学園再開
--フリージア--
異世界人のシリルさんとセリカさんを拾って私の弟子となりました。
彼らの成長速度に驚きつつも、彼らが持つ属性の魔法がどのように変化していくか楽しみにしています。
そして、彼らは私が学園でお勉強している間はカルナたちと勉強したり特訓をしつつ、依頼を受ける日々を過ごしています。
私を始め、ルナールの都人たちが総勢で色々と仕込んだから依頼主さんからの評価はとても良いとアリス姉さんは言います。
「やぁ、みんな久しぶりだね。フリージアさんたちは色々と大変だったみたいだね。」
ネルさんが苦笑しながらそう語る。
「ネルさんも皆さんもお久しぶりです。」
{お久しぶりです。}
「お久しぶりです。皆さんはいかがでしたか?」
「俺等はみんな実家の手伝いでドタバタしてたなぁ。」
ジャンさんたちはみんな実家に帰っていたんでしたね。
お家のお仕事のお手伝いで大変だったみたいです。
「んで、フリージアたちは何があったんだ?」
で、何があったか教えました。
ちなみに、シリルさんとセリカさんの2人に関しては、異世界人だという事実は隠すと言うことになってるのでその部分だけを伝えてません。
つまりは、通りすがりに助けて故郷に帰れないとのことで家で面倒をみることになったとだけ言ってます。
嘘はついてませんしね。
ちょっと故郷が次元を越えてるだけですし。
で、全員が口をポカンと開けたまましばらくフリーズしました。
それから復活したかと思うとなぜか頭を抱えてる。
なぜに?
「いや、フリージアさん?かわいく首をかしげてるけどものすごい大きなイベントに巻き込まれすぎじゃないかな?」
「嬉しくないイベントだな・・。」
{ですが、雑魚ばかりでしたし、私自身探索をちょっと頑張っただけですよ?}
「うん・・そうなんだけどね?それ、ちょっとじゃないからね?」
(?)
「あぁ・・まぁいいや。それはさておき、噂に聞く音の支配者はフリージアさんの身内だったんだね。」
「リクトさん、音の支配者って何ですか?」
「アレ、知らない?ふらりと現れた吟遊詩人の話で、その彼は男性だろうが女性だろうが、どんな声でも発することが出来る七色の声の持ち主って話し。」
「あぁ、シリルさんの得意技だ。」
「実際に色々と演じてもらったんですけど、ホント凄いですよ?幼い女の子の声も、大人っぽいクールな女性の声も、ワイルドでがさつな男性の声も、おどおどして控え目な感じの男性の声も、幼い男の子の声もどれも一切違和感を与えないレベルで出せるんですよ。」
「それは凄い。」
「それに、凄く身軽なんですよ。」
「戦闘法がってことかな?」
「はい。その場でバク宙も軽くこなせて、空中で回転して威力をたっぷりとのせたかかと落としとか普通に魔物相手に食らわせてましたし、剣を2本扱った二刀流もわずか数日でかなり違和感がなくなってきましたし。」
「へぇ。で、その彼は今何を?」
「許嫁のセリカさんと2人で経験を積み重ねるためにとにかくたくさんの依頼をこなしてます。その隙間でカルナさんたちに色々教わってます。」
「カルナさんたちに教わってるのかぁ。」
「それなら安心だ。」
そんな感じで午前中の授業(自習ですけど)は終わり、お昼を挟んだ後の午後の訓練の時間はシリルさんに教わったことの確認と検証を行なってました。
それは、【心の歌】の威力や発動範囲などです。
周囲には音消しの魔道具を複数配置しているので音漏れの心配はないです。
・・それを施さないと駄目ってセイちゃんとユウちゃんに言われちゃったんだもん。
様々な感情や気持ちを込めながらいろいろな歌を歌う。
歌詞を入れたり入れなかったりもしてみた。
で、翠ちゃんとラナちゃん、セイちゃんとユウちゃんにも協力してもらいました。
感情によって癒しを促すか、敵対者を害するか等の歌の方面が決まる。
この辺りは、この技を手に入れた頃から知っていることですね。
そして、歌詞の有無。
歌詞については、シリルさんの教えによって歌詞を加えて歌うことも可能となった。
それに関しては技の効果によって喉に負担はかからない。
で、歌詞があることでより技の効果は高まるようです。
どうやら歌詞という言葉があることで感情が高まりやすいようです。
次に気持ち
これまでは、気持ちを込めずに感情の赴くままに歌っていた。
だから、癒し効果があっても精神的限定だった。
守りたいと願って歌うと守ろうとする動きに無駄がなくなった。
戦いたいと願って歌うと敵に挑むときに気持ちが高まり、士気が上がった。
癒したいと願って歌うと癒しの力・・つまりは回復、または治癒の魔法の威力がささやかながらに向上した。
眠りを促すように子守歌を歌うとウトウトし出す人が多かった。
これらの気持ちを込めながら歌詞の有無を確認するとやはり歌詞があった方が威力は高かった。
とはいえ、これらの効果は歌詞の有無で数パーセントで、気持ちの有無で上がる威力は高くても1割未満。
ホントにささやかでさりげないモノでした。
それを考えるとシリルさんの【虹色の声】は凄いですね。
アレ、1~2割は上がりますからね。
どの方面でもです。
回復や治癒の向上から、魔法の攻撃威力に身体能力の向上まで。
しかも、回復や治癒は、それらの魔法の威力はもちろん、自身の自然回復、自然治癒の速度を速めることも出来るんです。
彼は、これからもっと強くなりますね。
今は、自身の属性の魔法を攻撃に転用する為に色々検証しているようですが上手くいかないようです。
私は彼とセリカさんには自分自身に限界を決めるなと伝えているだけですが、おそらく彼に足りないのは感情の強さ。
一度彼は感情を爆発させないといけないんだと思います。
そこで初めて彼の魔法の真価が発揮されます。
一度発動してしまえば後はコツをつかめるのでかなりスルッと扱えるようになります。
・・おそらく彼は自分の感情を表に出せてはいても全てを吐き出す・・つまりは感情を爆発させたことがないのでしょう。
そのせいで自分に蓋をしてしまっている。
それが、彼の魔法が攻撃に転用出来ない理由。
まぁ・・私は人のことは言えませんけどね・・同じようなモノですし。
ちなみに、これらの検証を一通り済ませ、帰宅する頃、セイちゃんとユウちゃんは私の歌を聴き過ぎて蕩けてました。
--シリル--
師匠とセイちゃん、ユウ君が学園に通っている頃、俺とセリカは冒険者として依頼を受けていた。
カルナさんとシャスティさんたちによる特訓と勉強は済ませてある。
「あら、お二人ともいらっしゃいませ。」
ギルドへ行くとアリスさんがいた。
そういえば、この国の次期ギルドマスターになる予定だって聞いたな。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
相変わらずきれいな人だ。
表情は師匠と比べると豊かだが、他の人たちと比べると表情の変化は薄い。
それ故にクールな印象に見えるが実際は優しくて穏やかな人だ。
「お二人はカルナさんたちとのお勉強は終わりですか?」
「えぇ。シャスティさんたちとの特訓も終わり、早めの昼食も済ませた後ですよ。」
ちょっと余談だが、リカルさんのことを俺は少々勘違いしていた。
穏やかで真面目な人だと思っていたが意外とお茶目な人だった。
あの人が料理を作るとなぜか立体的な芸術品になっていたからだ。
なぜ、鳳凰みたいに神々しい鳥だったり威風堂々としているドラゴンとかファンシーな動物を複数と料理だけで作り上げてるんだこの人。
確かにおいしかったし、芸術品としても一級品だったけどまさかアニメでしかみないようなレベルの芸術品な料理を食う羽目になるとは思わなかったぞ。
ちなみに、セリカはとても楽しそうにはしゃいでいた。
「本日は依頼を受けますか?」
「えぇ。その予定です。」
「でしたら丁度お二人にぴったりな依頼が来ていますよ。」
「どんなのですか?」
そうして見せてもらったモノはこんなのだった。
依頼内容:共同訓練の参加&演奏または演劇の開催
依頼条件:事前確認により、参加の可否を確認する必要あり
※共同訓練参加が可能な吟遊詩人がいた場合、報酬の上乗せあり
報酬:金貨3枚
依頼のランクが書いてないってことは、どのランクでも良いってことか。
「どうして俺たちに?他にも俺等より優秀な冒険者が喜んで飛びつきそうですが。」
報酬金額も凄く良いし。
「そうなのですが、ただの脳筋には興味ないそうですから。」
「脳筋って・・。」
「実はこれ、この国の上位の方々からの依頼で、体を動かしたいからその相手をして欲しいそうなんです。」
「それなら、この国の騎士の方とかイリスさんとか良さそうじゃないですか?」
この国の騎士は凄く優秀だって聞いてるし、イリスさんも貴族であり、冒険者だ。
依頼として頼んでも良さそうだが。
「そうなのですが、やはり自身より上位の方にそれを頼むのは申し訳ないそうなんです。それに、この国はご存じの通り位が上であればあるほど優秀です。とはいえ、他の冒険者は腕が立っても身なりや態度などはあまり貴族様向けではありません。」
「あぁー、確かに。」
確かに、礼儀態度もわきまえているのに加えて腕も立たないと相手にならないだろうからな。
「それでどうして俺たちに?」
「お二人の実力は、リアさんの弟子であることで十分です。それに私はお二人が頑張っている姿を見ていますし、見た目もお二人は十分です。」
ルナールで俺等の特訓風景を見てたなそういえば。
「それにお二人は礼儀も態度も十分です。それに実力も申し分ない。それに、実はこの依頼、上乗せありと書いてある部分が実は重要だったりするのですよ?」
「この吟遊詩人がどうのという部分ですか?」
「えぇ。リアさんの影響でこの国では音楽を楽しむ文化が少しずつ密かに広がっています。」
師匠が毎晩外で歌っているのは密かにこの国で有名らしく、その時間帯になるとこの国にいる人たちは皆静かに耳を傾けて聞いているのが最近のこの国でよく見られる光景らしい。
確かに師匠の歌はきれいで落ち着くからな。
「あぁ、シリルが音の支配者だからですか?」
「そうですよ。その噂を聞きつけて興味を持ったようです。」
「ちょっと待って下さい。その音の支配者って何ですか?」
「シリル知らないの?」
「セリカは知ってるのか?」
「うん。シリルってどんな声も自由自在でしょ?性別問わず。」
「まぁな。」
「それで虹色の声の持ち主と呼ばれてるからシリルは音の支配者って呼ばれてるんだよ?」
「マジか・・と言うよりそれほどここに長期間いなかったんだが・・・」
師匠と出会った数日と学園が再開してここで過ごすようになって併わせても10日は切ってるんだが。
「もしかするとギルドカードに載っているかもしれませんね。」
「え?」
乗るの?
ステータス
ランク:F(二つ名=音の支配者)
名前:シリル・クニサキ
性別:♂
年齢:16
種族:異世界人
職業:軽業師、吟遊詩人
称号:異世界に攫われし者、みんなのお兄ちゃん
属性:温度変換
体力:C
魔力:D
攻撃:B
防御:D
俊敏:C
練度:D
衣類:混合岩の装備セット(胸当て、肘当て、肩当て、籠手、臑当て、腰当て、ブーツ)、演者のヘアバンド
武器:吟遊詩人のミスリルソード(炎・氷)
装飾:クラリティ王国公爵家の証
攻撃技:【体術】【感情強化】
武器1:【剣】【短剣】【二刀流】
補助技:【アクロバティック】【虹色の声】【威圧】
自動技:【武器舞踊】【武器舞踏】【絶倫】
・・・・マジか。
「その様子だと出ているようですね。」
「やったね!」
「あぁ・・素直に喜んで良いのか凄く微妙な気分だ。」
まぁ、変な呼ばれ方するよりマシか。
・・地球だとなぜかお兄ちゃん呼びする連中が多かったし、後輩たちはなぜかお兄様呼びしてたし・・まぁ気にしなくていいか。
「とまぁ、そんな感じで今回の依頼は端的に言うとシリルさんが理想的なんですよ。」
「じゃあ、私はどうしよう?」
「セリカさんもご一緒に大丈夫ですよ。シリルさんのことを紹介して下さるだけでも十分ですし、彼が演じている間は特訓に力を注げば良いのでは?」
「そっか!じゃあ、受けます!」
「かしこまりました・・・完了しました。場所はあちらの訓練場を貸し切っていますのでそちらへお願いします。30分もしないうちに集まるのでその間に準備運動でもしておいてください。」
「分かりました。」
それから、準備運動をしっかり行なったところでメンバーは揃った。
人数は貴族らしき人が十数人で、部下というか護衛役らしき人たちが1人に付き10人ちょっとずつくらい。
「依頼を受けてくれてありがとう。君があの音の支配者というのは間違いないのかね?」
「私自身そう呼ばれていることを知ったのは実は先ほどなんです。ですが、確かに噂される技は私は得意としておりますので間違いなく私のことかと。ギルドカードにもそのように表示されておりましたので。」
凄く頑張って丁寧語で話す。
まぁ、その辺りはセリカを通じて色々と頑張ってたからそれほど苦労はしてないが。
「おぉ!それは素晴らしい。そちらも頼みたいが、まずは我らの運動に付き合ってくれるかな?」
「私でよろしければ喜んで。」
「怪我などは気にしないでくれ。部下が回復魔法に治癒魔法を得意とする者たちを数名揃えている故に治せる。遠慮なく全力をぶつけて欲しい。容赦なければないほど報酬は上乗せしよう。」
マジか・・本気でこの人はそう言ってるよ。
「依頼ですから全力で勤めさせて頂きます。」
「あぁ、頼むよ。」
それから、俺とセリカは頑張った。
凄く頑張って戦った。
あっちの貴族メンバーはチームで挑むかと思いきや、貴族1人とその1人の護衛役つまりは1ファミリーで1チームとして挑んでいた。
要するに他の貴族同士で全員が敵状態。
マジで乱戦状態だった。
で、さすがに武器を敵に向けるのは忍びなかったので相手が武器を扱えば武器を扱い、それ以外は武器なしの格闘技で対応した。
バク宙にバク転、回し蹴りにかかと落とし等々、扱える技は何でも使って正々堂々と戦った。
セリカは、自身の大剣を利器ではなく鈍器として扱うことに限定して対処していた。
俺が全体を動き回って戦うのに比べ、セリカは動くことは少ない代わりに一撃で数人を吹っ飛ばしていた。
さすが強化の属性持ちなだだけはある。
数人相手でも力押しで負けてなかった。
けど、この国の風習?はマジだった。
護衛の彼らよりも守られる人たちの方が確かに強かった。
動きの無駄が少なく、魔法を扱った遠距離戦と肉体を扱った接近戦の組み合わせが非常に上手かった。
本気で対応しないとあっという間にやられていた。
実際、俺のミスリルソードをメインで扱わないと相手にならなかったんだ。
「ふぅ。君良いね。その実力でそのランクと言うことはまだ登録して日が浅いのかね?」
「はい。まだ登録したてなんです。」
「なるほど。君は必ず強くなるよ。目が良い。」
「ありがとうございます。」
「それにしても動きに無駄がなかったが誰かに師事しているのかね?」
「一応俺とセリカの師匠はフリージアさんなんです。」
「ほう!姫様か!」
「それならば納得だ。」
「あのお方は正真正銘天才だからな。」
「やはり師匠は有名なんですね。」
「当然だ。あまり表向きには知られていないが、彼女は既にいくつかのスタンピートを単独パーティで殲滅し、多くの人を救っているのだ。」
さすが師匠。
既に英雄だった。
「あまり知られていないというのは?」
「そのスタンピートや賞金首たちがまだ町や村を襲う前だったことや、目撃者がほとんどいないのだよ。彼女たちは襲い掛かる前にその本拠地そのものに特攻して殲滅していたのだから。」
「あぁ・・なるほど。」
「ですけど、どうしてそれで師匠がしたって分かったのですか?師匠のことですから換金はしてもわざわざ自慢話のようなことはしないと思うのですが。」
セリカがそう語る。
確かにそうだ。
師匠は、自慢とかそういうのと縁遠い方だ。
と言うよりそういうことに一切興味ないみたいだし。
「姫様の場合はそうだろうな。だが、ギルドカードのおかげで分かったのだ。」
「ギルドカード?何をいくつ倒した等の情報が残るのですか?」
「その通り。それらを閲覧する権限はギルド内でも極々一部だけ故にそれほど騒がれていないが、上位者は閲覧出来る。それらの討伐数と質をみればそのくらいたやすく推測出来る。」
「なるほど。そういうことだったのですね。」
「あぁ。彼女がイリス様のご息女で本当に嬉しい限りだ。」
「イリスさんのご息女だと知られたのはごく最近だと伺ったのですが・・。」
イリスさんと再会するまでは母親は他界していたらしいから親のいない身で旅をしていたらしいし。
「その通りだ。姫様の幸せは当然願っているが、我らの気持ちではイリス様があぁして幸せそうにして下さっていることがとても嬉しいのだ。」
「詳しくは我らが他者故に語れぬが、姫様の母君であるペチュニア様と離れ離れとなり、愛する家族を失っている。その悲しみはイリス様は表には出さなかったが、どこかさみしそうだったのだ。」
ペチュニアさんとイリスさんは愛し合っていた。
けれど、彼女は体が弱かった故に、師匠が産まれるのと同時に亡くなった。
おまけにその娘とも離れ離れで行方不明のようなモノ。
丁度師匠を身ごもった辺りでスパイらしきことをして黒い噂の絶えない相手を潰すためにペチュニアさんは挑んだらしい。
で、その最中に師匠が産まれ、そのまま・・。
それから、師匠をイリスさんは迎えに行くことも出来なかった。
聞くと、イリスさんとペチュニアさんの間に子供がいることは当人以外誰も知らなかったらしい。
だから堂々と迎えに行けなかった。
それから、その悪人はしっかりと政治的にもつぶせたが、その救助の際に彼女を助けるためにバレクさんたちフォルシェンファミリーがランダムに転移する魔道具を使って逃がした。
だから師匠はどこにいるのか分からなくなったんだとか。
「それから、姫様がこの国に現れ、イリス様のご息女だと判明した後、心の底から楽しそうにして下さっている姿を見ることが出来て我らはとても嬉しいのだ。あの方は天才だ。故に慕う相手はいても家族のように支えてくれる相手も支える相手もいなかった。その悲しみをどうにか出来るのは家族だけだ。」
イリスさんもたくさん苦労したんだな。
師匠もかなり苦労したみたいだが・・・。
これ以上は追及しないようにしよう。
「では、夕方まで音の支配者として演じ、歌いましょう。」
「それは嬉しいな。ムリはしない程度に楽しませてくれ。」
「はい。」
それから俺は、様々な歌を歌い、様々な物語を演じた。
劇団みたいなこともしたことがあったから俳優らしきことも俺は得意だ。
歌は男性バージョンと女性バージョンを織り交ぜ、その2つの中でも明るい系、しっとり系、激しい系と織り交ぜた。
物語は、あまり凝ったモノはわけが分からないだろうと思い、地球で絵本として親しまれているモノを複数演じた。
白雪姫や桃太郎を始め、
イソップ童話にグリム童話、シャルル・ペローにハンス・クリスチャン・アンデルセン。
他にも童話で様々なジャンルを演じた。
過去にこれほどたくさんのことを演じたことはなく初めてだった。
それに、年齢問わずあれほど夢中になって目をキラキラさせて楽しんでくれたことはなかったから凄く嬉しかったしやりがいがあった。
ちびっ子たちは同じように楽しんでくれたが、大人たちは珍しいとは思ってもそれほど楽しんではいなかった。
本当に楽しかった。
途中、セリカにも演じてもらったり歌ってもらったりと手伝ってもらった。
セリカも時折俺を手伝ってくれるから、彼女も慣れていたし。
二人で演じるときもその楽しさがセリカは分かってくれて凄くノリノリで過去最高の出来だった。
そして、最後にしっとりとして歌を二人で歌い、頭を下げて終了。
すると、ものすごくたくさんの拍手と声援が俺たちを迎えた。
気づくと、壁際にはびっしりと先ほどまでいなかった人たちも集まっていた。
ちびっ子から冒険者にギルドの職員、協会の人たちと本当に様々だ。
「素晴らしい!噂は真実だった!否!それ以上だったか!」
「良かったぞー!」
「上手かったぞ!」
冒険者らしき人たちが褒め言葉を告げつつ、俺たちに向かっておひねりらしきモノを投げてきた。
とりあえず、受け取ってまとめたが、意外と多かった。
「俺等からの報酬金だ。良いものを見せてもらったからな。」
合計で金貨1枚分になりそうなくらいはある。
「では、我々からは、皆さんの治療を無償で致しましょう。」
そう言って教会の方々からは俺等を含め、戦った人たち全員の傷を癒してくれた。
それから、この国の食堂で使える割引券をいくつかもらった。
これは、師匠にプレゼントしておこう。
師匠は食べるのが好きだしな。
「うむ。本当に素晴らしかった。どの話しも聞き覚えがないのだがお二人の故郷の話しかな?」
「はい。俺たちの故郷は創作物に非常に溢れた場所なんです。」
「それは素晴らしい。出来ればそれらを本にしないか?」
「本に・・ですか?」
「あぁ。昔と比べると娯楽としての書籍は増えてはいるがまだまだ少ない。だが、先ほどまで二人が演じていた物語は幼い子供たちでも十分楽しめるモノだった。視点を変えれば我々大人でも楽しめた。ならば、少しでも文字を覚えさせる良い機会となるだろう。」
なるほど。
簡単な文字の読み書きと計算は出来た方が良い。
これは、この国のためにもなるんだな。
「それなら、喜んで協力させて頂きます。」
「おぉ!そうかそうか!細かい部分は我々が動こう。絵師はどうする?」
「私は絵も嗜んでいますし、リカルさんもいますから。」
「ほう!ビルドアーティストか!それならば必要はないな。協会には話しをしておく。細かい部分は協会を通じて姫様宛でよろしいかな?」
「はい。師匠たちには私から伝えておきます。」
「では、今回の報酬だ。」
金貨10枚になってた。
「あの・・増えてますが・・。」
「上乗せありと書いていただろう?」
「それは伺ってますが、予想以上に上乗せされていて驚いてしまって。」
「それほど素晴らしいモノを見せてくれたんだ。当然だ。」
「実力も申し分ない。それなりに鍛えていた我々と良い勝負が出来たのだ。」
「態度から言葉使いなども全く問題ない。」
「それに、先ほどまでの冒険者たちや教会の者たちへのやりとりもとても紳士的だった。」
「ありがとうございます。」
ここまでべた褒めされるとこそばゆいな。
「・・よし、ランクアップをするようにギルドに告げておこう。」
「え!?よろしいのですか?と言うより良いのですか!?」
「構わん。それほど良かったと言うことだ。我々が保証するんだ。この国で貴族だと名乗る資格のある我々がだ。」
この国では貴族としての身分は実力も知識も優れている証だと師匠から聞いた。
この国は実力主義だ。
そんな人たち複数人からはっきりとそう言ってもらえたと言うことはそれほど認めてもらえたと言うことだ。
それなら、俺のすべき答えは。
「ありがとうございます。その期待を上回るつもりでこれからも頑張らせて頂きます。」
その期待に応えてそうして良かったと思わせることだ。
「あぁ、よろしく頼む。また、2人には演じて欲しいと頼むこともあるだろう。その時はまた頼むよ。」
「はい。喜んで。」
それから、俺とセリカはランクが1つ上がり、Eランクになった。
そして、今回手に入った大量のお金はとりあえず貯金することにした。
いつどんなときに必要となるか分からないからな。
夕方、師匠が帰って来て、夕飯を食べながら今日のことを告げた。
「この国の貴族に褒められると言うことはかなり凄いことだよ。」
「イリスさん、そうなんですか?」
「うん。この国の上位者の褒め言葉だ。滅多にないよ?」
「なるほど。」
「シリルさん、今回の絵本の件ですが、喜んで協力しますよ。共に最高傑作を作りましょう。」
「はい。よろしくお願いします。」
こうして、俺はリカルさんと共に多くの絵本を作った。
それらの絵本はとても人気で好評らしく売れ行きは良いらしい。
ある程度俺とリカルさんで作ってしまえば、後は複製することが出来るらしく、それらはあのときの依頼の貴族の皆さんが責任を持ってしてくれたらしい。
そのおかげで俺は月に金貨1枚という大金を定期的に手にすることが出来た。
それと、俺のステータスに副職として絵本作家が増えた。
副職が何か聞くと、どうやら俺が知る副職と意味は同じようだ。
師匠だと刺繍屋と出ているらしい。
「シリル、今日は楽しかったね。」
「そうだな。あれほど喜んでもらえて嬉しかったし楽しかったな。」
後は寝るだけという状態でベッドでセリカと並んで寝転がりながら話しをする。
部屋は俺とセリカ1部屋で師匠から借りることが出来た。
部屋は多いらしいので問題ないようだ。
「シリル、今日のことがきっかけでちびっ子たちからは憧れの対象になったみたいだよ?」
「そうなのか?」
「うん。だって、シリルみたいになりたいって言ってる子結構多かったし、凄く目をキラキラさせてたよ。」
「そうか。少しでも世のためになってるなら良かった。」
「だ・か・ら♪」
「ん?」
凄く色っぽい表情になって俺の隣で転がってたセリカが俺の上で馬乗りになった。
「今日シリルが頑張ったご褒美を上げる♪」
「ご褒美?」
分かってるけどあえて分からないと言う態度にしておく。
「うん//」
「本音は?」
「今日のシリルがかっこよくてキュンキュンして体が火照って熱いの//」
俺へのご褒美と言うより、セリカへのご褒美になってる気がする。
セリカはどう見ても発情していた。
と言うか、そう言いつつセリカ・・毎晩俺を性的に襲ってるだろ。
「じゃあ、頂きます♪今日は、私が攻めだから。」
ちなみにいつもは、最初はセリカが攻めで、後は俺が攻めてたりする。
こうしてその日の晩、俺はセリカに思う存分襲われて食われた。
数ヶ月ほど前、作者が体験した本当の話
飲食店へ足を運び席に座る
↓
店員さんに足を指さされて何か言われてる
けど、作者はイヤホンを着けていたため細かくは聞こえない。
↓
違う席に座れとかかな?と思い席を移動
↓
店員さん違う的なリアクションをしつつ未だに足を指さす
↓
足をみる
↓
履いているジーパンにアブラゼミがくっついてるΣ(゜д゜;) ヌオォ!?
↓
とりあえず外に行き、セミにはお帰り頂く
・・・ずっと歩き回っていたはずなのにずっとくっついていたセミ
君・・野生はどこ行った。
ちなみに、普通に歩いてもセミは足から離れてくれず、軽く震脚しました。