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Ⅲ話 奴隷購入

宿を出てまっすぐ街に来たが……とりあえずどうするか。俺はあまり『エレベスト』に長居したことがないのだが、とりあえずこれからの生活を考えると安定した収入と持ち家が必要か。冒険者として稼ぐのが楽なのだが、マスターが帰ってきた時に居場所を作っておきたい。


「お兄ちゃん、何してるの?」


突然後ろから幼い声が聞こえたので振り返ると、そこには黒い髪の少年が立っていた。どこか前世を思い出すようだが、この世界では黒髪は普通にいる。それと黒髪だが顔立ちはどちらかというと西洋のように彫りが深い。

ふと少年の服装を見るとボロボロで靴も履いていないのでおそらく孤児だろう。


「いや、これからどうするか考えていてな。」


「そっかーお兄ちゃん服装的に商人さんかとおもったー」


「商人?商人だったらどうするんだ?」


「商人さんはたまに、食べ物分けてくれるんだよ!」


「そうか…商人なー」


それもいいな。街に店を持っていれば収入も安定するし案外いいかもしれないな。っと、少年は俺の目を盗んでポケットの中に手をそっと差し込んでくる。ああ…こいつスリをねらっていたのか。


「俺の金は全部ギルドカードに入ってるから意味ないぞ。」


「っちぇ…」


少年は俺を睨み付けると、そのまま小走りで去っていった。俺はその後ろ姿を見送りながら商人について考えてみる。とりあえず、なんの商売をするにもなんの情報がないと行動できないな。見て回るか。

俺は適当にエベレストの商店街に向かう。

エベレストの商店街に着くとゆっくりと店を見てまわる。街の入り口から領主の屋敷まで商店が並んでおりかなり長い。さて、入り口近い店は冒険者達用の装備や武器などの武具屋や回復用のポーションなどを売る魔道具屋が並んでいた。とりあえず、近くにあった武具屋に顔を出す。2mはありそうな巨大な大剣や、真っ赤な絵の槍などが所狭しと並んでいる。俺からすると、迷宮で作成した武器の方が数段レベルが上だと思う。店内を見てみると、店主と思わしき革製のエプロンに分厚い手袋を片手だけはめている大男と、冒険者風の少年が話をしていた。こっそり聞き耳をたてる


「店長、刃こぼれしちゃって…どうにかなりませんか?」


「砥石は別売りだが、俺がやるなら銀貨10枚だな」


「銀貨10枚!?この剣銀貨3枚ですよ!?」


「それは中古だし入門用だから安いんだ。それに砥石で研ぐのはかなり手間がかかるし金にならんからな。」


「あー…砥石で研ぐとしてやり方教えてもらってもいいですか?」


ほほ…研ぎはかなり手間がかかるわけか。お、いい事思いついたぞ。これなら少し良い案があるな。

俺の頭の中で色々考えが纏まったところで少年と店主の会話が終わり、少年が肩を落として店を出て行った。すると、店主が俺に話しかけてきた。


「見た感じ、あんた商人か?なんか用か?」


「いや、少し聞きたい事があってな。研ぎってそこまで大変なのか?」


「研ぎ?なんで商人がそんなこと聞くのかわからんが…研石やら水やら準備するのも面倒だし、その前にここは武具屋だ。俺はあくまで武器を取り扱っているだけだから、そんなもん俺にできるわけないだろう」


「なら、さっき銀貨10枚とかいっていたが」


「ああ、聞いていたのか。相手は冒険者だ、値段を挙げとけば諦めるさ。それにだったら新しい武器を買おうと考えるだろう。頭を使え」


「そうか…勉強になった。」


俺はそれだけいうと、武具屋からでていった。それからそこらへんにある武具屋を回ったが、どこもただの武器商人であって専門的な事はわからないそうだ。ほほ…これは使えるな。俺は家に戻ってから色々考えて見よう。

さて、いろいろな武具屋を探したせいで大通りからそれてしまい人通りの少ない路地に出てしまった。大通りに戻る途中で怪しげな店をひとつ見つけた。入り口は狭く、明らかに異様な空気だ。気になった俺はそっと中にはいる。ひんやりとした空気の店には受付があり、そこに1人の男が立っていた。病的なほど肌が白く頬がこけている。


「いらっしゃいませ」


「ここは何屋なんだ?」


「知らずに来たのですか…ここは使い魔を販売している店です。私はこの店の店主をしているドロヌゥーマ=ハメルーンと申します。どうですか?みるだけでもいいですよ」


「そうか…とりあえず見せてくれ」


「はい。では、こちらへ」


商人はカウンターから出ると、奥に続く扉の前で俺を待つ。俺が扉に近づくと、商人が先に入り扉を開けてくれた。扉の先に入ると獣の独特の臭いが鼻をさす。視界には多くの檻が並んでおり中には猛獣や魔物が唸り声をあげ俺を睨んでくる。まあ、迷宮と比べれば羽虫のようなものだ。商人は少しも動揺しない俺を見つめ軽く口角を上げ笑う。


「ほほ、肝が座っているよですね。」


「ここは魔物だけか?」


魔物の臭いに混じって人間の独特な臭いがしたのでカマをかけてみる。すると、商人は眉をピクリと上げニヤリと笑う。気持ち悪いやつだ。


「ふふふ。あなたには見せてもいいでしょう。こちらへ」


商人が先に進むので俺もそのあとに続く。一つの扉をくぐると、そこには二つの大きな檻があり人間がみな全裸で集まっていた。


「これは、奴隷か」


「ええ、ここ(・・)は人間の奴隷です。多くの種族を取り扱っておりますよ。どのような奴隷をご覧になりたいので?」


やはり奴隷商人か。この世界は奴隷制度が存在する。借金や犯罪で奴隷に落ちるらしい。なぜそんな制度があるのかと最初は思ったが、旅のお供で言うことを必ずきき裏切ることの少ない奴隷は使いやすいらしい。それに国も兵を集める際、徴兵より前に奴隷を兵士として使うことがあるようだ。


「そうだな。売れてない奴隷を見せてくれ」


「売れてないですか?それは何故でしょう」


「単純に安くなるんだろう?」


「ほほほ…考え方がお若い。いいでしょう…こちらへ」


商人はそのまま奥の方に進んでいく。多くの奴隷が俺のことを見てくるがガン無視で商人についていく。しばらくすると、多くの檻が並んでいた。


「こちらに居るのが、我が商店の売れ残りです。」


「そうか。みさせてもらうぞ。」


俺はひとつひとつ檻の中を見て回る。ずっと遠くを見つけながら唸って居る獣人や、必死に檻に噛み付いて居る人間などどれもイカれてるものが多い。しばらく見て居ると、最後の檻に一匹の少女がどこか遠くを見つめていた。ろくに食べていないのか全体が痩せこけ、赤と茶を混ぜたような髪くすみ伸び放題だ。これはかなり危険な状態だと素人目でもわかる。だが、どこか惹かれる……なぜだ?


「おい、この娘は?」


「こちらはドワーフと人間の混血種です。ドワーフは混血を認めていないので、追い出され人族も混血はあまり好まれないので売れ残っています。それにスキルがあまりに弱いので売れておりません」


「そうか。ちなみにスキルはなんだ」


「『鍛治』スキルです。それしか持っていないので。ドワーフなら全員が持って居るスキルなのでそこまで利用価値はありません。」


「そうか。この娘をもらおう」


「ほほ…変わったお方だ。金額ですが金貨50枚…と言いたいところですが、鉱山送り予定だったのでそこまで出せとは言えませんね…では金貨45枚でいいでしょう」


金貨1枚が平均月収のこの国だが、それでもかなり安い。普通は80〜100枚程度で取引される。それだけ売れなかったということか。俺は懐から冒険者カードを取り出すと、商人に手渡す。


「これで払う。一括だ。」


「冒険者の方でしたか。戦闘はできませんよ?…」


「わかっている」


「承知いたしました。引き渡しですが、どうなさいますか?金貨2枚である程度は綺麗にいたしますが」


「いや、このままもらってく。」


俺がそういうと、一瞬商人の顔が驚きの表情になったがすぐにいつもの下世話な表情に戻ると、すぐに檻の鍵を開けたので中には入ると、少女の前でしゃがみ瞳を見つめる。何もかもを諦めたような目だった。だが、まっすぐ俺を見つめてくる。


「おい、小娘。名前はなんだ」


「デル…」


「デルか。よし、いくぞ。」


俺は少女の体を抱き寄せそのまま、持ち上げる。ものすごく軽かった。

少女は突然抱きかかえられたことに驚き俺の胸を掴んでくる。ろくに力が入っていないが、その目には恐怖があった。俺は一切少女を見ることなくそのまま檻から出た。一瞬掴む手が力強くなった。出ることに恐怖があるのか


「はい、きちんとお支払いいただきました。まだまだ奴隷はおりますが、どうなさいますか」


「いや、今日はいい。こいつは何回奴隷となった?……


「3回ほどです。何度も戻ってくるので困ったものです」


「そうか……そんじゃ、こいつをもらってくぞ」


俺は器用に商人からカードを受け取ると、そのまま商店から出て行った。商店からでた頃にはすでに日が落ちかけ暗くなりかけていた。今日の散策は諦め宿に戻ることにした。宿に戻ると、受付にはおっさんがウトウトしていた。声をかけるのもなんだと思い、そっと上に上がろうとしたがおっさんが目をぱっちり開け目があってしまった。


「ああ、お前か…ん?その子は…奴隷か…」


「ああ、飯出せるか。」


「その子に食わせるのか」


「おっさんは奴隷に偏見あるのか?」


「んなもんあるか。かわいそうだとおもうぜ。」


「そうか。」


「かたいもんは食えなさそうだな。粥でも作るわ。待ってろ」


「頼む」


俺は軽くおっさんに頭を下げると、そのまま上に上がっていた。小娘はかなりまずいのか呼吸が浅くなってきた。部屋についた俺は小娘をベッドにそっと座らせると、そっと小娘の横に俺も座る。少女の上半身を俺に凭れさせ、倉庫から回復薬の入った小瓶を取り出し少しづつ小娘の口に流し込む。むせないように少量ずつ口に流していく。これは博士のつくったもので、博士は失敗作と言っていた。飲ませると、栄養状態から心臓が止まっても動き出すというほどの高濃度の回復効果がある。まあ、健常者が飲んだら……まあ、いいだろう。

少女はゆっくり飲んでいくと、骨が浮き出ていた足がボコボコと膨らんでいき張りのある足に変わる。それが全身に渡り瓶の中身を飲み干すころには全身が程よく肉がつきしろかった肌も血色が良くなっていた。


「す、すごい…」


「喋れるまで回復したか。上等だ。まあ、何があるかわからないからそのままでいろ。もうすぐ飯が来るだろう。腹が減っただろう?」


「グゥゥ〜〜〜」


俺がそういうと、少女はすぐに動こうとするがその前に腹の虫が鳴いてしまったようだ。ふと少女と目が合う。すると少女の顔は真っ赤に染まった。

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