グリムさんとデート その5
気づけば100話
--グリム--
カイザーローズ率いるパウダースフィンクスとパウダーゴーレムの軍勢というかスタンピートを俺たちは闘っている。
で、初っぱなで数を減らすためにリアの影で創りだした影の針に俺の炎を纏わせたモノを大量に作り出して大雨のごとく降り注がせて、ゴーレムは7割くらいは倒すことが出来た。
スフィンクスどもは2割ほど減らせたが、ゴーレムはそれでも大量に残ってるし、スフィンクスやローズどもが増やしているから結果としてはゴーレムは減らせたのは半分と言ったところだ。
スフィンクスは1割だな。
で、ローズは多少の傷は負わせたと思うが、修復してしまったようで無傷だ。
そして俺たちは大雑把に削ったところで接近戦で潰していた。
シャスティと翠さんがスフィンクスやゴーレムどもを引き受けてくれる代わりに俺は進路上にいるそいつらを潰しながらボスであるローズへ向かっている。
俺の炎がローズとの相性が良かったと言うのが理由でもある。
ローズは植物と土の属性と6対4くらいの割合だから効果は抜群!と言いたいが他よりは多少は効くぐらいだ。
土は炎が利きにくいんだよなぁ・・。
実際、ボス1体倒すのとその他もろもろを倒すのどっちが良い?と聞かれると正直応えられない。
ボスはあほみたいにデカいし硬いし強い。
とはいえ、その他もろもろはボスよりは弱いと言ってもあほみたいに数が多いし、硬いし強いし、何より数が増える。
一応俺たちが削っている速さの方が勝っているからどうにかなってはいるが、どっちもどっちだ。
俺の魔法は炎だ。
そして、闇属性を帯びた炎だから黒炎という黒い炎となった。
相手の恐怖心を煽り、同じ魔力量で通常の炎よりもずっと火力が高く、俺が敵に対する敵意の強さに比例して火力は上がる。
敵意に比例して火力が上がるのは闇属性特有のモノなんだと思う。
後、俺自身が威圧を常に纏っていることも関連しているのか、より敵意に比例して強くなる。
で実は俺の威圧が他の奴らよりも強いのには理由がある。
それは、威圧体質だからだ。
名前の通り、常に威圧を纏う状態となる体質だ。
だから、その状態で威圧を発動するとそのまま倍加するから他の連中よりもずっと威圧の威力が上がる。
そして、それ関連で闇属性としての相手の恐怖心を煽る部分は強化された。
それは、いつの日か火と闇と2つの属性だったのが炎に変わり、その炎に闇が纏うというか同化し、今の黒炎となった。
俺はどうやら闇属性を扱うと言うより・・威圧体質という威圧を纏っているわけでもなく、ただ闇属性として恐怖そのものを纏う体質なんだと個人的に解釈している。
そして俺は駆ける。
俺の扱う魔法の属性は広範囲よりも接近戦が向いており、その次に直線上に扱うことに向いている。
それは、扱う武器も関係している。
まぁ、長距離用の飛び道具とかはないしな。
だから、俺は遠距離技が苦手だった。
出来たとしても、刀に纏わせ、斬撃として炎を飛ばす形で、俺自身から槍や球体を飛ばすと言ったことは出来るがかなりへぼい。
てか、それをする暇があればさっさと接近して潰した方が早い。
・・まぁ、性格も関係しているのかもな。
だから普段であれば刀に黒炎を纏わせて敵を斬り刻んでいるが、今はしない。
なぜなら、大ボスが文字通りでかくて硬くて強いからだ。
つまりは、魔力をそいつ以外で無駄に消費していると保たないってことだ。
だが、そんなことを危惧する必要もなさそうだがな。
リアのサポートにより、俺の全身はリアの影が纏われ、刀にも纏ってある。
武器に纏った影は鋭く、硬い。
俺自身に纏う影は硬く、魔法ははじき返し、近づく敵はついでとばかりに貫いて葬り去っている。
大ボスであるローズのもとへまっすぐ向かいながらその進路上にいる敵を斬り飛ばしていく。
そして、敵は多い為、かなり離れた箇所でシャスティたちが頑張っている。
で、影の軍勢の数体が俺の斜め前を挟むようにして駆け、ある程度の敵を潰してくれる。
速度を速める為らしく4足歩行の姿になっているようだ。
そして、どこからともなく影の針が飛んでいき、ことごとく敵の急所を貫いている。
ちらりとリアの方を見るとリアの周りをドーム状の結界が覆われ、その結界から全方位へ影の針が無尽蔵と言いたくなるほど凄い数が飛ばされ、その針は1本も無駄にならずに敵を葬り去り、動きを阻害している。
その針はどこまでも細く、鋭い。
とことん無駄を省いたものだ。
俺は駆ける。
もし、俺1人だったらゴーレムどもを葬るだけで精一杯で、スフィンクスにすらたどり着けずに数で押し負けていただろう。
そして、俺はシャスティたちとリアとスタンピートを潰そうとしている。
敵の強さと数と、俺たちの人数を比較すると普通は無謀だと即答するレベルでムリゲーだ。
スタンピートはスタンピートでも今回のはヤバさが桁違いだ。
スタンピートにも難易度みたいなモノがある。
一番軽いモノであれば、大ボスでもAランク程度だったりするし、ボスがB前後で無駄に数が多いだけとか、ボスもいないが、アンデッドの大群だったりする。
だが、今回は一番下っ端だけでも普通にAランクは超えるだろう。
おまけに、幹部はS~SSほどで、大ボスになると変異種でない状態でさえSSを越えるのに、それが変異種になっている。
間違いなくSSSランクだろう。
それは、リアが昔倒したらしいニーズヘッグヴァンパイアと同レベルだろう。
だが、属性というか種族?の違いで、多少はこっちが闘いやすいと言うだけだ。
ニーズヘッグヴァンパイアは、近寄る生き物全てからただ近くにいて、触れていない状態でも魔力も精神力も生命力も全てを奪い去る存在するだけでもヤバイ奴だ。
そして今回は、自身の力をため込み、強化し、部下を増やすタイプだ。
ある意味では真逆の存在だろう。
そして俺はようやく、ゴーレムどもをくぐり抜けた。
で、ローズの周囲で動く気がなかったらしいスフィンクスが立ち上がる。
だが、俺はわざわざ立ち上がるまで待つ暇などないので速攻で前足を切り落とす。
「ちっ!」
リアの影を纏わせた刀だけじゃ威力が弱かったか。
傷が浅い。
そして、硬い。
俺は黒炎を刃に灯す。
で、再度斬りかかる。
今度はすぱっと切れた。
リアの影の上から黒炎を纏っているおかげか、あの獄炎の時と同様に俺の炎は強化されたらしい。
そして、前足を切られ体勢を崩している間にそいつの額を刀で貫く。
ゴーレムの急所は体の中央だが、こいつらの急所は額になぜか浮き彫り状態となっている。
どうしてわざわざ急所をわかりやすいところに設置しているのかは知らないが好都合だ。
後にあの箇所にあるからこそその額に浮き彫りとなっている核は光合成を行ない、魔力を宙から吸収し、自身を強化しているんだそうだ。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
1体を倒している間に他のスフィンクスが立ち上がる。
そして再度腕を切り落とそうとするが、その前に前足によるパンチが数体同時に襲ってくる。
俺は足に魔力を集中させてジャンプして躱し、そのままそいつらの前足を伝って駆け、肩から頭へ移動し、1体を倒し、そこからジャンプして次へ移動し、同様に倒す。
だが、それも2~3体ほどで中断させられた。
さすがにそこまで上手くいかないか。
と言うのも、丁度倒されたスフィンクスごと全方位からそいつらのパンチが襲って来たからだ。
俺は、下に滑り落ちながら自身へ魔力を纏わせて防御する。
ズガン!
という音を立てて俺の周囲へクレーターが出来上がる。
くぅぅ!
かなり効くなぁ。
だが、予想していたよりはダメージはあまりない。
確かに全身は痺れてるが、骨にヒビは入っていない。
と言うのもリアの影が守ってくれたからだ。
ホント助かる。
で、影の軍勢も数体で1体のスフィンクスにまとわりつき、手足の関節を貫いたりして動きを阻害している。
スフィンクスは振り落とそうとするがそもそも姿形などないに等しい影の軍勢はそのまま腕輪のように全身の姿形を崩してまとわりついているので全く振り落とされる雰囲気はない。
だが、そいつらはかなり頑丈なのか影の軍勢が串刺しにするがどれも数センチほどしか突きささらないようだ。
それを瞬時に察したのか、関節などの部分でへばりつき再度串刺しに変更していた。
刺さらなければ動きを阻害するようにすれば良いと判断したようだ。
さすがだ。
で、そこから核の部分である額へ向かい、刺さろうとするが今度は刺さらない。
アレはかなり硬いらしく傷がつかない。
俺の全力でどうにか砕いた程度だ。
ってことは、アレは俺が砕くしかないみたいだな。
他のメンバーはあの大量にいるゴーレムどもの相手で精一杯みたいだし俺しかいない。
実際、リアはそんな全体を把握しながらフォローしてくれているのだからこれ以上の贅沢は言ってはいけない。
俺はリアを守らなければならないんだから。
それに、あまり無茶はさせたくない。
で、俺が砕けると言っても俺個人の実力ではおそらくは出来ない。
と言うのも、今は俺の刀にリアの影が纏われ、その上から俺の黒炎が纏われ、それによって威力が倍加しているからこそ出来ている芸当だからだ。
まぁ、俺個人の実力で砕こうと思えば砕けるんだが、そうなるとかなり魔力や体力を消費するから今のような多勢の無勢のような敵がわんさかいるような状況では好ましくない。
マジで後のことを考えてる暇なんてないな・・。
俺がスフィンクスどもを数体倒している間にローズがスフィンクスを作り出しているからだ。
リアのサポートもあり、一応増える数よりも倒している数の方が上回っているのが不幸中の幸いだが、長期戦を考えるとこっちの方が不利だ。
俺は、ネルさんの教えの通りに無駄を省きながら対処していく。
体の動かし方を
敵を倒す為に必要な最低限の魔力量を
相手の動きを観察し、次の行動を予測
幸いなことにスフィンクスどもは接近戦しかできないこともあり、俺の元へわざわざ近づいてくる。
それに、攻撃パターンは噛み付いてくるか尻尾での薙ぎ払いか、パンチによる薙ぎ払いか、上から下へたたきつけるかだけだ。
そのため、動きを予測しやすかったし、相手から近づいてくるからその辺りは入れ食い状態だ。
そして、闘いながらそいつらの対処に体が慣れてきたこともあり、体力も魔力も消費はこいつらを倒し始めた頃よりも少なくて済んでいる。
と言うより、こいつらの上から上へと跳びまわりながらの対処していることと、こいつらが次々と俺の元へ押し寄せてくるから何気にずっと地面に足がついていない。
なにせ、1体倒すと他のが攻撃してくるからその腕や尻尾を躱し、そのまま伝って頭へ走り、そのまま核を潰す。
このやり方を繰り返しているだけだし。
と言うより、こいつらは俺の対処法をどうにかするという知恵がないらしい。
とにかく近くにいる敵は倒せ以外は何も考えてないみたいだ。
で、俺自身魔力量はそこそこだが、どっちかと言えば体力とパワーの方が上回っている。
と言うのも、ガキの頃から走り回ったり自主練ばっかしてたから体力が優先的についたって感じだが。
魔力は元々高かったことと、俺自身が威圧体質だと言うことで、その対処の為に魔力制御の訓練を並行して行なっていたことでぼちぼち上がっている。
だから、俺の属性魔法からすると1撃1撃の火力は高いから短期戦型のように思われているが、実際は長期戦がメインだったりする。
普段は、そのどちらでもあまり関係がないが、今回のような時だと長期戦をメインに鍛えていたことがとても為になった。
後、ネルさんから体力も魔力も無駄を省くやり方を教えてもらっていたことも幸運だった。
じゃないと、Sランクレベルのスフィンクスどもを何体も1人で相手なんて出来ないしな。
で、感覚的に体力が全体の4割を下回り、魔力が半分を切った頃、スフィンクスの数は残り3体となっていた。
そして、そいつらはおなじみのパターンで襲ってくるからそいつらの頭まで駆け上がり、核を潰す。
そこで、ふと気づく。
その3体を倒し終えたんだ。
つまりは、ローズはスフィンクスどもを増やそうとはしていなかった。
ちっとばっかし感知は苦手だが、ローズを観察していると気づいた。
こいつ・・スフィンクスを増やすのは無駄と判断してその分の魔力を全部自分の力としてため込んでやがる。
シャスティたちはと言うと、ゴーレムどもの対処に未だに負われていた。
と言うのも、そのゴーレムどもは全てが亜種で、その中でもかなり特殊らしくそいつら同士が分身して増えていたんだ。
主に10分ごとに1体で2体にしか増えてはいないが、元々の数が4桁だ。
シャスティたちの総攻撃でかなりのハイペースで数が減ってはいてもその均衡はかろうじて俺たち側に傾いている程度。
長期戦でいけば俺たちの方が有利とはいえ、体力なんてないゴーレムと体力の問題がある俺たちではその差はあってもないようなモノだ。
つまりは、俺がメインでローズを倒し、あっちに加勢するしかない。
リアもそれを察しているのか、スフィンクスを倒すのに加えていた影の軍勢をゴーレムの殲滅にまわし、俺には全身と刀に纏う程度に留めてあった。
更に、俺の目元にゴーグル状になって影がまとわりつく。
リアを信用しているから抵抗せずにいると
すげぇ。
どこに何があるか
どこに魔力が集中しているか
魔力がどこにどれだけ流れているかがよく見える。
これはすげぇや。
負けていられない。
おそらくリアは、ゴーレムの殲滅を優先的に終わらせ、なるべく早く俺のサポートへまわそうとしてくれているのだろう。
普通なら弱い奴をさっさと倒して強い奴を複数人で対処するのが普通だ。
だが、俺自身としてはそのサポートがある前提ではいたくない。
なんていうかさ・・かっこわるいだろ?
ただの自己満足だし、意地だ。
俺は、ローズへ向かって駆ける。
するとものすごい勢いで大量の茨が俺に向かって押し寄せてきた。
俺は襲ってくる茨を順に切り裂く。
普通の植物よりも燃えづらく、俺の炎はそいつを燃やし尽くすことが出来なかったが、切断を強化する程度にしか効かなかった。
ちっ!
やっぱ、そこまで上手くいくはずがないか。
だが、少なからず効果があっただけマシか。
そして、次々と襲ってくる茨を斬る。
翠さんが言うには、こいつは、花の中央にある口の奥に核があるらしく、それを破壊しなければ倒せないらしい。
で、その茨はその花である頭から無数に生えているし、斬っても自身の魔力を使用して再生してしまう。
実際、俺が斬りまくっていても5分とかからずに斬った部分は元通りになっている。
だからといって茨を避け、そいつの弱点である核の部分へ近づこうとしても無数に四方八方から茨が襲い掛かってくるし、速度も結構速いから茨を斬らなければ近づくことも出来ない。
スフィンクス相手にしていたように茨を伝って駆け上がろうとしても同様に茨が襲い掛かってくるし、足場代わりにしてる茨もうねるし暴れるから振り落とされそうになるし、斬っている間に茨は再生する。
ぶっちゃければ、近づけそうにないし、このままだと体力と魔力切れでこっちがやられちまう。
実際、こっちはボス戦をする前に散々闘った後だし、休みなんぞあるはずもない。
おまけにあっちはとんでもないほどの魔力量だって言うのはいやでも分かる。
まずいな・・。
持久戦は自信があるが、今回の場合は得意不得意以前の問題だ。
大ボスの強さもエグいが、その配下も結構エグい。
なんていうか、ボス戦を連続でしているような状態だ。
っていうより、ボスレベルのやつしか出てこない軍勢と戦っているようなモノだ。
それと、最も問題なのはこいつのデカさだ。
こいつ自身がアホみたいにデカいし、茨の1本1本が幅がメートル単位だ。
おまけにそこらのよりも燃えづらいから、かなり魔力を持って行かれている。
どうにかなっているのはリアのサポートがあるからだ。
リアによって相手の魔力の流れが見えるようになってるし、俺の全身を影が覆ってガードしてくれてるし、刀にも纏われているおかげで俺が普通に黒炎を灯すよりもずっと威力が上がっている。
それがなければとっくに魔力切れを起こしている。
今だって結構ギリギリだ。
リアたちの方は、スフィンクスどもがいなくなったことによってゴーレムが増えることがなくなった為、今いるのを倒せば問題なしだ。
スフィンクスに関してもローズが増やす気を起こさなくなったことは、ある意味では不幸中の幸いだな。
さっさと倒してリアのサポートにって思ったが、これは情けないがリアたちのサポートが来るまで相手の魔力を削れるだけ削って時間稼ぎするので精一杯だな。
リアたちは、獣魔メンバーが活躍して順調に減っている。
特に翠さんが広範囲で食らっているからな。
だとしても・・・。
ちぇ・・。
格好いいとこを見せたかったんだけどな。
実際奥の手はあるが、アレをすると周囲を巻き込んじまうし、魔力の消費がえげつない。
それにかなりの集中力が必要になってくるんだ。
それと、それを使ってこいつを倒せなかった場合を想定するとほぼ魔力が空になった状態になっちまうから今のような状態では足手まといになるから絶対に避けないといけないからタイミングは合わせないとならない。
魔力がなければ普通に斬っただけでは傷跡をかろうじてつけられる程度で切断は出来ないだろうからな。
それからどれだけ時間が経っただろうか。
隙を見ながら俺に襲い掛かってくる大量の超巨大な茨の群れを斬り刻んでいたが、その茨は他のを斬っている間に修復され、振り出しに戻るの繰り返し。
だからといってあえて距離をとろうとしても茨の軍勢は俺に向かって押し寄せ、逃げる隙を与えてはくれない。
で、近づこうとしても同様に茨の軍勢が邪魔をして先へ進めない。
まさに互いに防戦一方だった。
相手からすれば、怪我という怪我は俺はないからお互い様という感じだろう。
体力は、残り2割を切っており、魔力はこいつ相手にかなり消費させられ、1割を切りかかっている。
だというのにローズはリアの影を経由して内包する魔力を視るが1割削れてるかどうかも微妙な感じだった。
・・これ、冗談抜きでヤバいわ。
このまま続くと俺、勝てる気がしないどころか死ぬ。
距離をあけようにも茨が襲ってきて無理
逆にさっさととどめを刺そうと思っても大量の茨が襲ってきて核まで近づけない
で、現状維持をしても体力と魔力がいつまでももたない。
核にさえたどり着ければ全力の一撃で倒せるんだが、そこまでたどり着かない。
あぁ、くそ。
すごくもどかしいし、悔しい。
体力は気合でどうにかなるが、魔力だけは消費を抑える以外どうしようもない。
一応無理やり自身から絞り出すやりかたはあるんだが、それをやると後がやばいんだよなぁ・・けど、躊躇してる場合じゃないし。
そして俺は、茨を捌き続けるが、体力も尽きかけ、ローズはほとんど消耗していない。
そのせいで俺は何度かぶっ飛ばされた。
不幸中の幸いなのはこいつの攻撃が打撃だけだったことだろう。
まぁ、とげとげしてるが。
ぶっ飛ばされ、それを利用して距離をあけようにも他の茨が待ち構えてさらにぶっ飛ばしてくる有様で、俺はその勢いを利用して待ち構えている茨を斬り、体制を整えて戦っている。
何度も何度もぶっ飛ばされては斬っていたが、そろそろヤバいな。
冗談抜きで体力が尽きかけて、魔力もヤバそうだ・・・意識を保つのも結構きついな。
合間合間で回復薬を飲んではいるが、それでも今の状態だ。
視界の端ではリアたちがかなりの数のゴーレムを倒し、残りは3桁から2桁に入りだしたくらいのようだ。
そこで、俺に向かって襲い掛かってくる茨を斬ったが、そこで俺が斬った茨が囮だったらしくちょうど死角になっていたところから茨が更に襲い掛かってくる。
ヤバいと思い斬ろうとするが、俺の魔力はほとんど空になっている状態だった。
そのせいで、意識を保つ程度は残っていてもそれを攻撃に転ずるほどの集中力も消耗した体力のせいで出来ず、それを斬ることが出来ず思いっきりぶっ飛ばされた。
「かはっ!!」
腹の溝にきれいに食らった。
リアの防御と防具のおかげでどうにか意識を保っているが色々と消耗しまくっていたこともあり、受け身をとることもできずにさらにぶっ飛ばされる。
刀を振るう姿勢のカッコ悪さなんて関係なくがむしゃらに振るい、待ち構えていた茨に切り傷を作る程度で俺はどうにか再度ぶっ飛ばされることを防いだ。
だが、ヤバいな・・あばらが何本かヒビ、いってるっぽいな。
おまけに、体力もさっきの反撃で使い切ったらしく今もなお襲い掛かってくる茨を回避することすらままならない。
マジでやばい。
俺、死ぬのか?
リアの前でかっこ悪いところ見せちまったなぁ・・。
そして、俺に向かって大量に襲い掛かってくる茨の群れは突如として現れた漆黒に染まる何かによってねじり切られた。
そして、その黒い何かは俺の前で堂々と立ちはだかる。
黒い髪に黒いローブ
そして、黒い天使の翼。
あぁ、リア。
やっぱりお前は、すげぇよ。
{すみません。遅くなってしまいました。}
「いや、こっちこそ悪い。仕留め損ねたどころか無様にやられちまったよ。」
我ながらホントに無様だ。
色々とカッコつけたくせに最終的に年下の女の子・・しかも好きな相手に守られてるんだからな。
{そんなことありませんよ。こいつを1人で足止めできたのはリムさんだからです。十分かっこよかったですよ。}
「・・・そっか」
そう言ってもらえただけでも十分だ。
{私がこれから奥の手を使い、こいつの茨を全て潰します。ですので、リムさん。あなたがあいつの核を破壊してくれませんか?}
俺を背にかばい、リアの足元から出てくる大量の黒い触手がローズの茨を弾き飛ばしていた。
翠さんたち獣魔グループは残りのゴーレムを対処しているようだ。
「だが、体力も魔力もほとんど残ってないんだ・・悪い。」
俺は申し訳ない気持ちでそう告げた。
するとリアが
{・・・わかりました。時間が惜しいので手っ取り早く済ませます。}
ん?
リアの返事が微妙に遅かった。
というより、言うのをためらった感じというか、意思を固めたみたいな・・なぜだ?
そういうとリアは謎の液体を何の躊躇もなく俺の口の中に押し込んできた。
パニックになってると今度は鼻をつままれる。
つまりは無理やりにでも飲めということのようだ。
・・すっげぇきつかったけど頑張って飲んだ。
「げほっ!ごほっ!さ、さっきのは?」
{即効性のある魔力回復薬です。}
「・・・だったら素直にそう言って欲しい。けほっ」
(?)
そんな不思議そうな顔で首をかしげないで欲しい。
っていうか疑問に感じることじゃなかったよな!?
無理やり飲ませるか!?
ま、まぁ・・時間を要するのはわかってるからあえて言わないが・・。
その後も、栄養剤シャスティお手製の団子をあ~んされて俺は食べさせられ、飲まされた。
うれしいっていえばうれしいんだが、もう少しじっくりと楽しみたかった・・。
{では、行きましょうか。お願いしますね}
「あぁ。」
そして、俺たちは最終決戦へ向かう。
だとしても・・・絶体絶命な状態に加えて、大ボスとの戦い真っ最中に俺・・何やってるんだろうなぁ。
後日、俺のステータスの称号部分に”ロリコン”という不名誉極まりないものが加わっていたのは余談。
俺はロリコンじゃねぇ!!
ただ、好きになった相手がちょっと・・じゃないかもしれないが年下だっただけなんだぁ!
リア以外で、そんなこと思ったことなんて人生の中で一回もないんだからな!?