依頼デートからの帰還
--フリージア--
無事にバラのお化けを倒した私たちは、野営して1晩すごし、その森に過ごしていた動物たちを天国へ見送った後、そのお礼として金色の球と銀色の球をもらい、それはそれぞれ私とリムさんの武器に吸い込まれ、武器は強化されました。
「にしても、ホント疲れたわぁ。」
リムさんがぐったりとしつつそうつぶやく。
今は、ハディちゃんの背中に乗って帰宅中
ある程度は回復してはいますが、急ぐ必要もないですし、それでも疲れているので速度はお馬さんがぼちぼち走ってるくらいの速度です。
{リムさんは怪我の方は大丈夫ですか?}
リムさんは、お腹の骨にヒビが入ってたらしいのでシャスティが塗り薬を調合して対処済みです。
シャスティたちは掠り傷や打撲跡程度でした。
私自体は表立った怪我はありませんが、その分魔法で対処していたこともあり、頭痛と倦怠感がある感じです。
魔法・・と言うか魔力の酷使によって頭に負荷がかかりまくっていたのでその影響です。
ですので、私たちは移動しながら果物や干し肉など何かしらもぐもぐしています。
だってお腹が空いたんですもの。
「あぁ、大丈夫だ。シャスティの塗り薬が効いてるからな。だがまぁ、しばらくは無茶は出来ないと思うけどな。」
さすがに疲れたと苦笑いしながらつぶやいてる。
ホントにリムさんお疲れ様です。
ずっとあのでっかいお花を足止めしてたんですから。
え?
私もタイマンはって対処出来てただろうって?
いやいや、アレは奥の手ですし、元々あぁいうばかでかかったりアホみたいに強い相手限定で使うモノなのでアレを使って対処出来ないと駄目なんですよ。
そのために編みだしたモノなんですから。
「いや、ホントハディ・・助かるよ」
「ニャー(気にするな)」
しみじみと駆けるハディちゃんの背中の上でリムさんが言うと、ハディちゃんがそう答えていると私は伝える。
リムさん、ホントくたびれてますもんね。
私もシャスティたちも全員ですけど。
なにせ、大量発生していた数もエグいけど、その1体1体が最低でもAランクと結構高ランクなわけですし。
おまけにその幹部は1周りも上で、更に最上位は2周りも3回りも上だった。
そんなのと私たちだけで対処してたわけですから。
しかも、休憩もまともに息をつく隙すらもなかった。
私自身、怪我などはなく疲労だけですが、普段以上に広範囲に状況を見なければならなかったし、1体1体がとんでもなく硬かったのと数が多かったので急所を1発で貫くように強くイメージし続ける必要がありました。
なので、とんでもなく硬い相手だったので込める魔力もそれなりに必要でしたし、貫通力を高める為になるべく細く細くするようにしたので・・つまりは、魔力の密度を高めていたわけですが、そのイメージもしてたのでホント大変でした。
おまけに最後は、出し惜しみなく、【守護者召喚】を使いましたしね。
とにかく茨を切断したりちぎりまくって相手の魔力を消費させる必要がありましたし、それ以外に対処出来なかった。
それにあの場では私自身でとどめを刺すのは難しかった。
なにせ、もし出来たとしてもあの大量の茨を全て対処するので精一杯だったので、いくつかは周囲へ被害が及ぶ可能性もありましたから。
まぁ・・私自身にもですけど。
・・本音を言うと、頭はガンガンするし、眠いし疲れたしお腹も食べても食べても空いてるしで、このまま倒れて気絶したい気分ですよ。
けど、リムさんも同じはずなのにそうなってないですし、カルナたちも同様。
だから、心配させない為にも私たちはほとんど気合いで意識を保っている感じ
なので、帰りがけである今、襲ってくる魔物は翠ちゃんがさっさと溶解してます。
ホントに助かります。
翠ちゃんは体力も睡眠欲も存在しませんからね。
いくらでも動くことが出来ます。
だというのに、通りすがりではやけに魔物が襲ってくる。
まぁ、翠ちゃんが速攻で食べてるけど。
私も射撃で潰してはいます。
リムさんも黒炎を飛ばして対処してますし
けど、翠ちゃんがたまには年上を頼ってとのことで私たちは実はそんな出番はほとんどなかったりします。
「だとしても、リア。今回は色々と申し訳なかった。まさか、スタンピートに巻き込まれるとは思わなかった。」
{しょうがないと思いますよ。それに、気にしないで下さい。お互い様です。}
「そうだな。あまりくよくよしててもかっこわるいし、勝利出来たことを喜んだ方が良いな。」
(コクリ)
「だとしても、リアの奥の手、マジで凄かったな。」
{リムさんのあの炎に包まれてる状態のも凄かったですよ?}
「ありがとな。俺のアレも奥の手みたいなモノなんだ。見ての通り周囲は問答無用で焼き尽くしてしまうからな。使いどころが難しいんだ。」
{なるほど。私のも似たようなモノですよ。魔力もそれなりに消費しますし、イメージする部分で結構大変ですから。アレは状況次第では使わない方が効率的だったりするんです。}
「あー、普段の魔法操作だけで対処出来るのをわざわざアレを使っても無駄に魔力を減らすだけか。確かに。互いに使いどころが大事なワザって感じだな。」
(コクリ)
「だとしても、あの村の件はどうしたものか。」
村の件・・あぁ、スタンピートをどうにかしようとする私たちに色々言って結果として強制的に黙らせたアレですね。
「ありのままに言ってしまえば良いんじゃないか?」
「カルナもそう思うか?てか、それ以外に思いつかなかったから悩んでたんだが。」
「俺も一緒だ。それに、下手に嘘をついても損しかしない。」
「確かに。・・一応冒険者以外の就職先も考えといが方が良いかもなぁ・・。」
{そうですね。私もそのつもりで動くようにします。}
私は、魔術師団長としてメインに動く感じになりますかね。
リムさんだと、パン屋さんをメインにしたり、宰相であるグリルさんから誘われてたからお城の騎士さんとして働く可能性もありますね。
おそらくは後者になりそうですけどね、リムさんの場合は。
「まぁ、なんとかなるんじゃない?」
「そうだな。今回ばかりは行き当たりばったりしかないし、なるようになるさ。」
「お疲れ様でした。ランクアップや報酬に関してはお城の方で行ないますね。」
数時間後に無事に到着し、ギルドで受付をしていた姉さんに素直にありのままに報告したらその台詞でした。
「・・なぁ、アリスさん。あの村の方からクレームとかなかったのか?」
「いいえ?あったのは謝罪だけでしたよ。」
どうやら通信用の魔道具で連絡があったらしいが・・
「村の近くで闘う音も響くぶつかり合う音も常に漂ってくる濃密な魔力に殺気などなどが止めどなく迫っていたのに加えて、収まったかと思えば森が1周り巨大化して復活して魔物が一切消えていたそうです。」
私たちの戦いはあの村の方にも響いていたみたいです。
「それで、謝罪の言葉と報酬の倍加の連絡でした。ただ・・」
「ただ?」
「背後からごめんなさいとつぶやき続ける声がずーっと聞こえてたんですよねぇ。複数。」
絶望してますという雰囲気まで通信機越しに漂ってきたそうです。
もしかして、トラウマになってましたか?
効果がありすぎました?
まぁ、どうでもいいですね。
「なるほどな。とりあえず冒険者は続けていいわけか」
「そうなりますね。と言うより、スタンピートを単独パーティで対処して下さった時点でそんな些細なことなんてどうでもいいです。」
「どうでもいいって・・」
「たかだが、依頼主の指示に逆らった程度のことなんて、かなりの高ランクのスタンピートの対処の頑張りで軽くひねり潰せますよ。」
「い、以外とアリスさん言うな・・・」
リムさんが微妙に引きつった顔になってますけどスルー。
けどまぁ、報酬の一部でその程度のことは確かにもみ消せますね。
納得です。
「それで、どうしてここじゃなくて城の方でするんだ?」
「換金するものが1つ1つが桁違いにランクが高いことと、量が量ですからギルドでは対処不可能だからです。」
粉モノは全てグリムさんへ
ベリー系の果実は私と半分こ
パウダースフィンクスとカイザーローズの魔核は私の元へ
残りの魔石や、カイザーローズの部位などは全て換金して半分こ
今回はこんな感じになりました。
で、1つ1つのランクは低くてもSに近いほどで、最も高いのはカイザーローズ。
おまけに変異種へと進化してるので一言で言うとランクアップしてる。
だから茨の1本どころか輪切りされた1つだけでもとんでもなく高かったりする。
武器でも防具でも建物の素材としてもどれに使っても超一品。
私たちは必要ないですからね。
「とりあえず、報酬金だけこちらでお渡ししますね。」
報酬は、銀貨20枚。
元々10枚だったらしいです。
このお金はきれいに半分こしました。
で、丁度お昼だったのでお腹いっぱい近くの食堂で今回の報酬金を使って食べました。
普段以上に消耗していたこともあり、すっごい食べました。
リムさんは5人前くらいで、私は10人前くらい。
てへ♪
ハディちゃんたちも数人前は軽く食べてたので報酬金がほとんど吹っ飛びましたけど、そんなモノだそうです。
だって、疲れたからお腹空いてたんですもの。
それに、頑張ったご褒美だってカルナも言ってましたし。
まぁ、その後で5人前くらいおやつを注文して追加で食べましたけど。
その前に大量に食べてる私を見てどん引きしている人たちがいたり、おやつを追加で食べてて口が開いたままだったりする人たちが周囲にいたりしましたけどスルーです。
それと、今私はリリさんとアルちゃんに左右から抱き締められ、愛でられてます。
正しく言うと、2人のおっぱいに左右から挟まれてます。
大変素晴らしいですけど、動けません。
だって、私の両手もしっかり抱き締められて動けないんですもの。
おまけにあ~んしてもらってる状況なので動く必要もなしという有様。
で、なぜ2人がいるかというと、お昼ご飯を食べようとしたところで気配に気づいたのか何なのか突然現れたからです。
「グリムさん、これで完了です。」
「さすがだな。サンキュー」
「いえ。」
セイちゃんとユウちゃんもやってきてるので私たちの怪我はあっという間に治してもらいました。
「リアも大変だったね。」
「ホントだよ。けど、さすがだよね。かなりの大物だったみたいだし。」
「確かになぁ・・物理的にも強さ的にも凄かった。」
「お嬢様お疲れ様でした。」
{リカルさん、私がいない間、大丈夫でしたか?}
「問題ありませんでしたよ。私の大ファンだと豪語する方が何人かいらして、大金をおいて行った程度です。」
金貨を数枚強制的に握らせてナムナムされて去って行ったそうです。
かなりダンディでスリムなおじさまたちだったそうですよ?
「ホント凄かったわよ?まさに崇拝者って感じだったわ。」
リリさんがしみじみとつぶやく。
「敵意もかけらもありませんでした。ホントに純粋にファンでリカルさんに直々に描いてもらったことが凄く嬉しかったのと、お礼を言いたかったそうです。」
(?)
「何か、その人たちの妻が精神的にふさぎ込んでたり、本人たちも色々あって落ち込んでたそうなんだけど、リカルさんの絵のおかげで立ち直ったんだって。それも、何度も。」
「今では毎日リカルさんの絵に向かってお祈りする習慣すら出来たほどだったそうです。」
リカルさん凄いですね。
「それで、それほど俺の絵が大切にしてもらえたので、ささやかながらにモノクロ画を描かせて頂き、渡したのですが余計に感謝され、崇拝されました。」
「まさしく崇拝者って感じだったわね。」
「あそこまで熱心な方は初めてでした。大抵の方は自分のもとに来いという方々だけだったので。」
「大変そうねぇ」
「そんなモノですよ。ですが、お嬢様の元に来てからはそんなことは皆無でとても快適です。」
「そりゃそうよ。リアちゃんとイリスさん相手にするようなモノなんだもの。この子たちの身内認定されてるんだから、そんな人相手にそんなこという人なんて相当なアホでしょ。」
「それもそうですよね。身分的にも知名度的にも。」
「俺個人としても、どんなに待遇が良かったとしてもお嬢様の元から離れることはあり得ませんよ。元々そんなことの為にお嬢様の傍に居るわけではありませんし。」
「分かる分かる。」
「そういえばお嬢様。アリスさんからの伝言で、お昼ご飯が済んだところでお城に行って欲しいそうです。その準備が整ったそうです。」
「・・・・早すぎないか?数時間くらいしか経ってないぞ?」
「この国ではよくあることだそうですよ。」
アルちゃんがここのお城のメイドさんたちに教わったそうですが、
お母さんの暴走を相手してたり、パパの頑張りなどに振り回されたり、追いつこうと努力しているのはこの国のトップである王族も騎士もメイドも他の貴族たちも全員なので、その影響もあって大抵のことは当日か数日で済ませてしまうんだそうです。
「なので、この国で城勤めになるにはかなり難しく、敷居が高いそうですが、その分待遇は良いですし、どのお方も様々な意味で魅力的ですので就職先としては凄く魅力的なんです。」
「なるほどなぁ・・。他の国からすると驚かれるんじゃないのか?」
「驚かれるそうです。見習おうとはしているそうですがなかなか上手くいかないので、せいぜい無駄が微妙に省けた程度だそうですよ。」
「それでも十分だと思うけどな。さて、食い終わったし落ち着いたしいくか。」
(コクリ)
そして、お城へ向かい、謁見の間にやってきました。
「早速だが、ご苦労であった。」
お兄ちゃんが王様モードです。
微妙にしゃべり方が硬くなるんですよね。
「疲れているだろうからな。早速本題に入ろう。まず2人は、ギルドランクをSランクへ昇格とする。」
いきなり数ランク飛ばしてですか?
「今回の件もそうだが、これまで受けていた依頼でも評価は非常に高かったそうだ。故に、ランクアップ自体は今回の件がなくともあった。それに単独パーティで挑もうとした勇気も、実際に死傷者なく討伐したこと。それに、森を修復したことも含め、Sランクにふさわしいという結果となった。」
お兄ちゃんたち王族もギルドマスターたちも全員が頷く。
「次に、報酬金だ。全額で金貨1000枚だ。」
・・・すっごい高いです。
リムさんは絶句してる。
「高すぎると顔に書いてあるぞ?」
リムさんを見ながらどこか楽しそうにほほえむお兄ちゃん相手にとりあえずフリーズしているリムさんの代わりに頷く。
「単独でスタンピートを対処したことに対する報酬金と、換金した金額だ。今回のモノに関しても非常に素晴らしいモノだからな。そのくらいの価値は当然ある。それに、後々に依頼として出す可能性のあった事案が複数紛れていた故に、その関連の報酬金も含んでいる。」
なるほど。
報酬金も含んでたわけですね。
「それと、これは別件となるがフリージアよ。お主の刺繍の件だがようやく落ち着いた。これまで作ってもらった一部を交易している国の上位者へ実は渡していたのだが、非常に評価が良くてな。その報酬金も渡しておこう。」
(コクリ)
金貨50枚でした。
ハンカチにしては高すぎると思ってたんですけど、それだけ素晴らしいと評価してもらったんだと言われてもらうしかありませんでした。
その後は、定期的に売上金が定期的に届く感じになるそうです。
まぁ、私が作った分のですけど。
それと、販売する数も1週間でハンカチを100枚限定と確定しました。(柄や模様は私の自由)
個人で作るには多いと言われましたが、慣れてしまったのであまり時間がかかりませんし、影さんたちも作ってるのでそれほど大変ではないんです。
それに楽しいですしね。
ちなみに、ここだけの話ですが私のモノの贋作を作ろうとした人がチラホラいたらしいですけど、瞬殺でバレて、それはそれは心身共にボッコボコにされたんだそうです。
ついでに、賠償金?としてそれはそれは搾り取れるだけ搾り取ったんだそうです。
そんなお金が不定期に届くようになったりするのはここだけの話。
で、なぜにバレた?と思ったのですが、どうやら私が作った刺繍はなぜか触れた瞬間に分かるんだそうです。
ほんのりとお花の香りがするとか、なんとか。
まぁ、使っている糸もかなり特殊なモノですからそんじょそこらでは決して手に入りませんしね。
使っているのは、ぱっと見は無色透明な糸です。
けど、この糸は縫う人の魔力を吸うことでその魔力の属性にあわせて色が変化するというちょっと面白い特性があるんです。
つまりは、私の魔法である陰は漆黒に染まるんです。
けど、透明感は高いままなので黒い色でも淡い色の布でもなぜか良い感じにマッチします。
で、世間的にはただの黒い糸だと思われて、それをまねるそうですが実際はかなり違っているので触れただけですぐに分かるんだそうです。
まぁ、その糸のことは世間的には内緒で、販売する人たちだけの秘密です。
「更に、これはフリージア、お主のあの5年間の分の賠償金だ。お金でどうにかなるモノではないが、即座に対処出来なかったことに対するモノだ。受け取って欲しい。」
私が生まれて5年間のことですね。
あの男は色々と悪いこともしていたそうですから、その辺りの対処が遅れたことに対してと、私自身に申し訳ないと言うことなのでしょう。
私個人としては既に終わったことですし、気にしなくてもいいのですがやはり気にしてたんですね。
・・お兄ちゃんたちのためにも受け取っておきましょう。
で、金貨300枚でした。
・・・まぁ、良いでしょう。
ノーコメントで。
「そして、グリム。」
「はい。」
「冒険者と兼用でも構わない。ここで、近衛として働かないか?」
おぉ。
お兄ちゃん直々のお誘いですか。
あ、リムさん絶句してる。
「仕事人間のグリルが誘うほど優秀だと聞いていますよ。」
お姉ちゃんがそう言う。
「お、俺自身・・・言葉使いなどが苦手で腕っ節ばかりですよ?」
「気にしなくていい。いざとなれば無言で頷いてるだけで良い。それに、ノクスも喋るのが苦手らしくてな、かなりストレートだろ?」
確かに。
わかりやすくて良いと思いますけど。
「それと、自分で言うのもなんですが、いきなり近衛なんて・・俺が何かやらかす可能性はなかったのですか?」
「そうだとすれば、とっくにグリルがそう言う情報を拾ってくるさ。それに、ノクスも認めていると言うことはそう言う部分もクリアしているという証拠だ。彼はそういうのに敏感だからね。」
ノクスさんに認められ、グリルさんに認められることが判断基準のようです。
私と似たようなモノでしょうか。
善悪を見抜く力とか。
「それに、ノクスたちが基本的にメインでしているから不定期でも問題ない。まぁ、出来ればこまめにいてくれたらうれしいがな。君とは仲良くしておきたいからな。」
「かしこまりました。精一杯勤めさせて頂きます。」
「あぁ、よろしく頼むな。」
「ホントに良かったわ。」
お姉ちゃんがそう言う。
「一般国民の意見も知っておきたいけれど、身分的にそう言う情報が間接的にしか届かないからグリムのような人が近くにいれば直接聞けるから。ずっと気にしてたのよ。」
なるほど
「それと、君が焼くパンも気になってたんだ。」
「えぇ!お兄様が絶賛するのですもの。」
「あ、あはは・・お気に召すかは分かりませんが、俺のでよろしければ。」
「あぁ、是非頼む。」
そんな感じで謁見は終了しました。
リムさんは、お城勤めメインで動くそうなので冒険者としては動く頻度は少なくなるそうです。
リムさんが言うには安定した職に就けたと嬉しそうです。
大変そうですけど楽しそうなので良かったです。
応援してますよ。
「にしても・・・予想以上の額になったな。」
{そうですね。}
「けどまぁ、一部は仕送りして残りはためておくかな。大金があるからとか言って依頼って言うか仕事をさぼるつもりはないしな。」
(コクリ)
私も同じです。
お金はあってもお仕事は大事です。
無駄にしたら駄目ですし、働くのが当たり前なのにその当たり前すらも面倒になってしまう可能性もありますし、そうなると人として駄目になってしまいますからね。
「ホント疲れたけど、ものすごい数は稼げたな。」
粉モノが思った以上に採取する相手が多すぎましたからね。
それに、変異種だったから余計に多かったですし。
一応説明すると、変異種は、通常の種よりも硬くて強いんですが、仕組みとしては通常種よりも体を構成している分(今回だと粉モノ)の密度の高さが違うからです。
だから、通常種よりも変異種の方が採れる粉モノの量も多くなると言うことです。
「しばらくは買わずに済むな。」
「ホントな。数ヶ月は余裕だ。」
「確かに。」
「だとしても、楽しかったよ。また、どこか時間が合えば一緒に依頼に行こうぜ」
(コクリ)
{こちらも楽しかったですよ。}
「んじゃあ、今日は早いとこ帰って休もうぜ。明日は学園だろ?」
(コクリ)
「正直俺も早く帰って寝たい。怪我自体は治してもらったがなぁ・・全身が怠いし、頭がクラクラする。」
うんうん。
私も同じ意見ですよ。
そんな感じでリムさんと分かれてお家に帰りました。
帰った時間はおやつの時間くらいでしたが、皆お家にいました。
偶然早く帰ることが出来たんだそうです。
そして、お風呂に入り、昨日と今日であったことを話しながらおやつを食べたり夕ご飯を食べたりしました。
「大変だったみたいだね。」
「師団長・・ホントお疲れ様。」
「えぇ、本当に・・。」
「敵がエグかったな・・。」
「けど、さすが師団長。」
「ホントよね。普通は単独パーティでどうにかなるレベルを軽く超えているモノ。けど、それをクリア出来るのはさすがリアちゃんよね。」
「リア様はやっぱり凄いですね。私も頑張らなくちゃ。」
「だとしても、報酬金とかの金額・・すっごいね。」
「まぁ・・師団長の場合はあの5年間も混ざってるし・・だとしても額がすっごいな、確かに。」
1000枚をリムさんと半分しましたからね。
後の分は私個人のでしたし。
で、私のハンカチの贋作を作ろうとした人の徴収金(強制)もその時に別で渡されたんですよね。
まぁ、私のハンカチは浄化の魔法付きというのと、私の刺繍というダブルで特許?と言うモノをとってるらしいですから、許可なくするのは違反なんだそうです。
ちなみに、そのお金をみんなに分けようと思ったら全員が笑顔でいらない・私が受け取っておけと即答されてしまいました。
{ですが、使うつもりはないですよ。予定もありませんし}
「そうだね。とりあえず貯めておけばいつか使う機会があるよ。」
(コクリ)
「だとしても師団長・・今日は一層よく食べますね・・。」
夕ご飯で10人前は軽く平らげた後でおやつを5人前食べてます。
その前にもおやつを3人前を軽く食べましたけど。
「ちなみに言うと、昼にも同じくらいの量を平らげてるぞ。」
「そういえばそうでした。」
「あまりにもきれいに食べてたから流してたわ。」
「・・・」
「・・・」
「ま、まぁ、たくさん消費してたわけだしな。」
「そ、そうだね。」
どうして、どんなに挙動不審なのでしょうか。
それから、お風呂に歯磨きと済ませた後、屋上で翼を広げながらのんびりと星空を眺めつつ、【月翼】の効果を確認。
確かに、ほんのりと魔力回復が早まった気がしますね。
それに、凄く心地が良い。
それにしてもホントに大変でした。
楽しかったですけど。
連戦も連戦で乱戦でしたし、ボスの集団戦の後に大ボスですからね。
魔力を回復させては使い切っての繰り返しで、おまけに頭の中では常にフル回転。
すっごい疲れたし、頭がぐわんぐわんします。
と言うわけで早々に寝るのでお休みなさい。
--グリム--
はぁ・・・。
にしても、ホント色んな意味で大変だった。
魔力も体力も限界間近の状態で出し惜しみ出来ない敵ばっかりだったし。
その敵も、数も強さも桁違いだったし。
それに、リアの奥の手はマジで凄かったな。
アレがリアの全力で、自身が出来ることの全ての集大成なんだろう。
自由自在に変化し、攻撃手段も手数も多才。
おまけにサイズも自由に出来る。
技術、知識、魔力量、心の強さも、明確なイメージの全てが揃っているリアだからこそのワザだと思う。
そうでなければ、あれほど自由自在に姿形を変え、変幻自在に操ることなんて出来ない。
ゴーレム作成の課程においての最上位に間違いなく位置するモノだ。
で、それは置いといて・・予想外に大金が手に入ってしまった。
おまけに、Sランクに昇格したし、粉の方もベリーの果実も桁違いに大量に手に入った。
金の方は・・とりあえず半分を仕送りして、残りは貯めとくか。
いつ何があるか分からないしな。
・・それに、リアの為に何か使いたいしな。
コホン。
で、その辺りは予想以上に手に入ったからそれで良しとしても、まさか陛下に近衛兵として誘われるとは思わなかった。
元々、ノクスさん経由で犯罪者関係のことを始め、騎士たちの業務の補助とかをよく指名依頼として受けていたし、その関係で宰相のグリルさんからの依頼で、犯罪者から情報を絞り出す・・つまりは拷問というか、事情聴取をしたりもしていた。
まぁ、手を出すことなんぞほとんどないがな。
大抵、威圧を強めるか、黒炎を指先に出してやるだけでホイホイ喋るしな。
で、その他にも、貴族たちより護衛としても指名依頼を受けることもよくある。
俺の威圧体質のおかげで怖がる人間は多いが、逆にそれを知っているからこそ護衛として依頼をしたいという奴も結構多い。
つまりは、敵も怖いだろうし近寄らないだろうと言うことだ。
まぁ、実力の方もそれなりに知られてるしな。
まぁ、その辺りの対策というか依頼を受けていることが多い俺だが、その評価はそれなりに高い。
後は、通りすがりに助けてやったりすることもチラホラあったが、その辺りも関係しているのか、俺の対策した結果の部分の評価の高さをグリルさんが評価してくれて、誘ってくれたりもした。
あの人は、かなり厳しいと言うことでもそれなりに有名だ。
だから、その人が褒めるか、誘うと言うことはとても凄いことなんだとか。
ノクスさんもそう言ってたし。
で、グリルさんも無理強いはしないから何かあればいつでも来て良いと言ってくれた。
まぁ、まさかの陛下からのお誘いと王族の皆さんから高い評価をもらっていたことを改めて知って近衛として働くことになったわけだが。
だから、週に数回冒険者として働き、2~3日の内、1~2日の割合で近衛として働くことになった。
大変そうだが、やりがいがありそうで興味もあったから受けることにした。
ノクスさんが言うには、基本的に腕っ節関係をメインにする感じになるだろうとのこと。
冒険者を兼用しているからこそ何だとか。
後は、国民側の意見というか、噂話とかそういう関係の情報収集をすることもあるらしい。
それは、俺が冒険者として動いているからこそ・・つまりは、騎士として聞くときと、冒険者として聞くときでは集まる情報は異なる可能性もあるからとのこと。
そんなので、役に立てるなら喜んで!ってとこだな。
後、私欲的な方面で言うなら、リアのとなりに立つにふさわしくなる為にも、冒険者以外の身分?って言うか、働き口があった方が有利だろうという意見もあったりする。
こう言ったらアレだが、冒険者は不定期だからな・・金の方が。
一応パン屋を経営はしているがあっちは、1人で生活するには微妙に厳しい?ギリギリ過ごせそう?と言う感じなのでなんとも言えない。
まぁ、元々趣味でやってるし、赤字にならなきゃ構わないって感じでやってたし問題ないがな。
最近は、リア関連の人たちが買いに来てくれたり、看板とかをリニューアルしたり、周囲の飲食店の店員たちと交流したり、あちこちでパンの焼き方を伝授したり、逆に様々な料理を教わったりしていたからその関係で俺のことを知ってくれたり評価してくれたりした人たちが買いに来てくれたりしたから、売り上げはぼちぼち伸びている。
だとしても、すっげぇ消費したからメシを食べても食べても腹が減る。
元々2~3人前くらいしか食わない俺だが、5人前を普通に昼も夜も平らげたしな。
まぁ、リアは元々5人前くらいは軽く平らげてたそうだが、普通に10人前は越えてたなぁ・・。
それ以外にもおやつを結構食ってたし。
俺はすげぇなぁくらいにしか思わなかったが、周囲で偶然居合わせた連中は口が開いたままフリーズしてたな。
まぁ・・・気持ちは分かるが。
さて、今日はさっさと寝よう。
明日は・・・ちょっとだけ遅めに起きよう。
で、パンを売りながら1日のんびり過ごそうかね。
1日くらい良いよな。
リアたちも休めって言ってたしな。
それに、今回の件だけで数日分をぶっ通しで頑張った気になるぜ。