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卒業に向けて(リクト)

--フリージア--

強さも数も桁違いな超大規模なスタンピートをリムさんとシャスティたち獣魔チームだけでどうにか対処した私たちです。

現在はその翌日で、学園で各自勉強をしつつ、その時の状況や相手がどんな感じだったかをリクトさんへお話ししてます。

理由としては、卒業論文を作成する為に魔物について色々と調べているそうなのでそのお手伝いです。


「なるほど・・カイザーローズとパウダースフィンクス、それにパウダーゴーレムにパウダーベリーの関係はそういう風になっていたんだね。」

「カイザーローズの恐ろしさを改めて知ったわ。確かに脅威だわ。」

「それぞれの個体を変異種へと強化し、数を増やす。しかも、カイザーローズに関しては、数を増やさずにその分を自身の強化、もしくは変異させる為にチャージさせることも出来るとか・・対処が後になればなるほど恐ろしいな。・・よく勝てたな。」

{私もリムさんも奥の手を使い、持てる力全てを出し切りましたからね。正直ギリギリでした。}

「リアちゃんが奥の手を使うほどって・・それ、相当だよね?」

「うん。それに、グリムさんも全力だったのに加えて、シャスティさんたちが全力で闘っても手数が足りないほどって想像以上だよ。」

「・・・って、リアちゃんグリムさんのことリムさんって呼ぶことにしたの?」

(コクリ)

{リムさんが私のことをリアと呼びたかったそうなので、そのお返しとばかりにそう呼ぶことにしました。}

「なぁるほどぉ。」

セイちゃんがなぜかニヤニヤしながらそう言う。

(?)

「いぃやー?仲良くなったなぁと思ってね-。」

{リムさんのことは元から信用していましたが?}

「うんまぁ・・そうなんだけどね。」

微妙な表情にセイちゃんはなってるけどスルー。


「だとしても、後になればなるほど強くなるし、数も増えるからその分儲けるのは確かだけど、その分脅威になるからそこまでして儲けたいとは思わないな。」

「と言うより、死に目に会うようなことをしてまで儲けたいと思うのは相当なアホだと思うわ。」

「確かにね。実際、かなりの実力者であるフリージアさんたちでさえこれなんだから、そこらの冒険者ではあっという間にやられるだろうしね。」

「だとしても、リアちゃんSランク昇格おめでとう!」

「おめでとう。」

{ありがとうございます。}

「おめでとう。けど、以外だった。」

(?)

ジャンさんがそう言う。

「いやぁ、な?フリージアってかなり強いし、評価も高いから既にSランクなんだと思ってたんだよ。」

{通りすがりに色々対処はしましたが、今回のように依頼に行ったら予想以上に大規模だったと言うことがありませんでしたし、依頼を受けた数も町にそれなりにとどまっていたときに受けた程度で、後は常時展開されていたり、偶然倒した魔物の分で依頼があればと言う感じだったので、依頼を受けた数はあまり多くないんです。}

「あー。そういや、この国に来たのもここ数ヶ月の間だったな。その前も町にとどまることがほとんどなかったか。旅をしてたときいてたし。」

(コクリ)

「一番とどまってたのも、流星の里でギルドなんてないしね。」

「そこでしてたのも、魔物の討伐と、あの地を狙うアホどもの殲滅くらいだから、依頼としては確かに受けられないな。」

「そう考えると、今回の件はようやくフリージアさんのことをきちんと評価出来る良い機会だったんだね。」

「確かに。ある意味では、運が良かったのかもな。・・その分大変だっただろうけど。」

「いやぁ、隣で話を聞いてたけど、かなりとんでもなかったみたいだね。俺がそんなのに巻き込まれたら対処はするけど、後は1週間くらいは仕事さぼってゴロ寝日和間違いなしだね。」

ネルさんがそう言う。

「うん・・否定出来ない。」

「なら、リアちゃん・・休まなくて良かったの?今も刺繍してるし、普通に学園に来てるし。」

{刺繍自体は、落ち着いて今は一定数作れば良いですし、慣れたのでそれほど大変ではありませんよ。}

「けど、昨日今日の話だしまだ疲れとか残ってるんじゃないの?」

{その辺りは否定しませんが問題ありません。それに、学園を休むほどでもありませんから。}

「そう言うモノなの?」

{そう言うモノです。しっかり食べてるので問題ありません。}

「・・・それって、いつも以上にってこと?」

(コクリ)

「・・・・」

「・・・・」

「あ、丁度お昼の時間だね。」


と言うわけで、お昼ご飯を食べていると全員がなぜか固まってる。

(?)

「いや、かわいく首をかしげられても・・って言うか、どれだけ食べるの!?いや、理由は聞いたから分かるけど!」

{軽く10人前と、おやつで6人前ですが?}

大雑把に言ってるので正しく言うと後2~3人前は実際は多かったりします。

「じゅっ!?・・て、量を聞いてるんじゃなくて!いや、そうなんだけど!」

「・・普段は何人前なんだ?あのでっかい弁当箱は」

{普段は5人前と、おやつで3人前です。}

「軽く倍かよ・・」

普段は5段のお重の箱と3段のを持ってきていますが、本日はそれを2倍持ってきています。

だって、それ以上おっきいのがなかったんですもの。


「・・そんなに食べてるのになんでそんなにスタイル良いの?」

なぜかシスカさんが私を抱き締めながらしつこく私のお腹や腰回りを撫で回してる。


私ってスタイルが良いんですかね?

おっぱいは膨らみ始めましたけどまだまだちっちゃいですし。

まぁ・・腰とかお尻の辺りは余分なお肉はないですけど(リリさん談)

いわゆるくびれ?とかは出来てるらしいです(アルちゃん談)

{食べた分消費されているからでは?}

「・・・うん、そうなんだけど・・けど、女の子としてはやっぱり気になるのよ・・。」

{シスカさんも、十分スタイルは良いと思うのですが。}

「頑張ってるモノ・・。」

ちなみに、セイちゃんは微妙に視線を逸らしてる。

だって、シスカさんが複雑そうな顔でセイちゃんをチラ見してたんですが、その視線に気づいてませんと言う感じを装ってるんですもの。


私は、お腹が空いたからお腹いっぱいになるまで食べてるだけです。

ただ、食べれば食べるほどちょっとずつ食べられる限界量が増えてるんですよね。

翠ちゃんが言うには、胃袋は伸び縮みするらしく、食べる量が多くなればその分広く、少なかったら縮んでしまうらしいですけど。


特にスタイルが云々とかは考えたことないです。

・・まぁ、日々の習慣として勉強も運動も心がけてるので考えていないと言えなくもないですけど無自覚と言う扱いのはずです。

で、それはセイちゃんも同様で私ほど食べてはいないモノの栄養バランスをそれなりに考えつつも好きなモノをお腹いっぱい食べて、スタイル云々で気をつけてなかったりします。


ユウちゃんはと言うと、実はそういうのを気にしてたりします。

まぁ、シスカさんが言うような方面とは微妙に違いますけど。

と言うのも、ユウちゃんとしてはがっちりとした肉体を目指しているそうなので、栄養バランスを考えつつ、贅肉はなくすようにして、全身まんべんなく鍛えるようにしてますから。

と言っても、ガチムチを目指しているのではなく、いわゆる細マッチョを目指してるそうです。

ユウちゃん的には、ノクスさんのような肉体を目指してるそうですよ?

彼は、身長からすると横幅は平均的ですが、いわゆるアスリート系マッチョと呼ばれるくらいらしいです。

細マッチョより微妙に筋肉が多いかな?というくらいです。

けど、実際ユウちゃんは凄く細いですけど、足は速いですし、力持ちさんです。

そこそこ速く走るシャスティと良い勝負出来るくらいは走れますし、ハディちゃんが褒めるくらいの力はあるみたいですし。



「でも、リアちゃんの場合は周囲が何かしらさりげなく施してる可能性はありますよね。」

セイちゃんがそう言うと

「あー・・否定出来ないかもです。」

アルちゃんがそうつぶやくとシスカさんが食いついた。

「それどういうこと?」

「えと・・お風呂に入ってるときにお背中流しますねーと言いながらマッサージとかしてたり、食事も栄養バランスを考えて作ってますし。その他にも、リア様とスキンシップをとりつつ色々してたりしますし・・全員が嬉々として。」

そういえば、みんな私のことを自主的に構ってくれますがそういうときは何かしら全身を撫で回してましたね。

まぁ・・撫で回すと言うよりさっきアルちゃんが言ってたようにマッサージっぽい感じはしてましたけど。

「じゃあ、やっぱりそう言うのは大事?」

「否定はしませんけど、リア様の場合はしてもしなくてもあまり変わらない気がします。・・リリさんがリア様のことをいわゆる食べても太らないタイプだわとおっしゃってましたし。」

リリさんはそういうのは結構詳しかったりするんです。

まぁ、本人は知っているだけで自身に使ったことも使おうと思ったこともないそうですが。

彼女もいわゆる食べても太らないタイプですし。


「・・今度リリさんに色々聞こう。」

シスカさんがぽつりとつぶやいた台詞に関しては全員聞こえていても聞こえなかったふりをしました。




そして、午後の授業では私は全員から休めと強く言われ、素振りも魔力操作の訓練も全て禁止され、仕方なくのんびりと翠ちゃんとラナちゃんを撫で回しつつ、みんなを眺めて過ごしました。

で、午後の授業が終わった頃、ネルさんがリクトさんへ

「リクト君、君の論文OK出たよ。」

「本当ですか?早かったですね。」

「リクトさん論文って卒業論文のことですか?」

「うん。フリージアさんの話を聞いてそれをまとめて丁度午後の授業前に出来上がったから提出したんだ。ちょっと提出期限は先だったけどね。」

元々提出期限は後1ヶ月くらいはあったそうです。

「で、君が描いた内容は学園長が個人的にも興味があったらしくて受け取ってすぐに読んだそうだよ。全く問題なしだって。むしろ、魔物について調べている人たちの研究資料としても十分役立つレベルだそうだよ。」

「それほど評価してもらえて光栄です。ですが、資料として提供するのは構わないのですが・・・内容についてはあまり公言しないで欲しいです。」

「フリージアさんの件もあるからね。内容は上手い感じでぼかしてたし、学園長も更に手を加えて更にぼかすから問題ないとは思うけど、そう言う部分は徹底させるようにするよ。閲覧レベルを高めにしとくね。」

そう言う資料には、閲覧レベルというモノがあり、レベルが高ければ高いほど、閲覧する為の条件が厳しくなっていくんです。

それだけその情報は世間へ公言してはいけないと言いますか、いわゆる社外秘?のようなモノらしいです。


「だから、リクト君には定期的にその関係の収入がギルドを経由してはいることになるよ。ささやかなレベルだけどね。」

「え!?そうなんですか?」

「ただで、資料提供なんて駄目だよ。何代か前の陛下がしっかりそう言う場合でも報酬がなければ駄目だって言って渡すように決定されてるんだから。」

「そういうことでしたらありがたく。」

「だから、後は卒業するまでテストの点はそれなりにとってもらえれば、ある程度は自由にしてもらってかまわないよ。内容によっては授業に出なくても卒業後の準備とかに充ててもらってかまわないから。」

「分かりました。ですが、卒業までは授業は出るつもりです。元々自習ですし、翠さんやフリージアさんたちがいるここの方がはかどりそうです。」

「確かにね。」

「リクトさんって卒業したら何するんですか?」

「俺は、考古学者になろうと思っているんだ。」

「それって、遺跡を調べたりするってことですか?」

「うん。世界を旅しながら遺跡とかを見て回って、当時の人たちがどういう風に生活していたかとか知りたいと思ってるんだ。まぁ、冒険者の副業って感じだから、考古学者として名を上げることはほとんどついでって感じだけどね。趣味レベルの副業だよ。」

「なるほど。」

「けど、リクトさんらしいと思う。」

「そうかな。そうだと嬉しいかな。」

{楽しければ副業でも本業でもどちらでも良いと思いますよ。}

「フリージアさんもそう思う?」

{私も似たようなモノですから。}

「ふふ。確かに。」




「そういえばネルさん。卒業試験って何をするんですか?」

元々卒業する為には、2つの条件があるんです。

あらゆる方面での成績が最低基準を超えるようにすることと、生活態度は最低条件ですが、まず提出物です。

リクトさんが出してた卒業論文か、何かしらの作品、または技を見せること。

まず、作品というのは魔道具だったり武具だったり、装飾品だったりと様々ですね。

次に、技は自身の力で編み出した魔法だったり、剣や槍などの武器を扱った技だったりです。

その技が闘い方面限定ではなく、刺繍だったり料理だったりダンスだったりしても問題ありません。


で、その中でどれかを選択して提出や披露をします。


そしてもう1つの条件というのが卒業試験。

これは、シンプルに言えば自身の実力を見せることが条件です。

外に出れば1歩間違えると簡単に死んでしまうこともおかしくない世界ですので、実力主義になってしまうのはどうしようもありません。

とはいえ、全員が戦いが得意というわけではないので、逃げるにしろ隠れるにしろ、外の世界で生きていく為の今自分自身が出来る全力を見せることが必要です。



「大抵は、俺たち教師と闘うんだけど、最近だとそこそこ高いランクの冒険者だったりこの学園のOBに頼んだりするね。まぁ、OBに頼むのがほとんどかな。」

OBとは、いわゆる卒業生のことらしいです。

知り合いだと、パパやリムさん、リーリスさんとかですかね。


「へぇー。リクトさん強いし余裕でしょ。」

「・・・・」

「リクトさんどうしたんですか?」

セイちゃんが言うと、なぜかリクトさんは複雑そうな顔になってる。

「うん・・言いたいことは分かるんだけど・・・実際のところ、その卒業試験ってかなりカオスなんだよね・・。」

「カオス?」

そこで、ネルさんが苦笑しながら答えてくれる。

「リクト君がそうなるのも分かるよ。クラス異動戦の時っぽい感じを思い浮かんでると思うけど実際は、文字通り全力を絞りきるまでどれだけ時間がかかろうとも戦い続けるモノだからね。」

「え・・・」

「ど、どうしてそこまでして・・。」

「だって、卒業したらその次の日からは外の世界で生きていくことになるんだよ?なら、一度自身の限界を知っておく必要があるでしょ?」

なるほど。

自身の限界を知っていると戦いの途中で撤退するタイミングも、回復薬を節約する為の見極めも自ずと理解出来ますね。

「な、なるほど・・。」

「それに、卒業したら確かにこの学園の卒業生として箔がつくから良い意味で注目されるし、人によっては勧誘も珍しくもないけど、そこで調子に乗ってあっさり死ぬのもいるからそうならないように一度心を折っておくんだよ。自身より上はまだまだたくさんいると分かることはとても必要なことだからね。」

「厳しすぎませんか?」

「ん?その手間のおかげで死なずに済むんだよ?むしろ安い方だと思うけど。」

うんうんと頷いているとセイちゃんがなぜか引きつった顔になってる。

「リアちゃんも同意見なの?」

{わざわざ教えてもらえるだけでも幸運だと思いますよ。もし、そういうことをせずに卒業出来たとしてその後で現実を知るか死なずとも一生1人で生きていけない体になった後で後悔するよりマシでは?}

「リアちゃん・・厳しすぎるよ。」

{正直学園側からすると死のうが生きようが所詮は他人です。そんな有象無象の為にわざわざ時間とお金をかけてまでしてもらえるんです。そこで文句があるならその場で死ねばいい。}

私はそう思っている。

生温い考えだけで生きていけると思っている時点でふざけていると思う。

どんなに格下相手でも死ぬことだってある。

ちょっと調子に乗っただけで一生後悔するようなことだってある。

そうならない為にわざわざしてもらえるだけ幸運なんです。

全員が絶句しているので、私は一言伝える。

{それがいやなら、私と同じことを経験させましょうか?}

「っ!」

セイちゃんとユウちゃんは、目を見開いて私の気持ちを瞬時に理解した。

「そっか・・冗談抜きで”そうなる”可能性があるんだからその程度の苦労で済むのは凄く幸運だね。」

「うん。」

先輩たちは私たちの気持ちは分からずともその雰囲気で何か察したのか凄く複雑そうな顔になってる。

「まぁ、その辺りはおいといて、リクト君なら大丈夫でしょ。現実の理不尽は分かってるだろうし。」

「はい。フリージアさんのおかげで色々と経験することが出来ましたし。それに、自分が凄いんだなんて傲慢なことなんて言えませんよ。」

自分よりもずっと上の存在を既に知っているんだからと良いながら私をチラ見してる。


「で、それ以外にも大変な理由があるんだよね-。」

「大変な理由?」

「大抵はOBを呼ぶんだけど、いつも対応してくれるのはこの国にそこそこ長く在中していて実力もある人なんだよね。」

「私たち正直OBに当たる人たちは数人くらいしか知らないんですけど。」

「うん。イリス様は身分的に頼めなかったから、いつもグリム君かリーリスさんなんだよね。今年は、イリス様も嬉々として対応してくれるっぽいけど。」


セイちゃんとユウちゃんが絶句してる。

「あの・・リーリスさんの実力は正直知らないんですけど、感じる雰囲気からしてかなりの実力者っぽいですし、グリムさんも相当ですよね?・・ついこの間、カイザーローズをたった1人で足止めして、その前にパウダースフィンクスの群れを1人で一掃してたんですよ?」

「うん。リーリスさんも方向性は違うけど・・いや、似たようなモノか。で、グリム君と良い勝負出来るくらいの実力はあるよ。」

よく鍛えてもらってたよと朗らかに笑うネルさん。


「その辺りは別として、そこにイリスさんを混ぜて大丈夫なんですか?いや、強いのは知ってるんですけど、元とは言え王子ですし、今でも公爵家当主ですよ?」

「良いんじゃない?と言うより、本人から面白そうだから混ぜてと頼まれたって学園長が言ってたし。」

パパは、参加する気満々のようです。

「イリスさん・・」

アルちゃんが頭を抱えてる。

「けど、今年の場合はフリージアさんに頼んでもいいかもね。」

「あぁ、確かに。」

「影さんたちもいるし、リア本人も実力は折り紙付きだし。」

{私は構いませんよ。いざとなればシャスティたちを呼んでも良いですし。私の獣魔ですから呼んでも問題ないでしょうし。}

他人を呼んだとか助っ人とか乱入者が云々とか言われる必要ないですし。

言い方は悪いですけど、獣魔はその人の所有物って感じですからね。


「確かにね。まぁ、まだ確定事項じゃないし可能性の話しだから頭の端っこに頼む可能性があるってくらい覚えといて?」

(コクリ)


「そうなると、フリージアの卒業試験って誰が相手するんだろうな?」

ジャンさんがぽつりとつぶやくと全員が静かになる。

「て言うより、リアちゃんと全力で戦える人っているの?それも、奥の手を使わせるほどの。」

「イリスさんとかくらいしか思いつかない。」

パパは強いですからね。

私以上に的確に急所をぴったり狙い定めて撃ってきますから。

おまけに接近戦も全力状態のシャスティと良い勝負出来ますからね。

「だよね。」

「まぁ、その時はその時さ。」

「そうですね。」

考えを先延ばしにされた感じがするのは気のせいですかね。

まぁ、どうでもいいですね。

その時はその時です。



「そういえば、リアちゃんの戦いを見て思ったんだけど、全体を指揮するの上手だよね。」

(?)

「なんて言うか、あの大勢の影さんたちを操りながら、カルナさんたちに指示出してるわけだし、それに合わせてリアちゃん自身も全体のフォローもしてるでしょ?」

「そういえばそうだな。」

カードさん、何か増えてます?





補助技:【内外念話】【奉納】【心意加増】【精神統一】【アクロバティック】【合気】【威圧】【暗器】【鉄壁の心】【月翼】【指揮】




【指揮】

全体を把握し、統一させ、自由自在に言葉巧みに動かすことが出来る。

指揮する対象が多ければ多いほど全体の集中力が向上する。





で、指揮というのがあったので伝えました。

「やっぱりあったか。」

「これって確か、凄く重宝される技よ。」

「シスカさんそうなんですか?」

「えぇ、騎士団を始め、人数の多いパーティもだけど、スタンピートが起きたときなんて臨時のクランを立ち上げることだって珍しくないし、パーティ同士の連携もある。そういうときに指揮系統を誰がとるかってなったときにまず【指揮】の有無を確認するほどだし。」

「これのあるなしでどのくらい変わるんですか?」

「人数の規模にもよるけど、全員がぼろぼろでかろうじて勝てた!と言うのが、疲れてはいても怪我は軽く済んだくらいに収まる程度だよ。」

「凄いですね。」

「フリージアさんの場合は、身分的にも戦法的にも人を動かす側だからぴったりだね。」

「確かに。」









「そういえば、さっきの話しでも思ったんだけど、イリスさんって元王子様だよね?」

「そうだけどどうしたの?」

「いや、実力だけを見ても下手すればノクスさんレベルかそれ以上くらいは強いから。」

「あぁ・・」

「イリス様はペチュニア様と毎日模擬戦も特訓もしてたからね。おまけにイリス様は真面目で努力家だから自己鍛錬もそれプラスで毎日欠かさずやってたし、今もやってるらしいし。戦法は異なるけど、自身の戦闘パターンに相手を引き込んだらノクス団長相手でも勝てると思うよ。」

接近戦に持ち込まれると良い勝負は出来ても最終的にノクスさんが勝ちますし、遠距離戦に持っていくと同じく良い勝負は出来ても最終的にパパが勝ちます。

自身の強みを活かせた方が勝ちとはよく言ったモノです。

「・・王子様って守られる側だよね?」

「そうだね・・」

「リアちゃん見てたらさすが親子と思うけど。」

「あー」

「リア様も守られる側ですけど、誰よりも強いですからね。」

「この国は、身分関係なく努力家が昔から多いんだ。そのせいあって身分が高ければ高いほど強かったりするんだよねー。おまけに知識も比例して高いから。」

「知識でも戦闘でもどちらの意味でも実力主義な国なんですね・・」

「そうだね。」

{他の国では違うのですか?}

「全部が全部じゃないけど、大抵は身分が高ければそれだけ周囲のメンツが強くても本人は守られるだけで弱いんだ。」

そう言うモノなんですね。

身分が低ければそれだけ危険な状態と寄り添って生きているので強くなければ生きていけない。

けれど、身分が高いと守る人がいるから本人は強くなくても生きていける。


・・生温い人たちばかりですね。

反吐が出る。





「だから稀に、アホなことを企んでこの国にスパイとか暗殺者とか送り込むのがいるんだけど、お世話するだけのメイドさんにあっさり見つかってやられてたり、陛下や貴族の当主本人に返り討ちに遭うどころか盛大に玩具にされることもあったりするんだ。」

「それ・・暗殺者とか送り込んだ側が度肝抜かれる感じですね。」

「うん。そういうのは全員捕まえて情報は吐かせるだけ吐かせて1人残らず捕まえて強制的に真人間にさせるのがこの国のやり方だから。」

「徹底的・・」

「先祖代々王族も貴族も国民も・・身分関係なくそう言う人たちが集った国なんだ。誰が決めたわけでもなく、子孫へ伝えようと思う人は1人もいないけど、なぜか全員1人残らず同じ思考になることで有名なんだ。だからこの国は正義に染まる国って呼ばれてたりするんだよ。」

「正義が集う場所じゃなくて染まるんですね・・。」

「うん。悪なら強制的に反省させて正義に染め上げるか、悪を一欠片も考えないように徹底的に心と体をへし折ってるしね。どんな人も悪を考えることがなくなるんだよ。正義になるか人生辞めるかのどっちかだけだし。」

「・・・」

うんうん。

良い国ですね。

何か、この国怖いとかつぶやいてる私のメイドさんがいたりしますけど気にしない。

「あ、だから城勤めの人たちってあんなに強くなるのに必死なんですね。・・私もですけど」

アルちゃんがそう言った。

「そうそう。守る側に守られるって言う相当な屈辱を味わうことになるからね。けど、この国は凄く良い国だから将来勤めたい場所では凄く人気が高いんだ。」

確かに、守るべき人から守られるのは守るがわからすれば自分の存在価値って何?ってなりますもんね。

まぁ、人のこと言えませんけど、守られる間にさっさと自力で殺っちゃった方が楽で、手早いんですもの。


改めて聞くと、私はこの国の血筋をしっかりと受け継いでいるんですね。

私としては当たり前と思っていたことはこの国の当たり前と同じでしたし。

「まぁ、誰が相手でも全力で頑張るだけだよ。」

「リクトさんの言う通りですね。頑張って下さい。」

「うん。だから、残りの学園生活、改めてよろしくね。」

リクトさんとまた少し仲良くなれた気がしました。

残り数ヶ月ですけど、よろしくお願いしますね。

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