いろんなのが増えました
--シリル--
セリカの新たな獣魔となった巨大サソリのハルト
サイズはともかく色はさすがファンタジーと思う。
なにせ、黒っぽいわけではなく白っぽい真珠ベースで、光に当たると色んな色に輝くのだから。
ちなみに言うと、ハルトは喋らないが意思疎通は問題ない。
と言うのも、ハサミと尻尾によるジェスチャーで何が言いたいのかは大体分かるからだ。
そんなのがどうして共にいるかというと・・
「その前にシリル。お前の頭にくっついてるのは何だ?」
俺が回想を行なおうとしたところでカルナさんからストップがかかる。
「どうしたんです?」
「いや、確かにそっちも気になるが、お前にくっついてるのを先に言え。」
で、面倒になってスルーしてたんだが俺の頭の上には1羽の鳥がくつろいでる。
「途中から懐いたらしく離れてくれないんですよ、こいつ。」
一つの模様も柄もない純白の鳥は、見た目と大きさはライチョウそのもの。
ちなみに、頭からおろそうと掴むと抵抗せずにされるがままだったりする。
途中、セリカが目をキラキラさせてもふってたが、抵抗はなかった。
まぁ、しばらくしたらパタパタと飛んで俺の頭の上に戻ったが。
この鳥は・・野生をどこに置いてきたのだろうか。
ちなみに頼めば肩の上へ移動してくれるが、何も言わないと頭の上に戻ってくる。
「それ、雷鳥だね。」
「翠さん、そうなの?こっちでもそう呼ぶの?」
翠さんが教えてくれた。
そこで、セリカから質問が飛ぶ。
「何だ、そっちにもこれいるのか?」
「えぇ。魔法も魔力も何もないのでホントにただの鳥の1種なんですけどね。」
こっちのこれが、全く同じのただの鳥とは思いにくい・・。
なにせ、ファンタジー世界だし。
「端的に言うとそれ、妖精族だよ。」
マジか・・
「動物でもなく魔物でもなかったのか・・。」
「とりあえず、回想を語る前にギルドカードで確かめてからにするか。」
それもそうか。
ステータス。
ランク:E(二つ名=音の支配者)
名前:シリル・クニサキ
性別:♂
年齢:16
種族:異世界人
職業:軽業師、吟遊詩人
副職:絵本作家
称号:異世界に攫われし者、みんなのお兄ちゃん
属性:温度変換
体力:B
魔力:C
攻撃:B
防御:D
俊敏:B
練度:D
衣類:混合岩の装備セット(胸当て、肘当て、肩当て、籠手、臑当て、腰当て、ブーツ)、演者のヘアバンド
武器:吟遊詩人のミスリルソード(炎・氷)
装飾:クラリティ王国公爵家の証
攻撃技:【体術】【感情強化】
武器1:【剣】【短剣】【二刀流】
補助技:【アクロバティック】【虹色の声】【威圧】
自動技:【武器舞踊】【武器舞踏】【絶倫】
契約
【妖精】雷鳥:エクレール
雷鳥
姿形は純白のライチョウそのものだが、腰に着けるタイプの真っ白なポーチに変化することが出来る。
争いを好まないが、敵には容赦無用な性格をしている。
雷を巧みに操り、自身を雷そのものに変化させることも可能。
また、超大容量のモノの収納をすることが可能
※時間遅延などは出来ない
ランク:E(二つ名=砕破)
名前:セリカ・アマクサ
性別:♀
年齢:16
種族:異世界人
職業:武闘家、アイテムマスター
称号:異世界に攫われし者、ギャップ萌え、恋は盲目
属性:全強化
体力:B
魔力:D
攻撃:A
防御:D
俊敏:D
練度:D
衣類:魅了の下着、混合樹のローブ
武器:名無しの魔大剣
装飾:クラリティ王国公爵家の証
攻撃技:【体術】【魔力強化】【切断強化】【貫通強化】【硬度強化】
武器:【剣】【大剣】【棍】【棒】
補助技:【鷹の目】【合気】
自動技:【愛欲吸収】
契約
【魔物】ペルラスコーピオン:ハルト
ペルラスコーピオン
全身10メートルと、尻尾が10メートルある巨大なサソリで、ただの昆虫から魔物へと自力で進化している。
全身が白い真珠のような色をしているが、光に照らされると光に当たり方によって様々な色に変化する。
非常に頑丈であり、切れ味抜群のはさみと鋭さ抜群の針を持つ。
自身の速度は全力疾走の馬程度が平均だが、尻尾の動きはその10倍はある。
尻尾には、麻痺毒あり。
セリカは別として、俺はいつの間にこいつ・・エクレールと契約していたのだろうか。
ちなみに言っておくが、ギルドで既に獣魔契約は済ませてある。
と言うか、エクレール・・エクレで良いか、エクレは収納魔法が扱えたのか。
試しにと本を数冊収納してもらったところ、エクレの近くの空間でするりと消えた。
で、どれを出して欲しいと頼むとするりと出てきた。
時間停止だのと言うのはさすがに無理らしいが、荷物がかさばらずに済むのは凄くありがたい。
と言うか、雷そのものになれるとか・・凄いな、どこかのタイミングで見せてもらおう。
それと、エクレは「にゅい」と鳴く。
凄い個性的な鳴き声だと思う。
それと、ハルトの方だが、ハディさんと同じポジションになるみたいだ。
けど、見た目と違ってかなり器用らしく石のブロックを渡してみたら動物を彫刻作品として作り出していた。
と言うか、昆虫から自力で魔物になったのか・・。
と言うことは、そんじょそこらの奴よりも強いのは確かだよな?
確か、翠さんから以前教えてもらったことでそういうのを聞いたし。
動物や昆虫などから魔物などに進化することが稀にあるらしいけど、そう言う個体は生まれつき魔物の個体よりもずっと強い個体が多いのだと。
と言うより、セリカに二つ名が増えている。
名前から察するにセリカが大剣を使っていることと、武器を扱わずとも十分強いのは師匠を経由して有名だし、依頼先でもその実力は良く目撃されている。
その辺りからセリカ自身の戦闘タイプが接近戦のパワーメインの重火力タイプとしっかりと認識され、そんな感じの名前になったんだろうな。
それに加えて、ハルトが加わったことでそれらの噂というか話しに拍車がかかったんだろう。
まぁ・・女性という点を考えるとやけに男前な二つ名でショックだったりするかと思いきや本人は格好いいとのことで気に入っているようだ。
・・その辺りは普通の女の子とは感性が異なるようだがあえてスルーしておこう。
うん、とりあえず回想を始めよう。
前日、多めに勉強をしていたこともあり、その日は朝から依頼を受けに出掛けていた。
「さて、何を受けようか。」
「どうせなら師匠にお土産渡せるようなのが良いよね。」
「なら討伐か採取・・んー、いっそのこと両方出来そうなのがあれば良いな。」
「やっぱり、食べ物が良いよね?」
「だろうなぁ・・。」
師匠は無口(念話で話してるけど)無表情だが食べているときは比較的表情が柔らかい気がする。
表情と言うより纏う雰囲気?
それに、大食いだし食べるのは好きなんだろうと思う。
「あ、あの!!」
「ん?」
ギルドで依頼を適当に探していると後ろから声をかけられた。
振り向くと、俺等より微妙に年下らしき女の子が3人いた。
「お兄様ですよね!?」
「・・・初対面だと思うんだけどなぁ。」
少なくとも俺は一人っ子だ。
呼ばれ慣れてるけどさ。
「あ・・すみません、つい。・・コホン、シリル様ですよね!?」
「まぁ、確かに俺はシリルだが。」
「そして、お姉様・・ケホン、セリカ様ですよね!?」
「え・・えぇ・・・私はセリカですけど。」
軽く引き気味になってるセリカの返事が微妙にぎこちない。
まぁ・・そうだろうなぁ。
社長令嬢とは言え、かしこまった態度の相手はそこそこあるが、今回のように小動物オーラ全開で目をキラキラさせてホントに幸せそうと言うかうれしそうに声をかけてくるなんて経験は少なくともセリカにはない。
尻尾があれば間違いなくご機嫌に振ってるだろうなぁと思いつつ眺めてる俺は正直慣れてる。
・・何せ、俺を慕う年下連中のほとんどがこんな感じだったし。
その中には、年上も混ざってたけど深くは追求せずにスルーしてたけどな。
とはいえ、俺はお兄様と呼ばれ慣れてるが、セリカに対してお姉様と呼ぶメンツを少なくとも俺は見たことも聞いたこともない。
あっても様付けくらいだ。
ちなみに、俺はこっちの世界に来てから結構な頻度で歌ったり劇をしたりしているがそれの影響か俺を慕う人たちは増えており、それを経由してセリカを慕う自称妹も少しずつ増えてたりする。
そのたびにセリカは俺はセリカのモノ宣言をして威嚇しているんだが、最近は・・と言うか、自称妹メンツ曰く、セリカのポジションである嫁枠を狙っているわけではなく、俺の妹兼セリカの妹枠を狙っているらしい。
と、自称妹たちから断言された。
・・地球だと彼氏彼女枠の奪い合いで凄くカオスだったが、こっちだとほのぼのしているというか、妙な方向で仲良しというか・・まぁ良いか。
師匠を見習ってスルーしておこう。
俺は気づかなかっただけだうん。
「それで?何か用かい?」
とりあえず、柔らかくほほえみながら軽くしゃがんで目線をあわせて話を聞く。
頭1つ分この子低いんだよなぁ。
とは思ってるとみるみるうちに顔が赤くなっていく。
おぉ。
ここまではっきりと赤くなっていくのをみるのは初めてかもしれない。
大抵は最初から赤かったし。
「え、えと・・あの・・その・・」
「ソレイユ・・落ち着きなさいよ・・。」
「あうあうあう//」
顔を真っ赤にしてあうあう言いながらわたわたしてるその子をなだめる子が1人。
「家のソレイユが申し訳ありません。改めて私たちイデアールと言う名前のパーティを組んでいます。私はリーダーのアマルと言います。こっちであわあわしているのはソレイユ、こっちの物静かな子がシュテルです。」
最初に俺に声をかけてきた子が、癖のある茶髪の髪を肩の上まで伸ばしてる槍を持った子がソレイユ。
その子をなだめているのが青い髪を肩を越すほど伸ばしている杖を持っているアマル。
で、俺に抱きつくセリカに抱きついてる赤い髪を背中の真ん中まで伸ばしている本を抱えた子がシュテルか。
・・なんでシュテルはセリカに抱きついてるんだ?
まぁ・・良いか。
「シュテルがすみません・・」
「いや、構わないけどこの子どうしたの?」
「あぁ・・本能で気に入った同性を見つけるとそうやって抱きつくんです。・・それ以上もそれ以下もないんですけど。」
本能・・・この子獣人とかじゃないのに動物っぽいのか。
で、百合の国の民でもないと。
「じゃあ、好きだから抱きついたとかではなく純粋に気に入ったからとりあえず抱きついただけと?」
マーキング?と思ってしまったのは俺だけだろうか。
「はい・・。気が済めば2回目はないんですけど・・そうなるまでが長いんです。」
アマルは苦労を抱えるタイプらしい。
ちなみに、ソレイユはあわあわしているのは落ち着いたモノの、今は自分自身の行動に恥ずかしくなったのか頭を抱えて小声でキャーキャー言ってる。
「はぁ・・ソレイユ、いい加減に落ち着きなさい。」
「うぅ・・だってぇ・・。憧れのお兄様が目の前にいるんだもん。なのに私ったらあんなに大胆なことをぉ・・うぅぅ//」
「気持ちは分かるけど、いつまでたっても先に進まないでしょう。」
「うぅぅ//」
あがり症なのだろうか・・何だろうなぁ。
とか思っているとアマルはソレイユを抱き締めて頭を撫でた。
しばらくするとソレイユは落ち着いたらしい。
姉と妹だな。
「し、失礼致しました。」
「気にしないでいいよ。それで早速だけど本題を聞いても良い?」
「はい。もしよろしければ依頼をご一緒出来ないかなと思いまして。」
「俺等と依頼を?」
「はい。・・と言うよりも、私たちよりも圧倒的に強いのを見込んで護衛も兼ねてご教授頂ければなぁ・・と言うのが本音です。今回の依頼で採れる分は全て差し上げますので。」
「セリカどうする?」
俺としては問題ないが。
「私も構わないよ。シリルに任せる。」
「あいよ。分かった、受けるよ。けど、その報酬はいらない。君たちと楽しい思い出を俺たちと作ってくれればそれだけで十分だよ。」
「きゅー//」
「はぅ//」
「・・・//」
3人ともなぜか顔が赤くなった。
1人放心・・というか意識を失いかけてる(と言うより昇天?)が・・大丈夫か?体調不良?
それと、シュテルはいつまでセリカに抱きついてるんだ?
で、抱きつかれてるセリカはなぜか嬉々としてシュテルを撫で回しているが・・まぁ良いか。
と言うよりなぜだ?
本音を言っただけなのに。
「シリル・・ハーレムでも作る気なの?」
「そんなつもりはないぞ?ただ本音を言っただけだ。思い出は楽しい方が良いだろ?」
「そうだけどさ・・シリル・・その台詞どう聞いてもキザだよ?すっごいナチュラルだったから違和感ないけど。」
かっこつけたつもりはないんだけどな。
報酬を丸々もらうのは気分が悪いし、誰だって楽しい思い出にしたいと思うだろ?
で、君たちはなぜにセリカの台詞にうんうんと頷いてるのかな?
おまけにそれを聞いていた周囲のメンツ含めて。
「そうか・・とりあえず、道中で採れた分は人数できれいに等分する。」
「は、はい。」
「それで、何を受けるつもりだったの?」
「はい。ミートマンが大量発生しているそうなのでその討伐です。」
ミートマン
お肉で出来た最低でも身長10メートルの人型ゴーレム。
肉の種類とサイズは個体によって異なるが、打撃系の攻撃に非常に強い耐性をもち、力が非常に強い。
獲得部位:魔石、肉(種類は個体によって異なる)
「確かに君たちだけじゃ厳しそうだね。」
「そうなんです。」
だとしても、Eランク相手がどうにかなる相手なのか?
確認すると出来はするらしいが、それでも1体倒すのにEランクが5人くらいは必要なようだ。
ギルド的には、こいつをきちんと危なげなく倒せるようになればDランクの実力はあると判断されるらしい。
ミートマンが発生したことで下手に村から外に出ることが出来なくなったんだとか。
こいつらは、とても狂暴らしいので近くにある障害物は何であろうと破壊しようとするらしい。
しかも依頼報酬は1パーティ銀貨5枚と今回の依頼内容を考えると少ないような気もする。
で、丁度受付にいたアリスさんに受けるついでに聞いてみた。
「あぁ、これですか。報酬は出そうにも依頼主の懐がかっつかつなんだそうです。一応頑張ってみたそうなんですけど、被害をこれ以上でないように抑えるので精一杯のようです。」
どうやら、自力でどうにかしようにも限界で、結果としてこの値段が精一杯のようだ。
おまけに、ミートマンがいることを利用してツリージャイアントが住み着き、そいつらが大量に水を吸収してしまうため、村の大事な水源が枯渇しそうになってるんだとか。
ツリージャイアント
樹高50メートルはある木の巨人。
地中に根を張っているため身動きはそれほどとれないが、枝や根を使って攻撃したり、葉を飛ばし、相手を斬り刻んでくる。
獲得部位:魔石、魔核、木材、グロウフルーツ、グロウフルーツの種
グロウフルーツ
食べ頃になるとキラキラと淡く光るフルーツ。
見た目は、リンゴや梨のような感じで、大きさは晩白柚ほど。
その味は、一生のうちに一度は必ず食べておきたいと強く願うほどの一級品。
ただし、ツリージャイアントになる果物のため、ツリージャイアントを倒さなければ獲得出来ず、膨大な量の水が必要とされる為、過去にグロウフルーツを人工的に育てるため、ツリージャイアントを一部で隔離し育てた結果、その場にあった直径数キロの湖の水が完全に枯渇したことがある。
ツリージャイアントからしか採れないグロウフルーツだが、グロウフルーツを育ててもツリージャイアントにはならず、と言うか魔物にすらならない。
だから、普通の果物がなる木になるわけだ。
とはいえ、その場合ツリージャイアントから採れたモノよりも味のランクはいくつか落ちるらしい。
だといっても、ランクは落ちても絶品なのは間違いないため、安全に採取出来ることを考慮するとグロウフルーツの種は非常に高く売れる。
だが、育てるのが凄く大変らしい。
土の養分が膨大に必要なのに加え、水も他の植物と比べても十倍ほどは軽く必要なんだとか。
それらの量や質によって味が大きく左右されるのだとか。
おまけに、それを狙う生き物(魔物や野生動物など)は非常に多い。
追加で言うと、それらを盗もうとする輩もそうだ。
そのため、扱う人は上級者向け扱いらしい。
それで、この子たちは放っておくことが出来ず受けようとしたものの自分たちだけではせいぜいミートマン1体を倒せるのが精一杯。
そこで、同じランクでも実力が確かな俺たちに協力を要請したらしい。
ちなみに今回の依頼に関してはEランクになっているがほとんどDに近いらしい。
まぁ、今回の依頼に関しては全滅は出来なくてもせめて数を減らして欲しいという感じらしいが。
「そういうことでしたら、受けます。頑張ろうな。」
「はい!」
「よろしくお願いします!」
(ぺこり)
そうして俺たちは、彼女たちが故郷から持ってきていた馬車に乗って向かった。
ちなみに今回の依頼は、彼女たちだけだとアリスさんは依頼を承認しなかったらしいが俺たちがいたから承認したようだ。
それでこの子たちは俺に声をかけてきたのか。
それと、セリカに抱きついているシュテルだが村に到着する頃になってようやく離れたのは余談。
その村には馬車を走らせて3時間ほどのところにひっそりとあった。
本来ならばほのぼのとした村があるはずが、村を囲う塀はボロボロで、周囲の地面がボッコボコだった。
で、村の中だが見た目的には無事だったが疲労困憊な人たちや怪我をして満足に動けない人が凄く多かった。
「このような依頼を受けて下さってありがとうございます。私は村長のオスタムと申します。皆様は、受けて下さっただけでも凄くありがたいです。ですので、ムリをしてミートマンを討伐せずとも塀の強化か補強をして下るだけでも十分です。もちろん少ないですが報酬はお渡し致しますので。」
凄く細い人だ。
と言うか、凄くヨロヨロだった。
まさしく疲労困憊だが依頼をかけた本人だからと言う思いで無理矢理動いてるような感じに見える。
凄く心配してくれるのは嬉しいが、他人を心配する前に自分自身のことを心配して欲しいと思う。
「もちろんムリはしませんよ。ですが、実力には自信がありますので出来る範囲で対応します。」
一応俺が年上だったからこのメンバーの仮リーダーとして動いた。
「ありがとうございます。」
とりあえず俺たちは、村人たちの治療から始めることにした。
シャスティさんお手製の栄養剤の団子と同じくシャスティさんが調合した回復薬や傷薬を惜しみなく村人全員に使った。
イリスさんがいつもよりも大量に持って行った方が良い気がするという助言を信じて、ものすごくエグい量を持ってきたがホントに役立った。
イリスさんは予言者という二つ名を持っているらしく、その由来は今回のような助言というかアドバイスがまるで未来が見えているかのように的確だからという理由らしい。
それを目の当たりにしてあの人のすさまじさを改めて実感した。
と言うか、シャスティさんは猫だがとんでもなく器用だと思う・・猫お手製の薬がそこらの人たちが作るのよりも効果が高いんだから・・。
ソレイユは土魔法が得意らしく、塀の補強を行なった。
他にも堀の外側の周囲をクルリと囲うようにトラップを色々と仕掛けた。
それと、堀には返しも取り付けた。
トラップは定番だが落とし穴だ。
何もしないよりは安全性は高まるだろう。
水魔法を扱うアマルが飲み水を魔法で用意したり、火魔法を扱えるシュテルと協力して巨大風呂を用意して村人たちを癒して回った。
で、一通り落ち着いたところで俺たちは一休憩し、ミートマンたちがいる場所まで行こうとした。
その頃になると村人たち全員から拝まれるようになってしまった。
・・俺たちは見なかったことにしたが、セリカがぽつりと
「普段の師匠のスルー力のすさまじさを実感した。」
とつぶやいてた。
うん・・アレは何かしら反応しないと駄目なのかとか思うし、頑張ってスルーしようにもどう反応して良いのか分からなくなるがアレを完全スルー出来る師匠はやっぱり凄い・・色んな意味で。
とりあえず、ムリしないでくれと告げてそそくさと逃げ・・コホン、ミートマンたちのもとへ向かった。
で、村の人たちが俺たちを信仰対象として拝んでたのはなかったことにして教えてもらった場所を遠目で確認する。
「セリカ、どうだ?」
「うんいるいる。すっごいうじゃうじゃ。まるで巨人の村みたいにうじゃうじゃいる。おまけに中央に・・と言うよりも小さなでっかい森を取り囲むように巨人の村があるってイメージが合ってるかも。」
「なるほどな。良い感じに共存してるんだな・・今回は良くないが。」
どうもグロウフルーツをミートマンが食べる代わりに守ってもらうみたいな感じっぽい。
にしても、どれもデカいな。
「3人ともいけるか?」
「えと・・すっごく申し訳ないんですけど私たち3人がかりでミートマンを1体ずつ対処するのでいっぱいいっぱいだと思います。」
「なるほどな。とはいえ、真面目に真正面からやり合わなくても良いんだけどな。」
「そうなんですか?」
「あぁ。俺等は特攻するが、3人はトラップを仕掛けたりしてくれれば良い。倒せるなら倒して構わないが基本的に動きを封じたり鈍らせる方面メインで動いてくれた方がこっちも楽だ。とはいえ、ムリはするな。やばそうなら俺等のことは放置して逃げろ。俺等だけならあいつらに囲まれても逃げるくらいはたやすい。」
「ホントだよ。いつも師匠や魔術師団の皆さんやイリスさんたちにみっちりと鍛えてもらってるから。・・むしろあのくらい出来ないと師匠の弟子として情けないと思うし。」
セリカの台詞に3人は納得した。
最後にセリカがぽつりとつぶやいた内容には俺も賛同する。
まぁそうだよな。
実力主義な大国でもダントツトップの天才メンバーに囲まれて惜しみなく鍛えてもらってるんだから弱いことが”あり得ない”。
「はい。精一杯出来るところまで頑張ってみます。」
「あぁ、それでいい。」
それから俺たちの戦いは始まった。
彼女たちは戦闘と言うよりも俺たちのフォローと敵の動きを阻害する方面をメインに行なうことになった。
アマルとソレイユの連携によって土をぬかるませて動きを阻害させ、シュテルによって目つぶしを行なっている。
で、俺たちは彼女たちにはムリしないように言っているため、とにかく安全圏をとることに集中させた。
彼女たち自身の実力であれば3人でミートマンを1体は討伐出来るだろう。
だが、今回はミートマンがものすごく大量にいるのに加え、ツリージャイアントもいるので1体に集中出来ないため、このようなことになっている。
最初は1体だけおびき寄せて・・とかも考えたが、1体が動けば全部が動くと言う非常にはた迷惑なことをしてくれるのでそれどころじゃなくなった。
俺は駆ける。
俺の魔力に染まったミスリルソードを振う。
ミートマンの1体が俺に向かって殴りかかってくるため、懐に潜り込むように躱し、腕を斬り、太ももを斬りながら後ろ側へ潜り込み、アキレス腱を斬って相手の体勢が崩れたところを狙って首を切り落とす。
実戦で本格的に剣を扱うのは実は初めてだ。
確かに戦ったことも使ったこともあるが、いつもはこいつのような筋肉だるまのようなモノではないので、体術で砕けるような類いばかりだった。
それに、
「せいやぁっ!」
セリカが黒い大剣を薙ぎ払うように振い、3体のミートマンをまとめて胴体を上半身と下半身で真っ二つに斬る。
さすがだ。
純粋なパワーであれば、セリカはダントツだ。
おまけにあの大剣との相性も抜群に良いため、よりセリカの一撃の威力は高まる。
それと、俺の扱うミスリルソードも切れ味は抜群だ。
毎日1~2回ほど俺の歌をねだってくる不思議な剣だが、そうしているうちに徐々にこいつの扱いがたやすくなっていくような感じになる。
息をするように自然と体に馴染んでいく。
っと、考え事をしている場合じゃないな。
そうしているうちに次のミートマンが襲って来た。
俺は、体勢を低くしながらそいつの両足を斬り、心臓部分を後ろから突き、そのままもう1つの剣で俺を死角から襲ってくるミートマンの首を切り裂く。
だが、切り裂いたそいつの後ろから更に数体襲ってくるから身体強化で脚に魔力を込めて高くジャンプし、そいつらを飛び越しながらまとめて首を切り落としていき、着地地点近くにいるそいつらへ上から下へまっすぐ2体同時に切断する。
いいね。
思うように体が動く。
思った以上に剣が俺の動きに応えてくれる。
さあ
次はどいつだ。
--アマル--
ソレイユの暴走のおかげ?で、憧れのお兄様と依頼を受けることになった。
ソレイユは軽い暴走癖があるのが、小さい頃からの幼馴染みとしてちょっと不安がある・・というより、それに毎回振り回されてる。
その相手をしている内に、気づけば幼馴染みと言うよりも妹のような扱いになってるのはソレイユには内緒。
まぁ、周囲の人たちにはバレバレみたいらしく、微笑ましい表情でみられることもしばしば。
おまけにシュテルもシュテルで似たようなモノだからか、お兄様には苦労人をみるかのような大変そうだなと言う応援するかのような表情を頂いた。
お兄様が、音の支配者という二つ名で呼ばれるようになった頃に偶然お兄様の歌を聴いて私たち3人はお兄様のファンになった。
歌声もそうだけど、歌っているときの内面から輝いている姿に憧れた。
あんな風に、楽しそうにしている姿に憧れた。
私は、お兄様のような心の底から笑えるような人生を送りたい。
そして、一緒に受けることが出来たのは良いけれど、ソレイユはソレイユで自身の暴走に身悶えてるし、シュテルはシュテルでお姉様に撫で回されてご満悦だし・・はぁ。
まぁ・・私は、お兄様と同様にお姉様のようにもなりたいと思っている。
どこまでもまっすぐで美人なお姉様のように強く美しくありたいと思う。
どうしてお兄様お姉様と呼んでいるかというと、私たちもシリル親衛隊の一員だからです。
お兄様、お姉様の素晴らしさに憧れ、その輝きを目指して日々邁進するんです。
それに、お兄様をお兄様以外の名で呼ぶ候補なんて存在しません!
あのお方以上にお兄様は存在しません!
世の兄を欲する者たちみんなのお兄様なんですから!
コホン
で、そんなお二人は冒険者となって日が浅いとはいえ、お二人の師匠によって実力は見事にランク詐欺状態。
まぁ、師匠はあの魔鏡姫であり、この国最強の魔法の天才、フリージア様なんだから当然と言えば当然。
そのフリージア様は見た目詐欺筆頭だけど。
あんなにかわいくて清楚な感じなのに一度敵認定されたらきれいに反転する。
何と言うか行動とか性格とか表情とか。
けれど、そのおかげでお兄様たちと依頼をこうして受けることが出来たし、フリージア様がいるからこそこの国は穏やかで幸せな日々を送ることが出来る。
あのお方は存在するだけで最高の癒しだから!
・・コホン。
で、今回の依頼で向かった村の皆さんは見事に色んな意味でボロボロだった。
そして、お兄様がフリージア様のお父上であるイリス様に持たされたらしい調合薬のお団子などを配って回ったりしたおかげでものすごく体調は良さそうだった。
私たちはお風呂を作ったり柵を直したりトラップを仕掛ける程度で対したことが出来なかったけれど、お兄様からは
「どんなに小さなことでも何も行動しないよりずっと素晴らしいと思うよ。それに慌てる必要はない。慌てて失敗するくらいならゆっくりでも確実に前に進んだ方が良い。急ぐときほど慎重にだ。」
凄くありがたいお言葉を頂いた。
凄く納得したし、今後の私のモットーにしようと思いました。
そして今、シュテルとソレイユと連携してミートマンたちの動きを阻害してるんだけど・・・
「お姉様もお姉様だけどお兄様・・予想以上に強い。」
「・・同感。お姉様の一撃の威力もだけど、お兄様の連続攻撃も規格外。」
「アレで、エトワールファミリーの中で最弱って、さすが正義に染まる国だわ。」
お姉様はパワーメインの重火力タイプだとは聞いてたけど、あの重そうな黒い大剣をたやすく片手で振り回して数体まとめてミートマンを斬り飛ばしつつもかなり速い速度で動き回ってることにも驚きだけど、
お兄様はお兄様でホントに無駄がない。
腕や脚の関節や筋を狙い、心臓や首など生物としての急所部分を的確に潰してる。
おまけにお兄様の身軽さと素早さによって連続攻撃がどんな体勢でも繰り広げられていてまさしく縦横無尽。
ジャンプして飛び越えつつ斬り飛ばし、1体を斬っている間に体を回転させて他の1体を斬る。
更に、空中で回転してたっぷり威力を込めたかかと落としを首の後ろ側からたたき込んだりと・・お兄様は剣以外でも万能なんですね。
それと、
「お兄様のワイルドな笑みも素敵//」
「・・格好いい」
フリージア様も戦闘時は非常にワイルドな笑みを浮かべていると噂で聞いたことがあるけれど、どうやら弟子であるお兄様にもその特性は浸透したらしい。
けれど・・気のせいかな?
「お兄様の剣から光の粉っぽいモノが見えるのは気のせいかしら?」
お兄様が扱う剣は若干短く、赤と青がマーブルに染まった非常にきれいな剣。
その若干赤の割合が多い方からは深紅の光の粒子が
青の割合が多い方からは蒼い光の粒子が溢れている。
「・・多分あの剣がお兄様の気持ちに応えてるから、あぁしてお兄様の魔力が溢れてるんだと思う。」
「シュテルどういうこと?」
「・・多分アレ、ミスリルソードだと思う。」
「アレ?ミスリルってあんな色だったっけ?」
色が染まったミスリル?
・・まさか。
「お兄様は、ミスリルに選ばれた存在ということですか?」
ミスリルは人を選ぶという噂があったけど本当だったんだ・・。
ミスリルに選ばれた存在は魔法・・と言うより魔力を扱う全般全てが非常に強くなるんだとか。
ミスリルに選ばれているか否かで1.5倍か下手すれば2倍は差があると言われるほど。
「・・それに違いないと思う。だから、魔剣に近い存在になってるからこそお兄様の気持ちに応えて剣がお兄様の魔力を強めてるんだと思う。」
「じゃあアレは、お兄様への気持ちに応えるために?・・光ってるだけじゃないの?」
「・・光ってるだけじゃない。あぁしてはっきり目に見えるほどの威力にお兄様の魔力は高まってると言うこと。多分お兄様の魔法は炎と氷の2つの属性。」
「お兄様は2属性持ちだったんだ!」
属性を複数持つ存在は非常に珍しいこと。
お兄様はその中でも真反対の2属性持ちだから更に珍しい。
「じゃあ、それだけお兄様は凄いってことだよね!」
「・・そう。だから私たちもお兄様たちのために頑張る。」
「そうね。出来る範囲で全力で挑みましょう。」
気になる部分は細かいところを含むと色々あるけれど、詮索は失礼だし、ソレイユの言う通りお兄様だから凄い・・これで十分よね。
お兄様のすごさを改めてお目にかかれて非常に嬉しい。
だから、その気持ちを今後の目標と掲げて今を生き抜くために頑張る。
作者の最近のお気に入りは、
大判コミック「あっちこっち」
一応アニメで1クールほどありましたが、個人的にはコミック側の方が好みでアニメの方はちょっと今一・・。
タグ付けするなら
「学園」「ほのぼの」「ニヤニヤ」「恋愛」「ギャグ」「ツッコミ満載」「じわじわと恋愛要素増加」「ネコ」
最新話になればなるほど徐々にじわじわと恋愛要素とニヤニヤ要素が増していくところが作者の好み。