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11 全裸を見られた元最強竜さんとの交流

ギリギリ今日2回目の更新セーフ……!

引き続きたくさんのブクマ評価感謝です!

 恥ずかしさにか悔しさにか、ぽかぽかと俺にパンチを繰り出し続けていたメツ子だが、


「……お?」


 気がすんだのか、何を言うでもなくたき火の前に戻ると、そのまま座り込んだ。


「なんだよ、もういいのか?」


「…………」


 俺がなにを話しかけてもノーリアクションのメツ子さん。

 憮然とした表情で膝を抱え込み、火を見つめている。


「ま、いいけどさ」


 とりあえずここで一晩……一晩?

 微妙に空が見えにくいのでわからないが、おそらくあの暗さは夜のはずだ。

 一晩休もうと言いだしたのは俺だし、メツ子も納得しているっぽいのでよしとしよう。


 俺自身は特に疲れていないが、その疲れていない理由である『竜威』の効果を確認するために、『全知』でMPを恐る恐る確認する。



 MP:4021/10172 



 ……うわー。


 やっぱ減ってるわー。ばんばん減ってってたわー。


 現在進行形で減り続けてはいないようなので、まだMPリジェネは効いているようだが、やはり超魔法の使用やら火の手づかみその他は、結構MPに響いていた。


 うーむ、やはり筋力ブーストは元より、耐久のほうもかなりMP減少を直撃してくるとみた。


 燃えてる枝手づかみしたときとか「あ、すげー『竜威』使ってそう」って思ったもんなー。


 もちろん気のせいの可能性はあるが、そういう感覚的な部分も意識しておいて悪いことはない。


 いずれは感覚で全部コントロールしたいしなー。


 感覚と言えば、器用さ――肉と皮をうまく選り分けたりする際には、「すげースムーズ!」みたいなことは思ったものの、「MPすげえ使いそう」感はなかった。


 これは今後のMP節約ないし、力のコントロールをする際に結構ポイントになるんじゃなかろうか。


 そういったことを考えてみると、結局のところ『竜威』が使われる場面、MP消費の激しさは普通の人間のエネルギー消費に近い気がする。

 カロリー消費が高い行動ほどMPが消費されるみたいな。


 ……なんかあらためて言うまでもなくそんなの当たり前な気がしてきた。


 とはいえ、耐久なんかはあまりこの法則当てはまらない。

 たぶんカロリー消費=MP消費説だけで成り立っているわけではないということだろう。

 だから結論として言えるのは。

 

「全部要検証ってことだな」


 そう、思考をまとめるように俺が独りごちると。


「…………貴様は楽しそうでいいな」


 抱えた膝に顔を埋め、くぐもった声で――それはもうどよーんとした声で、メツ子が言う。


「我とは大違いだ…………ふ、排泄行為すら満足にできず、あまつさえ裸を見られる我とな」

 

 ふ、ふふ……と。

 ヤケクソなのか惨めさに凹んでるのか、メツ子は自虐的に笑う。


「とんだ世界の覇者もあったものだ……」


「まあそうだな」


 俺はこくりとうなずいて。


「トイレ中に襲われるとか。全裸になってたとか。しかも俺に見られるとか――超ウケるわ! あははははっ」


「少しはかばうとか気を使うとかないのか貴様!?」


 がばりと顔をあげ、泣きそうな声で言うメツ子に。


「ないね」


 俺はそうすっぱりと言った上で、目を閉じる。


「というか、考え方次第だと思うんだけどな。現状お前は今までにありえない経験――数千年の時を経てなおはじめての経験をしているわけだよな?」


「…………なにが言いたい」


「だから考え方の話だよ。発想の転換って言ってもいい。――お前さ、なんで全能力を失ったんだと思う?」


「……? そんなもの、貴様が――」


「俺が望んだ、そして召喚の魔法陣が叶えた。それは間違いない。でもそうじゃなくて、なぜ俺の願いは聞き遂げられたんだ? “そんなん無茶!”って弾かれなかったんだ? あるいはメツ子――“終焉の滅竜”の視点から言えば、能力を失うなんてありえない願いを叶えられてしまったんだ?」


「それは――」


「俺はその理由に『“終焉の滅竜”ステラレギスが成長したいと思っていたから』って説をあげるね。お前はあらゆる戦闘経験をし尽くして、自分の成長を頭打ちだと考えた。そしてだからこそ俺を――異界のマレビトを喚んで戦おうとした。自分自身が成長――レベルアップするために」


「…………まさか」


 俺は目を開いて、驚愕の表情を浮かべるメツ子にイタズラっぽく笑ってみせる。


「で、レベルアップに必要なのはなんだったっけ?」


 レベルアップに必要なのは、新たな経験。


 つまりメツ子が力を失い、毒に犯されたり、空腹に苛まれたり、トイレで恥ずかしい想いをしたりしているのはすべてレベルアップしたいという彼女の願いを叶えているため――。


 ドヤ顔をする俺に、メツ子はポツリと言った。


「貴様……適当に言っただろ?」


「――あ、バレた?」


 頭をかきかき、てへぺろをしていると、メツ子はジト目で深々とため息を吐いた。


「そんなことだろうと思った……」


「まあでもそういう風に考えられたら、最悪でしかないなーと思う体験も、前向きに捉えることができるだろ」


「貴様自身最悪だと言ってるではないか……」


「こまけぇことはいいんだよ」


 ふりふり手を振ると、メツ子は再び息を長く吐きだして。


 不意にふ、と柔らかく微笑む。


「どこまでいい加減なんだ」


「あーん? いい加減なのは悪いことじゃないだろ。人生を気楽に生きるコツだぞ。まああんまりやりすぎるとつまらなくなるけど」


「やり過ぎたらいい加減ではないだろう」


「あ、ほんとだ」


 戯けたように言うと、メツ子が今度は吹き出すように笑う。


 うーん、やっぱ笑顔になると可愛さがやばいね。


 俺がそんなことを思っているうちに笑うのをやめたメツ子は、それでも幾分か穏やかな表情になっていて。


「ふん……貴様の適当さが移ったせいか、少し気が楽になった」


「あ、そう? んじゃ俺に感謝してこれからはハルカ様って呼んでくれていいよ」


「調子に乗るな」


 oh……すごい冷たい目。

 ……ま、やっぱそれくらいがこいつにはあってるな。

 決して俺がMとかそういうことではない。


「……この姿は体力を消耗して不便だ。明日に備えて寝る」


 そう言ってこちらに背を向けたメツ子は、どうやら寝に入るらしい。


「おー寝ろ寝ろ。俺も足引っぱられても困るし」


 ちなみに俺はまったく眠くないし疲れてもない。

 ってことは……俺が一晩中火に木くべてたき火維持する感じか。

 めんどくせー――と思った瞬間。



「おやすみハルカ」



「ん、おやす……え、今なんて言った?」


 もしかして俺の名前はじめて呼んだ?


 だがそれきりメツ子は黙ったままで。

 しばらくすると可愛らしい寝息が聞こえてくるのだった。

ナンバリングを頻繁につけ忘れてしまう……

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