神獣を救え!-その1-
ティグリスリオンと呼ばれる翠ちゃん曰くライガーな神獣さん救出とアホを企む指名手配されてる無駄にずる賢い元貴族のおっさん率いるクズどもの殲滅戦を開始しました。
魔術師団5名とお父様とお母様、そしてお兄様は各地にある小拠点の殲滅を行なってます。
-各地-
団員5名とフォルシェンファミリー3名(1名は流星の里で留守)はそれぞれが散らばり、全ての箇所の小拠点を潰していた。
そしてあちこちで響き渡るあらゆる魔法による爆発やら衝撃やら砕ける音やら。
それと同時に敵認定された相手の悲鳴と絶望の声。
その中で最も悲鳴がひどかったのはルミエールの土地であった。
「ギャーー!!」
「もういやだぁ!!」
「降参するから!知ってること全部話すから!」
「お願いします!靴も舐めます。奴隷にだってなります!ですので!お願いですからもう辞めて下さい!」
「俺たちのライフはゼロよ!?」
で、それを聞いていたルミエールはと言うと
「あはは!いやに決まってるじゃん!玩具は1つ残らず壊れるまで使ってあげないといけないんだよ?そして何より・・・
ずっと全力で暴れるのを我慢してたんだから止められるわけないじゃん。」
長くため込んだ後に小さく囁いた。
だが、その小さな声はなぜかそこらにいる誰の耳にも聞こえた。
普通に喋るよりも迫力があったらしく、その声を聞いた敵は全員が完全に心が折れた。
彼女は今、雷を全身に纏い、両腕にかぎ爪を装備して暴れ回っていた。
当然かぎ爪にも濃密な雷の魔法が付与されている。
それによって少しでも触れると電撃が全身を襲い、目にもとまらぬ速さで敵を逃がさず、かぎ爪によって切り裂かれる。
ついでに言うと彼女の靴は特殊な形状をしており、かかととつま先の部分には収納可能なタイプの刃が仕込んである。
それを現在は出している為、腕を振い、脚を振って敵を斬り刻んでいる。
そして彼女は絶好調だった。
満面の笑みで大暴れ。
魔術師団ではエアロが副団長、つまりはフリージアを除いてトップに当たるが、純粋な実力だけで言うとルミエールがダントツのトップだったりする。
ただ、彼女の場合は戦闘以外は少々大雑把と言うより、全体を明るくするタイプの立ち位置の性格のため、人の上に立つとするとあまり向いていないという理由だったりする。
ついでに言うと、ティアが最も副団長らしい性格と行動を示しているが、いざと言うときの決断力や実力などの理由によってエアロが副団長となっているのだ。
エアロは全体をフォローすることをメインとしたタイプであり、1体1よりも1体多の方が得意なタイプだ。
一方ティアは1体1の方が向いている。
イグニスは1体1、アースは1体多が向いている。
そんな理由があり、エアロが副団長なのだが、その理由で言うとアースも向いているような気もするが、全体を指揮し、反対する相手を説得したりと言った交渉などを考えるとアースは自身でも分かっているように得意ではない。
それはさておき、ルミエールは現在のような戦闘タイプの為、普段の模擬戦で扱うにはかなり危険な為、魔力制御を中心とした純粋な肉弾戦のみを鍛えている。
つまりは全力で戦うことをお預けされているような状態だ。
そう言う理由もあり、今回の作戦は何気に誰よりも全力で暴れることが出来るという点で喜んでいた。
とはいえ、全力という点では他の団員も同じだが、我慢の度合いがルミエールが多いと言うだけ。
ではついでに他のメンバーの戦い方を簡単だが説明しておこう。
軽く話したが、エアロは全体をフォローするタイプが得意だ。
そのため、細い針状の風を作り出し、的確に相手の動きを封じ、逃げられないようにして急所をついで仕留めている。
ティアに関しては、意外にも水魔法と武器を扱わない格闘が得意だったりする。
と言っても腕を扱うのはフリージア同様合気道だが、脚ではサバットと呼ばれる蹴りを主体とした攻撃だ。
その脚には水で作り出した刃を作り出し、それによって水の斬撃を相手へ飛ばしたりそのまま斬撃を飛ばさずに斬り飛ばしたりしている。
更に周囲には自身を中心に水のリングを複数作り出し、それから水の弾丸を敵に飛ばしている為、事実上死角は存在しない。
イグニスは炎だ。
彼の癖で指を2本ターゲットへ向けてその指先から炎を弾丸として飛ばしている。
指の形は異世界人が言うところの銃の形だ。
それと同時に周囲に炎の球体を2~3個作り出し、その炎から更に炎の弾丸を飛ばしている。
ただし、あまり弾道を曲げたりといった細かい操作はあまり得意ではないらしく、まっすぐ飛ばすことがほとんど。
その代わり、弾速はとんでもなく速いので大抵は視認した段階では逃げるのはほぼ不可能だったりする。
アースは大砲を土で作り出し、そこから圧縮して硬化した土を相手へ飛ばすことが基本的だが、広範囲で一気に敵を潰すときは地割れを広範囲に起こしてそこに敵を落とし、そのまま地割れを潰してそのまま落ちた相手ごとはさみ、潰す戦法だ。
1体多で確実に潰す手段からするとアースがダントツだったりする。
そんな中、彼ら彼女らはあらかた片付けたときには共通の悩みを抱え、それぞれ自身の担当場所をあらかた終わらせ、次の拠点を目指しつつも各地に予め予定していた集合地点でその悩みを告げていた。
「お、ルミエール。お前も次あっち?」
「うん、イグニスそのつもりだったよ。一緒に潰しにいく?」
「その予定だ。・・・・・で、そっちもイリスさんが言ってた通りだったわけだな。」
「うん・・師団長の過去が過去だったからそこで待っててって言えなくて、それに放っておけなくて・・」
「俺も同感だ。師団長の過去が過去だからなぁ・・・」
彼らが悩んでいたのは拠点で保護した人たち。
男女バラバラなのに加え、年齢もむちゃくちゃ。
だというのに1つの拠点に30~40人ほどの違法奴隷になっていた人たちを保護していた。
服装に関してはそれぞれがマジックバッグに入れていたシンプルなシャツとズボンを着せている。
それらは、イリスが予言者の名の通り、各拠点に違法奴隷が居ることを想定し、全員に持たせていたモノだ。
首輪をつけられてはいるが、逸れに関しては翠と合流したときにまとめて対処してもらう予定となっている。
ついでにいうと、彼らにはシャスティが作った栄養剤代わりの団子と飲み物を飲ませつつ全員連れてきていた。
全員が感謝はしつつ、味方だと認識はしていたがかろうじてついていくのがやっとで喋る余力すら残っていない状態であった。
そんな人たちを引き連れつつ敵を潰していたので、速度は圧倒的に落ちていた。
仕方ないもの当たり前だ。
彼らに速度を合わせなければあっという間にはぐれてしまうのだから。
それは各拠点に人数の差はありつつも全員がかなりの人数を保護した為、途方に暮れていた。
すると、彼らの記憶にない声が響き渡る。
「団長!俺等と目的が同じっぽい人たちを発見しました!」
「よし!事情を説明し、協力せよ」
「はっ!」
「あなたたちは?」
「我らはヴェルヴンの騎士団で、私が団長のモリオンと申します。今回は、この付近で指名手配されている元貴族がいるという情報を入手したので、その調査と対処に向かっておりました。」
黄色のようで金色のような髪色をした騎士の格好をした美女を中心に男性の騎士たちがやってきた。
「ヴェルヴンのモリオン騎士団長って言えばあの黄金戦姫とか呼ばれる猛者だと聞いたことがある。まさか戦姫と呼ばれる通り見た目も格上だとは思わなかった。」
「ホントだね。イグニスは・・その・・モリオンみたいなクール系美女の方が・・その・・す、好き?」
もじもじしつつほんのりと顔を赤くするルミエールがそう聞くと、イグニスは若干顔を赤くしてそっぽを向きつつ。
「き、嫌いじゃないが、俺個人としてはもうちょい明るくて元気があって気が合う方が好みだな。」
「そ、そっか//・・・良かった」
イグニスの遠回しな好み発言はしっかりと誰のことを指しているかその好みのまんまなルミエールは察して嬉しそうにほほえんだ。
それを見てイグニスも幸せそう。
「・・・コホン。」
イグニス・ルミエール(ビクンっ!)
「そ、そこでその敵らしき相手を潰して回ってる私たちを見つけたと?」
驚きつつもイグニスは何事もなかったかのように話を続け、モリオンはとりあえず聞き流して上げようと判断してスルーしてくれた。
「そういうことです。あなた方は?民間人という感じではなさそうですが。」
「私はルミエール。クラリティ王国の魔術師団の1人で今はそこの公爵家に勤めてるよ。」
「俺はイグニス。ルミエールと同じくクラリティ王国魔術師団団員であり公爵家勤務。」
「あなた方がそうでしたか。とても魔道具に関してはエキスパートだと伺っていました。と言うことは他の地には他の団員が?」
実は他国からわざわざクラリティ王国の魔術師団に魔道具の修理を依頼する貴族がいたりする。
「あぁ。それと流星の里に住んでるファミリーと共闘中で、師団長とイリs・・あぁ、公爵家総勢が本拠地を潰しに向かっているところだ。」
「守られるべきお方ご本人がわざわざ本拠地を潰しているのですか!?」
モリオンが思わずツッコミを入れるがムリもない。
普通であれば指示は出してもわざわざ最も危険な土地に守るべき相手を向かわせることなんてあり得ないだろう。
おまけに貴族の中でもダントツトップの公爵家。
騎士たちも無言だったが目が見開いていた。
それと同時にこの魔術師団は色んな意味で駄目なのではないかと公爵家の人たちを心配し、その場所を聞き急いで駆けつける予定だったが。
「あぁ、大丈夫。そのメンバー、俺等より圧倒的に強いから。うん、常に護衛ってただの同行者なんじゃないかって思ってしまうほど。」
「うん・・普段から守るべき相手から守られないようにするのに必死なんだよ・・うん。頑張っても追いつける気がしないけど。」
遠い目をしている2人を見てモリオンはふと思い出した。
「そういえば、クラリティ王国は身分が高ければ高いほど実力も知識もあらゆる面で優秀になっていくと聞いたことがありましたが、嘘ではなくそのままの意味だったのですね。」
「・・・うん」
「そ、そういえばそちらさんはそのメンバーだけ?」
そこには5~6人ほどしかいない。
「いや、他の地にそれぞれのグループが向かっています。そして、やはりそちらにも被害者たちはいましたか・・。」
彼女らも被害者たちを連れていた。
「やっぱりいるか。これ、イリスさんが言ってた通り、人数はエグいことになりそうだな。」
「だね。とりあえず合流する前に流星の里に連れて行った方が良いかも。」
「あ、それでしたら私たちが彼らの保護とその地への誘導をしましょうか?」
「いいの?」
「えぇ。視る限り私たちが動くよりもあなた方が動いてる方が早くそして実力も上のようでしたから。」
「流星の里の場所は大丈夫か?」
「あちらの方向だと大まかにでしたら・・あっていますか?」
「あぁ、あってる。その方向に行けばすぐに分かる。そこにバレクさんって言う老人がいるからその人を訪ねてくれ。俺等のことを言えばすぐに分かるから。」
「分かりました。ではそうしましょう。」
そしてルミエールとイグニスは被害者たちをモリオンたちへ頼み、ものすごい速度で走り去っていった。
--モリオン--
ヴェルヴンにやってくる冒険者や商人たちから魔物を引き連れて襲ってくる集団が数多く目撃すると言った情報を聞き、動くことになった。
フリージアちゃんとの出会いをきっかけに私を始めとした騎士団のメンバーは全員強くなった。
彼女たちの存在は身も心も本当に糧となった。
そして、そこからさきは先ほど話していた通りクラリティ王国魔術師団団員たちだった。
それから被害者たちを引き連れ、流星の里へ向かった。
向かいながらそれぞれの地に向かったメンバーと合流しつつ向かう。
「団長、クラリティ王国は噂で聞いた以上に1人1人の実力が桁違いなんすね・・。」
「近くにいただけでも圧倒的な強者だと実感した。アレは本当に予想以上だ。だが、身分が高ければ高いほど強くなると言うかなり特殊な国だからな、強くなければ存在意義がない故にそれが当たり前なのだろうな。」
あの2人もその公爵家の方々と比べることすら出来ないほど自分たちが弱いとは言っていたが、それでも内包する魔力量も多く、体内を流れる魔力のムラの少なさなど調べることなど必要がないと断言出来るほど強者だった。
・・私がタイマンで戦ってもかろうじて勝てるかどうかだな。
「確かあの国の初代王族の人たちがあの幼女様たちみたいな感じだったんすよね?」
あれから5年は経つからフリージアちゃんも幼女ではなく少女だと思うが、彼らは相変わらず幼女様と呼んでいる。
・・ラウ殿が何度も幼女様と呼んでいたせいですっかりそのまま定着してしまった・・矯正出来なかった・・すまないフリージアちゃん。
「確かそのはずだ。皆の旗印のような存在だったと聞いているし、人を動かす前に自分が動くタイプだったのだろう。おそらくはそのまま子孫へ性格なども引き継がれたのだろうな。」
そういえば、フリージアちゃんも身分は親御さんが謎故に分からないが、人を動かすべき立場だったはずが本人が率先して特攻していたことを思い出す。
・・もしかするとフリージアちゃんの御両親のどちらかは、クラリティ王国と縁のある方なのかもな。
その確率は凄く高いと思う。
確か、その国に用事があるとも聞いていたからな。
「だとしても、まさかあのフォルシェンファミリーと会えるなんて予想外だった。」
「そういえばお前たちがいた場所にはその人たちがいたのだったな。」
フォルシェンファミリー
あの英雄賢者が唯一弟子にした者の子孫だったはずだ。
その名に恥じぬ圧倒的な実力者の集まりだと聞いていたが
「やはり強かったか?」
「予想以上なんて言葉じゃ足りないくらいっすよ。アレは文字通り次元が違う。一撃で周囲が吹っ飛ぶし、どこを見ても無駄が全くない。おまけに魔法も肉弾戦もどっちも圧倒的で、弱点なんて存在するの?って言いたくなるレベルでしたよ。」
彼らが言うには、あの魔術師団の団員たちよりも圧倒的に格上だったらしい。
「そうか。アレが流星の里だろうな。」
「壁に囲まれた場所はそこ以外に存在しないらしいですし、アレでしょうね。」
聞いていた通り壁に囲まれていた中には草花が広がり、とても神聖な雰囲気が溢れる巨木がある。
「話しに聞いていた以上にきれいなとこですね。」
「そうだな。」
思わず見惚れてしまうのもしょうがないレベルだった。
「む?お主らは何者じゃ。」
絶対強者。
その言葉を裏切らない老人がいた。
絶対に勝てない。
そう実感してしまうほどだ。
「申し遅れてしまい申し訳ありません。ヴェルヴンの騎士団団長モリオンと申します。今回は、クラリティ王国魔術師団の皆様が対処して下さっている件で対処しに向かいましたが既に対処している最中でしたので被害者の誘導を請け負うことに致しました。合流し、戦うことに関してはそれからが良いだろうとルミエール殿たちとも話し合った結果、こちらに参りました。」
「そうであったか。ワシがバレクじゃ。・・イリス殿が言っていた通りやはりいたのじゃな。嘆かわしい。」
顔をしかめてそうつぶやくご老人であるバレク殿は思い描いていた人物像そのままのような正義感溢れる方だった。
よく聞くイリス殿の名は記憶違いでなければクラリティ王国の元第一王子のはずだが・・・国から大きく離れたこの地にいるのだろうか?
観光なのだろうか?
そういえば、王位継承権をあっさりと捨てて公爵になったと陛下がおっしゃっていたな。
確か、離れ離れで行方不明だった娘が見つかったから残りの人生をその子のために過ごすために王族の地位を捨てたと。
とはいえ、天才王子と呼ばれるほど王族の中でもかなり知名度が高い故に、平民にすることも出来ずに公爵家に納め、現在は王族の補佐として城と冒険者と言うより相談屋としてギルドを行ったり来たりしているのだとか。
予言者という二つ名があるほどその予測はすさまじく未来が見えているわけではないのに、聞いた情報から推理して推測する内容はほぼ百発百中。
それほどの方なのだ。
その娘さんも幸せなのだろう。
凄く仕事が出来る方故に格好いいらしいが現在は娘にデレデレ状態になっているらしいと商人たちも言っていたが・・落差がひどすぎて全くどういう人物が分からないな。
その後、建物はそれほど広くないらしく(10人ほどゆったりと過ごせる程度の広さだな)広場に被害者たちを休めつつ改めて話を続ける。
「改めて自己紹介をしよう。ワシはバレク。バレク・クラリティ・フォルシェンじゃ。娘夫婦と孫はルミエールたちと共に殲滅戦に向かっておる。」
「バレク殿も王族縁のある方々だったのですか!?」
ミドルネームに国の名前がある者たちは王族だ。
「ワシらの場合は、ワシらが忠誠を誓う主に王族と縁のある者がいるだけじゃ。所謂分家のようなものじゃな。」
なるほど。
「私はアリス。クラリティ王国ギルドに所属しており、イリス様の懐刀であるラウの嫁です。」
純粋な金色の髪をまっすぐ伸ばしたとても柔らかく優しい雰囲気を纏った女性。
表情はフリージアちゃんほどではないが控え目でクールな印象が少々目立つが、確かに美人だ。
結婚したい女性の理想を聞いたときによく聞くような内容をあらかた軽くこなせそうな感じの女性だ。
細かいところを察して気遣ってくれたり優しくしてくれたりなどだな。
さぞモテただろう。
「ラウ殿は結婚していたのですね。」
「あの兄ちゃんやるな。こんな美人さん捕まえて。」
「まぁ、確かに器用だし強いし、気遣いも出来るからかなり優良物件だよな。」
「てか、あの人騎士っぽいと思ってたら騎士も騎士であの第一王子の懐刀かよ。・・強いわけだ。」
「お前ら落ち着け。ですが、あなたはラウ殿と結婚していたのですね。」
「そういえば以前会ったことがあったのでしたね。」
「えぇ。結婚して長いのですか?」
「いいえ?モリオンさんが出会った後でクラリティ王国にたどり着いたときに初対面で互いに一目惚れでその場でそのまま結婚した程度ですよ?」
幸せそうにほほえんでそう教えてくれたアリス。
「出会って数分!?」
「短っ!」
「大丈夫なのかあの人!?」
「大丈夫じゃ。今では立派なバカップルじゃ。」
「ば、バレクさん・・はっきりと言わないで下さい//」
赤を赤くしてバレクへ抗議するアリスを見てモリオンは内心、良い関係が築けているようで良かったと安堵していた。
「そして、こっちの2人はグランとライラ。」
「よろしく頼む。」
「よろしくお願いしますね。」
「えと・・聞き間違いでなければクラリティ王国の王族の?」
纏っている覇気と言い、さりげない仕草から高貴さを感じるこの感じと陛下の護衛として拝見したことがあったが見間違いじゃないはず。
「それで合っておるよ。」
「娘息子に籍を明け渡してここでのんびりと過ごしているのですよ?とても穏やかで過ごしやすいですわ。」
のんびりとそう答える前国王と前王妃。
・・・見間違いじゃなかった。
モリオンは内心、こんなところに王族は大丈夫かと思ったが瞬時にその考えを否定した。
何せ、フォルシェンファミリーの拠点なのだ。
スパイどころか敵意を持った人間が近づくことすら一切あり得ないだろう。
「あ!そうでした。すぐにでも加勢に行かなければ。」
「慌てずとも良いよ。」
「ですが、拠点の数もですが、敵の数も桁違いなのですよ?」
「あやつらが嬉々として潰しに行った故に、楽しみを奪うべきではないよ。」
「楽しみ・・」
「うむ。普段から真面目に鍛えてはおるが全力を出せる機会がないとぶつくさいっておったからなぁ。」
「散歩を喜ぶ犬のようにはしゃいでましたね。」
「それに彼らも優秀じゃ。心配はいらぬ。それに我らの主がいるのじゃ。敵は1人残らずいなくなるじゃろう。」
「そうですね。」
世間的には主の扱い方が異なっていると言うか間違っているような気もするが、絶対的な信頼心やクラリティ王国の国柄からすると納得する。
後は、強者が上に立つ国だからこそこの感覚が当たり前なのだろう。
お国柄によってあらゆることが自身の国とは異なるとはまさしくこれだろう。
とはいえ
「ですが、あの感じからすると被害者たちはまだいそうですので彼らの誘導や保護だけでも・・」
「そうじゃな。ワシはこの地を守る必要があるからな、頼んでも良いか?」
「お任せ下さい。」
とりあえず、やるべきことや方針は決まった。
そして私は部下を引き連れ、来たときと同様、複数の小グループに分け流星の里を後にした。
「団長・・・・俺、団長と幼女様たち以外上はいないと思ってましたけど、いるところにはいるんですね。」
「俺も同感。まさか、サポートする必要すらないほどの強者ばかり集まってると思わなかった。」
「おまけに数人か下手すれば単独でスタンピートは対処出来るレベルとか、予想異常すぎる。」
「そうだなぁ・・。私も予想外だった。近くに流星の里がある故に協力戦になるとは思ってたが、まさかあらゆる意味で予想を上回るファミリーだった。」
「だとしても、その公爵家当主様ってどんな人なんですかね?」
「確か元第一王子であの天才王子なんですよね?強いんですか?あの国の王様だから強いのは分かるんすけど。」
「強いぞ?弓の名手でどれだけ離れていても百発百中で、接近戦もあの国の騎士団長と良い勝負が出来るほどだと聞いている。」
「あの国の騎士団長ってあのクラリティ王国最強とか黒騎士とか呼ばれてるあの!?」
「あぁ。」
「弓がメイン何すよね?その人」
「そうらしい。」
「予想異常すぎる。」
「それを考えると、幼女様ってあれから5年は経つけどどれだけ強くなってるんだろうな?」
「どうだろうなぁ。あの頃ですら圧倒的だったんだ。以外と単独で軍勢とか作ってたりしてな。」
「あはは!・・否定出来ない。」
「獣魔だけでもエグいのにそのリーダー格が予想以上だし。」
「そんなことよりもお前らはフリージアちゃんのことをいい加減幼女様と呼ぶのを辞めろ。あの頃からもう5年も経つんだ。そんなに幼いはずがないだろうが。それに失礼だぞ。表向きではあまり知られていないがあの子は英雄だぞ?」
表向きでは言われていない。
それは、ギルドマスターと国王と言った極々一部だけが知っている超極秘事項。
ギルドカードには討伐した魔物の数と種類が自動的に登録される。
その中に、単独では決して討伐することなんて不可能なものを何体も倒しているのに加え、スタンピートも何度も対処している。
おまけに指名手配犯の討伐件数も同様にものすごい数を倒している。
「けど、幼女様ってあの頃ですら超絶美幼女だったから大きくなったらしい今だと一際美少女になってるんじゃね?」
「何を当たり前なことを言ってるんだよ。」
「だな。」
「そうなるとさ・・誘拐とか悪質なナンパとか大丈夫か?あの子」
「あぁ・・大丈夫じゃね?保護者とか獣魔たちが色んな意味でエグいし。」
「確かにな。」
「とりあえず、お前らは幼女様以外の呼び方で呼べ。」
全員「なら少女様だな!」
「なぜお前らは名前を呼ぶという答えにならないんだ!」
頭が痛い・・。
普通に名前でもクテン様でも何でもあるのにどうしてこいつらはそんな失礼な呼び方にするんだ。
あの子がおおらかというか細かい部分はスルーする性格だから許されるんだぞ?
あの子がもし貴族だったりあの子の保護者となる人が超絶的な過保護だったらお前らあっという間にボコられるぞ?
「えぇ・・」
「だって・・」
「なぁ?」
「はぁ・・・お前らに言う私がバカだった・・とりあえず話しはここまでだ。」
全員「はっ!」
色々と言いたいことは山ほどあるが今はそんなことをしている場合じゃない。
私たちは少人数グループに分かれ、各地に散らばる方々のサポートと共に被害者たちの引き取りと誘導を行なうために各地へ散らばる。
はぁ・・さっさと終わらせて流星の里で流星姫様のお墓参りをしたい。
あのお方とは直接会ったことはないが、憧れだったから。