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オタ共たち、国を出る

--錦--

異世界に飛ばされ・・じゃないな、異世界に拉致されてから10日は経過した。

俺たちは、飛ばされた1日目の終わりにはきれいにクラスは真っ二つになった。

1つは勇二率いる王子(笑)一派

もう1つは、兄貴であるシリルさん一派

王子(笑)一派は、自分勝手なことを言う傲慢が服を着た王様の言う通りに素直に聞く駒になっていた。

俺たちは、上手く論破してある程度実力がつき次第国を出ることになった。

まぁ、世界を巡って困っている人を助けつつ、この国の素晴らしさを広めたいんです的なことを様々な言い回しで言いくるめたんだが、上手くいった。

それと、この国の名前がアルバトロスと言うらしい。




で、俺たちはギルドで冒険者登録をした。

武器は、傲慢が服着た王様・・傲慢王でいいや、傲慢王がくれるらしいので遠慮なくもらった。

みんな剣や槍とか盾を持っていたが、俺はどれも持つ気になれず、ごつい指輪10個にした。

まぁ、メリケンサックだな。

効果はものすごく頑丈で、魔力を込めれば猫の爪のように伸ばすことが出来るし、更に硬くすることも出来るから結構気に入っている。


だって俺、拳闘士だし。

がっつり拳を使った職業だし。

まぁ、足も使うけど。

魔法的には、土で、硬さとか変えられるからがっつり接近戦特化だぜ。

この間、ついにあの気にくわない騎士共を数人ぶっ飛ばすのに成功したし。

あのとき俺を抑え込んだ怒りはようやく発散出来て非常にスッキリした。

元々力も体力も自身があったし、兄貴にきたえてもらっていたから魔力の扱い方を覚えたら結構あっさり騎士は倒せた。


ちなみに、姉御の親友の美羽さんは聖騎士だった。

どうやら、回復系の魔法が得意で剣や槍を使った戦いも得意な接近戦特化の回復持ちらしい。

見た目は凄いおっとりとして美人なのに以外。

なんて言うか、僧侶とかそれ系が似合いそうなのにな?

けど強いぜ?

剣も槍もどっちも得意らしく上手く騎士をあしらってたし。


で、巧美は、魔弓士だった。

どうやら、様々な属性の魔法で出来た矢を作り出す職業らしい。

つまりは、魔力さえあれば矢を作り放題うち放題らしい。

狙い撃つのは撃ちゲーが得意らしいからかなり上手い。

属性も凄いぜ?

風、火、雷、氷、聖、無の6種類なんだから。

最後の2つが何かって?

聖は、回復の矢らしくそれを撃つと、刺さった相手は怪我をその矢に込めた量の魔力に比例して回復するらしい。

ただ、回復はしても矢が刺さる痛さは残るからそれは我慢しろとのこと。

で、無はつまりは何の属性もない普通の矢と言うこと。

これは、普通の矢だから魔法的なすごさはない代わりにどの属性の矢よりもものすごく魔力の消費が少ないらしい。




で、ある日ギルドでいつものように経験を積むためというのと、資金を稼ぐために依頼を黙々とこなしていた。

その日も依頼を少人数グループに分かれてぞれぞれが依頼を受領しつつ、さりげなく兄貴や姉御に関する情報を凄く遠回しに情報収集していたら、俺のギルドカードを見た途端ギルドの美人でスタイルの良いねーちゃんが丁度依頼を受領した時に俺に妙な質問をしてきた。

「ニシキさんですね?」

「あぁ、それがどうした?」

「伝言をお預かりしておりますが、それをお伝えするためにこれから伝えることに対して素直な答えを返答して下さい。」

「ん?分かった。」

誰からの伝言だ?

まぁ良いか。

「では質問です。あなたにとっての強さと弱さを教えて下さい」

強さと弱さ?

妙な質問だな。

一緒に来ていたメンバーも首をかしげてる。

けどまぁ良いか。

「俺にとって強さは兄貴のことだ。弱さは過去の俺のことだ。」

「その兄貴というお方のフルネームを教えて下さい。」

「・・・言わないと駄目か?」

「はい。そこがとても大事ですから。」

「スマンが耳元でこっそりで良いか?」

「構いませんよ。」

俺は耳元で兄貴のフルネームであるクニサキシリルと伝えた。

・・ちょっとだけこのねーちゃんから漂う良い香りにくらっとしたし、つい首元からチラッと見えた深い谷間に目が奪われたが頑張って逸らした。

「・・・」

「ん?どうした?」

「いえ。・・まさか、ホントに一言一句同じ言葉だなんて・・。」

最後につぶやいた台詞がギリギリ聞こえたが、俺の行動をそこまで正確に推測出来るのって兄貴だけだよな!?

「で、その伝言って何なんだ!?」

「では、お伝え致します。・・・ノワール パーシュテ ファム・・・以上です。」

「・・それだけか?」

「はい。それだけで十分らしいです。」

「わかった。サンキュー。」

「いえ。仕事ですから。」







「ねぇ、あの伝言どう思う?」

「錦さんのことをそこまで推測出来るのってどう考えてもシリルさんだけでしょ。」

「やっぱりそうだよね。と言うことは、あっちでもこっちのことを調べてるってことだよね?」

「だね。それとあの伝言だけど、どう思う?と言うか何語?」

「地球の言葉だとは思うけど。」

「確か、黒、子供、女、だったはずだよ?」

「巧美、何で分かるんだ?」

「趣味で外国語を適当に虫食いで勉強したことがあるんだ。」

「虫食いの時点で勉強にならないだろ・・。」

「まぁ、オタクの嗜みの1つさ」

「オタクって何なんだ・・」

「けど、それ、まとめると黒い幼女?・・なにそれ?」

「黒って単純に言えば黒い髪ってことだよね?」

「黒髪幼女・・幼女なら探せばどこにでもいるよね?」

「けど、シリルさんがそれだけで十分ってことはシリルさんが指す幼女はかなり有名ってことだよね?」

「だね・・・ギルドで有名な幼女を探せば何か手がかりがあるかな?」

「あると思うよ?だって、シリルさんがそれだけで良いって判断したってことはそれだけでどこにいるか特定出来ると判断したってことだろうし。」

「だとしても、少なくとも2人は無事ってことだよね?」

「だな。・・それだけでも凄い収穫だ。」

「早く会いたいなぁ・・。」


「とりあえず明日、ギルドで情報を集めてみよう?」

「だね。」


で、依頼を済ませて完了報告とその報酬金、そして道中で討伐した魔物のアイテム類を換金したときに受付の時と同じ美人のねーちゃんに聞いてみた。

「なぁ、ちょっと聞いても良いか?」

「私に答えられることでしたら。」

「黒髪の幼女に関して有名な噂とかあったりするか?」

自分で言っておいて何なんだろうかと思う。

と言うか、さすがの兄貴でもこれでピンポイントに国とか分からないよな・・


とか思っていたら。

「ありますよ。」

「あるのかよ!」

「えぇ。黒髪幼女と言えばこの噂としか言えないほどかなり有名な噂が1件ありますよ。」

さすが兄貴。

まさか、ピンポイントに1件しか噂がないものを選び抜くとは。


「その噂について教えてくれないか?」

「私が答えてもよろしいですが、教会に行った方が早いですよ?」

「んー、そうなんだろうけどさ・・。」

「どうしましたか?」

俺が渋っていると心配そうにねーちゃんは俺を見つめる。


「俺は、あんたに教えて欲しいな。」

「私に・・ですか?」

「あぁ。ねーちゃんからすれば良い迷惑かもしれないけどさ・・けど俺は、あんたが知っていることが知りたい。あんたの言うことなら信じられるし、信じたいと思うから。」

この気持ちが何かは分からない。

けど、兄貴が言うには野生の勘のようなモノなんじゃないかと言ってた。

滅多に発動しないが、偶に感じることがある。

この人の言葉を、気持ちを知りたいと。

他の人から聞いても同じ台詞しか聞けなかったとしても、その人以外の言葉を信じたくない。

その人のことを信じたいと思うとき。


大体は、同性で起きたことしかなかった。

最初にあったのは、兄貴に昔の俺が今の俺に変わったとき。

色々と厳しかったし怖かったけど、その最中にこの人のために生きていきたいと心の底から強く思った。

次にあったのは、道中で不良どもに囲まれていちゃもんをつけられている老人夫婦を前にしたとき。

兄貴のようになりたいという気持ちから助けていることが多かったのにその時だけは純粋にその老夫婦を助けたいと思って助けた。

まぁ、その後凄く感謝されてお礼にもらった和菓子は凄くおいしかった。


そんな感じで、姉御たちが言うところのゲームの分岐点というか選択画面の部分を本能で気づいているんじゃないかとか言われてる能力らしきモノなんだ。

とはいえ、大抵はトラブルに突っ込む寸前の感覚に近いから虫の知らせに近いんじゃないかと思う。


で、なぜかこのねーちゃんに反応した。

正直異性で発動したのは生まれて初めてだ。

何か、美羽さんが運命の出会いだとか、巧美がヒロインとの出会いシーンが現実にとかはしゃいでいるが、そんな重要なイベントがそこらに転がっているモノだろうか?

それに、俺自身兄貴みたいにかっこよくないし。

なんか、姉御には野生の狼っぽいと言われたことはあるが褒められているのかどうか正直よく分からない。

「え、えと・・丁度本日の業務は終わりますので出来れば、ご一緒に夕飯でも食べながらで・・いかがですか?//」

頬を赤く染めながらおそるおそる俺に尋ねてくるこのねーちゃんはかわいかった。


クリーム色の髪が肩をギリギリ超えるほどの長さの美人のねーちゃん。

胸はホントにデカい。

確か、Eは軽く越えてそうだと思う。

「良いのか?迷惑なら迷惑と言ってくれ。無理強いはしたくないし。」

「ムリはしていませんし、迷惑ではありませんよ。むしろ私の方が押しつけがましくて申し訳なく思います。」

「んなことないって。俺は、あんたに色々と教えてもらって凄く助かってるんだ。」

俺が冒険者登録して薬草採取や魔物討伐、その他の雑用などいろいろな依頼を受けるときに気をつけることなどをずっと色々教えてくれたのがこの人だった。

「それなら良かった。あ、そういえば名前を言っていませんでしたね。私は、リーベと申します。」

「リーベか、良い名前だな。改めて俺はニシキだ。じゃあ、俺はそこで待ってるよ。」

「はい。10分もかからないと思いますので。」

「急がなくて良いぜ。」

「ありがとうございます。」


で、リーベが言った通り10分もしないうちに終わったようだ。

「すみません。お待たせしました。」

「予定より早く来れたし、リーベみたいな美人を待つ時間は男の甲斐性だぜ?」

兄貴に教えてもらったことだ。

確かそういうことは言わない方が良いんだよな。

「そう言って頂けると嬉しいです。では行きましょうか。」

「あぁ。」

ちなみに、美羽さんを始め他のメンバーはにんまりとした表情で声のない台詞で頑張れとか朝帰りだなとか言ってそうそうに去って行った。




そしてたどり着いたのは、一人暮らし用の小さな家。

「ここは?」

「私の家です。」

「いきなりリーベの家に俺みたいなのを連れ込んで大丈夫か?」

「ニシキ様でしたら喜んで。」

「お、おう//じゃ、じゃあお邪魔します。」

「ふふっ。どうぞ。何もないところですけど。」

ヤバイ。

俺、リーベさんに惚れたかも。


俺って、単純な男かもしれない。


それから、彼女が作ってくれた夕飯(ビーフシチューらしきスープとパン、サラダだった)を食べながら噂について教えてもらった。

「リーベは料理上手だな。凄く旨い。」

「良かった。では、早速ですけどお話ししますね。」

「あぁ、頼む。それより・・」

「どうしましたか?」

「いや、何でもない」

なぜか彼女はテーブルの向かい側ではなく俺の隣に座って食べていた。

しかも妙に近い。

おかげで視界の端っこでリーベの美人な笑顔と谷間がチラチラ覗いて俺の理性を崩し駆けてくる。


兄貴が姉御の誘惑に耐えようとしていた時の気持ちが凄く分かった気がする。


それにしても、やっぱり胸がデカい。

それと、リーベの笑顔が凄くかわいい。

・・彼氏はいるのだろうか。

「その前に1つ聞いて良いか?」

「はい。」

「リーベって彼氏とかいるのか?」

「いませんよ。」

「いないのか!?そんなに美人でかわいくてスタイルが良いのに!?仕事もしっかり出来てたのに。」

「褒めすぎですよ。私は面白みのない人間ですから。」

「んなことはないって。」

「それに私は欠陥品なんです。」

「・・誰だそんなことリーベに吹き込んだ奴。」

怒りがこみ上げてくる。

「落ち着いて下さい。実は私・・一切の属性も職業も持たないんです。」

「どういうことだ?」

「私の属性は、無属性で魔力を操り、魔力単体による攻撃しか出来ません。せいぜい身体強化が追加される程度です。それと、職業も乙女としか書かれていないんです。」

属性とかはまだよく分からないが、それに関しては運としか言いようがないから慣れるか使いようを考えるしかないだろうけど、

「その職業ってなんなんだ?」

「それが・・恋をすると家庭的に関すること全てが上手になりやすくなる・・ただそれだけなんです。」

「それって、家事洗濯とか教育とかってことか?」

「はい。それだけなんです。」

「戦えない奴くらいは1人や2人は普通いると思うけどな。俺の故郷は魔力がないのが当たり前だったし。」

「そうなんですか!?」

「あぁ。と言うより俺を始めとした俺のダチたちはみんな異世界人なんだ。」

「そういうことだったのですね。では、お探しの方は・・」

「あぁ。俺の恩人なんだ。」

「そうだったのですね。では、黒髪幼女についてお話ししますね。」

「頼む。」

ちなみにそんなことを話している間に食事は終わり、片付けも終わってしまった。

「・・で、どうして俺の膝に乗っているんだ?」

俺の身長は170は超えてるが、彼女は160ほど。

シンプルなワンピース1枚しか着ていない彼女の柔らかなお尻が俺の太ももに乗っているので理性がマジでヤバイ。

それに良い匂いがするし、谷間が凄い俺の視線を奪っていく。

「えと・・ご迷惑かもしれませんが、お話しする前に伝えたいことがあるんです。」

「何だ?」

どうして膝の上で向かい合うように向きを変えるんだ?

色々と理性がやばいんだけど。

「私・・ニシキ様のことが好きになってしまいました。」

「・・え?」

「で、ですから!愛しているんです!」

「えぇぇ!?」

俺に一目惚れ!?

嘘だろ!?

「何で俺なんだ?」

落ち着け・・落ち着け・・

「ニシキ様だけなんです。私のことを話しても気持ちが変わらなかった人。それに、いつも私にいやらしい視線も気持ちも向けずにまっすぐな気持ちをぶつけて下さるのが凄く嬉しかったんです。それに、私ニシキ様のようなワイルドな方が好みなんです//」

「そ、そうだったのか・・」

雰囲気が野生の狼っぽいとか言われてたけどまさかそれが好みの人がいるとは世界は広いんだな。

「ご迷惑でしたか?やはり、元の世界に帰るのですよね・・。」

「正直わからねぇ。帰れるかどうか分からないし。けどさ・・俺は、もし帰ったとしてもリーベと一緒にいたい。一緒に来て欲しい。」

「そ、それは!」

「あぁ。俺もリーベが好きだ。俺は元々悪い噂が多いごろつきだったんだ。そこを兄貴に色々教えてもらって今の俺になった。それでも、見た目が見ての通り威圧的で口調も悪いから距離を開ける奴が多かった。それでも、リーベは、リーベだけは変わらずに優しくしてくれて親切にしてくれた。凄く嬉しかったんだ。多分俺も一目惚れなんだと思う。」

「嬉しいです!これからよろしくお願い致します!」

「あぁ、よろしく。だからさ、俺のことを呼び捨てにしてくれよ。」

「え、えと・・ニシキ?」

ヤバイ。

凄いかわいい。


「じゃ、じゃあ。とりあえず黒髪幼女について教えてくれ。」

「はい。その前に」

「なんむっ!?」

いきなりキスされた。

しかも濃厚なやつ。

口の中にリーベの舌が入り込んでくる。



5分か10分かそれとももっと長い時間が経ったかと思うほどの間リーベと濃厚キスをした。

「はぁ//続きは、一緒にお風呂に入ってから・・ね?まずは、黒髪幼女に関してお伝えしますね。」

俺・・童貞を卒業します!





とその前に、聞いたことに関してまとめるな。

まず、黒髪幼女だが、Sランク冒険者であり、教会で神子として崇められている子らしい。

凄くかわいくて成績優秀で、魔法の天才なんだとか。

本当の名前は知らないらしいが、クテン様と呼ばれているんだとか。


で、そんな彼女は春の大陸のクラリティ王国に現在は滞在しているのだとか。


さすが兄貴。

どこにいるかホントにピンポイントに分かった。

「それ以上のことは分からないので申し訳ありません。」

リーベは、丁寧口調が癖のようだ。

「いや、十分だ。おかげで目的地がはっきりしたしな。」

「では、クラリティ王国へ行かれるのですね。」

「あぁ。・・えと、リーベは一緒に来てくれるか?」

「もちろんです。では、一緒にお風呂に行きましょう?」




その後のことは言わなくても分かるだろう。

俺は童貞を卒業しました。

正しく言うと、童貞を奪われました。

初めてはお風呂。

その後、まっすぐベッドに行き、追加で。

で、眠った後朝、みんなと合流する前に更に。



そして、みんなと合流する前に俺とリーベは教会に行った。

そこで結婚の儀式を行なった。

と言っても純銀の指輪を握りしめて2人で祈るだけ。


無事に完了した証としてその指輪にはよく分からない模様がびっちりと描かれていて、淡い黄緑色の宝石がついていた。

この宝石の色は俺たちの関係を表しているらしいがその意味を決めるのは当事者である俺とリーベなんだとか。


「これからもよろしくなリーベ。」

「はい。ニシキ」

ちなみに、1晩の過ちだとかその時だけでしばらくしたらその想いは霧となって消えてしまわないかと言った不安を正直に伝えたんだが。

「それはありませんよ。」

「何でそう言い切れるんだ?俺もそんなヤワな気持ちじゃないが。」

「この指輪が証拠ですよ。」

「指輪?」

リーベが言うには、婚約の儀式を行なうとき、ちょっとやそっとの気持ちではこのように指輪に刻印と宝石は宿らないのだとか。

片方がほんの少しでも不安や抵抗などの気持ちがあるとそれだけでも指輪には刻印されないので刻印された時点で互いにべた惚れ状態だという証拠でもあるのだとか。


言われて気づいた。

これは、神様に対して結婚しますと言っている儀式だ。

神様がそんなちょっとした気持ちの揺らぎを見抜けないわけないよなと。




「と言うわけで、兄貴がクラリティ王国にいることが判明した。それと、結婚しました。」

「ニシキと結婚したついでに皆さんについていくためにギルド職員を退職し、冒険者になりましたリーベです。よろしくお願い致します。」

「・・・・錦さん、大人の階段登ると思ってたけど予想以上に登ってた。」

「と言うより登りすぎでしょう。」

「錦さん凄い美人を捕まえましたね。」

「おめでとう!」

「おう、ありがとう。」

「けど、結婚したことも驚きだけどシリルさんの伝言がそこまでピンポイントだとは思わなかった。」

「俺もそう思った。」

「ですが私は、家事全般は得意ですが戦闘方面は全くお役に立てないので間違いなくお荷物になります。ニシキは守ると断言して下さいましたが皆さんにもご迷惑をおかけします。」

「リーベさん気にしないでよ。守ることも修行のうちだから。」

「そうそう。それに、こっちの世界のことを色々と教えてくれたらそれだけで十分だよ。」

「それに、おいしいご飯が作れる人が1人でも多くいるのは嬉しいしね。」

「だよねー。」

「そういえば、皆さんとは関係ないかもしれませんが、クラリティ王国にとある吟遊詩人の噂があるのですがご存じですか?」

「吟遊詩人?」

「それって、歌って語ったりするあの?」

「えぇ、そうです。」

「その吟遊詩人がどうしたの?」

「ここ十数日の間に新しく冒険者となった方だそうですが、その方は吟遊詩人としてはものすごく優れた才能をお持ちなんだそうです。」

「へぇ。歌が上手いとか?」

「それもありますが、男性の声でも女性の声でもどのような性格の声でも自在に発することが出来る七色の声の持ち主なんだそうです。彼が現れて日が浅いですが既に音の支配者と呼ばれ出しているそうですよ。」


それを聞いて、俺を含む俺たち全員が同じ人物を思い浮かべた。

全員に視線を向けると全員が同じ表情で頷いた。

「なぁ、リーベ。その吟遊詩人が冒険者になった日ってさ、俺たちが登録した日と同じか近くなかったか?」

「そういえば噂を聞くようになったのは同じくらいでしたね。」

「その人って、私たちと同じくらいの年だったりしません?ついでに髪色も私たちと同じで彼女がいませんでしたか?」

「そういえば若いカップルだったそうですね。・・おや?もしかして、ご存じの方だったりします?」

「多分・・いや、間違いなく俺たちが探してる人物だと思う。」

「あら、そうなのですか?」

「あぁ。俺たちがこの国を出る本当の理由は、兄貴と姉御を見つけるためなんだ。」

それから俺たちは兄貴と姉御と離れ離れになったときまでの出来事を伝えた。


「そういうことでしたか。では、あのときの伝言はそのシリルさんがいらっしゃる場所のことだったのですね。」

「あぁ。まさか、ここまでピンポイントだとは思わなかったが。」

「えぇ、私も伝言と通達内容を聞いた後、ニシキが答えた台詞がそっくりそのまま語られるとは思わず、本当に驚きました。」

「そりゃそうだろ。俺たちだって兄貴のすごさを改めて知ったよ。」

「その方については皆さんの反応からどういう人物か把握しましたが、ニシキが兄貴と言って親しむのは何か理由が?」

「あぁ。昨晩軽く話しただろ?兄貴は、俺にとって、俺自身をまっとうな人間に変えた・・変われたきっかけなんだ。恩人で師匠で、目指す目標だし、何よりあの人のために頑張りたいって思える相手なんだ。」

「ニシキはかなり腕が立つと依頼の報告から察していましたし、体がきちんと出来上がっていましたので、何か武術か何か嗜んでいらっしゃるのかと思っていましたがシリルさんの教えだったのですね。」

兄貴みたいに細胞の1つ1つを鍛えているようなモノじゃないけど、がたいは俺の方が良いと兄貴に言われてる。

「あぁ。ここにいる男連中は全員兄貴にきたえてもらったんだ。どんなときでもどんな状況でも生きていけるように。大事な人を守れるように。」

「素晴らしい方なのですね。」

「そうなんだよ。強いし優しいし頭良いし何より面倒見が良いし、正義の味方って言われたら即答で兄貴だと俺は答える。」

「聞いていると、ニシキのお兄さんのように聞こえてきますね。」

「うん。だろうな、兄貴は父ちゃんじゃなくてお兄ちゃんだからな。」

「え?」

「血のつながりはないし、俺等と同い年だけどさ、兄貴は俺等を始め、兄貴を知ってる奴ら全員からみんなのお兄ちゃんと呼ばれてるほどだし。」

「あの落ち着いた雰囲気とかが父親オーラじゃなくてお兄ちゃんオーラなんだよね。」

「そうそう。ここにいるメンバー全員が必ず最低でも1回はシリルさんのことをお兄ちゃんと呼んだことがあるし。」

全員でうんうんと頷く。

俺も時折間違えて兄貴のことをお兄ちゃんと呼んでしまうし。

けど、兄貴は苦笑いしつつも普通に接してくれるから更にお兄ちゃんと呼びだくなるというループに巻き込まれたりする。

それは他のメンバーも同じ。

ただし、王子(笑)一派は別。

ちなみに、兄貴よりも年上の人たちも稀にそう呼ぶ人がいたりする。

それもあって、兄貴は凄いモテるんだけどな!

それに関しては、年齢問わずだが、割合的には同年代から年下が多いけど。



「なるほど。一度会ってみたいですね。ニシキがお世話になった方ですし。」

「俺もリーベを紹介したいしな。」

「フフ♪」

「どうしたんだ?」

「いえ。まるでニシキの御両親にご挨拶をしに行くような感じだと思ってしまって。」

「あぁ・・あながち間違ってないんだよなぁ。」

「どういうことですか?」

「俺ってさ、母親は幼い頃に他界して、父親は世界中を跳びまわっていてものすごく忙しい人なんだ。それでいて俺は、ガキの頃に数回会っただけで今じゃ顔もロクに覚えてない。だから、叱ってくれる人がいなくてごろつきみたいになってたんだが、そんな中、兄貴と出会ったんだ。それからずっと兄貴と一緒にいるから実際、兄貴に育ててもらったようなモノだと思う。」

「そういえば錦さんって中学校の頃からシリルさんと一緒なんだっけ?」

「あぁ。その頃からずっと一緒だから兄貴は俺の保護者代わりに色々と世話をしてくれたんだ。」

「本当に保護者なのですね、シリルさんは。」

「会えば分かる。みんなのお兄ちゃんと俺等が呼ぶ理由がよく分かるから。」

「はい。楽しみにしています。」



それから数日後、俺等はこの国を出発した。

兄貴がいるクラリティ王国を目指して春の大陸へ。


兄貴待っててくれ。

たくさん話したいことがあるし、紹介したい人がいるんだ。



兄貴は俺にとってホントの父ちゃんよりも父ちゃんで、ホントの兄貴だと思ってる。

ふがいない弟で申し訳ないと思うけどそれでも俺は兄貴にもらったたくさんの恩に報いたいから。

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