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20 森を抜けたら

 というわけで。


 ルーシェに道案内を任せて一週間ちょっと。


 唐突にロウラシスが生えていないと思ったら、《深淵の森》を抜けていた。


「うわ、まぶしっ」


 薄明るいロウラシスの白い光に慣れすぎて、すげー世界が黄色く見える。


 人間黄色を眩しいって感じるもんなのねー。

 はじめて知ったわ。


 まあでもそこまでひどいものでもないし、とりあえず目の前の橋渡るかー的なノリで進んだら、石造りの門っぽいものが見えてきた。


「お、もしかして」


 あれが“最果ての街”アグエル?


 俄然テンションのあがった俺は、しかし。


「すみません……少々……こちらでお待ちください」


 橋を渡りきったところでルーシェにそう切り出され、高まっていたボルテージが沈静化する。


 ルーシェはそのまま門を守るように立つ二人の甲冑姿の騎士のもとへ歩みよっていった。


 ……いやまあそうね。

 いきなり《深淵の森》から三人組、しかもよくわからん格好の男とボロ布同然の見なりした女子二人が現れたら警戒されないわけないもんね。


 おかっぱおっさん率いる先遣隊に加わってたルーシェの説明ないし交渉が大事だよな。


 その交渉だが、遠目からではルーシェがすげえ恐縮してるのと、甲冑騎士たちがやたらと偉そうなことしかわからない。


 んー、なに話してんのか気になるな。


「なあメツ子、『竜威』に五感拡張能力とかねえの?」


「は? そんなものなにに使うつもりだ」


「まさに今使えるじゃん。聴覚拡張して、話を聞くんだよ」


「……『竜身変化』で似たようなことはできるが、今の貴様ではほぼ間違いなく魔力を使い果たして死ぬな」


「お、マジで? じゃあ試しに――」


「やるな!!」


 目を見開いて本気で止めにくるメツ子に、俺は「冗談に決まってるだろ」と軽く笑う。


「我は、貴様が何度も“冗談に決まってるだろ”と思ったことをやるのを見ている。まったく信用ならん」


 と、ジト目でおっしゃるメツ子さん。


「こんなところで竜の姿になったら大パニックが起きるじゃん。さすがにそんなことはしねーよ」


 ただでさえ対“終焉の滅竜”前線基地なのにさ。

 ……いやまあだからこそちょっとやってみたいけど。


「やるなよ」


 鋭いメツ子に釘を刺される。


 やるなやるなって言われると余計やりたくなっちゃうなー。


 竜になるってのも一回は経験してみたいし。


 ただまあメツ子の言うとおり、魔力のほうが気になるのでやれって言われてもできないけど。


 と、そういえば一応見ておくか。


 俺はもはやほぼ意識せずに『全知』を使ってステータスを確認する。


――――――――――――――


名前:此方悠

種族:――

性別:男

LV:52

HP:12420/12452

MP:1910/12310

筋力:12201

耐久:11930

魔耐:10622

敏捷:11003

器用:11423


スキル

『竜威LV99』全ステータス超強化、全ステータス異常無効、物理魔法攻撃の超耐性。

『全知LV99』ステータス・スキルの完全把握、敵察知、解析、言語理解、概念共有。

『煉獄LV99』炎を生み出し、操る。

『凍絶LV99』氷を生み出し、操る。

『烈空LV99』風を生み出し、操る。

『雷滅LV99』雷を生み出し、操る。

『竜眼LV99』ステータス異常耐性LV80以下の相手の動きを無条件で止める。

『竜癒LV99』HPとMPが徐々に回復していく。

『竜身変化』竜に変身する。


――――――――――――――


 ふむ、MP2000切りはやっぱりちょっと気になるが、日にち別の減少率を考えればそこまで心配はなさそうだ。


 ここ数日は筋力・耐久頼みの攻撃・防御をだいぶ控えてきたし、器用依存の行動に慣れてきてもいる。


 あのあとそれなりに戦闘は重ねたが、さすがにモンスターのバリエーションが増えなかったせいか、レベルは2しかあがっていない。


 メツ子曰く、それでもレベルが上がるのは異常だそうだが、最初から成長しまくりだった身としては少々物足りない。


 その意味でもここで《深淵の森》を抜けられたのはよかった感じだ。


 あとはあれね。


「やっぱスキルポイントが表示されないんだよなー」


 レベルアップ時には確かに知らせてくれていたスキルポイント。

 最初は他の項目に目が言って気づいていなかったが、『全知』を使ったときのステータスに出てこないのだ。


 しかも。


「まだ言ってるのか……そんなものは存在しないと言ったであろう」


 ルーシェはもちろん、メツ子に訊いてもそんなものはないの一点張り。


「ないって言われても通知される以上あると思うんだけどなー」


「それよりも魔力のほうは大丈夫なのか」


「お? なに、心配してくれんの?」


「我の力の心配をな。現状貴様は我の力を持った尖兵にも等しいのだ。死なれては我が困る」


 と、淡々とおっしゃるメツ子さん。

 少し強がってる風なのがとても趣があっていいですね(ニコリ)。


「んーまあまだ大丈夫。メツ子のMPリジェネが切れたら心配ってレベルだな。一応1900はあるし」


 だからまあ、MPリジェネ切れたら補充を――と続けようとしたら。


「な、1900ってあっという間になくなるであろう!? バカか貴様!」


 そう言ってメツ子は焦ったように身体を寄せ、背伸びして俺の顔を掴むと、そのまま――


「いやいや待て待て」


 ――唇を奪われる前に、俺はメツ子を引きはがす。


 雰囲気もへったくれもあったもんじゃない。


 というか、引きはがすときふにょっとしたおっぱいに手が当たってちょっとテンションあがった。

 

 ……ふう、気持ちを落ち着けよう。


「なぜ拒む! 先ほども言ったであろう、貴様に死なれては――」


「あーわかったわかった。とりあえず外だけはよっぽど緊急でもない限りやめようぜ? ほら、人の目もあるし」


 と言って、門番のほうを指さしたら。

 ちょうど交渉が終わったらしいルーシェがこっちに歩いてきていた。


 ルーシェは自分が指さされたと思ったのか、戸惑ったように目をぱちぱちさせてから、遠慮がちに言った。


「あの……通行許可、いただけました」


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