている人物が関わっていたりしませんか?}
「ふむそうだな・・・・。兄上、何か覚えてますか?」
ちなみに、パパも一緒にいます。
「確か、ルナールという名前の女性が祖先にいたらしいよ。ネコの獣人で、かつては断罪者と呼ばれていた史上最年少のSSSランクの最強の人物だったそうだよ。」
断罪者・・
その単語も私のステータスにあります。
これはどう考えても関わりがありますね。
{シルちゃんがこれを弾くことが出来た理由がおそらく分かりました。}
「そうなのかい?リアちゃん。何か知っていることがあるんだね?」
パパがそっと聞いてくるので頷く。
{シルちゃん、おそらくその方は死んでこちらの世界に転生していたはずです。それと、私とシルちゃんは血の繋がりのある遠い親戚なんだと思います。}
「っ!?」
「え!?で、ですが、転生したのであれば血のつながりは亡くなっているはずですよ!?転移ではないのですから!」
{この場合、魂の繋がりと言った方が正しいのかもしれません。同じ魂を受け継ぐモノとして。}
「ふむ、その考えであれば十分あり得るな。」
「けれど、フリージアちゃん、どうしてそう思ったのかしら?」
{私がその月神朔さんの転生者だからです。}
全員「!?!?!?」
{正しく言うと、月神朔さんが転生したそのルナールさんの生まれ変わりですけど。}
ステータスに乗っていたこと以外情報がなかったので教会にある本とこのお城で保管してある歴史書で調べてみたところ、その事実が判明したんです。
正しく言うと、その2箇所で確認した結果、私が愛読している「勇者ミカンの大冒険」と言う本はその朔さんが書いており、しかも実体験を元にしたことだと確信に近いレベルの推測ですが、分かりました。
で、その本には本当に事細かに書いてあり、それぞれの人物についても全部繋がったんです。
ということを説明したところ、全員がどこか納得したという表情になってました。
{とはいえ、私自身朔さんでもルナールさんでもどちらの記憶もないのでステータスに載っていたからそうだと知った。その程度ですよ。}
「それで、今日まで話さずにスルーしてたんだね。」
苦笑いしているパパに向かってこくりと頷く。
「ですが、まさか俺が師匠と遠い親戚だとは・・」
「私たちの世界だと血の繋がった家族だと証明するには国に提出した資料か、DNA・・えぇっと、血のつながりしかないんですけど、こっちの世界だと魂の繋がりも証明するに値するのでしょうか?」
シルちゃんが複雑そうな顔になっている中セリちゃんがそう語る。
そこで、お兄ちゃんがそうだと頷きながら応える。
「あぁ。魂の繋がりがあるからこそステータスに載るのだ。その形は、フリージアのように称号として残ることもあれば、加護として残ることもある。特に有名なモノは、ワザに属性魔法だな。」
「ワザと属性魔法ですか?」
「あぁ。一族によっては代々受け継がれるワザもあれば、代々特定の属性魔法しか身につかない一族もある。それに、転生でも転移でもステータスに載ると言うことはそれが事実だ。」
「なるほど・・。魂の繋がり・・絆か強い想い、信念と言っても良い代物でしょうか。」
「それが近いだろうな。」
それから、落ち着いたところでシルちゃんに尋ねる。
{混乱してますか?}
「正直に言うとしてます。けれど、下手にこのことを話すのはやめた方が良いような気もしています。・・どのような形で師匠のことを利用する一手として悪用されるか心配で・・。」
{基本的に気にしないでいいですよ。あってもなくても変わりません。敵が来れば1人残らず殲滅するだけ。潰す理由が異なるだけですから。}
そう言うとシルちゃんは過激だなぁと言いつつも笑った。
「そうですね。これからもよろしくお願いします。」
(コクリ)
「と、そうであった。フリージアに報酬を渡したかったのだ。」
(?)
「例のマフラーだ。」
{魔法を込めたあのマフラーですか?}
「あぁ。」
{お金はきちんと頂いてますよ?}
全部じゃないけど。
一部は、相も変わらず寄付してます。
元々定期収入は安定してるのでいっぱいありますし。
「実はな。あのマフラーは、ハンカチ同様・・いや、それ以上に好評なのだよ。」
・・・なぜに?
「我が国の特産品になりかけているほど有名で人気も高いのはそうだが、常に清潔を保ち、温度も居心地の良い高さでいてくれる。このさりげない部分が特に我が国ではな。」
お兄ちゃんが言うには、お仕事で忙しかったりとドタバタしている人たちは体を動かすことになるので凄く暑いけれど、動かずに静かにその場で留まってお仕事する人たちだと逆に動かないから寒く感じるんだとか。
後は、常にきれいでいたいけれど時間もないし数時間おきにお風呂なんて贅沢をする手間も時間もない!って人とか。
他にも、常に暑いところや寒いところにいるようなお仕事をする人たちも厚着したり薄着になったり体を冷したり温めたりする魔道具を購入する必要もなくなるので凄く重宝されるんだそうです。
薄着に何か問題が?と思ったら、女性が薄着になると下着や肌が透けて見えたりするので色々とよろしくないので凄くありがたいそうです。
後は、女性が言うにはおしゃれとは我慢するモノとかで寒いのに短いスカートだったり暑いのに何枚も重ね着したりとかしてるそうですがそれに合わせることで我慢が減るんだそうです。
・・・そこまでしておしゃれって大事なのですか?
そう訪ねると全員が苦笑いしてました。
人によりけりだそうです。
「で、そう言う部分に気を使わずに済むようになったことで作業効率が上がったという声があちこちであってな。それで追加報酬を渡そうと言うことになったのだ。」
(?)
無難にお金ですか?
しれっと、寄付に横流ししようと企んでいたら予想外なモノが報酬でした。
「我が国を始め、他国でも好評により複数の国より技術を提供してもらい、我が国のトップの実力者達による歴史至上最高傑作であるこれを授けよう。」
そして、案内されたのは家のお城の地下空間でした。
そこにあったのは、乗り物でした。
今年も皆様には、お世話になりました。
年末までこの作品を読んで下さりありがとうございます。
来年もよろしくお願い致します。
・・と言っても1週間後なんですけどね。
数日後と言っても過言ではないのに来年と言うのは、幼稚園の頃から不思議だなと思っている作者です。