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名無しは記憶喪失の奴隷と旅に出る。  作者: 葉渡純
旅に出るまで
1/52

1 私は記憶喪失

目がさめるとそこは知らない世界でした。

木でできた壁、木でできたベッド、お世辞にもふかふかとは言えないお布団。

はい、私の部屋ではないですね。

あまりの驚きに眠気が吹き飛んだわ。


さて、これは一体どういうことかと考えているとドアが開いて一人の女性が入って来た。

そして私は自分の目を疑った、思わず二度見した。

部屋に入ってきた女性の服装は RPGに出て来そうな、まさに『村人』といった服装をしていたのだ。

自分でも服装の流行やトレンドといったものに疎いというのは自覚しているがこれはあり得ないでしょう、と断言ができる。

コスプレという線も考えにくい、なんかもう雰囲気で長年着てます感が半端ないし。


「まぁ! 目が覚めたのね、大丈夫? 痛いところとかない?」

「あ、はい」

「よかった! 村長とお医者様呼んでくるわね、辛かったらまだ横になってて」


そう言うとその女性は出ていってしまった。

うん、なんとなく思ってはいたし理解もしていたけどこれで確信が持てた。


ここってもしかして『異世界』じゃね?



△▼△▼△▼△▼△▼△▼




二度寝することもできず、ベットに座ったまましばらく待っていると。

先ほどの女性と眼鏡をかけたおじいさんと少し太ったおじさんが入ってきた。


眼鏡をかけたおじいさんがお医者さんだったらしく、一通り簡単な検査をした後テーブルに促された。

席に着くと先ほどの女性が「お口に合うと良いけれど」と言ってマグカップをテーブルに置く。

お礼を言って飲んでみる。優しい甘さの少し味の薄いホットミルクだった。


「体に異常はないようでよかったよ。私は村長のベフット、こちらが娘のサーシャだ」


私の隣に座る女性を見るとにっこりと微笑まれた。よくよく見るとなかなかの美人さんだ。

というか村長の娘さんだったのか。

詳しく話を聞いてみると、この村の近くの森で倒れていた所を子供達に発見されて保護されたらしい。

わざわざ何処の馬の骨とも知らない私を保護してくれるなんて……なんて親切なのだろう。

普通だったらそのまま放置、最悪殺されていてもおかしくないのに。

これはもしかして異世界に来た時に起こる俗にいう『特典』というやつなのではないだろうか。

チート魔法とか使えちゃったりするのか? 

あ、でも待って、この世界に魔法って存在するのか?

そもそもチート? できるの? 私が? 無理くない?


悶々と考えていると今度は医者のおじいさんが話を切り出して来た。


「お嬢ちゃんはどこから来たんだい? 見た感じ旅人ではなさそうだが……」


おっと、痛い所を突かれた。

さてどうしようか、普通はここで正直に『異世界から来た』と言うべきなのだろうが生憎私にそんな度胸はない。

夢見る少女じゃいられない……わけでもないが、もうお酒も解禁された年齢なのだ。

だからその、なんというか、言いにくい。

絶対頭おかしいとか思われる。

かと言って私には上手い嘘は思いつかないし、嘘はつき続けるのが大変なんだ。

そもそも嘘ついてもバレるしね! 下手だから!

でも、このまま黙ったままだと変に疑われかねないし……


俯いて黙っていると「もしかして……覚えていないの?」と村長の娘サーシャが言った。


そして私は彼女の無意識の助け舟に乗っかることにした。

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